6 節 コンクリートの工事現場内運搬並びに打込み及び締固め
6.6.1 工事現場内運搬
(1) 工事現場内の運搬には、コンクリートポンプを用いる方法が一般的であるが運搬距離が短い場合や時間当たりの運搬量が少ない場合にはバケット、シュート、手押し車等が用いられる。運搬機器は、運搬中におけるコンクリートの品質変化が少なく、打込み時点で所要の品質のコンクリートが得られることを基準に選定することが必要である。 各種運搬機器の概要を表 6.6.1に示す。
表6.6.1 コンクリートの運搬機器の概要(JASS 5より)
バケット、手押し車等及びシュートを用いる場合には、次のような点についての配慮が必要である。
(i) バケッ トを用いる場合
?@ 下部からコンクリートを排出する形式のバケットを用いる場合は、なるべく排出口が底の中央部のあるものとする。
?A コンクリートをあけ移しする形式のバケットを用い、コンクリートを均質、かつ、 容易に排出できるものとする 。
(ii) 手押し車等を用いる場合
?@ 運搬中にコンクリートの材料が分離したり、受け桝から漏出することなどのないようにする。
?A 運搬中に分離を認めた場合は、練り直し、コンクリートが均質になるようにする。
(iii) シュートを用いる場合
?@ シュートは、コンクリートの分離や漏れを生じることなく、滑らかに流れる構造のものとする。
?A シュートは、原則として、縦形フレキシブルシュートとする。 ただし、やむを得ない場合は、?@を満たすことを確認して、傾斜形シュートを用いることができる。
?B 高所からコンクリートを流下させる場合は、縦形フレキシブルシュートを用いることとし、その投入口と排出口との水平方向の距離は、垂直方向の高さの1/2 以下とする。
?C 領斜形シュートを使用する場合は、次による。
1) 傾斜は、4/10 〜 7/10 とする。
2) シュートの排出口には、長さ 600mm以上の漏斗管を付ける。
(2) 運搬用機器は、事前に清掃しておき、付着しているコンクリート塊や油等がコンクリートに混入しないようにする。 また動力利用の機械は、途中で故障すると計画どおりの施工ができなくなるので、十分に整備・点検をしておく必要がある。
(b) コンクリートは、所要のスランプ、強度、耐久性が得られるように材料の調合割合を定めている。スランプが少し小さいからといって工事現場内の運搬時に水を加えると、水セメント比が大きくなって所要の強度や耐久性が得られなくなる。 したがって、運搬及び圧送の際には絶対に水を加えてはならない。どうしても圧送が困難な場合には、流動化剤を加えスランプを調整する方法等を検討する。
(c) コンクリー トポンプによる圧送を採用する場合には、工事現場の立地条件、コンクリートの種類、1 日の打込み量等を考慮し, 適切なポンプの機種及び台数を選定する。また、ブーム付きポンプ車以外の場合のフレキシプルホースの長さ(100A 管以下で は 6m 以下、100A管を超えるものは 5m 以下)のほか、次に示す点に対する配慮が必要である。
(1) 輸送管は、圧送中に前後左右に動くので、鉄筋や型枠に輸送管がじかに接していると配筋の乱れ、型枠の変形等の原因となる。したがって、輸送管の保持については、「標仕」6.6.1 (c)(1) を厳守させることが大切である。
(2) 輸送管の径が大きいほど圧力損失が小さくなり、圧送性が向上する。したがって、輸送管の径が大きいほど圧送可能な距離や高さが大きくなるとともに時間当たりの圧送量も増える。 輸送管の径の選定に当たって考慮すべき事項については「標仕」 6.6. l (c)(2)に示されている 。
(3) 「標仕」では コンクリートの圧送開始前にモルタルを圧送することにしている。 これを行わずに圧送すると、輸送管内にモルタル分が付着し、排出されたコンクリートがモルタル分の少ないコンクリートになり強度が低下する。
なお、この時使用するモルタルは、あとから打ち込むコンクリートの品質に悪影響を与えないように富調合のものとすることが必要である。
圧送されたモルタルは、平成 19年版「標仕」では「良質な部分は少量ずつ分散すれば型枠内に打ち込むことができる」としていたが「良質な部分」や「少量ずつ」ということの判断基準が難しいことや、そもそもコンクリートは JIS A 5308 ( レディーミクストコンクリート)によることとしているため、平成22年版「標仕」では、原則として型枠内には打ち込まないことにされた。 環境配慮の観点からは廃棄処分とするモルタル量は少ないことが望ましく、先送りモルタルを必要最小限にするような計画を立てることが大切である。
(4) 圧送されたコンクリートで圧送途中に著しく変質した部分及び圧送中に閉塞したコンクリートは 施工上又は品質上の問題があるので廃棄する。
6.6.2 コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間の限度
(a) コンクリートは、練混ぜ終了後,時間の経過に伴ってスランプや空気量等のフレッシュ性状が変化する。レディーミクストコンクリート工場では、工事現場到着時に所定の品質を保証しているが、経過時間が長くなるとスランプの減少が大きくなり、コールドジョイント発生のおそれが高くなる。したがって「標仕」では練混ぜ開始から打込み終了までの時間の限度を外気温が 25℃以下の場合120分、外気温が 25℃を超える場合 90分以内と定めている。 JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)では、レディーミクストコンクリートの工事現場までの運搬時間の限度を1.5 時間としているので、到着したコンクリートをできるだけ早く打込みができるように準備をしておくとともに打込み速度に合わせてコンクリートが搬入されるように配車計画を立て、現場での待ち時間をできるだけ少なくする。 また、コンクリートポンプで圧送する場合には、コールドジョイント防止の観点から長時間中断しないで圧送することが大切である。
(b) 練混ぜから打込み終了までの時間の限度は、コールドジョイントや豆板等の施工欠陥を防止する目的で定めたものである。したがって、コンクリートの練上がり温度を下げたり、凝結を遅らせるなどの対策を取れば時間の限度を超えても欠陥を生じないで施工することは可能である。工場から工事現場までの運搬時間が長い場合等でこのような特別の対策を講じて練混ぜから打込み終了までの時間の限度を変更する場合には、上述のような品質確保の方法が行われることを確認したのちに承諾する。
6.6.3 打 継 ぎ
(a) 打継ぎはできるだけ少なくし、応力の小さいところで打ち継ぐことが基本である。梁及びスラブに鉛直打継ぎ部を設けなければならない場合には、せん断応力の小さいスパン中央付近又は曲げ応力の小さいスパンの1/3〜1/4 のところがよい(図6.6.1 参照)。 梁の付け根で打継ぎをするのは避けなければならない。
なお、柱及び壁の場合の水平打継ぎ部は、スラブ、壁梁又は基礎の上端に設ける 。
図 6.6.1 鉛直打継ぎ位置
(b) 打継ぎ部の仕切り面の施工に当たっては次の事項に留意する。
(1) せき板を密に隙間なく組み立て、モルタルの流出を防ぐとともにコンクリート打込み後せき板を取り外しやすいように仕切る。
なお.仕切り面は必要に応じて目荒らしを行ったのち、清掃し、コンクリート打込み前に水湿しを行う。
(2) 梁や壁には、鉄筋を骨としてメタルラスや板を張って仕切るのがよい。 打継ぎ位置付近に出入口等の開口部がある場合にはそこで仕切るとよい。
(3) 梁・壁で、割竹・しの竹類を差し込んで仕切る方法は、密に隙間なく差し込んでも下部からモルタルが流出することが多く、あまりよくない。また、コンクリート打込み後、時期を見て割竹等を動かしてコンクリートとの付着をなくしておかないと抜けなくなる。
(4) スラブの仕切り面は、上端筋が下がりがちなので十分注意する。
(5) 打継ぎ面が外部に接する箇所には、打継ぎ部の防水処理を行うため目地を設ける。
(c) 打継ぎ面に水がたまっていると、その部分に打ち込んだコンクリートの水セメント比が大きくなり、所要の品質が得られないことがあるので、水がたまらないようにする。また、水がたまってしまった場合には、コンクリート打込み前に取り除くことが必要である。
(d) 打継ぎ面は、 レイタンスがたまったり、ぜい弱なコンクリートになりやすい。 レイタンスやぜい弱なコンクリートの上に新しいコンクリートを打ち込んでも付着が十分得られないので、高圧水洗等によりこのような部分を取り除き、健全なコンクリートを露出させてから打ち継ぐことが必要である。
6.6.4 打 込 み
(a) 多量の雨が降っている時にコンクリートを打ち込むと、雨水がコンクリート中に入って水セメント比が大きくなり、所要の強度が得られなくなる。また、コンクリー卜温度が2℃未満となる低温時にはセメントの水和反応が遅れ、初期凍害を受けるおそれがある。 このような場合には、コンクリート中に雨水が入らないようにしたり、コンクリート温度を高めるとともにその後の養生方法を適切に定めるなどの対策を講じたうえで打ち込むことが必要である。このような対策を取らないで打ち込むと所要の品質を確保することが困難になる。
(b) 打込み開始前に行う型枠内部の清掃では、電気掃除機等により雑物を取り除く。水洗いだけでは, 柱下部等に雑物が集中することになるので、柱下部等に掃除口を設けて内部に落ち込んだ雑物を取り除く。
せき板が乾燥している場合には、打込みに先立って散水するが,寒冷時等で水が凍結するおそれのある場合には散水を行ってはならない。
(c) コンクリートの打込みは、打ち込む場所へ、コンクリートが分離しないように直接静かに入れて、十分に締め固め、そのコンクリートが落ち着いてから次のコンクリートを打ち込むことが大切である。また、壁に打ち込んだコンクリートをバイブレーターを使用して柱を通過させて横流しをすると、柱の鉄筋によって粗骨材の移動が阻害され、モルタルの多いコンクリートとなるのでこのようなことは避けなければならない。
打込みの基本的事項を次に示す。
(1) 低い位置から落とす。
(2) 型枠内部で横流しすることを避ける。
(3) 全体が均ーな高さを保つように水平に打ち込み、十分締め固めてから次の層を打ち込む。
(4) 打ち込む位置の近くに落とし込む。 1 箇所に多量に打ち込み、横に流してはならない。
(d) コンクリートの打込み区画は、工程上無理のない区画とするとともに、施工欠陥を生じやすい部位については特に注意して施工することが必要である。
(1) パラペットの立上り部分は漏水上の欠陥を生じやすく、また、ひさし・バルコニー等は片持梁となりこれを支持する構造体部分との接合部に応力が集中する。このような部分は、構造体と同一の打込み区画とすることが必要である。
(2) 1 回に打ち込むように計画した区画内では、コールドジョイント等の施工欠陥を防止するために 連続して打ち込み一体となるようにすることが大切である。
(e) コンクリートの打込み速度は、打込み場所の施工条件によって大きく異なるが、 十分締固めができる範囲とすることが大切である。スランプ 18 cm程度のコンクリートをコンクリートポンプ工法で打ち込む場合の目安は20〜30 m 3 /h 程度である。
( f ) シュートやホース等の運搬用具から打ち込む位置までの自由落下高さが大きすぎたり、水平流動距離が大きいとコンクリートに材料分離を生じる。したがって、縦形シュートを用いたり、横流しをしないようにしてコンクリートの分離を防止する。
コンクリートを 1箇所にまとめて打ち込み、その後バイブレーター等で横流しをすると材料分離を生じるおそれがあるので避けなければならない。コンクリートは、打ち込む場所にできるだけ近い位置に打ち込むことが原則である
(g ) 部材ごとの打込みの進め方及び打上りの欠陥を次に示す。
(1) 基礎の打込み
( i ) 捨コンクリート等の面に、水、土、木片その他支障となる雑物のないように掃除する。特に水の排除に注意する。
( ii ) 連続基礎のとき、翌日打ち込む部分との打継ぎ箇所は確実に打ち止める。流し放しにしてはならない。
(iii ) 長い距離を斜めシュートで打ち込むことはなるべく避けるべきであり、やむを得ない場合は、U字形断面のものを使用し、中間で一度ホッパーに受けて次のシュートに流す。 また、末端部には縦形シュートを使用し、コンクリートを鉛直に落とす ( 図 6.6.2 参照)
図 6.6.2 基礎の打込み
(2) 柱の打込み
( i ) 柱の打込みは、コンクリートを一度スラブ又は梁で受けたのち柱各面から打ち込む。
梁筋と柱筋の交差している箇所から打ち込むと、特に分離しやすい(図6.6.3参照)。
( ii ) 吐出する向こう側のせき板にコンクリートが直接当たらないように、小形受け桝等で受けてから鉛直に落とす。
( ?B )高い柱(4.5〜 5m 以上)に打ち込む場合は、次のようにするのがよい。
?@ 最上部から縦形シュートが使用できるときはこれを利用して、常に打上げ面近くでコンクリートを放出する。
?A 縦形シュ ートが使用できない時は、柱中段のせき板に打込み口を設け、外部にポケッ ト状のたまり場をつくり、コンクリートがゆったり落ちていくようにする(図 6.6.4 参照)。
図 6.6.3 柱の打込み(各面から打ち込む)
図 6.6.4 柱の打込み(高い柱を打つ場合)
(3) 壁の打込み
( i ) 打込み口は、原則として 1 〜 2m 間隔で各位置から平均に落し込むようにする。
(ii ) 少ない打込み口から落として、型枠内に大山や大傾斜をつくり,横流しで平らにしたり、斜めのまま打ち込むと、分離や豆板ができやすい。
(iii) 柱脇の開口部下部等にコンクリートを充填させるために、柱に打ち込まれているコンクリートを引き出してはならない(図6.6.5 参照)。
図6.6.5 壁の打込み(柱脇に開口 )
(4) 梁の打込み
(i) 梁の全高を同時に両端から中央に向かって打ち込む。
(ii) せいが高い梁は、スラブと一緒に打ち込まず、梁だけ先に打ち込む 。
(iii) 柱、壁等を、梁下で一度止めずに上部まで連続して打ち込むと、柱、壁等のコンクリートの沈降により、梁との境目にひび割れが発生するおそれがあるので、壁及び柱のコンクリートの沈みが落ち着いたのちに梁を打ち込む 。
(5) スラブの打込み
(i) スラブは、梁のコンクリートが沈降してから打ち込まないと(4)(iii)と同様に、梁との境目にひび割れが発生するおそれがあるので、梁のコンクリートが落ち着いたのちにスラブを打ち込む。
(ii) 打込みは、遠方から手前に打ち続けるように行う(図 6.6.6 及び7参照)。
(iii) コンクリートの浮き水が多い場合は、排除する。
(iv) 柱、壁の打込みでこぼれて硬化したコンクリー トは、掃除してからコンクリートを打ち込む。
図 6.6.6 スラブの打込み(ポンプによる打込み)
図 6.6.7 スラブの打込み(パケットによる打込み)
(6) 階段の打込み
(i) 階段のある打込み区画は、階段回りから打ち込む。
(?A) コンクリートを壁又は柱からかき出さずに直接打込み、壁際取合いはふたをする。
(7) 鉄骨鉄筋コンクリート打込み
鉄骨鉄筋コンクリートの鉄骨梁のフランジ下端や、梁と柱の接合部下端は、コンクリートの充填が最も難しいところであるので、梁せい、梁幅、フランジ幅、型枠との間隔によりコンクリートのワーカビリティー、打込み方法等を考えなければならない。軟練りのコンクリートを打ち込むと、充填後の沈降により、フランジ下端に空洞を生じやすい。特に梁せいの大きい場合は、フランジ下端が空洞になっている例が多いので、片側からコンクリートを流し込み、反対側にコンクリートが上昇するのを待って、全体に打ち込む方法をとるのがよい(図6.6.8参照)。
図6.6.8 各部位に起こりやすい打上りの欠陥
(h)同一区画のコンクリート打込み時における打重ね時間の限度は、打重ね部にコールドジョイントを発生させないで施工できる範囲で定める必要がある。コールドジョイントを発生させないためには、先に打ち込まれているコンクリートに再振動を加えられることが必要なことから「標仕」6.6.4 (h)では再振動可能な範囲と定めている。この時間の限度は、通常の場合外気温 25℃以下の場合 120分、外気温が25℃を超える場合 90分を目安とする。
なお、凝結時間を遅らせる対策を取った場合には打重ね時間の限度を長くすることが可能である。
(i)コンクリート中に埋め込まれた鉄筋、スペーサー及びバーサポート等は、打込み時のコンクリートの圧力や振動機の振動及びポンプの配管移動の影響により移動を生じやすく、このため鉄筋等のかぶり厚さが不足する場合が多く認められている。かぶり厚さが不足すると鉄筋が腐食し建物の耐久性上問題となる。したがって、コンクリートの打込みに際しては鉄筋等が移動しないようにすることが重要である。
6.6.5 締 固 め
(a) コンクリートに生じる欠陥としては、気泡、豆板、不充填部等がある。これらの欠陥を生じさせないためには、棒形振動機あるいは型枠振動機を用いて十分締め固め、密実なコンクリートとすることが大切である。
(b) 通常締固めに用いている振動機は、JIS A8610(建設用機械及び装置 - コンクリート内部振動機)に定めるものであり、スランプ18cm以下のコンクリートを施工する場合には、この棒形振動機を用いなければ密実な締固めを行うことはできない。棒形振動機を挿入できないところや届かないところは、型枠振動機や突き棒・たたき等を併用して締め固める必要がある。公称棒径 45mmの棒形振動機1台当たりの締固め能力は、スランプ10〜15cm程度の普通コンクリートの場合で10〜15m 3 /h 程度であるので、打込み速度に応じて振動機の使用台数を定める必要がある。
(c) 公称棒径 45mmの棒形振動機の長さは 60〜80cmであるので、1層の打込み厚さはこれ以下にし、打ち込んだコンクリートの下層まで振動機の先端が入るようにすることがコールドジョイントをはじめとする施工欠陥を防ぐために大切である。挿入間隔は、振動機の振動が伝わる有効範囲内で定める必要があり、前述した公称棒径 45mmの振動機の有効範囲を参考にして60cmと定めている。公称棒径が 45mmより小さい振動機を用いる場合は、挿入間隔を狭くする必要がある。
なお、振動を加える時間を長くし過ぎると材料分離を生じるので、加振時間はコンクリートの表面にペーストが浮くまでと定めている。振動機を用いて締め固める場合の注意事項は次のとおりである。
(1) 鉛直に挿入して加振し、挿入間隔は 60cm程度とする。
(2) 振動機の先端が鉄骨、鉄筋、埋込み配管、金物、型枠等になるべく接触しないようにする。
(3) 振動時間は、コンクリート表面にセメントペーストが浮き上がるときを標準とし、コンクリートに穴を残さないように加振しながら徐々に引き抜く。加振時間は、1箇所 5〜15 秒の範囲とするのが一般的である。
(d)型枠振動機は新たにコンクリートが打ち込まれる部分に取り付けて振動を加える必要がある。したがって、打込み高さと速度をよく考慮して取り付けることが重要であり、既に締め固めた部分に振動を加えると材料分離を生じ、まだコンクリートが打ち込まれていない部分に振動を加えると型枠が損傷したり変形する原因となる。
(e) コンクリートの締固めを十分行うためには.適切な量の振動機と締固め要員を準備することが必要である。コンクリートの輸送管1系統で 1日の打込み量が 150m 3 程度を想定した場合には、振動機を 2台準備し、 振動機要員 2名、打込み・締固め要員等 7名以上配置し、また、 施工中に生じる型枠・鉄筋の保守・点検をするために型枠工と鉄筋工を配置しておくようにする。また、施工中に生じる埋込み配管等の不具合を修正するために、設備要員を配置することも必要である。
6.6.6 上面の仕上げ
(a) ここでいうコンクリート上面の仕上げとは、打込み、締固めのあと工程及び左官仕上げの前工程としての天端均しのことであり、せき板に接しないで仕上げられる床スラブ・屋根スラブの上面とパラペットの天端等が対象となる。この面の精度は、特記されるべきであるが、特記がない場合は「標仕」表 6.2.5 を標準として、この平たんさが得られるように沈下代を見込んで天端均しを行う。
(b) コンクリートを打ち込む前に床仕上げに必要な造り方定規を設ける。仕上げ精度が要求される場合にはガイドレール(鉄骨鉄筋コンクリートの場合はピアノ線等を張ることもある。)等を 3.5〜4.0 m間隔に設箇し、基準となる造り方定規は鉄骨その他狂いの生じない箇所に設け、常に点検して正確に水平又は所要の勾配を保持するようにする。
(c) コンクリート打込み後、所定の高さに荒均しを行い、タンパ等で粗骨材が表面より沈むまでタンピングし、同時に造り方定規にならい、定規ずりして平たんに敷き均す。
ガイドレール等の造り方定規は、定規均し後取り外し、その跡はコンクリートを充填し、木ごてで平らに均す。
壁や柱際等で均し定規等を使用できない部分は、特に不陸の生じないよう、十分に木ごて等でタンピングして平たんに均す。
定規均しをむらなく行ったのち、中むら取りを木ごてを用いて行う。
木ごてずりは、コンクリート面を指で押しても少ししか入らない程度になった時期に行う。
(d) 床スラブのコンクリートを直均しで仕上げる場合には、「標仕」15 章3 節に従って実施する。
6.6 7 打込み後の確認等
(a ) 打込み後の仕上り状況の確認時期が「標仕」6.6.7 (a)に示されている。豆板、空洞、コー ルドジョイント等の有無の確認は、せき板取外し後に行えるが、構造体に発生しているひび割れ及びたわみについては,支保工で支えている状態では正しい確認ができないので、支保工を取り外したのちに行う。補修が必要なひび割れかどうかの判断は、通常表面のひび割れ幅で行っているが、鉄筋に錆を発生させやすい条件かどうかによる耐久性上の判断と防水性が要求されるかどうかによって異なってくる。補修を必要としないひび割れ幅の値は(公社) 日本コンクリート工学会「コンクリートのひびわれ調査、補修・補強指針」では、防水性が要求される場合には0.05mm 以下,防水性は要求されないがかぶり厚さや表面被覆の有無等から見て鉄筋の錆を発生させやすいなど耐久性から見た条件が厳しい場合(塩害・腐食環境下)には 0.2mm 以下、耐久性から見た条件が普通の場合(一般屋外環境下)0.3mm以下、耐久性から見た条件が緩やかな場合(土中・屋内環境下)0.4mm以下等としている。
( b ) 主要構造部に影響のあるような施工欠陥が認められた場合の処置は、6.9.6による。
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