2013年04月27日
日曜京都〜第147回天皇賞・春(G?T)
今からもう16年も昔になるが、今回出走するムスカテールの父マヤノトップガンが、淀の芝3200mを「3分14秒4」というものすごいレコード(当時)を叩きだした。
もしかしたら、ライスシャワーがメジロマックイーンを破って記録した「3分17秒1」というケタ違いのレコードは、もう今後更新する者が現れないのではないかと考えられていた矢先の、サクラローレル、マーベラスサンデーとの「3強」の争いで盛り上がった天皇賞・春だった。
その後、マヤノトップガンの当時とは比較にならないほど馬場の高速化が進み、マヤノトップガンから9年後、つまり、今から7年前の天皇賞・春で、ディープインパクトが3分13秒4という衝撃のレコードを更新し、これが現在も破られずに記録として残っている。
もちろんディープインパクトのレコードはあまりにもすごすぎるとは思うが、それにしてその後の6年のうち、良馬場で行われた天皇賞・春はメイショウサムソンが3分14秒1、マイネルキッツが同14秒7、そして昨年のビートブラックが3分13秒8と、ディープインパクト以降このレースで、実に4頭も3分15秒を切る勝ち時計をマークしているのである。
天皇賞・春の本来のイメージからすると、「スピードもスタミナも優れていなければならないが、それでもスタミナがより優れていることが望まれるレース」というイメージがあったはずだが、近年の天皇賞・春は、完全に「スピード重視」へと変化してきているのである。
スタミナや成長力に優れた種牡馬がどんどん淘汰され、スピードと早い仕上がりが特徴のアメリカ式種牡馬が大流入した時代を経て、現在はその子孫が日本の競馬のオープン馬を軒並み占めているわけだから、長距離の天皇賞を、スタミナのレースではなくスピードのレースへと変えてしまえば、確かにそれは合理的であるようにも感じられる。
しかし実際のところ、「さすがにやり過ぎだろう・・・」という声も各方面から聞こえてきた昨年のレースでは、ざっと数えるだけでも5頭も天皇賞直後に故障や不安を発症するという、軽く「悲劇」と言えるような競馬になってしまった。
これは、スタミナの裏付けがないのにスピードに任せて長距離を走ってしまったことの代償であり、日本競馬の方向性の矛盾を導き出した結果であったと言えるかもしれない。
いや、別にこんなところで日本の競馬の方向性を論じたところでどうにかなるものではないが、しかしここ数年の天皇賞・春の結果を見てみると、どこかしら、何かしらに破綻をきたした結果になっているというのがわかり、だからこそ、そういう流れが、ゴールドシップが出るからと言ってそう簡単に断ち切られるものではないのではないか、というのがひとつ。
それから、ディープインパクトのときの馬場は、その後の数年以上に非常に高速馬場であり、だからこそ、どうしても止まらないインを通りたかった武豊騎手は、これまでにない「早め先頭、押し切り」の競馬を選択した天皇賞だった気がするし、たとえば昨年のビートブラックにしても、オルフェーヴルお得意のまくりが不発に終わったために終始内ピッタリを回ってくることができた結果の圧勝だったように思う。
もちろんそれは2着のトーセンジョーダンにも言えるだろうし、もしもオルフェーヴルがメジロマックイーンのように3角手前、あるいは2回目のライスシャワー、さらにはディープインパクトのように3角過ぎで先頭に立つような強引な競馬に成功していたなら、やはりオルフェーヴルもディープインパクトのレコードに迫る時計で快走していた可能性が強い。
で、圧倒的人気が予想されるゴールドシップはどうか——ここが最大のポイントである。
スパートの位置はマックイーンらと同じかもっと早いタイミング、おそらく3角のはるか手前ということになるだろう。
これに呼応しようという馬はいない。他の馬にとって、それは勝負、あるいは着を捨てることを意味する。
しかし、だからと言って前がまったく止まらない馬場でいつものように一番後ろから動いて行っても、ゴールドシップはよくて「4角先頭」なのである。それはつまり、「新生天皇賞のウィニングロード」を通ることができないことを暗に示している。
もちろんゴールドシップという馬はG?Tを3つも勝ちながらその全貌をまだ明らかにしていないし、何とか負けてもらおうという私の姑息な考えなど嘲笑うように、これまでとは比べ物にならない「怪物の本領」を見せてほしい気持ちもあるが、しかし現時点ではまだ、歴代の名馬に並ぶところまでは行っていないのも事実。
それはメジロマックイーンしかり、ディープインパクトしかり、オルフェーヴルもまたしかりであると私は思う。
ゴールドシップにとって、位置取り的に明らかに不利な馬場になる天皇賞は、そうした歴代の名馬に並ぶチャンスを与えられ、それにチャレンジする立場であると思う。
そのゴールドシップを負かすことができる馬というと、ほとんど厳しい選択になってしまうが、今回私はカポーティスターにそのわずかな可能性を託したいと考えている。
枠順としてはそれほど恵まれてはいないが、しかし外回りの京都で、各陣営の意識はみな「前」にあるから、位置取りはかなり高い可能性で「好位のイン」という、天皇賞を勝つためにはどうしても必要な位置をとれるはず。
意識はみな前にあって、しかもいつものようにゴールドシップが大外を回してくるとすると、最後の最後まで最内で足をためることができるカポーティスターに、「脚力比べ」にならない可能性がわずかに残るのではないか、それはつまり、ゴールドシップに先着できる可能性がわずかに残るのではないか、という読みにする。
相手はハナ差2着を予想するゴールドシップ。
本音を言えば、「印象以上に全然強かった」ということを証明してもらいたい気持ちも強いのだが。
そして、正直他で「単」を考えることはできないので、ここからは押さえということになる。
よく言われるように「ゴールドシップが出るレースは非常にハイレベルのレースになる」のはどうやら事実。
実際、ゴールドシップとともに走ったトップランクの馬たちが次々に足元を傷めてしまっているのは、もしかしたら偶然ではないのかもしれない。
とすると、厳しい競馬になって一番持ち味を発揮するのは、実はトウカイトリックとマイネルキッツ、ジャガーメイルの高齢馬3頭である気がする。
そして、だいぶ古い話になるが、オルフェーヴルを破っているレッドデイヴィスが前走はタフな競馬を制しているのが少し印象に残っている。
そして、一番初めにご紹介したマヤノトップガンの良さを受け継いでいそうなムスカテールも押さえたい。
フェノーメノは本質距離が延びないほうがよいと考えている。
前走は確かに有馬記念と遜色ない時計で「有馬記念コース」を勝ったし、能力的にゴールドシップに一番近いとは思うが、この距離では、同斤で2着だったカポーティスターのほうが上なのではないかという読みにしているため、今回は軽視する。
さあ、いよいよ楽しみな大一番である!
今年は全馬無事に!
◎ カポーティスター
〇 ゴールドシップ
△ ムスカテール
△ トウカイトリック
△ ジャガーメイル
△ マイネルキッツ
△ レッドデイヴィス