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見知らぬ乗客　パラダイン夫人の恋

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2004年01月25日

みなさま、こんばんは。

随分前のＮＨＫのドラマで
向田邦子の≪阿修羅のごとく≫というのがあった。

ドラマ自身はそれほど身を入れてみていなかったが、
このドラマのテーマ曲にすごく惹かれたことがある。

どこぞの国の民族音楽のように思え、随分探した。

それがトルコの民族音楽であるというのは
随分後になってわかり、
早速ＣＤを買い求めた記憶がある。

それは≪トルコの軍楽≫と言う題名だった。
それを聴いてから、
イランやイラクの音楽にしばしどっぷりと浸かったことがあった。

あの辺りの音楽はどこが発祥で何処の国に影響されたのか・・・
そこまで研究するつもりもないから、
ただ聞いて楽しむだけだった。

メリナ・メルクーリ主演の、
≪日曜はダメよ≫と言う作品の中で
全編に流れるギリシャ音楽はとても心地よい。

だが、
これもどんな楽器を使って奏でているのか分らなかった。

ブズーキというギリシャの楽器の音だと分ったのも、
随分後のことだった。

ともあれ、心地よかった。

音楽も踊りも楽しい、
ギリシャ版≪マイ・フェア・レディ≫の≪日曜はダメよ≫と

なでしこでは彼女の作品としては
サスペンス作品の≪トプカピ≫を取上げましたね。

まずは､彼女メリナ・メルクーリの経歴から。

１９２５年、アテネの名家､元国務大臣の娘として生まれる。
ハイスクール時代から演劇に興味を持ったが、１７歳の時に
富豪の息子と一度結婚している。
渡英してケンブリッジ大学で演劇を学んだ才媛である。

結婚生活にピリオドを打ってアテネに戻り、
本格的にギリシャ映画の女優を目指している。

その頃､ハリウッドの赤狩りに引っかかり追放された監督、
ジュール・ダッシンと知り合う。

彼がちょうど≪宿命≫という映画を撮っていて、
端役で出してもらったのが
きっかけでダッシンと同棲。

そして彼女を主演にして作った作品が≪日曜はダメよ≫である。

メリナはこの作品でカンヌ映画祭の主演女優賞を獲得している。

これで彼女は国際的に名を
知られるようになった。
１９６６年にダッシンと正式に結婚している。

もっと一般に彼女の名が世界的に知られるようになったのは
１９７０年にギリシャの軍事政権に反対して国を追放され、
１９７４年に政権の崩壊によってアテネに戻ることが出来た・
そのことを発端として、
後に彼女がギリシャの文化大臣にまでなったことである。

大作りな顔の造作、決して美人とは思えないが、
イタリアのソフィア・ローレンとも共通する女傑というか
明るい、太陽のような魅力がある。

そして醸し出される知性という魅力であろう。

顔から受ける印象より、意外にも、
胸は豊かだが、スレンダーな人である。

≪日曜はダメよ≫・・・・ストーリーは

≪マイ・フェア・レディ≫版であるからして
そんなストーリーである。

ギリシャの港町ピレウス。。
イルマ（メリナ・メルクーリ）はここで娼婦をしている・
ここにはギリシャ人のほかにもイタリア人やフランス人などが
漁師などの出稼ぎに来ている男たちでいっぱいである。

イルマは.彼らたちのマドンナでみんなが集まる酒場でも
人気である。

彼女の言うこと､話すことには
みんな耳を傾け、安らぐのである。

娼婦といっても６ケ国語を操り、休日にはギリシャ悲劇を
観劇に行くという高尚な趣味も持っている。

だが、この悲劇も彼女の勝手な解釈で
みんなに話して聞かせる時には
いつもハッピーエンドの物語となり
ラストはどれも
　　みんなで海辺に行って楽しんだのでした。。。。
　　　　という結末になってしまう。

娼婦ということを除けば
まるで、メリナその人がモデルのようである。

そんな酒場にあるひとりのアメリカ人がやってきた。

ホーマー（ジュール・ダッシンが監督兼主役）という
哲学を研究している物書きだ。

彼はイルマの中に
ギリシャの真実があるとみて、彼女を研究した。

そして彼女は娼婦などをしているような人物ではないと、
彼女を上等な人間に教育しようと動き始めるのであった・

酒場では飲み、歌い、
みんな一日の終わりをここで楽しく過ごす。

男たちの中にいつも女はイルマだけである。

彼女は娼婦という仕事に不満もない。

今夜来るその人を心から愛し、夢では明日の訪問者を考える・・・という歌を
口ずさむ。

ピレウスの港町を心から愛している。

ホーマーは最初、この町の習慣に慣れなくて
男たちと喧嘩もしたが、
次第に打ち解け独特のダンスも踊れるようになった。

まあ､
これに他の娼婦達の借りているアパートの家賃を巡っての
てんやわんやあり。

それが絡んでの誤解や、問題が生じての
ラブ.コメディといったところ。

イルマは歴史にも強く、
それをホーマーの哲学論と交わっての大喧嘩と
ギリシャ女のたくましさを楽しく描いている。

イルマ曰く。"私の友はアリストテレスよ！”・・・・

イタリア人もびっくりのバイタリティです。

娼婦達を引き連れ家賃値下げの交渉に成功したイルマは
ヒーローとなった。

酒場では
ブズーキを奏でるタキが
むくれていて音楽無しでは踊れない。

イルマは彼をやさしく説得し、音楽は始まる。

ホーマーもやっと、仲間の踊りに加わった。

そしてイルマに愛を告白したがとき遅し、
イタリア人にくどかれイルマはＯ.Ｋした後だった。

イルマに高等教育しようとしたことは余計なことだったのだ。

そのことを悟ったホーマーだった。

アメリカへ旅立つホーマーをみんなは小船に乗って､漂い、
別れを告げるのだった・・・

恋愛まっさかりのメリナとダッシンは
乗りに乗って演じています。

ダッシン監督ハヒッチコックの下で仕事をしたこともある人で
なでしこで紹介しました１９４８年の≪裸の町≫という
捜査モノの名作を残しています。
この≪裸の町≫は黒沢明の≪野良犬≫の発想に
強い影響を与えたといわれている。

タイトルバックの画面で
ハイヒールを履いた格好の良い女の足が
コンクリートの道路を闊歩します。
まるで靴の音が聞こえるかのように・・・・

この頃の映画の主題曲は
本当に素敵で公開される作品ごとにヒットしましたね。

楽しい映画です。
民族音楽もこういう風な使い方でとってもポピュラーになり、
作品を盛り上げる。

一度ご覧になってください。

１９６０年度作品　　ギリシャ

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