2012年11月21日
第いちヤ!
こんな夢を見た。
友だちが、ぼくを招待してくれた。
ぼくは招待を受諾し、ひとりで友だちの家に行った。
友だちの家は、このあたりではちょっと見ないような立派な洋館だった。
女中に案内され「広間」とやらへ向かう長い廊下を歩くうちに、ぼくの友だちがいつの間にか姿をくらましていたことに気づく。
どこに消えたのだろう・・・
こちらでございます、と女中がうやうやしくぼくに道を譲った。
「広間」にはすでに大勢の来賓がいて、スーツやドレスというほどのものではないにしろ、ぼくのいでたちとは埋めがたい差を痛感せざるを得ないような服装だった。
ちなみにぼくは着古したブルーのジャンバーと裾が擦り切れた半ズボン、そして全然洗っていないズックといういでたちだった。
ジャンバーの肩に仮面ライダーのワッペンがついているのは自慢だったけれど、半ズボンとズックには残念ながら自慢できる要素は何ひとつなかった。
せめて通学帽をかぶってくればちょっとはサマになったのではないかと一瞬思ったけれど、すぐにそんなはずはないと思いなおした。
テーブルにはおいしそうなジュースやお菓子やフルーツがあり、一見してどれも自由に手にとって食べたり飲んだりしていいのだと理解できたが、ぼくは今まで食べたことがないこんなにおいしそうな食べ物や飲み物を口にしたら、この場にそぐわないようなひどく下品な食べ方でむしゃむしゃとがっついてしまうのではないかとおそれをなした。
何人かの子どもや大人たちが、おいしそうに、しかしぼくなんかにはとてもできそうもないくらい上品に、絶対においしいに違いないお菓子を食べていた。
すると、どこからか少女がやってきて、ぼくに言った。
Nさんも食べなさいよ、一緒に食べましょう。
はじめはどこの女の子だろうと思う程度だったけれど、彼女がぼくの名前を知っていてくれたことがぼくには妙にうれしくて、しかも今まで一度もたべたことがないようなすばらしくおいしいに違いないお菓子を指さして、一緒に食べようと言ってくれたことで、ぼくは一気にこの女の子のことが好きになってしまったのだ。
このお菓子、おいしいわ。
Nさんもたくさん食べてね。
あなた、おうちはどこなの?何年生?
兄弟はいるの?お父さんは何のお仕事をしているの?
ぼくはとても幸せだった。
理由もなくこの女の子のことを好きになってしまった気がしていたけれど、ちゃんと見てみると、すばらしくキレイでかわいい女の子だったのだ。
ぼくは姿を消した友だちのことを忘れて、この幸せがずっと続いたらいいのにと思った。
でも、幸せなんてそう長く続くものではない。
少年のぼくがどうしてそんなことを知っているのかはわからないけれど、とにかく、この幸せは本当の幸せではないのだと、少年のぼくにはわかっていた。
そしてぼくの場合、少年のころも今も、そういう悲しい予想だけは絶対に的中し、そしてその的中運が肝心な予想の的中運をいちじるしく削り取っているのだ。
あたし、これからTくんと踊るの。あたし、Tくんのことが大好きなのよ。
女の子はそう言ってうれしそうにぼくに向かって手を振り、ぼくをひとり置いて「広間」の中央に出ていった。
Tくんというのが誰のことなのか、はじめぼくにはよくわからなかったけれど、おそらくそれはぼくを招待したぼくのたったひとりの友だちのことに違いない。
すると、さっき姿を消したぼくのたったひとりの友だちであるT——おそらく彼がTだ——が、その女の子の肩を優しく、しかもすごく慣れた手つきで抱きかかえた。
いつの間にか「広間」の床がスケートリンクに変わっていて、ふたりはそこでアイスダンスを踊り始めた。
オリンピックや世界大会なんかで見せるわざとらしい笑顔ではなく、とてもお自然な、心から楽しそうな笑顔だった。
そして、見たこともないくらいステキなアイスダンスだった。
ところで、いつから下がスケートリンクに変わったのだろうと思い、足元を見ながら、そういえば、女の子はいつスケートの衣装に着替えたのだろうと思って再びふたりのアイスダンスに目を移すと、実はその女の子はしずかちゃんであり、そして一緒に踊っているぼくのただひとりの友達は、なんとスネ夫だったのである。
スネ夫がぼくの唯一の友だちであることが判明し、ぼくはとても寂しい気持ちになったけれど、しかしそれ以上にスネ夫に嫉妬していたことも事実である。
もしかしたらジャイアンやのび太やドラえもんも来ているのかもしれないと思って周りを見渡してみても、残念ながら知った顔はそこにはいなかった。
ドラえもんだけでもいてくれたらうれしかったのに・・・
ぼくはなんだかのび太になってしまったような気分だった。
そして視線を戻し、よく見てみると、そこには成長した「女」のしずかちゃんと、そして「男」はなぜかスネ夫ではなく、武幸四郎だったのである。
さすがにぼくもこれには驚いたけれど、それでも十分武幸四郎に嫉妬し、そして、夢の中にまで競馬関連の人間が出てくるなよと思った。
そして、ああ、これは夢なのだとはじめて認識し、ぼくはゆっくりと現実の世界に戻っていた。
友だちが、ぼくを招待してくれた。
ぼくは招待を受諾し、ひとりで友だちの家に行った。
友だちの家は、このあたりではちょっと見ないような立派な洋館だった。
女中に案内され「広間」とやらへ向かう長い廊下を歩くうちに、ぼくの友だちがいつの間にか姿をくらましていたことに気づく。
どこに消えたのだろう・・・
こちらでございます、と女中がうやうやしくぼくに道を譲った。
「広間」にはすでに大勢の来賓がいて、スーツやドレスというほどのものではないにしろ、ぼくのいでたちとは埋めがたい差を痛感せざるを得ないような服装だった。
ちなみにぼくは着古したブルーのジャンバーと裾が擦り切れた半ズボン、そして全然洗っていないズックといういでたちだった。
ジャンバーの肩に仮面ライダーのワッペンがついているのは自慢だったけれど、半ズボンとズックには残念ながら自慢できる要素は何ひとつなかった。
せめて通学帽をかぶってくればちょっとはサマになったのではないかと一瞬思ったけれど、すぐにそんなはずはないと思いなおした。
テーブルにはおいしそうなジュースやお菓子やフルーツがあり、一見してどれも自由に手にとって食べたり飲んだりしていいのだと理解できたが、ぼくは今まで食べたことがないこんなにおいしそうな食べ物や飲み物を口にしたら、この場にそぐわないようなひどく下品な食べ方でむしゃむしゃとがっついてしまうのではないかとおそれをなした。
何人かの子どもや大人たちが、おいしそうに、しかしぼくなんかにはとてもできそうもないくらい上品に、絶対においしいに違いないお菓子を食べていた。
すると、どこからか少女がやってきて、ぼくに言った。
Nさんも食べなさいよ、一緒に食べましょう。
はじめはどこの女の子だろうと思う程度だったけれど、彼女がぼくの名前を知っていてくれたことがぼくには妙にうれしくて、しかも今まで一度もたべたことがないようなすばらしくおいしいに違いないお菓子を指さして、一緒に食べようと言ってくれたことで、ぼくは一気にこの女の子のことが好きになってしまったのだ。
このお菓子、おいしいわ。
Nさんもたくさん食べてね。
あなた、おうちはどこなの?何年生?
兄弟はいるの?お父さんは何のお仕事をしているの?
ぼくはとても幸せだった。
理由もなくこの女の子のことを好きになってしまった気がしていたけれど、ちゃんと見てみると、すばらしくキレイでかわいい女の子だったのだ。
ぼくは姿を消した友だちのことを忘れて、この幸せがずっと続いたらいいのにと思った。
でも、幸せなんてそう長く続くものではない。
少年のぼくがどうしてそんなことを知っているのかはわからないけれど、とにかく、この幸せは本当の幸せではないのだと、少年のぼくにはわかっていた。
そしてぼくの場合、少年のころも今も、そういう悲しい予想だけは絶対に的中し、そしてその的中運が肝心な予想の的中運をいちじるしく削り取っているのだ。
あたし、これからTくんと踊るの。あたし、Tくんのことが大好きなのよ。
女の子はそう言ってうれしそうにぼくに向かって手を振り、ぼくをひとり置いて「広間」の中央に出ていった。
Tくんというのが誰のことなのか、はじめぼくにはよくわからなかったけれど、おそらくそれはぼくを招待したぼくのたったひとりの友だちのことに違いない。
すると、さっき姿を消したぼくのたったひとりの友だちであるT——おそらく彼がTだ——が、その女の子の肩を優しく、しかもすごく慣れた手つきで抱きかかえた。
いつの間にか「広間」の床がスケートリンクに変わっていて、ふたりはそこでアイスダンスを踊り始めた。
オリンピックや世界大会なんかで見せるわざとらしい笑顔ではなく、とてもお自然な、心から楽しそうな笑顔だった。
そして、見たこともないくらいステキなアイスダンスだった。
ところで、いつから下がスケートリンクに変わったのだろうと思い、足元を見ながら、そういえば、女の子はいつスケートの衣装に着替えたのだろうと思って再びふたりのアイスダンスに目を移すと、実はその女の子はしずかちゃんであり、そして一緒に踊っているぼくのただひとりの友達は、なんとスネ夫だったのである。
スネ夫がぼくの唯一の友だちであることが判明し、ぼくはとても寂しい気持ちになったけれど、しかしそれ以上にスネ夫に嫉妬していたことも事実である。
もしかしたらジャイアンやのび太やドラえもんも来ているのかもしれないと思って周りを見渡してみても、残念ながら知った顔はそこにはいなかった。
ドラえもんだけでもいてくれたらうれしかったのに・・・
ぼくはなんだかのび太になってしまったような気分だった。
そして視線を戻し、よく見てみると、そこには成長した「女」のしずかちゃんと、そして「男」はなぜかスネ夫ではなく、武幸四郎だったのである。
さすがにぼくもこれには驚いたけれど、それでも十分武幸四郎に嫉妬し、そして、夢の中にまで競馬関連の人間が出てくるなよと思った。
そして、ああ、これは夢なのだとはじめて認識し、ぼくはゆっくりと現実の世界に戻っていた。
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