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2012/10/29
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カテゴリ: エッセイ
秋(44)


  • 秋(00).JPG



 自宅の近所の散歩道である。朝日が林に射しこんんで清々しい光景を見せてくれている。最近はウォ―キングを止めてしまったので薄暗い夜明け前の雰囲気は書斎の窓からしか観ないが、ガラス戸を半分開けて雨戸を開けると朝の餌を食べ終えたココが脱兎の如く庭へ飛び出す。五時過ぎでは未だこんなに暗いのに何処へ行くのだろうかと想うが、何時もの定位置(ガレージの塀の上)へでも行くのだろう。其処から通りを眺めるのがココの一日の始まりなのである。ボクの部屋でボクの起床に合わせて置き、階下で餌を貰い、食べ終えると外へ出る。それだけの事ながら今日も変わらぬ一日が始まった事を見せてくれるのだ。最近では20mほど離れた場所の空き地(この辺りでは唯一残っていた宅地)で建築行為が始まったのでその光景を眺めているのかも知れない。尤も、工事は8時半頃からしか始まらない。寒い中、身体を丸めてジッと眺めながら待っているのだろう。今日も良い天気になりそうだ。朝日が射しこんで来るまで辛抱強く待つ猫の習性には驚くばかりだ。




小説「猫と女と」(20)




Mni1ni2Mni3Mni4Mni5




 女達が白いバスローブを着て頭にバスタオルを巻いて出て来た。彼女等にすれば砕けた半裸に近い姿を私に観られても家族同然の気持ちで恥ずかしくもなく平気なのだ。私にしても観慣れた光景ながら母と娘とが同じバスローブ姿で同時に居るのは初めてだった。「貴方もお湯に入れば?サッパリして気持ち良いわヨ」女は上気した顔で勧めた。「いや、止しておくヨ。・・・しかし、二人並んで同じ格好をしていると親子には観えないな」「フフフ、私が若く観えるって事?舞子ももう立派な大人だし姉妹の様に観えるのネ。あら、美味しそうに飲んでいるわネ、私にも頂戴な」女は私の缶ビールを取って椅子に腰掛けて一口飲んだ。「あー、美味しい!湯あがりに冷えたビールは最高。男の人が美味しそうに飲むのが分かるワ」「私も欲しい!」そう言って舞子も女の手から取ってゴクリと飲んだ。




 「二人とも、まるで親父スタイルだな。レモンスカッシュなら絵に成る処だけど・・・」「あら、親父スタイルで悪かったわネ」女が言うと舞子も笑った。「ところで、出産予定日は?ボクも心積もりをしておかないと・・・」「来年の春、三月の末か四月の始めヨ」舞子が言うと女は真面目な顔で「早く春になって欲しいワ」と呟いた。それは切実に孫を欲している保護者の声だった。私は納得して頷くと、ふと確かめてみたくなって女に訊いた。「ところで最近、韓国ドラマに凝っているそうだネ?」「そう、ビデオで沢山観ているわヨ、どうして?」「面白い?」「ええ、面白いわヨ」「ボクは、余り観ないから分からないけど、好きに成れない」「あら、どうして?」「韓国って、何を考えているか分からない国だから」「ふーん、例えば?」女は怪訝な顔をして訊き返した。




 「北にやられっ放しのくせに同胞という名の元に曖昧な態度を取っているだろ?戦争状態の相手だヨ?何が融和政策なんだ」「政治問題はよく分からないけど、同じ民族同士でしょ?仲良くしなくちゃ」「理屈はそうだけど、社会体制が全く違うじゃ無いか。それでは国民も考え方が違って当然だ」「じゃ、北は良くって、南が悪いって事?」「いやいや、北がやっている事は目茶苦茶で論外だけど、南も主張がコロコロ変わるから何を考えているか分からないって事さ」「それで嫌いな訳?」「そう。竹島問題もある」「あれは政治的に国民を誘導しているだけの事で、北と中国への対策として日本を利用しているだけの事ヨ」「多分そうだろうけど、日本の在日や二世や日本国籍を取っている朝鮮人までが日本を批判的に言うのが好かない」私は女の表情が強張るのを見逃さなかった。




 「政治の話は止しましょ。韓国ドラと関係が無い事じゃ無い?」「ああ、そうだな。しかし韓国人は情念に生き過ぎる。もっと冷静に成れないものかな、客観的にと言うか・・・」「客観的に観て、むしろ韓国ドラマは軽くて肩が凝らないから良いのヨ。それに美男美女が出ているワ」「確かに日本のドラマは暗い。ボクも暗いのは嫌いだけど、好きな理由はそれだけの事?」「どういう意味?」「例えば、デザイン事務所の所長なんか、君の元夫だから言わなかったけど、日本人離れした考え方というか大陸的だから戸惑う事がある」「あの人は変わっているのヨ。もう私には関係が無い人ヨ」「それなら言うけど、韓国人かなと想ったヨ」「あら、知らなかったの?あの人、在日二世ヨ」「あッ!道理で・・・」「だからどうなのヨ?人種差別するの?」私は予想が当たって戸惑った。




 「いや、言い方が悪かった、謝るヨ。ただー寸意見の衝突があって殴ってやろうかなと想った事が何度かあったからネ」「仕事の事で?あの人は、仕事となると誰彼と見境なく自分の我を通すから、よく誤解や対立があるのヨ。でも人間的には良い人ヨ。頭の回転も速いから直ぐに打ち解けるけど」女は元夫の肩を持った。舞子の父親だけに離婚したとはいえ悪くも言えないのだろう。「彼との出逢いは?是非知りたいものだ」私は心にわだかまって居る疑問をぶつけてみた。どうせ舞子に韓国人の血が流れていようが、もう受け入れる事に決めた以上、そのわだかまりを払拭したかった。しかし、女が覚悟を決めた顔で話した内容は有触れたものだった。大阪鶴橋の旅館の娘だった女に近所でデザイン事務所を開く男がデイトに誘ったのがきっかけだった。彼が在日二世であった事は舞子を身籠ってから知ったという。




 「在日二世だと分かって、どう思った?」「別に・・・、鶴橋にはそういう人が多いから何とも思わなかったワ」「へえ、そういうものかネ。ボクは京都だから差別意識の中で育った様なものだけに違和感を感じる。しかし大学の同級生に韓国人の友達が居て、その頃は何とも感じなかった。結婚してから見方が変わったらしい」「何故?」「さあ、よく分からないが、建築業界で影響を受けた様だ。連中は業界の底辺に居るからだろうか」「まあ、大変な世界ネ」「特に鉄工業者に多いから設計者は彼等を軽く見下している」「じゃあ、貴方も?」「ボクは意識して居ないが相手がそういう目で観て居る。ボクの表情に出ているのかも知れない」「自分では意識していなくても相手は敏感に感じるのよネ」言われてみて私は鉄工業者の社長から訳の分からない中傷を受けたのを想い出していた。(つづく)













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最終更新日  2013/01/07 12:12:42 PM
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