2016年12月13日
朝起きられないのは遺伝のせい? 朝型・夜型を決めるものとは
「朝活」という言葉が定着して久しい。朝型の人は「できる人」。努力しているイメージが強いが、もともと夜型の人は、努力だけで朝型人間に変われるわけではないらしい。
朝型のDNAには共通点がある NHK放送研究所がまとめた「2015年国民生活時間調査」によると、日本人の生活が朝型にシフトしつつあるという。朝、寝ている人が半数を切る時間は、平日は午前6時15分、土曜は6時半、日曜は7時。とくに平日は5時〜7時15分に寝ている人が前回調査時(2010年)より減り、早起きの人が増えている。
しかし、本来は夜型の人が朝型の生活に変えると、少なからず無理が生じる。一般に朝型・夜型と言われるが、専門家はこれを「クロノタイプ」と呼んでいる。クロノタイプは体内時計(概日リズム)の影響を強く受けており、体温やメラトニン(睡眠に関するホルモン)といった、体内時計を反映する体の機能に違いをもたらす。
過去の研究から、クロノタイプの決定には遺伝的影響が約50%、加齢の影響が数%程度関わっていることがわかっている。一方で、環境的な影響はごく小さいと言われている。こうした説を裏付ける研究論文が最近、米遺伝子検査ベンチャー23アンド・ミー社によって発表された。同社の研究チームは8万9000人以上の遺伝子情報を解析。朝型の人々には遺伝子の中の15カ所に共通した特徴があることを突き止めた。うち7つは概日リズムに影響を与える遺伝子に関するものであることが分かっている。
今回の研究では、父親が朝型の場合、娘が朝型の確率は2.4倍、息子は1.9倍高いことも分かった。また、56%の人が「自分は夜型だ」と思っていることや、女性と60歳以上の人に朝型が多いことなども明らかになった。論文は2016年2月2日付の『Nature Communications』誌に掲載されている。
中高生の夜更かしは大目に見て クロノタイプは人によって異なるが、一人の人のライフステージでも変化する。よく知られているように、加齢に伴い朝型になる傾向がある。また、思春期は体内時計が夜型化することがわかっている。成長による体の変化が大きい思春期には、睡眠に関わるメラトニンというホルモンの分泌が遅れ、小学生のころより睡眠と覚醒のサイクルが最大で2時間も遅くなるという。
当然、就寝時間が遅くなるが、米国では始業時間が8時前の公立校が多く、中高生の睡眠不足が指摘されていた。このため米国小児科学会では2014年8月、青少年が十分な睡眠時間を確保できるよう、中学校と高校の始業時間を午前8時半以降とすることを求める声明を発表した。
国立精神・神経医療研究センター部長の三島和夫医師によると、夜型化のピークは男性が21歳、女性が19歳で、その後は徐々に元に戻るという(産経ニュース2015年11月4日付)。本来は朝型なのに、中学高校時代の「朝起きられない」という経験から「自分は夜型」と思い込み、大人になっても宵っ張りの生活を続ける人も多いのではなかろうか。
先述の23アンド・ミーの研究で、もうひとつ興味深い報告がある。朝型の人は夜型の人とパートナーになる確率が高いというのだ。夫婦の擦れ違いの原因は、もしかしたら、そこにあるのかもしれない。