2015年12月25日
夢って、一体何なんだ? 古代ギリシャから綿々と続く夢へのあくなき探究
なぜ夢を見るのだろう
わたしたちは眠っている間に夢を見る。物語のような幻想的な夢もあれば、仕事の夢を見てうなされることもある。
睡眠中はだれもが必ず夢を見ているそうだ。「夢を見ない」という人もいるが、覚えていないだけで、毎晩見ている。
なぜ、夢を見るのだろう。研究者の多くは、夢には機能があり人間にはそれが必要だと考えている。
■過去の研究者が考えた夢が持つ機能
古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、人は眠り夢を見ることによって、現実のゆがんだ生活から解放され、自由な魂を得て、その自由な魂が、眠りの中で体の不調に気付かせようとしていると考えた。また、ソクラテスの弟子のプラトンは、夢は道徳的な意識をすり抜けた心の無意識な願望であると考え、近代の精神科医フロイトは、抑圧された意識が無意識に表れたものだと考えた。
現実の中でできなかった願望を、夢の中でやって満足しているという説が主流だったようだ。
■現代の研究者が考える夢が持つ機能6つ
明確にされているのは、夢を見るのは眠りが浅いレム睡眠のときが多いこと、右脳で見ていることだ。
夢については多くの研究が行われ、さまざまな仮説が立てられているが、明確な答えは見つかっていない。夢の機能についての仮説を6つ挙げる。
・日中の激しい感情を処理している。
・幻想で目的を果たして、ゆっくり眠れるようにしている。
・昼間の出来事をシミュレーションしている。
・脳の思考や記憶をテストし、新しいものに完成しようとしている。
・脳の回路の点検をしている。
・夢には意味も機能もない。
もっともらしいように思えるが、どの仮説もまだ研究中だ。
また、夢の機能については、夢を見なかったらどうなるかという実験がある。
レム睡眠の脳波が出る度に目を覚まさせて夢を見させないという方法である。人間と猫で長期間にわたってこの実験をした結果、寝不足による不機嫌や強い眠気に襲われることはあっても、心のバランスを崩すことはなかった。つまり、夢は感情を処理して心のバランスをとるために必要だが、絶対に必要であるとは限らないというのが、結論だった。
まだ研究の余地はあるが、仮説と実験から、夢には日中の情報や感情を処理し、心のバランスをとる機能があると期待できる。
■夢をコントロールする!? 明晰夢
嫌な気持ちになる悪夢や不安な夢を毎晩繰り返し見ていては、心身の疲れを取るはずの睡眠で疲れをためてしまう。
その逆で、夢を見ながら「これは夢だ」と分かることがある。その夢を「明晰(めいせき)夢」という。
明晰夢は、起きているときに得た情報を選別し、整理する過程で見る夢だ。
■自分でも試してみよう
この情報処理の過程を上手に利用して、思い通りの明晰夢を見ることができれば、悪夢を見なくなり、睡眠中に心のストレスが解消できるのではないかという説がある。眠る前の気持ちが夢に反映されることは多くあるので、寝る前のベッドで楽しい気持ちになれる写真や本、映像を見て寝ると楽しい明晰夢が見られるそうだ。
古代から夢について研究されているのに、夢を見る理由や意味については解明され尽くしてはいない。明晰夢もその謎に包まれたもののひとつだ。確実に見たい夢が見られるわけではないが、簡単な方法だから、自分でも試してみてはどうだろうか。