2016年05月24日
心を制御せよ。 スポーツメンタルトレーニングで最高のパフォーマンスを
スポーツを行う上で、身体を鍛え、技術を磨くのと同じように、精神面を鍛えることも大切である。事実、精神面を鍛えるためのメンタルトレーニングに、多くの一流のスポーツ選手が取り組んでいる。
今回は、このうちのイメージトレーニングが科学的にはどのように考えられているのかを検証する。
■スポーツメンタルトレーニングとは
スポーツを行う上で、自らの心理状態を調整することは、良好なパフォーマンスを発揮するためには欠かせないことである。
例えば、競技に対する明確な目標を定めることも重要となる。いつまでに、どのような目標を達成するのかを明らかにし、それら一つひとつを達成できるように、順序立てていく。日常的に練習日記というものをつけている選手も多く、これも目標へと向かっていくための心理状態を整える手段の一つとなる。
また、メンタルトレーニングというと、イメージトレーニングを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。これは、競技の中で過度の不安や緊張状態に陥らないためのリラクゼーショントレーニングでもあり、技術的な練習と同様に、毎日の繰り返しが大切となる。
■イメージトレーニングの効果は実際どのくらい?
100年以上も前から、多くの研究者が、メンタルトレーニングの効果についての研究を行っている。1930年代にはすでに、頭の中で行動をイメージすることで、実際には筋肉の収縮が起こらない程度の弱い信号が、脳から筋肉へと送られているということが示されている。
また、2012年には64名のアマチュアゴルファーを対象とした研究が行われた。この研究では、32名は実際にパットを打つ練習を行い、残りの32名はただゴルフクラブを手に持つだけでスイングを想像するというイメージトレーニングを行った。すると、両方のグループで、実際のパットの結果が約4インチ(10.16cm)もカップに近くなるという効果が得られている。
このように、イメージトレーニングは、実際に運動を行うのと同じように効果が期待できる。そして、これはけがをしている場合でも可能という利点がある。
■メンタルトレーニングは「上級者」に有効
しかし、このようなメンタルトレーニングは、そのスポーツの上級者でなければあまり効果を発揮しないことを伝えておきたい。
例えば、バスケットボールの心得がない者が、フリースローのイメージをしたとする。このとき、適切なボールタッチやフォームを知らない状態でイメージトレーニングを行うと、誤った技術を獲得してしまうことになる。
つまり、頭の中で最適な動きをイメージできるくらいの熟練者でなければ、イメージトレーニングによる恩恵を十分に受けることは難しい。
スポーツの上級者にとっては、頭の中で行うイメージトレーニングは、科学的にもスキルアップのための有効な手段であるといえる。