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UA-42523422-5
第二次検定(実地)
年別 解答解説


令和5年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工計画(記述)
問題3 施工管理(記述)
問題4 躯体工事(記述)
問題5 仕上工事(五肢)
問題6 法  規(五肢)

令和4年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工計画(記述)
問題3 施工管理(記述)
問題4 仕上工事(記述)
問題5 躯体工事(五肢)
問題6 法  規(五肢)

令和3年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 仮設計画(記述)
問題3 施工管理(記述)
問題4 躯体工事(記述)
問題5 仕上工事(五肢)
問題6 法  規(五肢)

令和2年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

令和元年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

平成30年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

平成29年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

平成28年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

平成27年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

平成26年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

平成25年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

平成24年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

平成23年度
詳細

問題1 経験記述問題
問題2 施工(仮設)計画
問題3 躯体工事(記述/正誤)
問題4 仕上工事(記述/正誤)
問題5 施工管理
問題6 法  規

第二次検定
過去問 分野別 解答解説
問題1 経験記述 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
問題2 仮設計画 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
問題3 施工管理 ※令和4,3年は問題3
それ以前は問題5
令和04 令和03
令和02 令和元 平成30
平成29 平成28 平成27
平成26 平成25 平成24
平成23
問題4 躯体工事 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
問題5 仕上工事 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
問題6 法  規 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
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第一次検定(学科)
年別 解答解説

令和6年度(速報)
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ]〜[ No.06 ]
2. [ No.07 ]〜[ No.15 ]
3. [ No.16 ]〜[ No.20 ]
4. [ No.21 ]〜[ No.30 ]
5. [ No.31 ]〜[ No.40 ]
6. [ No.41 ]〜[ No.44 ]
【 午後 】
7. [ No.45 ]〜[ No.50 ]
8. [ No.51 ]〜[ No.60 ]
9. [ No.61 ]〜[ No.72 ]

令和5年度
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ]〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ]〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ]〜[ No.30 ]
4. [ No.31 ]〜[ No.39 ]
5. [ No.40 ]〜[ No.44 ]
【 午後 】
6. [ No.45 ]〜[ No.54 ]
7. [ No.55 ]〜[ No.60 ]
8. [ No.61 ]〜[ No.72 ]

令和4年度
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ]〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ]〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ]〜[ No.30 ]
4. [ No.31 ]〜[ No.39 ]
5. [ No.40 ]〜[ No.44 ]
【 午後 】
6. [ No.45 ]〜[ No.54 ]
7. [ No.55 ]〜[ No.60 ]
8. [ No.61 ]〜[ No.72 ]

令和3年度
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]
5. [ No.46 ] 〜[ No.50 ]
【 午後 】
6. [ No.51 ] 〜[ No.70 ]
7. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

令和2年度
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]
5. [ No.46 ] 〜[ No.50 ]
【 午後 】
6. [ No.51 ] 〜[ No.70 ]
7. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

令和元年度
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]
5. [ No.46 ] 〜[ No.50 ]

【 午後 】
6. [ No.51 ] 〜[ No.70 ]
7. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

平成30年度
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]
5. [ No.46 ] 〜[ No.50 ]

【 午後 】
6. [ No.51 ] 〜[ No.70 ]
7. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

平成29年度
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]
5. [ No.46 ] 〜[ No.50 ]

【 午後 】
6. [ No.51 ] 〜[ No.70 ]
7. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

平成28年度
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]

【 午後 】
5. [ No.46 ] 〜[ No.70 ]
6. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

平成27年度
詳細

【 午前 】      
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]

【 午後 】
5. [ No.46 ] 〜[ No.70 ]
6. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

平成26年度
詳細

【 午前 】      
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]

【 午後 】
5. [ No.46 ] 〜[ No.70 ]
6. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

平成25年度
詳細

【 午前 】      
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]

【 午後 】
5. [ No.46 ] 〜[ No.70 ]
6. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

平成24年度
詳細

【 午前 】      
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]

【 午後 】
5. [ No.46 ] 〜[ No.70 ]
6. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

平成23年度
詳細

【 午前 】
1. [ No.01 ] 〜[ No.15 ]
2. [ No.16 ] 〜[ No.20 ]
3. [ No.21 ] 〜[ No.33 ]
4. [ No.34 ] 〜[ No.45 ]

【 午後 】
5. [ No.46 ] 〜[ No.70 ]
6. [ No.71 ] 〜[ No.82 ]

第一次検定
過去問 分野別 解答解説
問題1 建築学 令和05 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
問題2 共通問題 令和05 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
問題3 躯体工事 令和05 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
問題4 仕上工事 令和05 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
問題5 施工計画 令和05 令和04 令和03
問46-50
令和02 令和元
平成30 平成29
問46-51or50
平成28 平成27 平成26
平成25 平成24 平成23
問題6 施工管理 問45-54(10問全問解答)
令和05 令和04 令和03
問51-70(20問全問解答)
令和02 令和元
平成30 平成29
※ 工程管理・品質管理は
問51or50-70
平成28 平成27 平成26
平成25 平成24 平成23
問題7 応用能力 令和05 令和04 令和03
問題8 法  規 問71-82(12問中8問選択)
令和05 令和04
令和03 令和02 令和元
平成30 平成29 平成28
平成27 平成26 平成25
平成24 平成23
建築工事監理指針
1章 各章共通事項 序節 監督職員の立場及び業務
01節 共通事項
02節 工事関係図書
03節 工事現場管理
04節 材  料
05節 施  工
06節 工事検査及び技術検査
07節 完成図等

2章 仮設工事 01節 共通事項
02節 縄張り,遣方 , 足場他
03節 仮設物
04節 仮設物撤去等
05節 揚重運搬機械

3章 土工事 01節 一般事項
02節 根切り及び埋戻し
03節 山留め

4章 地業工事 01節 一般事項
02節 試験及び報告書
03節 既製コンクリート杭地業
04節 鋼杭地業
05節 場所打ちコンクリート杭地業
06節 砂利,砂及び
   捨コンクリート地業等

07節 「標仕」以外の工法

5章 鉄筋工事 01節 一般事項
02節 材  料
03節 加工及び組立て
04節 ガス圧接
05節 機械式継手,溶接継手

6章 コンクリート工事 01節 一般事項
02節 種類及び品質
03節 材料及び調合
04節 発注、製造及び運搬
05節 普通コンの品質管理
06節 現場内運搬並びに
   打込み及び締固め

07節 養  生
08節 型  枠
09節 試  験
10節 軽量コンクリート
11節 寒中コンクリート
12節 暑中コンクリート
13節 マスコンクリート
14節 無筋コンクリート
15節 流動化コンクリート
[ 参考文献 ]

7章 鉄骨工事 01節   一般事項
02節   材  料
03節   工作一般
04節   高力ボルト接合
05節   普通ボルト接合
06節  溶接接合
07節  スタッド,デッキプレート溶接
08節  錆止め塗装
09節   耐火被覆
10節  工事現場施工
11節  軽量形鋼構造
12節  溶融亜鉛めっき工法
13節  鉄骨工事の精度
14節  資  料

8章 コンクリートブロック工事等 01節 一般事項
02節 補強コンクリートブロック造
03節 コンクリートブロック帳壁及び塀
04節 ALCパネル
05節 押出成形セメント板
一般事項、材料
外壁パネル工法
間仕切壁パネル工法
溝掘り及び開口部の処置
     施工上の留意点

9章 防水工事 01節 一般事項
02節 アスファルト防水
03節 改質As.シート防水
04節 合成高分子系
   ルーフィングシート防水

05節 塗膜防水
06節 ケイ酸質系塗布防水
07節 シーリング

10章 石工事 01節 一般事項
02節 材  料
03節 外壁湿式工法
04節 内壁空積工法
05節 乾式工法
06節 床および階段の石張り
07節 特殊部位の石張り

11章 タイル工事 01節 一般事項
02節 セメントモルタルによる
   陶磁器質タイル張り

03節 接着剤による
   陶磁器質タイル張り

04節 陶磁器質タイル
   型枠先付け工法

05節 「標仕」以外の工法

12章 木工事 01節 一般事項
02節 材  料
03節 防腐・防蟻・防虫
04節 RC造等の内部間仕切等
05節 窓、出入り口その他
06節 床板張り
07節 壁及び天井下地
08節 小屋組(標仕以外)
09節 屋根野地,軒回り他
   (標仕以外)

13章 屋根及びとい工事 01節 一般事項
02節 長尺金属板葺
03節 折板葺
04節 粘土瓦葺
05節 と  い

14章 金属工事 01節 一般事項
02節 表面処理
03節 溶接,ろう付けその他
04節 軽量鉄骨天井下地
05節 軽量鉄骨壁下地
06節 金属成形板張り
07節 アルミニウム製笠木
08節 手すり及びタラップ

15章 左官工事 01節 一般事項
02節 モルタル塗り
03節 床コンクリート直均し仕上げ
04節 セルフレベリング材仕上
05節 仕上塗材仕上げ
06節 マスチック塗材仕上げ
07節 せっこうプラスター塗り
08節 ロックウール吹付け

16章 建具工事 01節 一般事項
02節 アルミニウム製建具
03節 樹脂製建具
04節 鋼製建具
05節 鋼製軽量建具
06節 ステンレス製建具
07節 木製建具
08節 建具用金物
09節 自動ドア開閉装置
10節 自閉式上吊り引戸装置
11節 重量シャッター
12節 軽量シャッター
13節 オーバーヘッドドア
14節 ガラス

17章 カーテンウォール工事 01節 共通事項
02節 メタルカーテンウォール
03節 PCカーテンウォール

18章 塗装工事 01節 共通事項
02節 素地ごしらえ
03節 錆止め塗料塗
04節 合成樹脂調合ペイント塗
   (SOP)

05節 クリヤラッカー塗(CL)
06節 アクリル樹脂系
  非水分散形塗料塗(NAD)

07節 耐候性塗料塗(DP)
08節 つや有合成樹脂
  エマルションペイント塗り(EP-G)

09節 合成樹脂エマルションペイント塗
   (EP)

10節 ウレタン樹脂ワニス塗(UC)
11節 オイルステイン塗
12節 木材保護塗料塗(WP)
13節 「標仕」以外の仕様

19章 内装工事 01節 一般事項
02節 モルタル塗り,ビニル床タイル
   及びゴム床タイル張り

03節 カーペット敷き
04節 合成樹脂塗床
05節 フローリング張り
06節 畳敷き
07節 せっこうボード、
   その他ボード、
   及び合板張り

08節 壁紙張り
09節 断熱・防露
10節 内装材料から発生する室内空気汚染物質への対策

20章 ユニットその他工事 01節 共通事項
02節 ユニット工事等
  2 フリーアクセスフロア等
  3 可動間仕切
  4 移動間仕切
  5 トイレブース
  6 手すり
  7 階段滑り止め
  8 床目地棒
  9 黒板,ホワイトボード
 10
 11 表示
 12 タラップ
 13 煙突ライニング
 14 ブラインド
 15 ロールスクリーン
 16 カーテン,カーテンレール
03節 プレキャスト
   コンクリート工事

04節 間知石及び
   コンクリート間知ブロック積み

05節 敷地境界石標

21章 排水工事 01節 共通事項
02節 屋外雨水排水
03節 街きょ,縁石,側溝

22章 舗装工事 01節 共通事項
02節 路  床
03節 路  盤
04節 アスファルト舗装
05節 コンクリート舗装
06節 カラー舗装
07節 透水性アスファルト舗装
08節 ブロック系舗装
09節 砂利敷き
10節 補  修
11節 「標仕」以外の舗装
12節 用  語

23章 植栽,屋上緑化工事 01節 共通事項
02節 植栽基盤
03節 植  樹
04節 芝張り,吹付けは種
   及び地被類

05節 屋上緑化

★鉄骨特集★

構造図の見方
(日本建築構造技術者協議会)

鉄骨工事 工場製作
材料
めっきFAQ
(日本溶融亜鉛鍍金協会)

★鉄骨工事特集


鉄骨用語集
(日鉄エンジニアリング)

ここに注意!
鉄骨工事管理のポイント

工場製作編及び現場施工編
((一社) 日本建設業連合会)

スタッド溶接の施工と管理 技術資料
(日本スタッド工業(株))

設備工事のポイント
(若手向け)

【 着工時 】
1-1 設備工事実施施工計画
1-2 施工図・機器製作図等 作成計画
1-3 電力、電話,上下水道,ガスガス引込計画
1-4 主要機器搬入揚重計画
1-5 設備工事実施施工計画
1-6 総合プロット図の作成
1-7 鉄骨スリーブ、取付ピースの検討
1-8 RC躯体スリーブの検討
1-9 配管の腐食対策
1-10 設備関係官公署手続一覧表
1-11 工事区分表

【 地業・土工事 】
2-1 接地工事
2-2 土間配管

【 地下工事 】
3-1 地中外壁貫通
3-2 機械室・電気室工事
3-3 ピットの検討

【 躯体工事 】
4-1 打込電線管
4-2 デッキスラブのコンクリート打込工事
4-3 防火・防煙区画貫通処理
4-4 防水層貫通処理
4-5 設備機器の耐震対策

【 屋上工事 】
5-1 屋上設備機器設置
5-2 屋上配管・配線・ダクト工事
5-3 防振対策検討
5-4 屋上ハト小屋

【 下地・間仕切り 】
6-1 天井割付と設備器具
6-2 天井内設備工事
6-3 間仕切内配管
6-4 天井内機器取付
6-5 遮音壁貫通処理
6-6 ALCパネル貫通処理
6-7 換気・エアバランス
6-8 性能検査実施要領(工程内検査(配管))

【 中間検査 】
7-1 社内中間検査

【 受 電 】
8-1 受電に向けて
【 内 装 】
9-1 電気・空調機器取付(仕上材との取合い)
9-2 衛生器具取付(仕上材との取合い)

【 外 装 】
10-1 扉・ガラリ関連工事
10-2 外壁面設備器具取付け(1)
10-3 外壁面設備器具取付け(2)
10-4 EVオーバーヘッドの感知器用点検口の防水対策
10-5 保温・塗装工事

【 外 構 】
11-1 外構配管設備工事検討
11-2 外構設置機器検討

【 竣工前 】
12-1 試運転調整
12-2 建築確認完了検査
12-3 消防完了検査
12-4 総合連動試験
12-5 性能検査実施要項(竣工編)

【 引渡し 】
13-1 建物設備取扱説明・保守管理説明
13-2 完成図・保証書
13-3 竣工図書、備品、メーター読合せ

【 その他 】
14-1 社内竣工検査「関係法令、不具合予防」の留意点
(一社) 日本建設業連合会 HPより
★施工計画書雛型
施工計画書の雛型データ
(エクセル形式)
((一社)日本建設業連合会)
Rhinoceros入門

入門?@-1
入門?@-2
入門?@-3
建設物価建築費指数
★建築費指数 2020 .12
コンクリート工事に関するJIS規格

JIS検索
(日本工業標準調査会)

【 種類・強度・品質 】
JIS A 5308に適合する
レディミクストコンクリートの種別
> JIS A 5308  
レディーミクストコンクリート

【 コンクリートの材料 】
■セメント
> JIS R 5210  
ポルトランドセメント
> JIS R 5211  
高炉セメント
> JIS R 5212  
シリカセメント
> JIS R 5213  
フライアッシュセメント
> JIS R 5214  
エコセメント

−−−−−−−−−−−−
■骨材
> JIS A 5005  
コンクリート用砕石及び砕砂
> JIS A 5011-1  
コンクリート用スラグ骨材
 −第 1 部:高炉スラグ骨材

> JIS A 5011-2  
コンクリート用スラグ骨材
 −第 2 部:フェロニッケルスラグ骨材

> JIS A 5011-3  
コンクリート用スラグ骨材
 −第 3 部:銅スラグ骨材

> JIS A 5011-4  
コンクリート用スラグ骨材
 −第 4 部:電気炉酸化スラグ骨材

> JIS A 5021  
コンクリート用再生骨材 H
> JIS A 5022  
再生骨材Mを用いたコンクリート
> JIS A 5023  
再生骨材Lを用いたコンクリート
> JIS A 5031  
一般廃棄物,下水汚泥又は
 それらの焼却灰を溶融固化した
 コンクリート用溶融スラグ骨材


————————————
■混和剤
> JIS A 6204  
コンクリート用化学混和剤
> JIS A 6201  
コンクリート用フライアッシュ
> JIS A 6202
   コンクリート用膨張材
> JIS A 6203  
セメント混和用
 ポリマーディスパージョン及び
 再乳化形粉末樹脂



鉄骨工事に関するJIS規格 
【 溶接材料 】
> JIS B 1198
頭付きスタッド
【 デッキプレート 】
> JIS G 3302 Z08 フェローデッキ
 JIS G3302
溶融亜鉛めっき鋼板及び綱帯

【 錆止め塗装 】
> JIS K 5674
鉛・クロムフリーさび止めペイント
> JIS H 8641 溶融亜鉛めっき

NEWSチャンネル

7章 鉄骨工事 1節 一般事項

第7章 鉄骨工事


01節 一般事項

7.1.1 適用範囲


(a) 「標仕」で規定している「構造上主要な部材に鋼材を用いる工事」とは、建物を鉄骨構造とするもののほか、鉄骨造の玄関ひさし、車庫等を想定しており、既製の鋼製階段、水槽の架台等は対象外と考えてよい。

(b) 工事の流れを図7.1.1 に、作業の流れを図7.1.2 に示す。

図7.1.1鉄骨工事の流れ.jpg
図7.1.1 鉄骨工事の流れ


図7.1.2_鉄骨工事の作業の流れ.jpg
図7.1.2 鉄骨工事の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、7.1.5 を参照されたい。

(d) 構造上主要な部材にステンレス鋼を使用する場合は特記による。その際には、(-社) 日本鋼構造協会「ステンレス建築構造設計基準・同解説」を参照されたい。




7.1.2 基本要求品質

(a) 鉄骨工事で使用する鋼材は,建物の構造耐力上必要な材質並びに断面形状及び寸法が設計図内で指定される。

基本要求品質としては、指定された材料が正しく使用されていることを求めているので、材質や寸法等を含めて、これを証明できるようにしておく必要がある。

板材等を切断して鉄骨部材を製作する場合は、一般に、鋼材は製造工場(メーカー)又は商社等から切板工場(シャーリング工場)等に出荷され、ここで必要な断面形状に切断され、更に、鉄骨製作工場(ファブリケーター等)で加工・組立が行われる。この過程において、鋼材の大半を物件ごとにロール注文する場合には問題になることは少ないが、鋼材問屋(特約店)を通して市中購入する場合には、鋼材は順次小口に細分され、多様なユーザー等にわたっていくことがある。この時、鋼材そのものと、その規格品証明書(ミルシート) が対になって動いていないことがある。特に鋼材等を部品に切断した場合、その切断された部品とミルシートの対応ができていないことがある。切断する前の鋼材の製品番号等とミルシートが一致していることを前提とし、ミルシートの内容をリスト化して鋼材の品質証明を行う方法の一例として(-社)日本鋼構造協会・建築鉄骨品質管理機構から、2009年12月に「建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン」が提案されている。すなわち、流通段階ではミルシートの内容をリスト化した「原品証明書」で品質証明を行い、これに基づいて鉄骨製作工場の材料管理買任者(鉄骨製作管理技術者資格保有者が望ましい。)が「鉄骨工事使用鋼材等報告書」を作成・発行する。施工者側は、鉄骨工事管理買任者がこの報告書で品質を確認する。更に、これを工事監理者に提出して、使用鋼材等の品質を確認するシステムである( 7.14.2 参照 )。

なお、SN材の識別については、7.2.1(b)(9)を参照されたい。


(b)「鉄骨は、所定の形状及び寸法を有し、所定の位置に架構されていること」とは、鉄骨の部材が設計図書あるいは工作図のとおりに製作され、工事現場において架構されていることを要求したものである。この場合の鉄骨の製作精度及び建方精度は、建物等の規模や構造的重要度等を勘案して特記することとしているので、特記事項を満たしていること、また、特記のない場合は、(ー社)日本建築学会「JASS 6 鉄骨工事」付則6[鉄骨精度検査規準]によることとしているので、これに適合していることが条件となる。


(c)「鉄骨は、構造耐力、耐久性、耐火性等に対する有害な欠陥がなく、接合部及び定着部は、作用する力を伝逹できるものであること」とは、(b)が仕上りの状態に関する要求事項であるのに対し、鉄骨の製品が有すべき性能に関する要求である。

構造耐力、耐久性、耐火性等に対する有害な欠陥とは、例えば、溶接割れ等、部材の加工・組立時の欠陥のほかに、運搬及び建方中の損傷や建方後の補助部材の溶接等による損傷も含まれるので、有害な欠陥を生じさせないような施工の手順や品質基準、養生方法等を品質計両で明確にし、これによって施工を進める。また、有害な欠陥を発生するおそれのある場合は、その処置や補修方法についてもあらかじめ定めておくことが望ましい。

接合部や定着部の力の伝達では、構造設計上必要な断面寸法等が指定されている。しかし、例えば、高力ボルト摩擦接合の場合では、ボルトの種類や数量等は指定されたものであっても、摩擦面の処理やボルトの保管方法等が適切でなかった場合、あるいは、溶接部では、溶接の方法や施工条件、母材の材質と溶接材料の種類との組合せ等が適切でなかったりすると、作用する力を伝達することができなくなる。したがって、これらのことについても品質計画に適切な施工方法と管理方法について定め、更に、これらに従って適切に管理が行われたことの分かる資料があれば、要求品質を満たしているものといえる。




7.1.3 鉄骨製作工場

(a)鉄骨製作工場は,設計図書に特記された加工能力等及び施工管理技術者の適用に適合するものとする。これらの特記がない場合は、受注者等が選定した適切な鉄骨製作工場について、次の事項を記載した文書等から加工能力等を確認すればよい。

(1) 工事経歴
(2) 鉄骨製作工場の規模,契約電力及び機械設備
(3) 生産能力(月産能力及び加工能力の余裕)
(4) 他工事の製品の出来ばえ
(5) 鉄骨製作業者の資格基準
(6) 鉄骨製作管理技術者、溶接施工管理技術者、非破壊検査技術者、溶接技能者の資格・人数
(7) 品質管理システム等
(8) その他


(b)「指定性能評価機関」による工場認定制度とは、所定の要件を整えて国土交通大臣から指定された民間機関が、工場の品質管理体制、規格類の整備状況等を評価し、その評価を基に国土交通大臣が認定を行うものである。

指定性能評価機関には、?鞄?本鉄骨評価センター及び?椛S国鉄骨評価機構がある。どちらも評価基準は共通であり、その内容は表 7.1.1 及び 2のとおりである。


表7.1.1 工場認定に関わる評価項目
表7.1.1工場認定に関わる評価項目+.jpg


表7.1.2 工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その1)
表7.1.2工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その1).jpg


表7.1.2 工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その2)
表7.1.2工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その2).jpg


表7.1.2 工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その3)
表7.1.2工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その3).jpg


表7.1.2 工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その4)
表7.1.2工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その4).jpg


表7.1.2 工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その5)
表7.1.2工場認定のグレード別の適用範囲と別記事項(その5).jpg




7.1.4 施工管理技術者

(a)「標仕」7.1.3 の規定により「施工管理技術者を適用する」旨の特記がある場合には、次の事項を記載した施工計画書を提出させ、当該製作工場に、監督職員が「標仕」7.1.4(a)で規定する能力があると認める者が常駐することを確認する必要がある。

なお、(3)又は(4)の資格に該当するものの例としては、(b)及び(c)(4)に示すものがある。

(1) 工事実績
(2) 鉄骨製作工場での立場(役職等)
(3) 資格証明
(4) ほかの有資格
(5) その他


(b) 平成 9年版「共仕」で規定されていた鉄骨製作管理技術者は、「建築設計等関連業務に関する知識及び技術の審査・証明事業認定規程」に基づき認定された資格であったが、審査・証明事業の廃止に伴い民間資格となった。しかし、この有資格者は、「標仕」7.1.4(a)で規定する能力のある者の一例と見なすことができる。

なお、「鉄骨製作管理技術者」は、(-社)鉄骨建設業協会及び(-社)全国鐵構工業協会の 2団体で設立した「鉄骨製作管理技術者登録機構」により評価されている。


(c)「標仕」では規定されていないが、(-社)日本鋼構造協会の「建築鉄骨品質管理機構」では、鉄骨造建築物の安全性と品質の確保を目的として、平成 10年度から「建築鉄骨技術者制度」を実施し、現在、次の 4資格について技術者の認定登録を行っている。平成 25年 4月 1日 現在の認定登録状況を表7.1.3 に示す。

(1)建築高力ボルト接合管理技術者

建築鉄骨の高カボルト接合が適切に実施されるよう、作業者を指導し、工事の監理・管理・検査をする技術者


(2)建築鉄骨超音波検査技術者

建築鉄骨の溶接部の施工の良否を判断する超音波探傷検査(UT)技術者


(3)建築鉄骨製品検査技術者

建築鉄骨の製作過程及び製作後に、製品の良否を判定する検査技術者


(4)鉄骨工事管理責任者

鉄骨工事が適正に施工されるよう、施工計画から工事の完了に至るまでの品質管理・施工管理等の全般を管理する技術者


表 7.1.3 技術者の認定登録状況(平成 25年 4月1日現在)
表7.1.3技術者の認定登録状況.jpg




7.1.5 品質管理

(a) 鉄骨工事の品質管理とは、要求される鉄骨の品質をつくり出すために、設計から製作・建方までの各工程で品質をつくり込む一連の活動であり、この品質管理の確実な実施によって品質保証を可能にする。


(b) 施工品質を保証する受注者等・鉄骨製作業者の品質管理は、次の 4段階に大きく分けられる。

(1) 設計図書の把握と疑義事項の解明

(2) 要求された品質を実現するための計画作成

(3) 計画どおりの継続的な実施

(4) 施工品質が要求された品質を確保していることの証明


(c) 受注者等は、鉄骨製作業者の品質管理システムを十分に理解し、双方の合意に基づき、品質管理実施要領を計画する。また、計画の実施においても、協力して効果的な体制をつくることが重要である。


(d) 受注者等及び鉄骨製作業者が、要求品質を確保するため、保有すべき機能は次のとおりである。

(1) 品質管理方針を提示する機能

(2) 設計図料の内容を確認し、製作・施工の目標品質を設定する機能

(3) 製作・施工の目標品質を実現するための計画を行う機能

(4) 計画に従って品質をつくり込む機能

(5) 施工品質を確認・評価する機能

(6) 品質評価情報に基づき品質改善・生産性向上を行う機能

(7) 標準化を促進する機能

(8) 不具合の再発防止と予防する機能

(9) 品質の証明に必要な記録を残す機能

(10) 鋼材の製造工場又は商社等から最終の鉄骨製作工場までの流通経路を証明する機能


(e) 受注者等及び鉄骨製作業者が工場製作及び工事税場施工に先立ち作成する施工計画書・工場製作要領書・工事現場施工要領書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、 赤文字 を考慮しながら品質計画を作成する。

(1) 施工計画書:(鉄骨工事全体の品質管理要領を含む)

?@ 総則及び工事概要
?A 実施工程表
?B 受注者等の管理組織、工事担当及び協力業者
?C 仮設計画
?D 建方計画
?E 接合計画
?F 他工事との関連
?G 安全管理
?H 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制、管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法


(2)工場製作要領書(工場製作範囲の品質管理要領を含む)

?@ 総則及び工事概要
?A 鉄骨製作業者の管理組織、工事担当(施工管理技術者・溶接施工管理技術者・検査技術者の氏名、所持資格等)
?B 溶接技能者の氏名、所持資格等
?C 製造設備の能力(製作関連の機械設備、配置図等)
?D 工程表(工作図・材料調達・製作・製品検査・搬出等の時期)
?E 使用材料の名称、規格、製造所及び使用箇所
?F 工作・溶接(加工・組立・溶接の製作手順、開先形状、溶接工法等 )
?G 品質管理・検査計画( 管理・検査項目、方法、管理値、不具合処置方法等)
?H 塗装計画(材料・エ法・塗装範囲等)

?I 製品の輸送計画(輸送方法・養生方法・安全対策等)


(3)工事現場施工要領書(工事現場施工範囲の品質管理要領を含む)

?@ 総則及び工事概要
?A 工程表(アンカーボルトの設置・建方・高力ボルト締付け・溶接作業・完成検査等の時期)
?B 作業の管理組織及び協力業者、工事担当(施工管理技術者・溶接施工管理技術者・非破壊検査技術者・溶接技能者の氏名、所持資格等)
?C アンカーボルトの保持及び埋込み工法と検査方法
?D 定着の工法
?E 建方作業順序と建入れ直し及び建入れ検査方法並びに不具合処理方法
?F 高力ボルト接合作業手順と締付け後の検査方法並びに不合格処理方法
?G 溶接接合作業手順と精度・外観・内部検査方法並びに不合格処理方法
?H 超音波探協試験の検査機関及びその管理組織


(f) 提出された施工計画書・工場製作要領書・工事現場施工要領書から、品質管理実施要領及び保有する品質管理機能が適切であるかを判断する。

(g) 工場製作及び工事現場施工における検査の項目・方法・管理値等の基準は、特記がなければ、JASS 6 付則6[鉄骨精度検査規準]を満足しなければならない。検査の項目・方法・管理値等を満足することが不可能な場合は、満足することができない原因を明確にし、問題の原因を取り除く処置方法や、品質を損なわない対処方法を受注者等と協議して確定する。

(h) 鉄骨製作業者と受注者等が実施する検査内容は、次のとおりである。

(1) 鉄骨製作業者の社内検査

工場製作要領書・工事現場施工要領書に記載した計画に基づき、工場製作・工事現場施工の各工程と完了時に自主的に社内検査を実施し、検査の結果を記録して、受注者等に報告する。

(2) 受注者等の中間検査・受入検査

鉄骨製作業者の社内検査結果の報告を受け、検査成績書の内容確認と抜取りによる製品と施工結果の現物検査を実施する受入検査を行い合格したものを受け入れる。受入検査の結果を記録し監督職員に提出する。

なお、最終の製品となってしまってからでは検査できない項目については、各製作工程途中で検査が終了していなくてはならない。このような検査を中間検査といい、社内検査、中間検査、受入検査の3種類の検査で製品の品質が確保される。


(i) 監督職員の検査については、受注者等が作成した受人検査成績書の内容を確認し、適否を判断することが原則であるが、必要に応じて受注者等の受入検査時に実際の製品に対して直接検査を行う。


(j) 鉄骨工事の品質管理を合理的に行うためには、設計者、受注者等、鉄骨製作工場間の情報の伝逹が、確実に行われることが不可欠である。そのような品質管理の具体的あり方を述べたものとして、「国土交通省総合技術開発プロジェクト「建設事業の品質管理体系に関する技術開発」報告者 建築分野編」(平成13年 3月)の第3章[鉄骨造建築物の品質管理]がある。




7.1.6 環境問題への配慮

(a) 鉄骨工事と環境問題の関わりとしては、次の 3つに分けられる。

(1) 地球環境への配慮

(2) 地域環境への配慮

(3) 室内環境への配慮

中でも、地球環境問題については、気候変動抑止に向けた低炭素社会実現の動きが、一層加速しつつある。特に高炉鋼材は1t 製造するのに 約 2tのCO 2 が排出されることが知られており天然資源枯渇はもとより、CO 2 排出削減の観点からもその利用に当たっては充分な配慮が必要である。


(b) 地球環境問題の関わりとして留意すべき事項には、次のようなものが挙げられる。

(1) 電炉鋼材の活用等リサイクルの促進

(2) 鋼材のリュースの促進

(3) 鉄骨製作段階における加工スクラップ等の削減

(4) 建物の長寿命化の雅進

電炉鋼材の活用は、天然資源の枯渇抑止の観点からはもとより、CO 2 排出量が高炉鋼材の約1/4 程度に削減されることからも、有用である。従来、電炉鋼材は、不純物の混入により、溶接性・破壊靭性等が高炉材に比べ劣ることがいわれてきた。しかし、近年においては、不純物の除去技術の進歩により、性能において高炉材とそん色のない製品が供給されるようになってきており、建築構造用の規格であるSN規格を満足する製品も多く出回っている。

ただし、JISでは成分量の規定のない元素で、溶接性、破壊靱性に悪影評を及ぼす元素が一部存在するので注意が必要である。溶接性、破壊靭性等において特に通常より高い性能を期待する部位等においては、規格とは別に当該元素の含有量、目標靭性値等を指定することが望ましい。

建物の長寿命化推進もまた、天然資源の枯渇抑止、CO 2 排出削減の観点から重要である。最近、構造躯体等の長寿命化を意図して、ステンレス鋼材等の活用が提案される場合がある。しかし、例えばステンレス鋼材と普通鋼材の混用は、場合によっては電食等の新たな問題を引き起こすおそれもあり、十分な注意が必要である。


(c) 地域環境問題の関わりとして留意すべき事項は、工事中の近隣への錆の飛散等の問題が挙げられる。


(d) 室内環境問題としてはシックハウス・シックビル問題があるが、それと鉄骨工事の関連については、塗装の問題が挙げられる。これについての詳細は、18章、19章等を参照されたい。

通常、塗装の仕様については、設計段階で十分に配慮がなされており、その指示に従って施工が行われれば比較的問題は少ないと思われるが、まれに工事現場において安易に仕様変更が行われ、結果として問題が生じることがあるので注意する。

その他の室内環境問題としては、耐火被覆の問題が挙げられる。従来、耐火被覆には主成分として長くアスベスト(石綿)が使用されてきたが、発がん性等の理由からその危険性が指摘されていた。

アスベストを原材料とする吹付け耐火被覆材については大気汚染防止法により、解体工事の届出、マニュアル遵守等が義務付けられている。また、平成 18年 9月に改正された労働安全衛生法施行令により石綿等の製造等が全面禁止とされ、石綿障害予防規則により更なる石綿暴露防止対策の充実が図られた。平成18年 10月には建築基準法が改正され、石綿の飛散のおそれのある建築材料の使用が規制された。

「標仕」でも平成19年版の改定で、工事に使用する材料はアスベストを含有しないものとされている。

今日では、耐火被覆材の脱アスベスト化が達成されている。



7章 鉄骨工事 2節 材料

第7章 鉄骨工事


2節 材 料

7.2.1 鋼 材

(a) 鋼材の製造

建築用に使用される鋼材は、その用途に応じて種々の特性を有し、その素材である鉄鉱石、鉄くずから多くの製造工程を通して製造される。図7.2.1 に、製鉄所における素材の一貫製造工程の概略を示す。


図7.2.1_製鉄所における素材の一貫製造工程.jpg
図 7.2.1 製鉄所における素材の一貫製造工程


鉄鋼製造工程の中で鋼の特性を決める主な要因は、製鋼工程における鋼の成分・鋳造法、圧延・機械成形工程における加工・溶接や熱処理条件、表面処理工程におけるめっき・塗料の成分や被覆方法等で、これらを適切に組み合わせることにより所定の特性をもった素材が製造される。特に注目すべきことは、技術の向上により1970年代まで主流であった造塊・分塊法が、連続鋳造法に移行して、現在では 95%以上の鋼材が連続鋳造により製造されるようになったことで、結果として鋼材の品質向上に大きく貢献している。また、製造された素材は、試験や検査によって所定の特性をもっていることが確認される。表7.2.1は、製鉄所が行っている主な試験や検査項目である。

なお、製造された素材について、製造業者より品質の証明書として規格品証書(ミルシート、検査証明書、試験成績書等)が発行される。


表7.2.1 製鉄所における主な試験や検査項目
表7.2.1_製鉄所における主な試験や検査項目.jpg


(b)構造用鋼材の性質と種類

(1) 鋼の物理的性質
通常の鋼がもつ基本の物理定数を、表7.2.2 に示す。


表7.2.2 鋼の物理定数
表7.2.2_鋼の物理定数.jpg


(2)鋼中の炭素含有量と材質

鉄骨工事に使用される構造用鋼は、そのほとんどが炭素鋼(普通鋼)と呼ばれるものである。炭素鋼は、炭素含有量が通常0.02〜約2%の範囲の鋼であり、鋼中の炭素(C)含有量によりその材質が大きく変化する。一般的には、炭素量が多くなると引張強さと硬さは増加するが、伸びや靭性(ねばり強さ)が低下する。そして、炭素量が多くなり過ぎると材質はもろくなり構造用鋼材として使用できなくなる。図7.2.2 に炭素量と材質変化を示す。

図7.2.2_炭素量と材質変化.jpg
図 7.2.2 炭素量と材質変化
※シェルフエネルギーとは、鋼のシャルピー試験において、完全延性破壊を呈する温度のエネルギーをいう。


(3)高温度における材質変化

建築構造物の設計や工事の際の、鋼材の材質特性は、一般的に常温の値を使用することが多い。しかし、鋼材は、温度の上昇とともに強度が低下することがよく知られており、鋼材の使用場所や環境によって高温度になるような場合は、この強度の低下をあらかじめ見込んで使用しなければならない。図7.2.3 に、鋼材の主な材質が、温度とともに変化する状況を示す。


図7.2.3_温度と鋼材の材質変化の関係.jpg
図 7.2.3 温度と鋼材の材買変化の関係


(4) 鋼の成分と溶接性

鉄骨工事にとって重要な溶接性は、鋼材の炭素量と密接な関係にある。炭素が多く含まれる鋼材の溶接性は一般的には悪い。したがって、炭素量を適切に抑えて、ほかのマンガン(Mn)やけい素(Si)等の成分を添加して引張強さ、硬さ、伸びを確保しながら溶接性の改善を図ることが多い。 鋼材の溶接性への影響度を表す数値が炭素当量(Ceq)、溶接割れへの影響度を表す数値が溶接割れ感受性組成(P CM )である。これらは、添加されたほかの成分の影響を、次式(JIS G3106、JIS G 3136より引用)によって換算した数値である。

鋼の成分,炭素当量と溶接割れ感受性組成.jpeg

炭素当量及び溶接割れ感受性組成は、溶接材料、溶接条件、溶接部の形状等とともに溶接部の性能を確保するための重要な指標の一つであり、例えば、JIS G 3136(建築構造用圧延鋼材)(SN材)では、炭素当量を 400N/mm 2 の B,C材で 0.36%以下、490N/mm 2 の B、C材で 0.44%以下(厚さ 40mm以下)、0.46%以下 (厚さ 40mをm超え 100mm以下)と規定している。 また、溶接割れ感受性組成もSN400B,C材で 0.26%以下、SN490B, C材で 0.29%以下としている。

なお、式中の元素記号は、その含有量を重量%で示したものである。


(5) 熱処理と材質変化

鋼は, 熱処理によって材質を変化させることができる。 素材に行われる熱処理や溶接部又はその周辺に残る有害な影響を解除する溶接後の熱処理は、この性質を利用したものである。

通常行われている熱処理には、次のような種類がある。

?@焼入れ
鋼を硬くし、強度を増加するためにある特定の温度以上まで加熱したのち、急冷する方法


?A焼戻し
焼入れした鋼の硬さや強度を減少して、靭性(ねばり強さ)をもたせるため適切な温度(400〜650℃程度)まで加熱したのち、自然に冷却する方法


?B焼ならし
加工した鋼の結晶組織を微細化・均一化するため、ある特定の温度以上まで加熱したのち、自然に冷却する方法


?C焼なまし
鋼を軟らかくするために結品組織の大きさを整えたり、内部応力の除去のため、適当な温度で一定時間加熱したのち、ゆっくりと冷却する方法(炉の中で冷却することが多い。)

溶接構造物や溶接機械部品の内部応力除去のために行われる熱処理を、応力除去焼鈍ということがある。


(6) 鋼材の用途と分類

鋼材には.多くの種類があり用途に応じて使用される。各々の鋼材は、品質要求に適合するように製造されているから、十分な配慮(例えば、構造物の荷重・圧力・温度等の条件、切削・溶接・熱処理・表面処理等の加工条件に合うかどうか)をして、適切な鋼材を使用する。

構造部位の視点に立つと、激震時に部材が塑性化する部位か弾性範囲に留まる部位かによって、降伏点又は耐力、降伏比、板厚方向性能の保証の有無を使い分けることが直要である 。


(7)主な鋼材の種類

(i) 建築基準法に基づく告示に規定された主な鋼材の種類とその概要を表7.2.3に示す。

なお、JIS G 3106(溶接構造用圧延鋼材)で熱処理を行ったときは、記号の末尾に焼ならしN、焼入れ焼戻しQ、熱加工制御 TMC の各記号を付記することになっている 。

また、JIS G 3106 で内部欠陥のないことを立証するために超音波探傷試験を行ったときは、記号の末尾に UT を付加して表す。 超音波探傷試験は、JIS G 0901(建築用鋼板及び平鋼の超音波探傷試験による等級分類及び判定基準)による。

なお SN400C、SN490Cは出荷前に超音波探傷試験が実施されている。また、SN400B、SN490B はオプションで超行波探傷試験ができることになっている 。

JIS G 3101 (一般構造用圧延鋼材)に規定されるSS400 材と JIS G 3106 に規定される SM490A材は建築用鋼材として多く使用されているが、溶接性、衝撃特性及び板厚方向の性能が必要となる箇所に使用する場合は、特にりん(P)と硫黄(S) の不純物の含有量に注意して使用する。

溶接性において、高温割れの主因は溶接金板のデンドライト境界面に残存する低融点の不純物にあるとされており、 P や S 等が割れを促進する元素として知られている。また、T 継手あるいは隅肉多層盛溶接部に発生するラメラテアは、圧延方向に伸長した鋼板の層状介在物 (MnS) が原因の一つとされている。更に、この層状介在物 (MnS) は、板厚方向の絞り値にも大きく影響する。参考として、各鋼種の P 及び S の JIS 規格値を表 7.2.4 に示す。

なお、溶接接合の場合は、その部位の重要度に応じてP や S の少ないものを使用することが望ましい。


(?A) 表 7.2.3 に掲げるもののほか 建築基準法に基づき指定又は認定を受けた構造用鋼材及び鋳鋼がある。


表 7.2.3 主な綱材の種類と概要
表7.2.3_主な鋼材の種類と概要.jpg


表 7.2.4 各鋼種のP及びS のJIS 規格値(単位:%)
表7.2.4_各鋼種のP及びSのJIS規格値.jpg


(8)建築構造用圧延鋼材( SN材)

(?@) 建築物の主要構造部に用いられる鋼材として、SS材、SM 材の JIS 規格値を満足するだけでなく、次のような条件も満足する。

?@ 降伏点の上限値規定

?A 降伏比(降伏点/ 引張強さ) の上限値規定

?B 板厚方向の絞り値の下限値規定 (C材のみ)

?C 化学成分のうち、より厳しい P, S 値の規定

?D 炭素当量又は溶接割れ感受性組成の規定

?E JIS G 0901 による超音波探傷試験による内部品買の保証(C 材では規格として義務付けられている。 また、B材でもオプションで超音波探傷試験による内部品質の保証も可能である。)


(?A) JIS の概要は、次のとおりである。

名     称:建築構造用圧延鋼材
鋼種種類の記号:SN400A,B,C、SN490B, C
製 造 範 囲 :板厚 6mm以上、100mm以下の鋼板、帯鋼、平鋼及び熱間圧延形鋼
この鋼材の特徴は、次のとおりである。

?@ これまでの溶接性による識別のための鋼種記号SS材、SM材とは別に、建築用鋼材として鋼種記号 SN材とする。


?A 溶接性の保証の有無、板厚方向の引張り特性の保証等を、強度区分の末尾記号 A, B. C で表示する。

A : 主として弾性設計の範囲内で使用し、主要な溶接を行わない部材( 小梁、間柱、母屋、胴縁等の 二次部材 )に適用するもの 。

B : 溶接を行う部材であり かつ,塑性変形能力を期待する部材(柱、梁等耐震用主要構造部材) に適用するもの。

C : 溶接性、塑性変形能力を必要としたうえで、更に板厚方向引張応力が作用する部材(溶接組立箱形断面柱のスキンプレート、通しダイアフラム等)に適用するもの。このため、C 材では板厚方向引張り性能として絞り試験及び鋼板では UT (超音波探傷)試験が実施される。


?B 引張強さの区分は、これまでの 400Nと 490N と同じ 2種類とする。それぞれに対する F値はこれまでと同じ扱いである。


?C ミルシートに記載される化学成分の種類は増える。化学成分値については、B,C 材にあっては溶接性を重視する材料であることから P,S値が大幅に低減されている。 また、予熱管理も考慮して Ceq 又は P CM を保証するものとなっている。


?D 機械的特性に関する規定としては、若干の例外はあるが、通常使用される範囲の板厚のものに対しては次のとおりとなっている。

降伏点又は耐力:下限と上限を規定
引張強さ   :下限と上限を規定
降伏比    :上限を規定
0℃シャルピー吸収エネルギー値:下限を規定

これは、現行の耐震設計の基本理念が鋼部材の塑性変形能力によって地震入力エネルギーを吸収するものとしていることに対応させたものである。


?E 鋼板、形鋼の板要素の板厚マイナス側の公差が大輻に縮小された。これによって、これまで存在していた公称板厚りより薄い板要素の鋼材はほとんど排除された。


?F すべてのH 形鋼 ( (11)の外法一定 H 形鋼を含む。)のフィレットの r 寸法が H形鋼のサイズごとに統一され、8,13,18,22,26 mm の 5 つに集約された。


(9) 鋼板のマーキング

建築構造圧延鋼材 (SN 材)には、切板に切断された段階でも明らかに規格材であると識別できるように、鋼板表面全 面に社章あるいはドットマーク・規格名称をマーキングができることになっているので、マーキングのある材料を使用するとよい。

なお、形鋼には全面マーキングは行っていないが.全長にわたって連続マーキングしているものがある。

マーキングの内容は、次のとおりである

?@ マーク表示面:表(おもて)面全面

?A マーク表示項目:社章又は規格分別マーク又はドットマーク

 1) SN400B,C  社章と菱形
 2) SN490B,C  社章と円形
 3) その他   社章


?B マーク表示ピッチ:長手、幅方向ともに 350mmピッチ程度

?C マーク 寸 法:80mm × 80mm程度


(10) その他の鋼材

( i ) 建築構造用 TMCP 鋼

従来の鋼材の製造法は、アズロール(圧廷のまま)又は焼ならし処理が主体であった。この方法だと化学成分で強度を確保せざるを得ないが、炭素量や合金成分が高くなると、炭素当量が高くなり溶接性に悪影響を及ぼす。特に、厚肉鋼板ではこの領向が箸しかった。

最近、超高層建築等板厚の大きい場合に使用頻度の高い TMCP 鋼は、この点を解決したものである。TMCP は Thermo Mechanical Control Process の略称で「熱加工制御」又は「加工熱処理」とも呼ばれている。TMCP は、鋼材製造法を指し、TMCP 鋼はその方法で作られた鋼材のことである。

TMCP は熱間圧延時の圧延温度の制御と、その直後の冷却方法との組合せにより最適な材質をつくり込む。冷却方法は水冷型と非水冷型に分類されるが、建築用鋼材では通常水冷型が用いられている。

TMCP鋼と従来鋼の圧延方法の比較を図 7.2.4 に.TMCP鋼の炭素当量と強度の関係を図7.2.5 に示す。


図7.2.4_TMCP鋼と従来鋼の圧延方法の比較.jpg
図 7.2.4 TMCP鋼と従来鋼の圧延方法の比較


図7.2.5_TMCP鋼の炭素当量と強度の関係.jpg
図 7.2.5 TMCP鋼の炭素当量と強度との関係


大手高炉メーカー各社は、建築構造用 TMCP鋼材で、建築基準法に基づく認定を取得している。 これによると、この材料は厳格な品質管理のもとで、化学成分の調整と水冷型熱加工制御法による製造法で板厚 40mmを超え 100mm以下の材でも、40mm以下と同じ基準強度( F値 )が保証されている。


(ii) 冷間成形角形鋼管

冷間成形角形鋼管には、JIS による冷間成形角形鋼管(JIS G 3466 一般構造用角形鋼管 )と建築構造用に使用することを目的とした国土交通大臣認定による冷間成形角形鋼管があり、鋼板をプレス成形して製造される冷間プレス成形角形鋼管と鋼帯からロール成形により製造される冷間ロール成形角形鋼管に分けられる。

この国上交通大臣認定による冷間成形角形鋼管は、?@塑性変形能力の確保、?A溶接性の確保、?B公称断面寸法の確保、?C角部コーナー Rの曲率半径の統ーを特徴とする材料である。冷間プレス成形角形鋼管は、辺長及び板厚が 200 × 6(mm) 〜1,000 × 40(mm)の範囲で製造され、鋼管の引張強度レベルは400N/mm 2 級と490N/mm 2 級の 2種類がある。 490N/ mm 2 級の鋼管には、角部の靭性(試験温度 0℃でのシャルピー吸収エネルギー70J以上)を保証した角形鋼管もある。冷間ロール成形角形鋼管は,辺長及び板厚が150 × 6(mm) 〜 550 × 22(mm) の範囲で製造され、鋼管の造管前の鋼帯の強度は 400N/ mm 2 級であるが、造管後の降伏点の下限値を 295N/ mm 2 としている 。 詳細は、(独)建築研究所監修 「冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル」を参照されたい。

なお.冷間状態で円形鋼管にしたのち、熱間状態で角形にする熱間成形角形鋼管もある 。


( iii ) 高強度鋼

近年の鉄骨造建築物の高層化・大型化に伴い、厚くなる鋼部材の板厚を抑え軽量化等を図るため、490N/mm 2 級鋼を超える 550、590、780、1,000N/ mm 2 級の高強度鋼が開発されている。

これらには、使用ニーズに合わせて、低降伏化、高降伏化、溶接施工の難易度軽減のための予熱低減を可能とするなどの性能を有する製品も製造されている。


(iv) 耐火鋼( FR鋼)

鋼材は高温になると強度が低下するため、耐火被覆が必要となる。 耐火鋼は、耐熱性を高めるためにモリブデン等の合金を添加することで高温強度を向上させ、耐火被覆を軽減若しくは無被覆にできる鋼材である。 600℃においても、常温規格値の 2/ 3 以上の降伏耐力を保証している。


(v) 低降伏点鋼

制振構造において低降伏点鋼を使用する制振デバイスは他のデバイスに比較して安価で、かつ、信頼性や耐久性も高いことから急速に普及してきた鋼材である。 低降伏点鋼は通常の柱梁の主架構の鋼材よりも降伏点が低く、地震時に
低降伏点鋼を早期に降伏させることで地震入カエネルギーを鋼材の塑性エネルギーに変換して制振効果を発揮させる。

なお、低降伏点鋼は、降伏点又は耐力が 225N/mm 2 級及び 100N/mm 2 級の 2種類が主に使用される。


(11) 外法一定 H形鋼 (定形H 形鋼)

従米の H形鋼は、圧延製造上の制約から、同一シリーズでは内法が一定であり、フランジ厚の変化によってせいが異なっていた。 このため、柱梁接合部に極端に厚いダイアフラムを要したり、継手部にフィラープレートの挿人が必要であった。

圧延製造技術の進歩により、上記の問題点を解決した製品が外法一定 H形鋼である。 この H 形鋼は同一シリーズ内のサイズ構成も豊富で、経済的なサイズ選択の自由度が広がった。各社のサイズはほぽ同じである。フィレット寸法は全メーカーで統一寸法(13、18mm)となっている。 また、この H 形鋼のフランジ、ウェブの板厚は、鋼板の常用板厚とほとんど同厚になっている( 例外は板厚14mmのみ)。


(c) 鋼材のJIS の抜粋

JIS G3136(建築構造用圧延鋼材)の抜粋を次に示す。

JIS G3136:2012

1.適用範囲
この規格は、建築構造物に用いる熱間圧延鋼材(以下、鋼材という。)について規定する。


3.種類及び記号並びに適用厚さ
鋼材の種類は 5種類とし、その記号及び適用厚さは、表1による。

表1種類の記号
JIS_G3136_表1_種類の記号.jpeg


4.化学成分
鋼材は、11.1によって試験を行い、その溶鋼分析値は、表2 による。

表 2 化学成分
JIS_G3136_表2_化学成分.jpeg


5. 炭素当量又は溶接割れ感受性組成

5.1 炭素当量又は溶接割れ感受性組成

鋼材の炭素当量又は溶接割れ感受性組成は、次による。

a) 炭素当量は、表3による。炭素当量の計算は、11.1 の溶鋼分析値を用い、式(1)による。

なお、計算式に規定された元素は、添加の有無にかかわらず、計算に用いる。

5.1_炭素当量.jpeg
ここに、Ceq:炭素当量(%)

表3 炭素当量
JIS_G3136_表3_炭素当量.jpeg


b) 受渡当事者間の協定によって、炭素当量の代わりに溶接割れ感受性組成を適用してもよい。この場合の溶接割れ感受性組成は、表4 による。溶接割れ感受性組成の計算は、11.1 の溶鋼分析値を用い、式(2)による。

なお、計算式に規定された元素は、添加の有無にかかわらず、計算に用いる。


JIS_G3136_PCM_溶接割れ感受特性組成.jpeg
ここに、
P CM :溶接割れ感受性組成(%)

表4 溶接割れ感受性組成
JIS_G3136_表4_溶接割れ感受性組成.jpeg


6. 機械的性質

6.1 降伏点又は耐力、引張強さ、降伏比及び伸び

鋼材は、11.2 によって試験を行い、その降伏点又は耐力、引張強さ、降伏比及び伸びは、表5による。


6.2 シャルピー吸収エネルギー

厚さ12mmを超える鋼材は、11. 2 によって試験を行い、そのシャルピー吸収エネルギーは表 6 による。 この場合、シャルピー吸収エネルギーは.3個の試験片の平均値とする。

なお.個々の試験結果のうち 1個は、27J 未満になってもよいが、19J 以上でなければならない。

表6 シャルピー吸収エネルギー
JIS_G3136_表6_シャルピー吸収エネルギー.jpeg


6.3 厚さ方向特性
鋼材は、11.3 によって試験を行い、その厚さ方向特性は表 7による。

表7 厚さ方向特性
JIS_G3136_表7_厚さ方向特性.jpeg


表5 降伏点又は耐力、引張強さ、降伏比及び伸び

JIS_G3136_表5_降伏点又は耐力,引張強さ,降伏比及び伸び.jpeg



7. 超音波探傷試験

SN400C 及び SN490C の厚さ16 mm 以上の鋼板及び平鋼は、11.4 の試験を行い、判定は 表8 による。 SN400B及びSN490Bの厚さ 13 mm以上の鋼板及び平鋼は、受渡当事者間の協定によって超音波探傷試験を実施してもよい。その場合、試験は、11.4 によって行い、その判定は表8 による。

表8 超音波探傷試験
JIS_G3136_表8_超音波探傷試験.jpeg


14. 表示
検査に合格した鋼材は、鋼材ごと又は 1結束ごとに、次の項目を適切な方法で表示する。 ただし、受渡当事者間の協定によって、項目の一部を省略してもよい。

a ) 種類の記号(超音波探傷試験を行ったことを示す記号及び熱処理の記号を含む。)

b ) 溶鋼番号又は検査番号

c ) 寸法

d ) 結束ごとの数量又は質量 (鋼板と鋼帯の場合)

e ) 製造業者名又はその略号


JIS G3136:2012




7.2.2 高カボルト

(a) トルシア形高カボルト

トルシア形高カボルトは、JIS形の高力ボルトに形状が似たもので、ボルトの締付けにより、図 7.2.6 に示すように、ボルトのネック部が破断することによりボルトの締付けが確認でき、国土交通大臣の認定が必要である。 機械的性質による種類は、ボルトの等級で代表し、2種の JIS 形高カボルトに相当するものをS10T と記す。その形状を図 7. 2.6 に示す。

図7.2.6_トルシア形高力ボルト.jpg
図 7.2.6 トルシア形高力ボルト


(b) JIS 形高カボルト

(1) JIS に定められている高カボルトであり、詳細については、JIS B 1186(摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット) の抜粋を参照する。

(2) セットとは、図 7.2.7 の 1組をいう。


図7.2.7_JIS形形高力ボルトのセット.jpg
図7.2.7 JIS形高カボルトのセット


(3) JIS 形高カボルトは、1種、2種及び 3種があるが、1種はほとんど製造されていないこと、3種は遅れ破壊等材質的に多少問題のある場合があるので 「標仕」では 2種に限定している。


(4)機械的性質による種類を、ボルトの等級により代表させることがある。 例えば、2種のボルトを、F10T のボルトと呼ぶ。( 1種は F8T、3 種は F11Tと称す)


(5)トルク係数値による種類はナットの回転しやすさ(締付けやすさ)の種類であり、ナット、ボルトの表面処理によって定めている。通常表面処理にはボンダリューベという処理が行われ、処理のあるものは種類が Aになり、処理してないものは Bになる。

一般に、種類 A・B の使用別径は 20mmを境にして区分し、径の大きいものを Aとして、Bに比べると小さいトルクで締付けが容易に行えるようにしている。


(c ) 高カボルトの日本鋼構造協会規格 JSS 及びJIS の抜粋

(1) JSS ?U 09(構造用トルシア形高カボルト・六角ナット・平座金のセット)の抜粋を次に示す。

JSS ?U 09-1996

1,適用範囲
この規格は、主として鋼構造にセットの温度が 0℃〜 60℃の範囲で使用する構造用トルシア形高カボルト・六角ナット・平座金のセット(以下、セットという。) について規定する。


3,構成及び種類・等級

3.1 構 成
セットの構成は、3.2 に規定する構造用トルシア形高カボルト(以下、ボルトという。)1個、構造用高力六角ナット(以下、ナットという。)1個、構造用高力平座金(以下、座金という。)1 個によって構成する。


3.2 種類・等級
セットの種類・等級は、1種類、1等級とし、セットを構成する部品の機械的性質による等級の組合せは、表1 による。


表1 セットの種類及び構成部品の機械的性質による等級の組合せ
JSS_2_表1_セットの種類及び構成部品の機械的性質による等級の組合せ.jpeg

JSS ?U 09-1996



(2) JIS B 1186(摩擦接合用高力六角 ボルト・六角ナット・平座金のセット) の抜粋を次に示す。



JIS B 1186:2013

1. 適用範囲
この規格は、主として鋼構造に使用する摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット(以下、セットという。) について規定する。

4 セットの構成及び種類・等級

4.1 セットの構成
セットの構成は.4.2 に規定する摩擦接合用高力六角ボルト(以下、ボルトという。) 1個、摩擦接合用高力六角ナット(以下、ナットという。)1個及び摩擦接合用高力平座金(以下、座金という。)2個によって構成する。


4.2 種類・等級
セットの種類は、セットを構成する部品の機械的性質によって、1種及び 2種とし、さらにトルク係数値によってそれぞれ Aと Bとに分け、セットを構成する部品の等級は、表 2〜表5 に示すそれぞれの機械的性質によって決まる。 (表 2 ~ 5省略)

セットの種類及び適用する構成部品の機械的性質による等級の組合せは、表1 による。

表1 セットの種類及び構成部品の機械的性質による等級の組合せ
JIS_B1186_表1_セットの種類及び構成部品の機械的性質による等級の組合せ.jpeg


6. セットのトルク係数値

セットのトルク係数値は、12.4 によって試験したとき、表6に適合しなければならない。 この場合、トルク係数値は、次の式によって求める。

JIS_B1186_トルク係数値.jpeg
ここに
k:トルク係数値
T:トルク(ナットを締め付けるモーメント)(N・m)
d:ボルトのねじ外径の基準寸法(mm)
N:ボルト軸力( N )


表6 セットのトルク係数値
JIS_B1186_表6_セットのトルク係数値.jpeg


11. 潤滑及び防せい(錆)処理
ボルト、ナット及び座金には、それらの品質に有害な影響を与えない潤滑及び防せい(錆)処理を施すことができる。


13. 検査

13.5 セットのトルク係数値検査
セットのトルク係数値検査は、12.4 によって試験を行ったとき、箇条 6に適合しなければならない。 また、この検査では検査ロットの保証品質水準は、次による。

a) 検査ロットのトルク係数値の標準偏差の保証品質水準は、危険率5%以下、相対標準誤差 8%以下とする。 適用に当たっては、工程が安定状態にある場合は、品質管理データ又は検査データを用いてもよい。 また、特に必要がある場合は、受渡当事者間の協定によって、相対標準誤差を規定の値より若干多くとり、サンプルの大きさを少なくしてもよい 。

b) 検査ロットのトルク係数値の平均値の保証品質水準は、表13 に示す値以上とする 。標準偏差は、a) によって求められた値を用いる 。

注 )この検査ロットとは、4.3.5 に示す 1セットロットを指す。


表13 トルク係数値の平均値の保証品質水準
JIS_B1186_表13_トルク係数値の平均値の保証品質水準.jpeg


14. 製品の呼び方
セットの呼び方は、規格番号又は規格名称、セットの機械的性質による種類、セットのトルク係数値による種類、ねじの呼び × ボルトの長さ(?)及び指定事項による。

注)特に指定事項がある場合は、括弧で示す。

JIS_B1186_高力ボルトセットの製品の呼び方.jpeg


15 表 示

15.1 製品の表示
セットの構成部品に関する表示は、次による。

a) ボルト頭部の上面に、次の事項を浮き出し又は刻印で表示しなければならない。

1) ボルトの機械的性質による等級を示す表示記号( F8T 又は F10T )

2) 製造業者の登録商標又は記号

b) ナット上面に、ナットの機械的性質による等級を示す表示記号を、表14 の表示記号を用いて浮き出し又は刻印で表示しなければならない。

なお、受渡当事者間の協定によって、製造業者の登録商標又は記号を表示してもよい。


表14 ナットの表示記号
JIS_B1186_表14_ナットの表示記号.jpeg


c) 座金には、機械的性質の等級を示す記号は、表示しない。

なお、受渡当事者間の協定によって、製造業者の登録商標又は記号を表示してもよい。

15.2 包装の表示
包装には、次の事項を明瞭に表示しなければならない。

a) 規格名称

b) セットの機械的性質による種類

c) セットのトルク係数値による種類

d) ねじの呼ひ × ボルトの長さ(?)

e) 数量

f ) 指定事項

g) 製造業者名又は登録商標

h) セットのロット番号

i ) セットの検査年月

JIS B 1186 : 2013



(d) 溶融亜鉛めっき高カボルト

(1) JIS が定められていないので、建築基準法第 37条に基づく大臣認定を受けた製品を使用する。

(2) 大臣認定を受けた製品は、JIS B 1186 に準拠して製造されており、セットの種類は 1種 (F8T 相当)である。 F 10T やトルシア形のものは製造されていない。

なお、平成25年 8月現在、大臣認定を受けている製造所は、8社 9工場である。

(3) ボルトの材料はF10T 高カボルトに使われているもの(低炭素マルテンサイト系ボロン鋼等)を使用しており、ボルト成形後の熱処理(焼入れ・焼戻し)で焼戻し温度を 500℃程度にして F8T の機械的性質を付与している。 このため、450℃程度のめっき浴で浸漬めっきしても機械的性質が変化しない靭性が高く耐遅れ破壊性の高い高カボルトになっている。

(4) 溶融亜鉛めっきの付着量は、550g/m 2 (膜厚換算約 80μm) 以上である。

(5) ボルトのねじは、転造した正規の有効径のままとし、めっきの付着による径の量大を考慮して径を細くすることはしない。ナットのねじは、めっきの前にオーバータップして有効径を量大し、めっき後はねじさらいをしない。


(6) 締付けは、ナット回転法(7.12.4 (b)(3)参照)で行うため、トルク係数値の調整のための表面潤滑処理は、めっき後のナットで行う。ただし、やむを得ず頭締めを行う場合は、めっき後のボルトに表面澗滑処理を行い、ナットはめっきのままとするのがよい。 また、ボルト締め用のセットは、製造時に「頭締め用」等とこん包に表示し、「ナット締め用」と区別する必要がある。

なお、「ナット締め用」でボルトの頭締めを行うと、ボルトとナットのとも回りが生じたり、トルク値が高くなり過ぎるなどして、適正な締付けができなくなるので注意する。


7.2.3 普通ボルト

(a) 軽量形鋼構造において普通ボルトを使用することが多い。一般に普通ボルト接合は、小規模な構造物に使用されている。


(b)ボルト及びナットは、「標仕」では、JIS による鋼製六角ボルト及びナットで、仕上程度が中、ねじの等級が 6g (ボルト)、6H(ナット)の規格に合うものであれば、強度区分は、ボルト4.6 以上、ナット5 以上のいずれを用いてもよい。

ナットの形状は通常JIS B 1181 (六角ナット)の区別 1・2 ・4 種のどれでもよい。なお、戻止めには 3種を用いてもよい。 また、強度区分の高いボルト及びナットを溶接により戻止めする場合には、使用する溶接材料等で溶接割れが生じる場合があるので注意する。


(c)「鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度の基準強度を定める件」(平成12年12月26日 建設省告示第 2464 号)では、強度を必要とするボルトには JIS B 1051(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質ー 第1部:ボルト、ねじ及び植込みボルト)によるボルトを使用することとなっている。その他、国土交通大臣が認定したボルト又は国土交通大臣が基準強度を指定したボルトを使用することとなっている。





7.2.4 アンカーボルト

アンカーボルトの材質の種類は通常設計図書に指定されるが、ねじ、ナット及び座金は、特別な指定がないことが多い。 その場合は六角ボルトに相当するものを用いる。

なお、完成後構造的に耐力等を期待するものを構造用アンカーボルトと称し、建方用にのみ用いるものを建方用アンカーボルトと称する。

(一社)日本鋼構造協会では平成 12 年に伸び能力を有する建築構造用アンカーボルトの規格として、JSS II 13(建築構造用転造ねじアンカーボルト・ナット・座金のセッ ト)及びJSS II 14 (建築構造用切削ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット)を制定している。また、アンカーボルトのJIS 規格としては、JIS B 1220(構造用転造両ねじアンカーボルトセット)と JIS B 1221(構造用切削両 ねじアンカーボルトセット) が平成22年 10 月に制定されている。構造設計上の必要に応じて特記される場合があるので注意する。


7.2.5 溶接材料

(a) 溶接材料は、溶接方法 ( 7.6.1参照 )あるいは鋼材の種類により種々なものが用いられているが、「標仕」に直接関連のある材料のうち、主なものを次に挙げる。

なお、2001年の日本工業標準調査会(JISC)の「標準化戦略」におけるISO整合化 JIS改正指針を受けて、溶接材料についても ISO整合化JIS改正作業が行われた。今回の改正で、溶接材料の引張強さの単位が、鋼材のJISの場合と異なり、MPa( = 1N/mm 2 )で表示されたことに注意が必要である。

溶接材料は鉄骨製作工楊で使いなれたものが無難であり、良質で当該溶接に適したものであれば選定は鉄骨製作工場に任せるのがよい。また、溶接材料は種々の特徴があるので、選定に当たっては鋼種、板厚、継手の種類、溶接姿勢、作業性、能率性等を総合して、これらの特徴を生かし正しく選ぶ必要がある。


(1) 被覆アーク溶接

被覆アーク溶接棒のJISは、JIS Z 3211(軟鋼用被覆アーク溶接棒)とJIS Z 3212 (高張力鋼用被覆アーク溶接棒)が統合一本化され、2008年にJIS Z 3211(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒)として改正された。

軟鋼用被覆アーク溶接棒は種々な特徴をもっているが、表 7.2.5 に溶接性、作業性及び能率性からみた溶接棒の選び方の例を示す。

高張力鋼用被覆アーク溶接棒としては、拡散性水素による遅れ割れの発生防止の観点から、国内では低水素系溶接棒が使用されてしいる。



表7.2.5 溶接棒の溶接性、作業性、能率性からみた選び方の例
表7.2.5_溶接棒の溶接性,作業性,能率性絡みた選び方.jpeg

JIS Z 3211 : 2008 の溶接棒の種類の区分記号の表し方を図 7.2.8 に示す


図7.2.8_JIS_Z_3211-2008_溶接棒の種類の区分記号.jpg
図7.2.8 JIS Z 3211 : 2008 の 溶接棒の種類の区分記号

(2) ガスシールドアーク溶接

ガスシールドアーク溶接用ワイヤのJIS は、ソリッドワイヤについては、JIS Z 3312 (軟鋼及び高張力鋼用マグ溶接ソリッドワイヤ)が 新名称「 軟鋼、高張加鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ」として 2009年に改正され、フラックス入りワ イヤについても、JIS Z 3313(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ)が同じく 2009年に改正された。

JIS Z 3312 の溶接ワイヤの種類の新旧対照を表7.2.6 に、JIS Z 3312: 2009の溶接ワイヤの種類の区分記号の表し方を図7.2.9 に示す。

なお、低温用鋼は、建築の鉄骨工事ではほとんど使われないので省略した。


表7.2.6 JIS Z 3312の溶接ワイヤの種類の新旧対照
表7.2.6_JIS_Z_3312溶接ワイヤの種類の新旧対照.jpg


図7.2.9_JIS_Z_3312-2009_溶接ワイヤの種類の区分記号.jpg
図 7.2.9 JIS Z 3312 : 2009の溶接ワイヤの種類の区分記号


JIS Z 3313 の溶接ワイヤの種類の新旧対照を表7.2.7 に、JIS Z 3313 : 2009 の溶接ワイヤの種類の区分記号の表し方を図7.2.10 に示す。

なお、低温用鋼は、建築の鉄骨工事ではほとんど使われないので省略した。


表7.2.7 JIS Z 3313 の溶接ワイヤの種類の新旧対照
表7.2.7_JIS_Z_3313溶接ワイヤの種類の新旧対照.jpg


図7.2.10_JIS_Z_3313-2009_フラックス入り溶接ワイヤの種類の区分記号.jpg
図 7.2.10 JIS Z 3313 : 2009のフラックス入り溶接ワイヤの種類の区分記号

JIS Z 3312 のソリッドワイヤは普通の針金状のもの、JIS Z 3313のフラックス入りワイヤは 外皮金属の内部にフラックスが充填されているものである。

シールドガスは、一般には、炭酸ガス(CO2 100%)、アルゴンガス (Ar 100%)及び炭酸ガスとアルゴンガスを混合したものが使用されている。使用されるガスの JIS としては、JIS Z 3253 : 2011( 溶接及び熱切断用シールドガ ス)が 2003年に制定されて以降、これが一般化されつつある。 当該JISでは、炭酸ガスについては、種類 C1 が使用されている。しかし、JIS Z 3253 制定以前から使用されているJIS K 1106(液化二酸化炭素(液化炭酸ガス))の 3種を、現在も使用しているところがある。 参考として、両方の JIS の炭酸ガスの品質を表7.2.8 及び表7.2.9 に示す。

表7.2.8 JIS K 1106 の品質(JIS K 1106:2008)
表7.2.8_JIS_K_1106の品質(JIS K 1106-2008).jpg


表7.2.9 JIS Z 3253 の品質(JIS Z 3253:2011)
表7.2.9_JIS_Z_3253の品質(JIS Z 3253-2011).jpg


(3) セルフシールドアーク溶接

この溶接法は建築の鉄骨工事ではほとんど使われていないが、2009年にセルフシールドアーク溶接用のワイヤの JIS (JIS Z 3313) が改正されている。 一般に、セルフシールドアーク溶接用のワイヤは薄鋼板を折り曲げ、その中に脱酸剤や脱窒剤等の溶剤(フラックス)を充填成形したものであり、シールドガスなしで溶接できる。心線の径は、交流用では 3.2mm、直流専用では 2.0mm以下のものが適用される。このワイヤには脱酸、脱窒剤が多量に添加されているため、多量のヒュームが発生し、通風の悪い場所では溶接線が見えにくく、人体への影響がある。


(4) サブマージアーク溶接

サブマージアーク溶接では、ワイヤとフラックスの組合せにより様々な性質の溶接金属を作り出すことができる。 そのため、JIS Z 3183(炭素鋼及び低合金鋼用サブマージアーク溶着金属の品質区分)の規定には、溶着金属の品質区分(機械的性質及び化学成分)及び試験方法が定められており、溶接を行う鋼種、要求される機械的性質に応じて、 ワイヤとフラックスの組合せ時の溶着金属の機械的性質をこの品質区分により選定して使用されている。

建築基準法では溶着金属強度の記載がある JIS Z 3183が指定建築材料として規定されているが、実際の溶接は JIS Z 3183 の引用規格である JIS Z 3351に規定されている炭素鋼及び低合金鋼用サブマージアーク溶接ソリッドワイヤと JIS Z 3352 に規定されているサブマージアーク溶接用フラックスを用いて行われる。そのため「標仕」では、JIS Z 3183 のほかに 指定建築材料ではないが JIS Z 3351 及び JIS Z 3352 も記載している。


(5) エレクトロスラグ溶接

エレクトロスラグ溶接用材料としては、JIS Z 3353(軟鋼及び高張力鋼用のエレクトロスラグ溶接ワイヤ及びフラックス)の規定により、ワイヤ、フラックス、消耗ノズルの分類が示されている。溶接金属の機械的性質は、使用するワイヤの種類別により規定されており、機械的性質が満足されれば組み合わせるフラックスの種類は特定されない。

なお,国土交通大臣認定によるエレクトロスラグ溶接材料もある。

エレクトロスラグ溶接は高能率な立向き自動溶接施工法で、主にボックス柱のスキンプレートとダイアフラムとの溶接に用いられる。


(6) 耐火鋼材、耐候性鋼材等の特殊な鋼材には、それぞれ鋼材に応じた溶接材料がつくられている。これらの鋼材に応じた溶接材料にも、被覆アーク溶接及びガスシールドアーク溶接の場合において、JIS は適用される。


(b) 頭付きスタッド
建築構造物において頭付きスタッドが多く使われており、その材質や形状は JIS B 1198(頭付きスタッド)で規定されている。


7.2.6 ターンバックル

建築用ターンバックルは JIS A 5540(建築用ターンバックル)に規定されており、ターンバックルは胴1個とボルト2個とから構成されている。 胴は JIS A 5541(建築用ターンバックル胴)に、ボルトは JIS A 5540に規定されており、胴とボルトの組合せは、JIS に示す同一製品とする。


7.2.7 デッキプレート

(a) 構造床として使用するデッキプレートについては、デッキプレート版に関する告示(平成14年国土交通省告示第 326号)に規定されており、その基準解説書である国土交通省国土技術政策総合研究所他「デッキプレート版技術基準解説及び設計・計算例」 及び設計マニュアルである(独)建築研究所監修「デッキプレート床構造設計・施工規準」を参考にするとよい。

(1)この「規準」は、第 ?T 編「デッキプレートとコンクリートとのデッキ合成スラブ」、第?U編「デッキプレートと鉄筋コンクリートとのデッキ複合スラブ」及び第?V編「デッキプレートをそのまま構造体としたデッキ構造スラブ」で構成されており、デッキプレートは主要な構造材として規定されている。

なお、「標仕」では、名称を基準解説書に合わせて、第 I 編のデッキプレートを「デッキプレート版(デッキプレートとコンクリートとの合成スラブとする構法)」、第?V編のデッキプレートを「デッキプレート版(デッキプレート単独の構法)」としている。


(?@) 主として、床又は屋根構造に使用する。

(?A) 対象とするデッキプレートは、JIS G 3352(デッキプレート)の規定を満足するものとする。

(?B) 原則として、板厚は 1.0mm以上(ただし、デッキ複合スラブの場合は、0.8mm以上)としている。

(?C) 許容応力度は、平成 12年建設省告示第2464号に規定されているF値によっているが、一部高強度材料については、幅厚比より求まる有効幅の取り方を簡便にするため、235N/mm 2 以下で適用することにしている。

(v) 合成スラブ構造には、(一社)日本建築センター等により、告示第326号に定めるデッキプレート版に適合していることについて、任意の評定を取得している製品がある。


(2) 材料の品質確認は製造業者の品質証明書(使用鋼材の試験成績表、亜鉛の付着量等)によって行う。


(b) デッキプレートを主要構造材として用いた床スラブの耐火設計については、「デッキプレート床構造設計 ・施工規準」 を参考にするとよい。

(1) デッキ合成スラブ床では、耐火被覆のいらない連続支持合成スラブ及び単純支持合成スラブが耐火構造認定仕様として一般に使用されている。

(2) これら認定仕様では、スパン、許容積載荷重、コンクリート厚さ、溶接金網、デッキタイプ等の仕様が認定条件として定められているので、これに従って監理を行う。合成スラブ工業会「合成スラブの設計・施工マニュアル」を参考にするとよい。

(3) デッキ複合スラブ床は、平成12年建設省告示第 1399号に示されている例示仕様があり、この仕様では、デッキプレートの溝に配する鉄筋のかぶり厚さは 31mm以上、コンクリート厚さは、100mm以上(2時間)、70mm以上(1時間)となっている。この例示仕様に該当しないコンクリート厚さのもので、床2時間耐火構造の認定を取得したものがあるが、個別に仕様を確認する必要がある。

(4) デッキ構造スラブ床では、認定仕様である「吹付けロックウール被覆耐火構造(FP060FL- 9128 :15mm以上、FP120FL- 9129:20mm以上)」がよく使用される。

(5) このほか、デッキプレート単体で屋根30分耐火認淀構造のものもあるが、個別に仕様を確認する必要がある。


(c) 床型枠用鋼製デッキプレートは、6.8.3 参照のこと。



7.2.8 レール

(a) 「標仕」では、主として天井クレーン走行用に使用するレールを想定している。


(b) レールの種類は、JIS E 1101(普通レール及び分岐器類用特殊レール)及び JIS E 1103(軽レール)で、レール1m当たりの質量に相当する呼称で分類している。その種類を表7.2.10 及び 11に示す。


(c) レールの種類は、クレーンの定格荷重等によって選ばれ、設計図内で指定される。


(d) 材料の品質は、JISマーク表示か規格品証明書確認する。(7.2.10(a)参照)

表7.2.10 普通レールの種類(JIS E 1101:2012)
表7.2.10_普通レールの種類(JIS_E_1101-2012).jpg


表7.2.11 軽レールの種類(JIS E 1103:1993)
表7.2.11_軽レールの種類(JIS_E_1103-1993).jpg


7.2.9 柱底均しモルタル

(a) 柱底均しモルタルに使用される材料は、左官工事で一般に使用されるセメントや細骨材が用いられる。


(b) ベースプレートが大きい場合等では、施工性の良さ等から鉄骨柱下無収縮モルタルが用いられることが多い。

(1) 「標仕」では、無収縮モルタルは、品質や施工性等を考慮して特記することとしている 。

(2) (一社)公共建築協会では、建築材料・設備機材等品質性能評価事業(1.4.4 (e)参照)の一環として、無収縮モルタルの品質・性能等に関する評価基準を定め、これに合格する材料を評価しているので、材料の選定に当たってはこれらが参考となる。


7.2.10 材料試験等

(a) 適用範囲

(1)鋼材

(?@) 鋼材の品質基準は、「建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すべき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1446号)に定められている。そこでは、形状・寸法・外観等のほか、引張試験における降伏点又は 0.2バーセント耐力の上下限・降伏比・引張強さ及び伸び、化学成分、炭素当量あるいは溶接割れ感受性組成.シャルピー吸収エネルギー等の基地値が定められていることが要求されている。

(?A) JIS 規格品には、規格品証明書(ミルシート、検査証明書、試験成績等)が添付される。規格品証明書は、JISに基づいて行った管理試験及び検査の結果を記載した品質の保証書である。図7.2.11に規格品証書の例を示す。

規格品証明書には、溶鋼番号(製鋼番号、鋼番、チャージナンバー等)が記載されているので、鋼板形鋼等に表示されている溶鋼番号と対照して当該鋼材の規格品証明書であることを確認することができる。


図7.2.11_規格品証明書の例.jpg
図7.2.11 規格品証明書の例

なお、SN材は、7.2.1(b)(9)に示すように鋼材表面に識別マーク、あるいは鋼種が印字してあるので、切断後でも SN材であるか否かは、証明書がなくても判別できることになっている。

規格品証明書は原本とする。使用量が少ないなどやむを得ない場合は、その写しでもよいが、写しが当該鋼材と整合していることを保証した会社の社名・社印、保証責任者の氏名・押印及び日付の明示されているものでなければならない。流通が多岐にわたる場合には、写しの都度これが必要とされる。


1999年11月に鋼材の新しい品質保証システムが、(一社)日本鋼構造協会の「建築鉄骨品質管理機構」から提案され、「標仕」7.2.10(b)では、これによる「鉄骨工事使用鋼材証明書」を規格品証明書に代えて用いることもできるとしていた。しかし、建築鉄骨品質管理機構では、より信頼性を高める方法の検討を行い、2009年12月に「建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン」を発行した。そのため、「鉄骨工事使用鋼材証明書」は廃止された。本ガイドラインでは、JIS規格等の適合性証明は、原則として、「鉄骨工事使用鋼材等報告書」によるとしているので、「標仕」でいう 「その他規格を証明できる書類」とは、「建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン」の「鉄骨工事使用鋼材等報告書」と考えてよい。(7.1.2(a)参照)


(?B) 鋼材の機械的性質等を特記した場合等、材料試験等によりその性能を確認する必要がある場合には、試験項目、方法等に応じて相応する規格の規定により鋼材の適否を判定する。


(?C) 建築鉄骨では、鋼材の板厚方向に力が作用する部位(通しダイアフラム、溶接組立箱形断面柱のスキンプレート等)がある。それらの当該箇所に使用される鋼材の板厚方向の性能において、板厚方向の強度及び鋼材の内部品質(板厚内の傷の有無)が必要とされる場合がある。JIS G 3136(建築構造用圧延鋼材)(SN材)のC種は、このような部位に使用することを想定し、次の二つが規定されている。

?@ 板厚方法の強度:板厚方向(Z方向)の引張試験で絞り値が規定されている。

?A 板厚内の内部品質:超音波による検査が規定されており、JIS G 0901(建築用鋼板及び平鋼の超音波探傷試験による等級分類及び判定基準)で行うとなっている。

一方、SM材や SS材等にはこれらについての規定がないため、内部品質確認が必要とされる場合の試験方法として JIS G 0901が適用される。 板厚方向の引張強度について試験を必要とされることは極めて少ないため、規定する必要はないとし、「標仕」では、板厚方向に引張力を受ける鋼板の試験が必要とされた場合は、「JIS G 0901により、適用は特記による。」としている。


(2)溶接材料

溶接材料の規格は、そのこん包容器及びワイヤリール等に表示されているので、これより「標仕」7.2.5 に規定する適切な溶接材料であることが確認できる。「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件」(平成12年 5月31日 建設省告示第1464号)では溶接される鋼材の種類に応じて溶着金属としての性能(降伏点又は 0.2パーセント耐力及び引張強さ)が定められており、これに適合していることを確認する意味からも、必要に応じて、試験成績表あるいは化学成分表の提出を求めるのがよい。


(b) 試験方法及び試験片

鋼材の試験方法については、JIS G 0404 (鋼材の一般受渡し条件)、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)、JIS Z 2242(金属材料のシャルピー衝敷試験方法)にそれぞれ引張及び衝撃試験方法が定められている。

試験片についても、JIS Z 2241、JIS Z 2242にそれぞれ材料に応じた試験片が定められている。

その他、ボルト、リベット等のような特殊な材料の試験についてはそれぞれのJISに定められている。 また、化学成分の分析試験についてもそれぞれ JISが定められている。


(c) 材料試験関係用語

(1)JIS Z 2241に定められている用語の意味(JIS G 0202(鉄鋼用語(試験))参照)

(?@) 降伏点とは、引張試験の経過中において生じる上降伏点及び下降伏点の総称。紛らわしくないときには、上降伏点を単に降伏点と呼ぶことがある。

上降伏点とは、引張試験の経過中、図7.2.12 に示すように試験片平行部が降伏し始める以前の最大荷重を平行部の原断面積で除した値をいう。

下降伏点とは、引張試験の経過中、図7.2 12 に示すように試験片平行部が降伏し始めた後のほぼ一定の荷重状態における最小の荷重(慣性効果によるものを除く。)を平行部の原断面積で除した値いう。


図7.2.12_降伏点.jpg
図7.2.12 降伏点


(?A) 耐力とは、引張試験において,規定された永久伸びを生じるときの荷重を平行部の原断面積で除した値をいう。降伏点が明瞭でない材料では、その代わりに耐力が用いられる。JISでは、特に規定のない場合は、永久伸びの値を0.2% としている。


(?B) 最大引張荷重とは、引張試験の経過中、試験片の耐えた最大荷重をいう。


(?C) 引張強さとは、最大引張荷重を平行部の原断面積で除した値をいう。


(v) 永久伸びとは引張試験において、ある荷重を加え、次にこれを除去した後における標点間の長さと標点距離との差の標点距離に対する百分率をいう。


(vi) 破断伸びとは、試験片破断後における永久伸びをいう。紛らわしくないときには、単に伸びと呼ぶことがある。


(?F) 絞りとは、引張試験において、試験片破断後における最小断面積とその原断面積との差の原断面積に対する百分率をいう。


(2) 鋼材の硬さ
測定方法は、通常次の3種類が用いられ、それぞれJISが定められている。


?@ ブリネル硬さ
超硬合金球の圧子を用い,試験面に球面形のくぼみをつけたときの荷重をくぼみの直径から求めたくぼみの表面積で除した値をいい、記号HBWで表す。

JIS Z 2243(ブリネル硬さ試験一試験方法) が定められている。


?A ビッカース硬さ
対面角が 136度のダイヤモンド四角すい圧子を用い、試験面にくぼみをつけたときの試験力をくぼみの表面積で除した値をいい、硬さ値、硬さ記号の順に表示し、例えば、硬さ値が640で試験力 294.2Nでは、640HV30のように表す。

JIS Z 2244(ビッカース硬さ試一験試験方法)が定められている。 荷重が変わっても、硬さの数値は変わらないという特徴がある。くぽみが微細なので溶接部の硬さ分布を測るのに用いられる。


?B ロックウェル硬さ
円すい角が 120度のダイヤモンド圧子を用い、試験面に押し込み、その深さから算出する。試験力 1471Nの場合をCスケールといい記号HRCで表す。

なお、鋼球又は超硬合金球の圧子を用い、試験 980.7Nの場合をBスケールといい、記号HRBで表す。

JIS Z 2245(ロックウェル硬さ試験一試験方法)が定められている。


7章 鉄骨工事 3節 工作一般

第7章 鉄骨工事


3節 工作一般

7.3.1 適用範囲

本節は、鉄骨の製作に係る工作一般、製作精度及び製品検査を対象としている。

7.3.2 工作図

(a) 工作図
(1) 工作図は、設計図書の内容を実現するに当たり製作・建方における指示書的な役割を果たすものであり、設計図書の記載内容を正しく織り込み、製作・建方が可能であることを確認したものでなければならない。施工性や構造細部の納まりの確認が工作図のみで困難な場合は現寸図・模型等を補助的に作成し確認する。

(2) 「標仕」1.2.3 (a)では、施工図等(工作図を含む。)については監督職員の承諾を受けることとしているので、鉄骨の製作・建方の工程に支障がでないように提出させる。

(3) 工作図は、監督職員・受注者等・鉄骨製作工場が協議確定した設計図書に関する疑義事項及び施工の手段・手法に関する提案事項を反映したものとする。

(4) 工作図は、軸組図・伏図・柱詳細図・梁詳細図・継手基準図、溶接基準図等で構成し、記載内容は次のとおりである。

i) 鉄骨部材の詳細な形状・寸法・材質・製品数量・製品符号

(ii) 溶接及び高カボルト接合部の形状・寸法・ボルトの種類・等級・継手符号

(iii) 設備関係・内外装関係付属金物、仮設金物、コンクリート関係・鉄筋関係孔、ファスナー類


(5) 工作図の検討事項は、次のとおりであり、工場製作や工事現場施工においてトラブルが生じないように十分な検討を行う。

(i) 柱・梁・工場組立部材等の符号(建物の通り符号を利用する場合や通し番号による場合が多い。)

(ii) 建物の基準線と鉄骨の基準線との関係

(iii) スパン(梁間)、階高等の基準寸法・基準線と柱・梁・工場組立部材等との位置関係、床からベースプレート下端までの寸法

(iv) 柱・梁・工場組立部材等の形状・寸法及び構成部材の形状・寸法

(v) 各部の部分的詳細
?@柱と梁の取合い
?A ベース回りの納まり
?B スリーブ貫通部の補強等、また、隣接部材の接近のために、作業空間が狭く、ボルト締付け・溶接等の作業が困難な箇所の発見と処置

(iv) 接合部の添え板(スプライスプレート)・フィラープレート・クリアランス等及び次の?@から?Cの事項に関する設計図書との照合
?@ 高カボルトの種類・径・本数・ゲージ・ボルト間隔・最小縁端距離等
?A 溶接の種類・開先形状・大きさと寸法・長さ・位置等
?B アンカーボルトの種類・径・長さ・本数・位置等
?C SRC造の場合の鉄筋工事との関係

また、高カボルト及び普通ボルトの縁端距離等を確認する場合は(c)(4)〜(6)を参照する。

(vii) 他の建築工事との関連
?@ 内外装材料との関係
?A 建具類の埋込み金物の納まり、特にフロアーヒンジ・シャッターケース等
?B コンクリートの充填性を考慮した空気孔の設置等
?C SRC造の場合の鉄筋工事との関係

(?G) 仮設工事との関連
?@ クレーンの設置、重量物の積載、風・地震に対する倒壊防止、土圧に対する支持等のために鉄骨を補強する場合は、設計担当者と打ち合わせる。
?A 安全タラップ・吊りピース・足場用ピース・建入れ直し用ピース・親綱掛け用ピース等の仮設用金物の必要性
?B ウェブ板厚が薄く、溶接・運搬・建方の際に変形のおそれがある場合、溶接組立上必要な場合、又は施工上タラップとして必要な場合を除き、原則としてバンドプレートは取り付けない。

(ix) 設備工事との関連
?@ 主に、スリーブ位置、大きさ及び間隔の確認をする。(構造耐力上の制約についても確認する。)
?A ダクト、配符等の系統を確認し、スリーブの数、大きさ等が不足しないようにする。
?B 鉄骨の近くで交差する配管等の系統は、保温被覆材を含めて、施工性を確認する。
?C 排水管等一定の勾配を必要とするもの、柱・梁の近くで方向を変えるものは特に注意する。
?D ウェブ貫通孔板厚部分の耐火被覆材の厚さと保温被覆材を考慮した配管径の関係を確認する。


(b) 現 寸

(1) 鉄骨製作工場では、工作図のみでは不足する製作情報を作業者に伝える手段として、また、工場製作の能率向上を目的に現寸作業を行う。この現寸作業では、実物と同一寸法の定規(シナイ)・型板(フィルム)を作成する。一般には定規・型板の作成は、完備されている工作図から直接読み取り、作業をする方法が採用されており、標準的形状の建築物の場合、実物大の床書き現寸図については、通常作成する必要はない。

(2) 次のような場合は床書き現寸図やCADシステムから出力される実寸大のフィルムで作業性等を検討するのがよい。

(i) 曲率や90° 以外の取合い角度を有する変形した建築構造物の場合

(ii) 溶接作業及び高カボルトの締付けが困難と判断される箇所が存在する場合

(iii) 納まりが複雑で工作図からの直接読取りが困難な箇所が存在する場合

(3) NC(数値制御)加工装置を用いてけがき・切断・孔あけを行う場合は、定規・型板の作成に代わって、加工データが作成される。

(c) 「標仕」7.3.2 (b)では、高カボルト、普通ボルト及びアンカーボルトの縁端距離、ボルト間隔、ゲージ等は特記事項となっている。参考として、高力ボルト及び普通ボルトのゲージ、ボルト間隔、最小縁端距離等の標準を(1)から(6)までに示す。

(1) ボルトの表示記号の例を表7.3.1に示す。

表7.3.1 ボルトの表示記号の例
表7.3.1_ボルトの表示記号の例.jpeg


(2) ボルト孔の径を表7.3.2に示す。(「標仕」表7.3.2参照)

表7.3.2 ボルト孔の径 (単位:mm)
表7.3.2_ボルト孔の径.jpeg


(3) 高カボルトの締付け長さに加える長さを表7.3.3に示す。(「標仕」表7.2.2参照)

表7.3.3 高力ボルトの締付け長さに加える長さ (単位:mm)
表7.3.3_高力ボルトの締付け長さに加える長さ.jpeg


(4) 縁端距離及びボルト間隔を表7.3.4に示す。


表7.3.4 縁端距離及びボルト間隔(単位:mm)
表7.3.4_縁端距離及びボルト間隔.jpeg


(5) 千烏打ちのゲージ及びボルト間隔を表7.3.5に示す。

表7.3.5 千烏打ちのゲージ及びボルト間隔(単位:mm)
表7.3.5_千鳥打ちのゲージ及びボルト間隔.jpeg


(6) 形鋼のゲージ及びボルトの最大軸径を表7.3.6に示す。

表7.3.6 形鋼のゲージ及びボルトの最大軸径
表7.3.6_形鋼のゲージ及びボルトの最大軸径.jpeg


(7) (4)から(6)までの値は標準であり、高カボルト及び普通ボルトの縁端距離を変更する必要がある場合は、「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示策1464号)に規定される値を下回らないようにしなければならない。

アンカーボルトの縁端距離は、「鉄骨造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1456号)に定められているので、変更を行う場合はこの規定値を下回らないようにしなければならない。

(i) 図7.3.1のように配置されたボルトは、締付け機器の形によって、標準ピッチのままでは締付け機器が直角方向のボルトに当たって施工困難となることがある。

(ii) 部材が接近している場合には、締付け機器が入らないとか、トルクレンチのような長い締付け機器が動かせないことがある。(図7.3.2参照)


図7.3.1_直交するボルトの締付け.jpeg
図 7.3.1 直交するボルトの締付け


図7.3.2_締付け機器の大きさの検討.jpeg
図 7.3.2 締付け機器の大きさの検討





7.3.3 製作精度

鉄骨の製作にかかる精度及び製品精度は、「標仕」7.3.3では、JASS 6付則6[鉄骨精度検査基準]によるとしている(7.13.1参照)。

なお、JASS 6では次に示すものには適用しないとしている。

(1) 特記による場合または工事監理者の認めた場合
(2) 特に精度を必要とする構造物あるいは構造物の部分
(3) 軽微な構造物あるいは構造物の部分
(4) 日本工業規格で定められた鋼材の寸法許容差
(5) その他、別に定められた寸法許容差

7.3.4 けがき

けがきは、工作図又は型板・定規等により、加工・組立時の情報を直接鋼材上に記入する作業である。

一般に墨差し・水糸等を用いるが、目的に応じけがき針・ポンチ・たがねを使用することもある。最近では、自動けがき装置が使用される場合もある。

しかし、けがき作業に使用するポンチやたがね等による打痕は、応力集中を招くことから鋼材の耐力を著しく低下させる原因となる。そのため「標仕」7.3.4(b)では、溶接により溶融する箇所又は切断、切削及び孔あけにより除去される箇所を除き、高張力鋼、曲げ加工される外側へのポンチによるけがきやたがね等で傷をつけることを禁止している。

けがき寸法は、製作中に生ずる収縮や変形等を考慮した値とする。また、あと工程の作業者に製作情報が正確に伝わるように、工事名略号、材質、加工情報等が明瞭に記入されていなければならない。


7.3.5 切断及び曲げ加工

(a) 素材切断面の直角度の許容差は、JASS 6付則6付表(11)による。(7.13.1参照)

(b) 切断方法には次のようなものがある。

(1) 機械切断法
(i) せん断によるもの

切断速度は速いが、短所として切断面でのまくれ・かえり等の発生、板の変形、切断面の硬化等の問題があり、「標仕」7.3.5 (a)(3)では適用範囲を13mm以下に限定し、更に主要部材の自由端及び溶接接合部への適用を禁止している。

なお、主要部材の自由端とは、梁や柱のフランジのへり等である。

(ii) 切削によるもの
切断線を削りとることで切断する方法で、次の方法がある。

1) のこぎり切断によるもの

バンドソーやコールドソーがあり、前者は切断速度はやや速く精度はよく斜め切りができ、後者は切断速度は近いが高い精度が得られる。

2) 砥石切断によるもの
切断速度は速く、丸鋼、角鋼、軽量形鋼等の切断に用いられる。

(2) ガス切断法

鉄と酸索の急激な化学反応を利用した切断法であり、機器としては手動ガス切断機、自動ガス切断機。形鋼切断機、鋼管切断機、フレームプレーナ、NC切断機等がある。また、手動ガス切断機にアタッチメント、ガイドを取り付け半自動装置として使用することもできる。切断速度は遅いが、最もよく使用されている。切断面の精度も良く、経済的である。

(3) プラズマ切断法
プラズマアークの熱及び気流を利用した切断法であり、適用板厚は0.5〜50 mm程度である。切断速度は速いが切断溝幅が大きい。


(4) レーザー切断法
光エネルギーの集光熱による切断法であり、適用可能板厚は 0.1〜25mm程度である。高速切断が可能で切断溝幅が狭く孔あけ加工が可能である。

(c) 切断面の許容差は、JASS 6付則6付表1 (9)・(10)による。(7.13.1参照)凹凸、ノッチ等の不良箇所はグラインダー等で修正する。特にやむを得ない理由から手動でガス切断した場合には、切断面の精度を確保することが困難であるため、注意する必要がある。

(d) 切断面のうちメタルタッチが指定されている部分は、フェーシングマシン又はロータリープレーナ等の切削加工機を使用し、仕上げ加工面が50μmRz程度、直角度が 1.5/1,000 以下になるように平滑に仕上げる。

(e) 切断加工(シャーリング工場での切断材も含む。)後の鋼材の材質確認は、識別色、識別マークの表示、あるいはマーキング(7.2.1 (b)(9)参照)による。

なお、JIS G 3136(建築構造用圧延鋼材)によるSN材の識別は、7.14.3 [ SN鋼材材質識別表示記号・位置及び鋼材の識別表示標準]によることもできる。

(f) 曲げ加工は鋼材の機械的性質等を損なわない方法で行う。次に示す平成12年建設省告示第2464号では、500℃以下の加熱、厚さ 6mm以上の鋼材等(鋳鉄及び鉄筋を除く。)の曲げ加工においては外側曲げ半径が材厚の10倍以上の場合は加工前後で同じ基準強度及び材料強度としてよいとしている。したがって、この範囲外で曲げ加工を行う場合は、加工後の機械的性質等が加工前の機械的性質等と同等以上であることを確認しなければならない。

ただし、200〜400℃の範囲は青熱脆性域といわれ鋼材が常温よりもろくなる。加熱曲げ加工を行う場合はこの範囲を絶対に避けなければならない(図7.2.3参照)。


鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度の基準強度を定める件
(平成12年12月26日 建設省告示第2464号 最終改正 平成19年5月18日 )

第1 鋼材等の許容応力度の基準強度

一 鋼材等の許容応力度の基準強度は、次号に定めるもののほか、次の表の数値とする。

 (表省略)

二 建築基準法第37条第一号の国土交通大臣の指定するJISに適合するもののうち前号の表に掲げる種類以外の鋼材等及び同条第二号の国土交通大臣の認定を受けた鋼材等の許容応力度の基準強度は、その種類及び品質に応じてそれぞれ国土交通大臣が指定した数値とする。

三 前2号の場合において、鋼材等を加工する場合には、加工後の当該鋼材等の機械的性質、化学成分その他の品質が加工前の当該鋼材等の機械的性質、化学成分その他の品質と同等以上であることを確かめなければならない。ただし、次のイからハまでのいずれかに該当する場合は、この限りでない。

イ.切断、溶接、局部的な加熱、鉄筋の曲げ加工その他の構造耐力上支障がない加工を行うとき。

ロ.摂氏500度以下の加熱を行うとき。

ハ.鋼材等(鋳鉄及び鉄筋を除く。以下ハにおいて同じ。)の曲げ加工(厚さが6mm以上の鋼材等の曲げ加工にあっては、外側曲げ半径が当該鋼材の厚さの10倍以上となるものに限る。)を行うとき。

第2 溶接部の許容応力度の基準強度

(省略)

第3 鋼材等の材料強度の基準強度

一.(省略)
二.(省略)
三.第1第三号の規定は、前2号の場合に準用する。

第4 溶接部の材料強度の基準強度
 (省略)


(g) 曲げると外側は伸び、内側は縮むが、形鋼のようなものは曲げ角度が大きくなるとその影響が著しくなるので図7.3.3のように切曲げとするのがよい。ただし、曲げ半径は (f) による。


図7.3.3_形鋼の切曲げ加工.jpeg
図7.3.3 形鋼の切曲げ加工

(h) H形断面材の材端部の開先、スカラップ加工は.7.6.4(a)及び7.6.5 (b)による。





7.3.6 ひずみの矯正

(a) ひずみの矯正は、常温若しくは局部加熱して行う。

(b) 400N/mm 2 、490N/mm 2 級鋼材を局部加熱で矯正する場合の温度範囲は、次を標準とする。これ以外の鋼について、設計担当者と打ち合わせる。

(1) 加熱後空冷する場合    850~900℃

(2) 加熱後直ちに水冷する場合 600~650℃

(3) 空冷後水冷する場合    850~900℃
(ただし.水冷開始温度650℃以下)

なお、この温度は、加熱表面の温度を示している。温度測定には、接触温度計等が用いられる。


7.3.7 鉄筋の貫通孔径

(a) 鉄骨鉄筋コンクリート造では、鉄骨製作の段階で、鉄筋の買通孔をあけておかなければならない場合がある。

(b) 貫通孔径は、「標仕」表7.3.1による。
鉄筋が斜めに貫通する場合や鉄骨の形が複雑な場合には貫通孔の径を増す必要があるが、鉄筋の間隔によっては鉄骨の断面欠担が大きくなり、構造上問題となることがあるため、必要に応じて設計担当者と打ち合わせる。

なお、同一の部位に種々の径がある場合には、混同しやすいのでなるべく統一するのがよいが、その場合は、必ず設計担当者と打ち合わせる。

(c) 鉄筋の貫通孔の位置を決めるには、仕口部分の鉄筋の状態が分かっていなければならないが、簡単な場合の例を示せば図7.3.4のようになる。

図7.3.4 の作成に当たっての主な注意事項を次に示す。

(1) 鉄筋の交差位置では、どちら方向の鉄筋を上にするか決めなければならない。

一般的な基準はないが、通常梁せいの小さい方の主筋を外側にするなどの配慮が必要である。

(2) 四隅の梁筋の位置は、図7.3.4(ハ)の梁部分詳細に示すようにして定める。梁筋の仮想の直径 dを下式の値とする。

d ≦ 公称直径+節の最小高さ × 2

梁筋が2段になる場合は、内側になる鉄筋が特に鉄骨に当たりやすい。

(3) 鉄骨面と平行となる鉄筋の間隔は「標仕」5.3.5(d)及び(e)に定める鉄筋の間隔以上にする。


(4) 加工した鉄筋を、どのようにして差し込んだらよいか検討しながら鉄筋の位置及び継手位置等を定める。特に最外端の梁筋は注意を必要とする。


(5) 鉄骨フランジの鉄筋貫通は、耐力低下を招くので行ってはならない。


図7.3.4_仕口部分の梁筋貫通孔の例.jpg
図7.3.4 仕口部分の梁筋貫通孔の例


7.3.8 ボルト孔

(a) 高カボルト用の孔あけ加工は、鉄骨製作工場で行い、ドリルあけとする。加工精度の確保が可能なことを工場製作要領書の提出等によって確認できる場合は、小・中形山形鋼等にせん断孔あけを使用することができる。高カボルト接合面をブラスト処理する場合は、ブラスト前に孔あけ加工を行う。

(b) ボルト孔、アンカーボルト孔、鉄筋貫通孔は、ドリルあけを原則とするが、板厚 13mm以下の場合は、せん断孔あけとすることができる。

(c) 設備配管用貫通孔、付属金物等の孔で、孔径が 30mm以上の場合はガス孔あけを使用できる。ガス孔あけを行う場合の切断面の粗さは100mRz以下、ノッチ深さは1mm以下とし、孔径の精度は ± 2mm以下とする。

(d) 高力ボルト、普通ボルト及びアンカーボルトの公称軸径に対する孔径は、「標仕」表7.3.2による。溶融亜鉛めっき高カボルトの公称軸径に対する孔径は表7.3.2による。

(e) 孔あけ加工は、孔あけされる部材表面に対して直角度を保ち、正規の位置に行う。ドリル孔あけ後の孔周辺のばり、切り粉、せん断孔あけ後のばり、まくれ及びガス孔あけ後の凹凸.ノッチはグラインダー等により除去する。


7.3.9 仮設用部材の取付け等

仮設用部材のほか、設備関係、コンクリート・鉄筋関係、内・外装関係等の付属金物類や付属金物をあと付けするための金物類の取付けには主に隅肉溶接が用いられるが、この隅肉溶接は「仮付け溶接」と称されることが多く、安易に施工されがちである。したがって、その取付けは作業環境が悪く溶接品質の確保が困難な工事現場を極力避け、可能な限り鉄骨製作工場で行う。ただし、製品完成後に鉄骨製作工場の屋外滞貨場で溶接した場合には、工事現場の作業環境とほとんど変わらない。それを避けるためには、製作工程に合わせた適切な時期に付属金物類の取付け要領を決定し、本体の工場製作と同時に付属金物類の取付けを行うことが必要である。このために、仮設用部材・付属金物類の取付けに関しては、施工図・工作図の作成段階に必要なものを盛り込んでおく必要がある。

やむを得ず工事現場で溶接する場合も、原則として、JIS Z 3801又は3841の有資格者が従事し、ショートビードを避けるほか、外観検査の実施等、主要部材の溶接と同等の品質が得られるように施工することが必要である。


7.3.10 仮 組

(a) 一般の建築鉄骨では例が少ないが、仮組の実施が特記されている場合には、仮組要領書を提出させ、特記内容と照合・確認する。

仮組を行う目的の主なものは、次のとおりである。

(1) 部材数が多く、製品精度が工事現場の出来形に影響を及ぼす場合

(2) 複雑な構造物で、工事現場の作業に支障がないことを確認しなければならない場合

(3) 大架構部材のたわみ量を工事現場の建方以前に確認しておく必要がある場合

(4) 遠隔地や交通が不便な土地で、不具合が発生したとき補修に多大な費用を要する場合

(5) 鉄道線路等に近接した工事現場のため、建方時間に制約を受ける場合


(b) 仮組要領書の主な記載内容は、次のとおりである。

(1) 仮組の範囲
仮組の目的、工場敷地、設備能力等から総合的に決定される。

(2) 仮組の方法

(i) たわみ量の測定が目的の場合は、工事現場の建方と同一条件になる方法を採用する。

(ii) 寸法精度・納まりの確認の場合は、分割や横転の方法等により、安全と作業性を考慮した方法を採用する。

(3) 確認項目・測定方法及び許容差

仮組における確認項目を次に示す。許容差はJASS 6付則6を参考にし、規定がないものはあらかじめ受注者等・鉄骨製作工場と打合せをしておく必要がある (7.13.1参照)。

?@ 全体寸法
?A 部材相互の接合部納まり
?B 部材組立の可否
?C たわみ量

7.3.11 巻 尺

(a) 鋼製巻尺は、JIS B 7512(鋼製巻尺)の1級品を使用する。

(b) 鉄骨工事では、工事現場と鉄骨製作工場で異なる基準巻尺を使用することから、双方の基準巻尺を照合し、その誤差が工事に支障のないことを確認しなければならない。確認は工事現場用と鉄骨製作用の基準巻尺を並べた状態で一定の張力(鋼製巻尺に指定された張力とする。一般には50N)を与え、基準巻尺間の目盛り差を読み取って行う。JIS 1級構製巻尺の長さ10mにおける最大許容差は ± 1.2mmである。したがって、長さにおいて最大相対誤差が2.4mmとなる場合が生じる。

(c) 工場製作の各工程において使用する鋼製巻尺は、鉄骨製作用基準巻尺と照合し、その誤差を確認する。使用する鋼製巻尺は、誤差が最大許容差の1/2程度の精度を有するものを選択して使用するのが望ましい。(2.2.3(d)参照)

(d) 工事現場で鋼製巻尺を使用する場合は、気温による鋼製巻尺の伸縮を考慮して測定時刻を定めるか、気温変化による温度補正を行う必要がある。(2.2.3(d)参照)


7.3.12 製品検査

(a) 受注者等及び鉄骨製作工場が実施している製品検査の内容は、次のようなものである。鉄骨製作工場の行う社内検査、受注者等の行う中間検査・受入検査については、7.1.5(b)を参照のこと。また、受注者等が行う受入検査には書類検査と対物検査がある。

(1) 形状及び寸法精度の検査
製品寸法について、所定の形状及び寸法精度であることを確認する検査であり、検査項目・方法・許容差はJASS 6付則6等を基に、工場製作要領書等で定められた値によって行う。 (7.13.1参照)


(2) 取合い部の検査
仕口部・取合いプレートについて、設計図書の指示通りであるかを確認する検査である。


(3) 外観の検査
部材表面・切断面・工事現場溶接部の開先について、傷・ノッチ等の有無を確認する検査であり、検査項目・方法・許容差は「標仕」の規定のほか、7.3.5、7.6.7、7.6.10を参考にする。


(4) 高カボルト接合面の検査
高カボルト接合面について、所定の形状・寸法精度・外観であることを確認する検査であり、検査項目・方法・許容差は「標仕」7.4.2の規定による。工場締め高力ボルトの締付け検査も含み、方法等は「標仕」7.4.7及び8の規定による。


(5) 溶接部の検査
溶接部の表l面欠陥・内部欠陥について、所定の許容範囲にあるかを確認する検査であり、検査項目・方法・許容差・合否判定は「標仕」7.6.10及び11の規定による。


(6) スタッド溶接部の検査
スタッド溶接部について、所定の形状・寸法精度・外観であることを確認する検査であり、検査項且・方法・許容差は「標仕」7.7.3及び5の規定による。


(7) 塗装部の検査
素地調整した面と塗装面について、所定の外観であることを確認する検査である。塗膜厚等の詳細な検査については、検査の有無、測定方法、測定時期、測定箇所等について特記に従う。

(b) 塗装部の検査以外の製品検査は、原則として溶接外観検査その他の検査指摘事項の修正等が可能な塗装前の時期に実施する。

途装の指定がある場合は、原則として塗装部の検査以外の検査を終了したのちに塗装する。


7章 鉄骨工事 4節 高カボルト接合

第7章 鉄骨工事


4節 高カボルト接合

7.4.1 適用範囲

(a) 建築鉄骨で使用される高カボルト接合には、摩擦接合及び引張接合がある。

(b) 摩擦接合は高カボルトで継手部材を締め付け、部材間に生ずる摩擦力によって応力を伝達する接合法である。

(c) 引張接合は高カボルトを締め付けて得られる材間圧縮力を利用して、高カボルトの軸方向の応力を伝達する接合方法であり、摩擦接合と同様、ボルトの締付けカの存在に依存するものである。

(d) 通常規模の建物で設計される高カボルトを用いた接合部の形態は図7.4.1に示されるもので代表される。


図7.4.1(イ)は梁継手・柱継手で多用されるもので摩擦接合型と称される。図7.4.1(ロ)は柱梁剛仕口に利用できるもので引張接合型と称される。また、図7.4.1(ハ)は筋かい端に使用されることが多く、引張接合と摩擦接合の両型を併せたものとなっている。摩擦接合と引張接合を形態から識別するには、図7.4.2 の模式図で示すように高力ボルトの軸方向と伝達すべき応力が直交するものを摩擦接合型といい、ボルト軸方向と応力が平行(同じ方向)となる形式を引張接合型という。摩擦接合と引張接合では応力の伝達機構が異なるので接合部を設計する手順は、全く異なるものである。

図7.4.1_高力ボルトの接合部の例.jpg
図7.4.1 高力ボルトの接合部の例

図7.4.2_摩擦接合,引張接合模式図イ.jpg図7.4.2_摩擦接合,引張接合模式図ロ.jpg
図7.4.2 摩擦接合、引張接合の模式図

しかし、いずれの接合部であっても設計されたあとに、これを加工・施工する過程で要求されるものは、ほとんど共通している。このことは、摩擦接合型の接合部の加工・施工が完全に行えればこれと同じ手法を適用することで引張接合型の接合部の加工・施工上の要求も同時に満足できるものとなると解釈してよい。したがって、本節では、現在最も普及している摩擦接合について記述しているがその内容は、すべての高カボルト接合部に適用できるものとして考えてよい。


(e) 高力ボルト接合部加工・施工の要点を表7.4.1に示す。
高力ボルトセットを図7.4.3に示す。

表7.4.1 高力ボルト接合部加工・施工の要点
表7.4.1_高力ボルト接合部加工・施工の要点.jpeg


図7.4.3_高力ボルトセット.jpg

左から、JIS形、トルシア形
図7.4.3 高力ボルトセット


(f) 高力ボルトの各種試験及び検査

「標仕」7.2.2では「トルシア形高力ボルト」と「JIS形高力ボルト」に区分されている。これらの高力ボルトの各段階における試験及び検査の内容を表7.4.2に示す。


表7.4.2 試験及び検査の内容
表7.4.2_試験及び検査の内容.jpeg


(g) 高カボルトは、熱処理されているため、原則として溶接等による入熱は避けなければならない。

(h) 高カボルト摩擦接合部の性能を確保するためには、摩擦面の処理とボルト締付けカの管理が重要である。「標仕」では規定されていないが、(一社)日本鋼構造協会の「建築鉄骨品質管理機構」では、摩擦接合部の管理を適切に行うために「建築高カボルト接合管理技術者」(7.1.4 (c)(1)参照)を認定しているので、必要に応じて活用するとよい。


7.4.2 摩擦面の性能及び処理

(a) すべり係数値は.表7.4.3 に示すように、摩擦面の状態によって大きな差があるが「標仕」7.4.2に定めた状態であれば、すべり係数値は0.45以上になる。

ただし、ブラスト処理により表面粗度を50μmRz以上(70μmRz程度)確保できれば錆の発生は必要ない。ブラスト処理にはサンド、ショット及びグリットによる方法があるが、このうちサンドブラストでは十分な表面粗度が得られないため、「標仕」で規定されているのは、ショットブラスト及びグリットブラストである。

表7.4.3 各面のすべり係数値(μ)の値
表7.4.3_各面のすべり係数値.jpeg


(b) 「標仕」7.4.2に定められた錆の発生状態は、鋼材の表面が一様に赤く見える程度のことであり、少ないのも、浮き錆に近いのも不適当である。

(c) 接合部の力を伝達する部分には、すべり係数の小さいものを挟んではならないのでフィラープレートも主材と全く同様に処理しなければならない。

(d) ミルスケールの除去は、原則として、添え板(スプライスプレート)全面の範囲とする。

(e) 通常の工事では大型材には、ディスクグラインダー掛け、小型の添え板等には、ブラスト法とすることが多いが、建物が小規模の場合はディスクグラインダー掛けだけの場合が多い。この場合ボルト孔周辺がへこまないよう注意する。

(f) ボルト頭部及び座金の接する部分は、摩擦面そのものではないが、とも回り、軸回りを防止し導入張力を確保するために、鋼材のまくれ、ひずみ等は取り除かなければならない。


7.4.3 標準ボルト張力

(a) 「標仕」表7.4.1の標準ボルト張力は.締め付けてボルトに導入する張力の標準値である。

(b) 標準ボルトの張力の算定は(一社)日本建築学会「鋼構造接合部設計指針」に基づいて次のように行っている。

(1) 設計ボルト張力(N 0
7.4.3_設計ボルト張力.jpeg


(2) 標準ボルト張力:N 1 =1.1・N 0 (「標仕」表7.4.1参照)

(c) トルク係数値及び張力の確認

(1) 張力を導入する方法は、通常ナットを回転して行う(7.4.7参照)。

機械的に所定の張力を与え、ナットを締め付けて張力を保持する方法で、トルシア形高力ボルト、JIS形高力ボルトがこれに属する。

(2) 高力六角ボルトはJISマーク表示認証を取得した製品を製造する工場で、トルシア形高力ボルトは国土交通大臣の認定を取得した製品を製造する工場で製造されており、品質管理がなされている。 上記の工場から出荷され、未開封のまま現場へ搬入され、適切に受け入れ・保管された高力ボルトについては、製造所が発行する規格品証明書(社内検査成績表)の確認でよい。

しかし、何らかの事情により長期間保管された高力ボルト等を用いようとする場合は、工事着手前に高力ボルトの品質確認のための試験を行うべきである。品質確認のための試験として、高力六角ボルトの場合はトルク係数値試験、トルシア形高力ボルトの場合は導入張力確認試験が適している。





7.4.4 ボルトセットの取扱い

(a) 高力ボルトは、ねじの損傷、ねじ・ナット・座金等の錆、油類の付着、砂粒・金属粒の食い込み等により、トルク係数値が変動するので締付け時のトルクと導入されるボルト軸力との関係が変わってしまい、正しい張力を与えることができなくなる。

そのため「標仕」7.4.4では特に取扱いを丁寧にすることを定めているが、一般的な注意事項を挙げると次のようになる。

(1) 保管は、乾燥した場所に、等級別、ねじの呼び別、長さ別に整理し、作業に応じて搬出しやすいようにしておく。箱の積上げ高さは3〜5段程度とする。トルク係数値がA種のものは、表面処理が温湿度により変質してトルク係数値が変動しやすいので注意が必要である。

なお、トルシア形高カボルトは、トルク係数値が変化した場合、導入張力の調整ができないので、トルク係数値が大きく変動しないように取扱いに注意する。

(2) 保管中異状を生じた疑いのあるものは、使用前にトルク係数値試験を行う。

(3) 運搬をいちどきに大量に行うと、箱がつぶれたり、ボルトが中で移動して、ねじを傷つけるおそれがある。運搬した箱を降ろす際にも丁寧に扱う。

(4) 施工直前に包装を解くが、必要な量だけにして、解いたものを使い残さないようにする。やむを得ず残ったものは、元のように包装し直して箱に戻す。


(b) 試験や機器の調整に用いられたボルトは、既にトルクと張力との関係が変わってしまっているので、「標仕」7.4.4(c)では本工事への使用を禁止している。


7.4.5 締付け施工法の確認

JASS 6 (2007)では締付け施工法の確認方法が、導入張力確認試験から次のように変更された。当該工事の接合部から代表的な箇所を複数選定し、JASS 6 6.4[高力ボルトの締付け]のa.(1) ii)〜 iv) 若しくはb.(1) ii)〜 iv) に示す要領で締付けを行う。それぞれの接合部に対し、JASS 6 6.6[締付け後の検査]に示す要領で検査を行い、いずれも合格することを確認する。


7.4.6 組 立

(a) 組立は、摩擦面を汚さないように、十分密着させなければならない。しかし板厚の差等による1mm以下の隙間はあまり問題にならないとされている。

したがって、隙間が 1mmを超えると、フィラープレートを入れることになるが、フィラープレートの厚さは 1.6mm以上にするのが普通である。

なお、薄板の厚さはJIS G 3193(熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状、寸法、質量及びその許容差)に定められている。一般に入手しやすいものは、1.6、2.3、3.2、4.5 mmである。


(b) 板厚が厚い場合は、添え板(スプライスプレート)との密着性が悪くなったり、ボルト孔がずれた場合に手直しが不可能になったりするので、加工精度には特に注意を要する。


(c) 勾配座金は、図7.4.4に示すように、通し座金にするのがよい。

(d) 組立の際、ドリフトピンを無理に打ち込まなければならないということは、孔あけの精度が悪いからで、部材の孔合わせを正確に行うことが大切である。

また、無理に打ち込めば孔周囲にまくれが生じ、このまくれの除去が十分に行われることは期待できないうえに、ボルトのねじも傷つけやすい。

現場の処骰としては.孔心の不一致が著しい場合は、添え板を取り替え、現場に合うようなボルト孔をあけ直させる(「標仕」7.4.6(d)参照)。

(e) ドリフトビンは仮組み用の工具で、部材を組み立てるとき、ボルト孔に通して部材を正確に保持させて仮留めするのに用いる。また、ぽろしんは部材を組み立てる前のボルト孔合わせに使用する工具である(図7.4.5参照)。


図7.4.4_勾配座金.jpg
   図7.4.4 勾配座金


図7.4.5_組立用工具.jpg
   図7.4.5 組立用工具



7.4.7 締付け

(a) 締付け方法

トルクコントロール法:一定のトルクを与えて締め付ける方法。トルシア形高力ボルト及び JIS形高力ボルトに適用する。トルク(ねじりモーメント)とは物をねじる力であって、その大きさをTとすれば図7.4.6の場合では T= P ・?となる。


図7.4.6_トルク.jpg
    図7.4.6 トルク


(b) トルシア形高力ボルト及びJIS形高力ボルトの締付けは、一次締め→マーキング → 本締めの2度締めにより、ナットを回して締め付けるのを標準とする。締付け順序を次に示す。

[ 材料の確認 ]
高カボルトメーカーの社内試験成績書を確認する。

 ↓

[ 締付け機器の調整 ]
トルクコントロール法で締め付ける場合は、適正に校正された軸力計やトルクレンチを用い、締付け機の調整作業(キャリブレーション)を行う。

 ↓

[ ボルトの取付け ]
仮ボルトの取付け・締付けを行って部材を密着させたのちに、高力ボルトを取り付ける。ねじ山を傷めないように挿入し、ナット、座金の向きを正しくセットする。

 ↓

[ 一次締め ]
一次締めはねじの呼びに応じて「標仕」表7.4.2に示すトルク値で締め付ける。これにはプレセット型トルクレンチを用いるのがよい。この一次締めによりボルトにはおおよそ40〜 60kNの張力が導入される。一次締めの目的は、被締付け材間を完全に密着させることにあるので、接合部の状況によって「標仕」表7.4.2に示すトルク値では十分な密着状態にならない場合には、一次締付けトルク値を「標仕」表7.4.2に示す値よりいくぶん大きくしてもよい。

 ↓

[ マーキング ]
1接合部の全ボルトを一次締めしたのち、全ボルトについてマーキングを行う。これは本締め終了後の検査のための重要な意味をもつので、ボルトの種類によらず実施しなければならない。マーキングの要領は図7.4.7に示すようにボルト軸からナット・座金・母材にかけて白色のマーカー等で印をする。マーキングまでの手段は、トルクコントロール法及びナット回転法とも共通である。

 ↓

[ 本締め ]
トルクコントロール法では標準ボルト張力を得られるように、トルシア形高力ボルトでは専用レンチを用いてピンテールの破断まで締め付ける。ナット回転法は,所要のナット回転量まで締め付ける。



(c) 材料の確認
締付けに先立ち施工箇所に適したボルトであることを、高力ボルトメーカーの社内試験成績書で確認するとともに、包装が崩れたり、汚れたりしているものについては、トルク係数値の変動のおそれがあるので試験する必要がある。変動のあった場合は締付けトルクを調整するか、使用を止める。


(d) 締付け機器の調整
トルクコントロール法では、トルシア形高力ボルトの場合、軸力計にボルトをセットして、専用締付け機でピンテール破断溝部が破断するまで締め付け、所要のボルト張力が得られることを確認する。JIS形高力ボルトの場合、軸力計にボルトをセットして、工事現場で使用する締付け機で締め付け、標準ボルト張力が得られるトルク値に調整されていることを確認し、この際のボルト張力とトルク値の関係を記録しておき、締付け検査のトルク決定の資料とするのがよい。


(e) ボルトの取付け
本接合に先立ち、仮ボルトの締付けを行い、部材接合面の密着を図る。特に、トルシア形高力ボルトの場合は、入念に行わなければならない。

ボルトの長さ、等級、ねじの呼び、ナットの裏表、座金の裏表等が使用箇所に適正に取り付けられていることを確認する。

ナットは、等級の表示記号が締付け後外側から見える向きに取り付ける。

ボルト頭部側の座金は、座金の内側面取り部がボルト首下部と合うよう取り付け、ナット側の座金は、座金の内側面取り部がナットに接する側に取り付ける。


(f) 一次締め
一次締めは、長めの柄のスパナ又はプレセット形トルクレンチを使用して、「標仕」表7.4.2によるトルク値でナットを回転させて行う。

一次締めに電動式インパクトレンチを使用する場合は、一次締めトルク値が得られるものを選定して使用する。

高力ボルトの締付けは、ナットを回転させることによりボルトに導入する張力をコントロールしているが、ボルトの長さが長くなると、ナットの同転時にボルトに生ずるねじれや、鋼材の変形(縮み)が無視できなくなり、ボルトに導入される張力が小さくなる。

このため「標仕」7.4.7 では、ボルトの長さがねじの呼びの5倍以下の場合の締付けを規定している。

ねじの呼びの5倍を超える長さのボルトを用いる場合は、締付けが不十分となる場合が生じるので、実験により一次締めを含めて施工条件を決定する。


(g) マーキング
一次締め後ボルトにつけるマークには次のような目的がある。

(i) 一次締め完了の確認

(ii) 本締め完了後マークのずれの位置によるとも回り及び軸回りのないことの確認

(iii) マークのずれによる本締め完了の確認

(iv) ナットの回転量の確認


ナットのみがボルト軸に対して相対回転していることを目視で確認することで締付け状態を検査するものであるからマークはボルト軸・ナット・座金・母材(添え板)にわたってつけなければならない。

とも回りには、ナットの回転とともにボルトも回転する場合とナットの回転とともに座金が回転する場合がある。軸回りとは、トルシア形高カボルトで回転の反カがとれずナットが回転せずにボルトが回転して、ピンテールが破断することである。

回転の反力がとれない原因としては、?@一次締めによる適正な接触面圧が与えられていない、?A部材の接触面が滑らかで反力が発生し難い、?B接触面の間に異物が介在して面としての反力が発生しない、などが考えられる。トルシア形及びA種JIS形高力ボルトはナットに潤滑処理を施し、トルク係数値が一定になるように製作されている。トルシア形高カボルトの締付けにおいて、ナットと座金間以外の摩擦でピンテールが破断すると、トルク係数値が変動し、所定のボルト張力が導入できない。不確実な作業ではとも回り、軸回りをすることが多いので、図7.4.7(イ)のように一次締め後のマークをナットの角につけるなどつけ方を厳しくし、その発見を容易にする。図7.4.7(ロ)は本締めが正常に終了した状態、図7.4.7(ハ)は、ナットと座金のとも回り、図7.4.7(ニ)は軸回りの例である。

なお、マークは白色のマーカー等を用いるとよい。

図7.4.7_マーキング.jpg
図7.4.7 マーキング


(h) 本締め

トルシア形高力ボルトの場合の本締めは、専用締付け機を用いてピンテールが破断するまで締め付ける。

JIS形高力ボルトの場合の本締めは、標準ボルト張力が得られるようにトルクコントロール法又はナット回転法により行う。


(i) 1群のボルトを中央部から周辺に向かって締め付けるのは.締付けによる板のひずみを周辺に逃すためである。





7.4.8 締付けの確認

(a) トルシア形高力ボルトの場合

トルクレンチを用いた検査を行わないのは次の理由による。

(i) ボルト張力がボルトの製品精度(ビンテールの破断強度)で決まる。

(ii) 本締めの終了したことが外観で分かる。


(b) JIS形高カボルトの場合

(1) 締付けの確認は、トルクコントロール法及びナット回転法とも、ナット回転量を目視検査する。トルクコントロール法においてはナット回転量に著しいばらつきがある場合、その1群のボルトをトルクレンチを用いてナットを締め、ナットが回転を始めた瞬間のトルク値(追締めトルク値といわれている。)を読み取る方法が一般に用いられている。

(2) 確認は、1群ごとに行う。ここでいう1群とは,一塊のボルトの集まりであり、1枚の添え板に締め付けられるボルト数と考えてもよい(図7.4.8参照)。

図7.4.8_1群のボルト.jpg
図7.4.8 1群のボルト


(3) 標準トルクの算定

(i) 標準トルクの計符値は.次式によって求める。

Tr = k・d 1 ・N 1
ただし、
Tr:標準トルク (N・m)
k :トルク係数値
d 1 :ボルトのねじの外径の標準寸法(mm)
N 1 :「標仕」表7.4.1の標準ボルト張力(kN)

(ii) 次の場合の計算例を示す。

ボルトの呼び径:M22
トルク係数値による種類: A種(k=0.135)
上記の式から
 Tr=0.135 x 22 x 226=671 (N・m)
ただし.d 1 =22mm
N 1 =226 kN(「標仕」表7.4.1)


(c) 「標仕」7.4.8 (a)から(c)までにある締付けの確認は、受注者等に対する規定であり、監督職員の検査は「標仕」7.4.8 (f) に定められている。この場合は受注者等の提出した確認の記録に基づいて、適宜施工済みボルトを抽出し、検査を行う。


7.4.9 締付け及び確認用機器

(a) トルシア形高カボルトの締付けには専用の機器を用いる(図7.4.9参照)。

図7.4.9_トルシア形高力ボルトの締付け器具例.jpg
図7.4.9 トルシア形高力ボルトの締付け器具例


(b) JIS形高カボルトの締付け機器には,次のようなものがある。

(1) 電動式締付け器具(図7.4.10参照)
電動機を使用して締付けトルクを与え、トルク制御も電気的に行う。比較的重量も軽く、締付け精度の良い器具である。工事現場で行う、追締めトルクの確認における許容誤差は ±7% 程度とするのがよい。

図7.4.10_電動式締付け器具例.jpg
図7.4.10 電動式締付け器具例


(2) 手動式トルクレンチ(JIS B 4652) (図7.4.11参照)
トルク検定器で検定したときの許容誤差は ±3% 程度とするのがよい。

図7.4.11_トルクレンチ.jpg
図7.4.11 トルクレンチ


(3) 軸力計(キャリブレーター)(図7.4.12参照)
締付け機器でボルトを締め付けたときのボルト張力を測定する計器である。ボルト張力が「標仕」の標準ボルト張力になるように、締付け機器のトルクを調整するのに用いる。7.4.8に示すトルク係数値及び導入張力の確認試験の際に使用する。

軸力計の測定許容誤差は ±3%とする。

図7.4.12_軸力計.jpg
  図7.4.12 軸力計


7章 鉄骨工事 5節 普通ボルト接合

第7章 鉄骨工事


5節 普通ボルト接合

7.5.1 適用範囲

(a) 普通ボルト接合には、せん断接合、引張接合及び引張せん断接合の3種類あるが、「標仕」では,一般的に使用されるせん断接合のみ対象としている。

(b) せん断接合は、ボルト軸のせん断応力と、ボルト軸とボルト孔壁との間の支圧応カで力を伝達するため、ボルト孔とボルト軸部間の隙間のずれによる建造物の変形が避けられない。このため建築基準法施行令ではボルト接合とすることのできる鉄骨造の限度を、原則として軒の高さ9m以下で張り間が13m以下、かつ、延ベ面積3,000m 2 以下としている。


7.5.2 接 合

普通ボルト接合では次の事項に留意する。

(l) 孔径は、ボルトの公称軸径+0.5mm(ただし、胴縁類の取付け用ボルトの場合は+1.0mm)とする。

(2) このボルト孔径の制限は、鉄骨の実態から精度的に厳しい要求となっているので、注意する必要がある。

(3) ボルトの戻止め

建築基準法施行令では、コンクリートで埋め込む場合を除いて、ボルトが緩まないような処置をするように定めている。その方法としては、次のようなものがある。

?@ ナットを二重にする。

?A ナットの部分を溶接する。

?B 緩み防止用特殊ナットを使用する。

なお、二重ナットを使用する場合には、下ナットを締め付けたのち、このナットをスパナで押さえたまま上ナットを別のスパナで締め付け、最後に上ナットを固定して下ナットを上ナットに対して締め付けるようにしないと、戻止めの効果が得られないので注意する(図7.5.1参照)。

図7.5.1_二重ナットの締付け.jpg
図7.5.1 二重ナットの締付け


(4) ボルトの長さは、JIS B 1180(六角ボルト)付表の呼び長さで示し、締付け長さに応じて締付け後、ナットの外側に3山以上ねじ部が出るように決める(図 7.5.2参照)。


図7.5.2_ボルトの長さ.jpg
図7.5.2 ボルトの長さ

7章 鉄骨工事 6節 溶接接合

第7章 鉄骨工事


6節 溶接接合

7.6.1 適用範囲

溶接方法には図7.6.1のような種類があるが建築鉄骨工事では、実線枠.jpeg枠及び破線枠.jpeg枠で囲んだ溶接方法が使われる。「標仕」6節では、実線枠.jpeg枠で囲んだ被覆アーク溶接(手溶接)、ガスシールドアーク溶接及びセルフシールドアーク溶接(半自動溶接)、ガスシールドアーク溶接及びサブマージアーク溶接(自動溶接)について規定している。被覆アーク溶接は手溶接とも呼ばれる。

なお、エレクトロスラグ溶接については、箱形断面材の内ダイアフラムの溶接等にしばしば用いられる自動溶接の一種であるが溶接施工能力のある鉄骨製作工場は限られるので7.2.5で溶接材料についてのみ解説している。スタッド溶接については 7節で解説している。

図7.6.1_溶接方法の分類.jpeg
図7.6.1_溶接方法の分類


7.6.2 施工管理技術者

「標仕」7.6.2(b)に定めるJIS Z 3410(溶接管理 - 任務及び責任)による溶接管理を行う能力のある者とは、例えば、 日本溶接協会規格WES 8103 : 2008(溶接管理技術者認証基準)に定められた溶接管理技術者の認証を有する者等が該当する。WES 8103は溶接管理技術者の能力に応じて3種類の認証等級を定めており、その任務及び責任並びに知識及び職務能力は表7.6.1に示すとおりである。

なお、JIS Z 3410は ISO 14731 : 2006の翻訳である。

表7.6.1_溶接管理技術者の任務並びに知識及び職務能力.jpeg

7.6.3 技能資格者

(a) JISにおける溶接技能者の技術検定基準には、手溶接の場合はJIS Z 3801(手溶接技術検定における試験方法及び判定基準)及び半自動溶接の場合はJIS Z 3841(半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準)が定められている。


(b) 「標仕」7.6.3 (a)(3)では自動溶接のオペレーターは手溶接又は半自動溶接の技量を有することと定め、更に技量を証明する工事経歴を監督職員に提出することとしている。

なお、溶接ロボットのオペレーター資格には、(ー社)日本溶接協会によるWES 8111(建築鉄骨ロボット溶接オペレータの資格認証基準)及びWES 8110(建築鉄骨ロボット溶接オペレータの技術検定における試験方法及び判定基準)による資格並びにAW検定協議会によるロボット溶接オペレーター資格がある。


(c) 作業内容と溶接技能者に求められる資格の内容

(1) 溶接技能者の技量資格の標準は、溶接する板厚や作業姿勢に応じたものとするが、工場溶接で回転治具等を利用し、主に下向き又は横向き姿勢で行う場合は表7.6.2によればよい。ただし、板厚区分については1 〜 2mmの差にこだわることなく弾力的に考えてよい。

(2) 裏当て金を用いる試験の合格者は、裏当て金を用いる溶接、両面からの溶接及びそり他の完全溶込み溶接の初層を除く溶接(初層をティグ溶接するような場合、裏はつりを行う場合を除く。)を行うことができる。裏当て金を用いない試験の合格者はすべての完全溶込み溶接を行うことができる。

表7.6.2_作業範囲と溶接技能者技量資格標準.jpeg


(d) 組立溶接は本溶接に匹敵する重要なもので、特に本溶接の一部となる組立溶接(例えば、隅肉溶接、裏はつりなしの開先内の組立溶接)、裏当て金の溶接等については、本溶接時に組立溶接を再溶融させる必要があるため、注意深く行う必要がある。このため「標仕」7.6.3(a)(4)で組立溶接は通常の溶接と同様、手溶接又は半自動溶接の技量を有することと定められている。手溶接ではJIS Z 3801の基本となる級すなわち板厚に応じた、N-1F、A-2F、N-2F、A-3F、N-3Fの資格を有する溶接技能者等、ビルドアップH形鋼(BH)等、半自動溶接で組立溶接を行う場合には、JIS Z 3841のSN-1F、SA-2F、SN-2F、SA-3F、SN-3Fの資格を有する溶接技能者等とする。


(e) 「標仕」7.6.3(a)に定めたJIS Z 3801及びJIS Z 3841による溶接の技量よりも高度な技量が必要と判断される場合には特記により溶接技能者に対して技量付加試験を実施する。

なお「標仕」では規定していないがAW検定協議会では、個々の工事において技量付加試験を実施することは非効率であるとしてあらかじめ溶接技能者に対して代表的なディテールで技量検定を実施し、これを個々の工事における技量付加試験の代替とするものとして、AW検定を実施している。





7.6.4 材料準備

(a) 開 先
(1) 開先の形状は、溶接の品質に大きく影響するので原則として特記に指定されたものとするが鉄骨製作工場には慣用している形状があるので設計担当者と打合せのうえ、多少形状を変えるだけで慣用形に合わせることができるならば変えることを認めてもよい。


(2) 開先精度が悪くてルート間隔が広くなった場合に、溶接量が増えると収縮が多くなるためひずみが増したり、また、パス数が多くなるとその他の欠陥を生じやすくなることがある。


(3) 開先の加工は、精度の良いことが必要であり、表面の状態もなるべく平らな方がよい。切り込んだような傷(ノッチ)や凹凸があると溶接に欠陥ができやすいので、精度の悪い場合の補修方法(7.6.5(a)参照)及びその限度を施工計画書に定めておく。


(4) 設計者が特記する開先形状の詳細を記したものに、(一社)日本建築学会「鉄骨工事技術指針・工場製作編」があるが、各ファブリケーターの経験や技術により開先角度等に違いがあることから、「標仕」では特記としている。


(b) 溶接材料の取扱い

「標仕」7.6.4 (c)に溶接材料の取扱いについて定められているが、特に重要なことは吸湿の防止である。吸湿した溶接材料や錆の発生したワイヤを使用すると、アークが不安定となり、スパッタが増大してビード外観を損う原因となる。また、ブローホールやピット等を発生しやすく健全な溶接を期待できない。更に、水分中の水素が原因になり、割れ等の欠陥を生じやすい。

溶接棒の乾燥温度は被覆材の種類に応じて定められているが、特に低水素系溶接棒は、乾燥温度について注意が必要である。溶接棒はヒーターや赤外線等で防湿設備を備えた専用の保管室に保管し、また、作業時には携帯用乾燥器を用い、作業量に見合った出庫量を決めることが望ましい。

一昔前には、溶接棒の取扱いを見れば、工場の品質管理能力が分かるといわれた程、溶接材料の取扱いは大切なことである。


7.6.5 部材の組立

(a) 部材の組立は、通常小形の材片を組み立ててブロックとし、次にブロックとブロックを組み立てて大きな部材をつくり上げる。このような工法では組立途中の製作誤差が開先精度にしわよせされ、しかもこの部分が最も応力の大きい重要な溶接になりやすい。特に完全溶込み溶接のルート間隔及び隅肉溶接の密着を保持することが大切であり、完全溶込み溶接の開先精度が限界許容差を超えるような場合では、「鉄骨工事技術指針・工場製作編」図14.13.33のように補修する。

なお、補修の要領を「鉄骨工事技術指針・工場製作編」から抜粋して次に示す。

鉄骨工事技術指針 工場製作編

4.13.5 組立て部材の補修要領

開先形状、ルート間隔の不良、すき間の大きい場合の補修方法の概略を示す。

(1) ルート面(ルートフェイス)

ルート面が大きすぎるときは図4.13.33のようにアークエアガウジングまたはグラインダーで削りとる。


(2) ルート間隔(ルートギャップ)

ルート間隔が狭いときは図4.13.33のようにグラインダーまたはアークエアガウジングで正規の寸法に削除する。アークエアガウジングによる凹凸のはなはだしい箇所はグラインダーで仕上げる。広いときは継手の一方または両方を肉盛りして丁寧に仕上げる。


図4.13.33_ルート面の補修.jpeg


(3) 隅肉溶接におけるすき間

被覆アーク溶接およびガスシールドアーク溶接の場合は表4.13.3、サブマージアーク溶接の場合は表4.13.4による。

表4.13.3_被覆アーク溶接ガスシールドアーク溶接の場合のすきまの補修溶接要領.jpeg


表4.13.4_サブマージアーク溶接の補修溶接要領.jpeg


(b) ノンスカラップ工法

H形断面材の開先加工については、「鉄骨工事技術指針・工場製作編」を参照するとよい。

実験結果や実施工の面で最も優れていると考えられるノンスカラップ工法の開先形状の例を図7.6.2及び3に示す。図7.6.2は内ダイアフラム形式の場合、図7.6.3は通しダイアフラム形式の場合である。

通しダイアフラム形式では、梁ウェブを切り欠いて柱側の溶接部をかわし、ダイアフラムの形状にフィットするように開先形状を加工する。更に、通しダイアフラムと梁フランジとの目違い等の施工誤差を吸収できるように通しダイアフラムの板厚は梁フランジの板厚の2サイズアップとし、ダイアフラムの外端を梁フランジの1 〜 2mm外側にするとよい。

図7.6.4は2枚の裏当て金を用いる場合のノンスカラップ工法での裏当て金の取付け要領である。梁が同時組BHの場合は裏当て金の端は平板でよいが、梁が先組 BHやロールHの場合には、裏当て金の端部がフィレットに沿うように加工されたものを用いる。ほかに、梁のウェブのフィレット部分を裏当て金の断面状に切り欠いて、1枚の裏当て金を貫通させる方法もある。

図7.6.2_ノンスカラップ工法.jpeg

図7.6.3_ノンスカラップ工法(通しダイア形式).jpeg

図7.6.3_ノンスカラップ工法(通しダイア形式同時組みBH梁).jpeg
図7.6.3 ノンスカラップ工法(通しダイア形式)


図7.6.4_裏当て金取り付け要領.jpeg



(c) 溶接部が再凝固するとき、溶接部は収縮しようとする。例を示せば、図7.6.5の実線の形が溶接すれば(破線.jpeg)のように変形することになる。この場合、あらかじめ板を(一点鎖線.jpeg)のように加工しておき、溶接したときに実線の形になるようにする方法を逆ひずみ法という。

逆ひずみ法が取れない場合は変形しないように治具や重量物により押さえたり、補強材を設けたりして拘束して行う。この方法を拘束法ということがある。

図7.6.5_溶接による変形の例.jpeg


(d)高力ボルト摩擦接合と隅肉溶接を一つの紙手に使用する併用継手では、高力ボルトの締付けを溶接より先に行うならば、両者の許容耐力を累加できる。これは、主すべりを生じる以前の開カボルト接合部の剛性と関肉溶接の剛性が近いためである。一方、先に溶接を行うと溶接熱によって板にひずみが生じ、高カボルトで締め付けても接合面に十分な材面圧縮力が得られない可能性があるので、許容耐力の累加を認めていない。よって、併用継手では、高カボルトの締付けを行ったのちに溶接を行うことが原則となる。


(e) 組立溶接は本溶接の一部となって残る場合があるので、所定の強度があり欠陥がないように注意して施工する。また、溶接ビート長さが短いと溶接部が急熱・急冷され溶接部に悪影響を与えるため、ショートビードにならないように「標仕」表7.6.1でその長さを定めている。また、組立溶接は下向きだけでなく、横向き、立向き、上向き等の溶接姿勢で溶接しなければならない場合もある。一般には本溶接よりも厳しい施工条件になることが多いので溶接技能者の技量、溶接材料、溶接条件等、適切な施工管理のもとで行う必要がある。

400N/mm 2 級等の軟鋼(鋼種SS400,SM400,SN400等)で板厚25mm以上の鋼材及び490N/mm 2 級以上の高張力鋼(鋼種SM490,SN490等)の組立溶接を被覆アーク溶接で行う場合は、低水素系の溶接棒を用いる。

冷間成形角形鋼管のコーナ一部は、塑性加工が大きく割れやすいので組立溶接は避けるべきである。また、図7.6.6に示す位置も欠陥を生じやすいので組立溶接を避ける。


図7.6.6_組立溶接を避ける位置.jpeg





7.6.6 溶接部の清掃

母材の溶接面の水分、油、スラグ、塗料、鋳その他溶接の支障となる付着物は、除去する。固着したミルスケールや防錆用塗布剤は、取り除かなくてもよい。


7.6.7 溶接施工

(a) 溶接機、付属用具等には各種のものがあるが、その選定は施工業者に任せてよい。しかし、原則として溶接機は、遠隔制御装置があり、電流、電圧等の調整が溶接技能者の手元でできるものとする。また、JIS化されているものは、JISの規格に適合するものとする。


(b) 溶接長さは、「標仕」7.6.7(d)(1)では、図7.6.7 に示すように、溶接始終端の欠陥を生じやすい部分の長さを隅肉サイズの寸法程度と考え、有効長さに隅肉サイズの 2倍を加えたものとしているので、この長さを確保するように施工する。

図7.6.7_溶接長さ.jpeg

(c) 溶接の姿勢は、下向きが最も無理がなく確実な施工ができるので、大きな部材でも、治具を使ってできるだけ下向きになるようにする。

(d) 溶接入熱とパス間温度

溶接接合部の強度や靭性は、パス間温度、溶接電流、アーク電圧、溶接速度等の溶接条件及び溶接材料と密接な関係がある。

溶接入熱が大きくかつパス間温度が高過ぎると、溶接金属の強度や衝撃値が低下することが知られている。そのため、JIS Z 3312(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ)の解説には、溶接金属の所定の機械的性質を確保するための入熱及びパス間温度の管理値が定められている。ラーメン骨組の柱梁接合部の梁端溶接部等のように塑性変形能力が期待される部位の溶接を行う際は、この入熱とパス間温度の管理が特に重要である。そのため上記の管理値を超えるような大入熱や高いパス間温度で溶接を行う場合は、あらかじめ溶接施工試験を行って溶接部の強度や衝撃値が所要の値を満たすことを確認しておく必要がある。


7.1.3 に述べた鉄骨製作工場の認定制度においても Jから Sまでの工場の各々のグレードに応じて製作可能な鋼材の種類とそれに対応する入熱及びパス間温度の溶接条件が定められている。なお、Sグレードについては、自主的に定めてよいとされている。これらの管理方法については、7.6.10(a)(2)を参照されたい。

参考に、JIS Z 3312の解説に記載されている入熱とパス間温度に関する記述の抜粋を次に示す。ここで、解説表3の値は多数の銘柄の溶接材料を用いて下向き溶接で行われた試験結果の最低値に合わせて求められた値である。また、鉄骨製作工場の工場認定制度の性能評価基準では、表7.1.2に示す管理基準値により溶接施工することになっている。また、JIS Z 3313 (軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ)においてもJIS Z 3312と同様に、入熱とパス間温度の管理に関する解説表が示されている。

JIS Z 3312 : 2009(解説)

鉄骨の柱ーはり(梁)溶接部の機械的性質の安定化及び向上は、建築物の耐震性の点で極めて重要である。したがって、社団法人日本建築学会では、柱ーはり溶接では、各適用鋼種において所定の機械的性質を確保するため、解説表3のように入熱及びパス間温度を管理する必要があるとしている。


解説表3_主な溶接ワイヤの使用区分.jpeg

ロボットを建築鉄骨溶接に使用する場合は、社団法人日本ロボット工業会による建築鉄骨溶接ロボットの型式認証が必要であり、認証書にはワイヤの種類、溶接入熱及びパス間温度の範囲などが記載されているため、それらに従うものとし、解説表3はロボット溶接には適用しない。


(e) 予熱とは、溶接開始に先立ち、溶接部及びその周辺を加熱することで、温度は 50〜100℃程度とする場合が多い。溶接欠陥の中で最も重大な溶接割れを防止する最も適切な方法として、予熱による溶接後の冷却速度の緩和が推奨されている。あらかじめ加熱しておくことで、溶接後の冷却速度を遅くさせて、冷却過程での量散性水素量の溶解度の減少から鋼の中の水素が量散水素として出てくるものの外部放出を容易にし、かつ、熱影響部の硬さも減少させることで、低温割れ防止に効果がある。また、溶接部付近の温度勾配が緩やかになるので、溶接変形が少なくなり溶接応力も小さくなって低温割れ防止に効果がある。

溶接作業場所の温度による予熱等については「標仕」7.6.8に定められている。鉄骨溶接施工の必要予熱混度の目安を表7.6.3に示す。

なお、表の予熱温度等に関しては、次のような注意が必要である。

(1) TMCP鋼は溶接性が良好であるので、表7.6.3 に示す予熱温度を緩和できる可能性がある。組立溶接にも予熱が必要な場合もある。


(2) 気温(鋼材表面温度)が400N/mm 2 級鋼材の場合に0℃以上、490N/mm 2 級以上の高張力鋼の場合に5℃以上で適用する。気温が -5℃以上で表の適用温度以下の場合は、次に述べる注意事項に従って施工することができる。気温が -5℃未満の場合は溶接を行わない。気温が -5℃以上で0℃ (又は5℃)以下の場合で、表に予熱なしとあるときは40℃まで加熱(ウォームアップ)を行ってから溶接を行う。ただし、400N/mm 2 級鋼材で板厚が50mm超の場合、490N/mm 2 級及び 520N/mm 2 級の鋼材の低水素系被覆アーク溶接の板厚25mm以上の場合、CO2ガスシールドアーク溶接の板厚40mm以上の場合は、50℃の予熱を行う。上記の気温の範囲で表により予熱が必要な場合は、予熱温度を高めにするか、電気ヒーター等で確実に全体の温度を確保するかのいずれかを行う。


(3) 湿気が多く開先面に結露のおそれがある場合は40℃まで加熱を行う。


(4) 予熱は規定値以上、200℃以下で行うものとする。予熱の範囲は溶接線の両側 100mmを行うものとする。


(5) 溶接部の補修や組立溶接で拘束が大きいことが予想される場合は、表の値よりも1ランク上の予熱温度を適用する。ただし、1ランク上でも予熱なしとなる場合は、気温等の条件を考慮して必要に応じて50℃の予熱を行うのがよい。


(6) 拘束が強い場合、入熱が小さい場合(約10kJ/cm以下)鋼材の化学成分が規格値の上限に近い場合や溶接材料の含有水素量が多い場合は、予熱温度をより上げることが必要なこともある。また、鋼材のJISの炭素当量で0.44%を超える場合は予熱温度を別途検討する。


(7) 板厚と鋼種の組合せが異なるときは、予熱温度の高い方を採用する。


表7.6.3_予熱温度の目安.jpeg


(f) エンドタブに関する留意点等を次に示す。

(1) エンドタブは溶接の始点と終点の欠陥を防ぐために取り付ける。エンドタブは、一般に、母材と同等な材質、同厚、同開先のものが用いられる。また、母材が厚くエンドタブを薄くする場合でも12mm以上の板を使用するのがよい。

長さは母材の厚さにもよるが、次のような例が淮げられている。

(i) 手溶接35mm以上

(ii) 半自動溶接 35mm以上

(iii) 自動溶接70mm以上

鋼製エンドタブを切断せず残した場合に、梁フランジとエンドタブにより形成されるスリットの底を起点として溶接部が破断する場合がある。JASS6では、エンドタブの切断の要否及び切断要領は特記によることとしている。


(2) 柱梁接合部でのエンドタブの組立溶接は直接柱梁フランジに行わないのがよい。これはエンドタブの組立溶接がショートビードとなり、熱影響部の破壊靭性を低下させることになり、この部分がフランジ全体の脆性破壊の起点となるおそれがあるためである。図7.6.8に柱梁接合部でのエンドタブ組立溶接の例を示す。

図7.6.8_柱梁接合部エンドタブの組立溶接の例(JASS6).jpeg

(g) 回し溶接とは図7.6.9のような溶接である。回し溶接の長さは、隅肉サイズの2倍以上、かつ、15mm以上とする。


図7.6.9_回し溶接.jpeg

(h) 裏当て金の材質は、原則として母材の鋼種と同等のものが使用される。裏当て金の形状は、溶接時に溶け落ちが生じないものとする必要があるが、一般的には板厚 9mmの平鋼が用いられている。柱や梁の溶接継手や柱梁接合部等で裏当て金を用いて溶接する場合は、裏当て金は、原則としてフランジの内側に設置する(図7.6.10 ロ)。ただし、工事現場溶接の下フランジのようにやむを得ない場合は、裏当て金をフランジの外側に取り付けてよい(図7.6.10ハ)。裏当て金の組立溶接は引張力と同時にわずかではあるが曲げ応力を受けるため、この隅肉溶接が最大応力を受けることとなり、比較的簡単に破断してしまう。また、この隅肉溶接は予熱等を行わずに溶接することが多く、組立溶接はもとよりビード長さが十分であっても、溶接金属や熱影響部の破壊靭性が非常に低いこととなり、隅肉溶接の破断がそのまま接合部全体の脆性破壊につながることにもなる。これらのことから裏当て金を用いた柱梁接合部の裏当て金の組立溶接は、梁フランジの両端から5mm以内及びウェブフィレット部のR止まり又は隅肉溶接止端部から5mm以内の位置(図7.6.10イ)に行ってはならない。裏当て金の組立溶接は、梁フランジ幅の1/4の位置(図7.6.10ロ)に行う。


工事現場溶接等で、裏当て金が梁フランジの外側に取り付く場合、組立溶接は、エンドタブの位置又は開先内に行い、本溶接によって再溶融されない組立溶接は、梁フランジ及び柱フランジ母材に直接行ってはならない(図7.6.10ハ)。

図7.6.10_裏当て金の組立溶接(イ).jpeg

図7.6.10_裏当て金の組立溶接(外開先).jpeg

図7.6.10_裏当て金の組立溶接(内開先).jpeg


(i) 溶接により発生するスラグは、適切な工具を用いて適宜除去しなければならない。スラグが残っていると、スラグ巻込みや融合不良等溶接欠陥の原因となる。手溶接やセルフシールドアーク溶接ではガスシールドアーク溶接に比べてスラグの発生量が多いので各パスごとに除去する。溶接完了後も外観の確認と検査のためにスラ グを除去する必要がある。


(j) スパッタの著しい付着は、塗装等に支障を来すので、「標仕」7.6.7(a)(8)では除去することにしている。


(k) 溶接部の特徴

(1) ガスシールドアーク溶接における溶接部分の状況を図7.6.11に示す。

(2) 溶接部のミクロ組織例を図7.6.12に示す。

溶接部とは溶接金属と熱影響部を含めた部分のことをいう。

ここで熱影響部とは溶接時の熱で組織、冶金的性質、機械的性質等が変化した溶融していない母材部分であり、図7.6.12の?@と?Aの部分である。また、溶接金属と熱影響部との境界はボンド部と呼ばれる。溶接部で最も硬化し靭性も低下するのはボンド部の両側である。熱影響部のボンド部に近い部分は結晶粒も粗大化しており硬化しやすく割れ等も生じやすい。溶接のもろさはこのボンド部近くの領域の性質に支配されることが多い。

図7.6.11_ガスシールドアーク溶接における溶接部分の状況.jpeg


図7.6.12_溶接部のミクロ組織例.jpeg


(l) 自動溶接等

(1) 自動溶接とは、溶接ワイヤの送りが自動的にでき、トーチも溶接線に沿って自動走行し、連続的に溶接が進行するが、溶接中の状況判断と対応をオペレーターが行う溶接を指し、サブマージアーク溶接やエレクトロスラグ溶接が該当する。自動溶接については鉄骨製作工場の、加工能力、溶接に対する管理能力、施工能力等を証明する資料を提出させることが望ましい。


(2) 溶接ロボットとは、JIS Z 3001-1(溶接用語 - 第1部:一般)では「溶接に用いられる産業用ロボット」と定義されており、原則として溶接が開始したら終了するまでは人間が関与しなくても溶接可能なシステムである。

近年、建築鉄骨分野における溶接ロボットの普及が著しい。溶接ロボットを用いて溶接施工を行う際には、溶接ロボットの特性を理解したうえでその操作を行う必要があり、溶接の基本的な知識・技能・経験を有し、かつ、使用する溶接ロボットの仕様を熟知した技能者(オペレーター)が担当する必要がある。このオペレーター資格については、7.6.3 (b)を参照されたい。

溶接ロボットの型式認証制度には、(一社)日本溶接協会と(一社)日本ロボット工業会による共通の認証制度 WES 8703/JARAS 1012(建築鉄骨溶接ロボットの型式認証における試験方法及び判定基準)及びWES 8704/JARAS 1013(建築鉄骨溶接ロボットの型式認証基準)がある。

半自動アーク溶接に比べて溶接ロボットの使用上の注意点としては、部材の寸法や組立の精度が半自動に比べて良くないと良好な溶接ができにくいことなどが挙げられる。


(m) 完全溶込み溶接は全断面が確実に溶接されていないと、耐力が著しく低下することがあるので次の場合以外は認めない。

(1) 裏当て金がある場合

(2)裏はつりをする場合

裏はつりは、アークエアーガウジングによる例が多く、ガスガウジングあるいはチッピング(はつり)によることもある。パネルゾーンでは裏はつりが極めて困難になる場合があるので、そのような場合には、裏はつりを必要とする溶接を避けるべきである。また、裏はつりを行う場合は不良溶接を防止するため、初層の欠陥部分を完全に除去するとともに、裏はつり部を十分に清掃したのち、裏溶接を行う。

(3) サブマージアーク溶接で十分な溶込みが保証できる場合

サブマージアーク溶接は溶込みが深いので試験により十分な溶込みが得られ、裏波が完全にできていることが確認された場合は、裏はつりを省略してよい。しかし、溶込みが完全でなければ、部分溶込み溶接(7.6.7(r)参照)とみなさなければならない。


(n) 完全溶込み溶接における余盛りは応力集中を避けるために過度の余盛りをせず、母材表面から滑らかに連続する形状とする。余盛り高さはJASS 6付則6[鉄骨精度検査基準]による(図7.6.13及び7.13.1参照)。

図7.6.13_完全溶込み溶接突合せ継手の余盛り高さ.jpeg

(o) 完全溶込み溶接T継手の余盛りは溶接部近傍の応力集中を緩和し、突き合う板の開裂やはく離の防止に重要である。余盛り高さは JASS 6付則6に従うものとし、ビードは滑らかであることが重要である(図7.6.14参照)。


図7.6.14_T継手の余盛り高さ(JASS6).jpg

(p) 板厚が異なる突合せ継手の溶接部の形状は、次による。

(1) クレーンガーダーのように低応力高サイクル疲労を受ける突合せ継手では図 7.6.15イのように厚い方の材を1/2.5以下の領斜に加工し、開先部分で薄い方と同一の高さにする。

(2) 上記以外で板厚差による段違いが薄い方の板厚の1/4を超える場合又は10mmを超える場合は、図7.6.15ロのようにT継手に準じた高さの余盛を設ける。

(3) 板厚差による段違いが薄い方の板厚の1/4以下、かつ、10mm以下の場合は、図7.6.15ハのように溶接表面が薄い方の材から厚い方の材へなめらかに移行するように溶接する。


図7.6.15_板厚が異なる突合せ継手の例(JASS6).jpeg


(q) H形断面梁を用いた柱梁溶接接合部の溶接ディテールとして開先加工や組立溶接、裏当て金等は「鉄骨工事技術指針・工場製作編」による。

(r) 部分溶込み溶接は、溶込み溶接の一種ではあるが、図7.6.16のように全断面溶接をしないものである。


図7.6.16_部分溶込み溶接.jpeg


(s) 部分溶込み溶接は主としてせん断力に耐えるものとされており、大きな引張応力、曲げ応力、繰返し応力を受ける箇所に使用してはならないとされている。一般に箱形断面材のかど溶接、圧縮力のみを受ける柱の継目等で、通常の隅肉溶接では不足するが隅肉のような形で接合したい場合等によく用いられる。

(t) 隅肉溶接のサイズ(S)の許容差(ΔS)及び余盛りの高さの許容差(Δa)は、JASS 6付則6によれば、管理許容差として0 ≦ ΔS ≦ 0.5S、かつ、 ΔS ≦ 5mm、 0 ≦ Δa ≦ 0.4S、かつ、Δa ≦ 4、限界許容差として、0 ≦ ΔS ≦ 0.8S、かつ、 ΔS ≦ 8mm、 0 ≦ Δa ≦ 0.6S、かつ、Δa ≦ 6となっている(図7.6.17参照)。溶接全長にわたって前記の管理許容差を超えるサイズ及び余盛りの過多がないことを目標に溶接を行う。前記の限界許容差を超えた場合には、原則として不良品として補修することになるが、限界許容差を超えたからといって直ちに削除する必要はなく、それよりも応力の流れがスムーズになるように、溶接ビード(軸方向と直角に切った断面で見た場合の表面)の形状が、平ら又は若干のへこみとなるような補正をするほうが望ましい。



図7.6.17_隅肉溶接のサイズ及び余盛りの高さの許容差(JASS6).jpeg


(u) 隅肉溶接の長さが短く、母材の熱容量に比較して与える熱量が少ないと、溶接部が急冷されて割れを生じやすい。また、応力の伝達が円滑に行われにくくなることもあるので、隅肉溶接の有効長さの最小値を、隅肉サイズの10倍以上で、かつ、40mm以上になるよう(一社)日本建築学会「鋼構造設計規準」に規定されている。

(v) スカラップの形状は特記によるとされているが、一般的には半径 r=35mmの1/4円の扇形とすることが多い。柱梁仕口梁端溶接部ウェブの上下にスカラップを設ける場合は、フランジ側終端の曲率半径 r を約10mmに滑らかに仕上げ、スカラップ底の応力集中を緩和する形状が用いられている。また最近では、先に図7.6.2及び3に示したように、スカラップを設けないノンスカラップ工法も普及している。





7.6.8 気温等による処置

(a) 作業場所の気温が低、-5℃未満の場合は、溶接を行わない。気温(鋼材表面温度)が低いと溶接部の冷却速度が速く、溶接部に割れが生じやすくなるためである。


(b) 作業場所の気温が、 -5℃以上、5℃以下の場合は、溶接の前に、7.6.7(e)に記した方法に従って、溶接線の両側約100mmの範囲まで加熱(ウォームアップ)を行う。また、気温が5℃以上の場合は加熱を行わないのではなく、「標仕」7.6.7(a)(5)に従い、必要に応じて適切な予熱を行う。


(c) 母材がぬれている場合は、溶接には不適当であるが、溶接に影響を及ぼすような風が吹いている場合もシールドが不完全となったり、アークが不安定になるなど作業がしにくく溶接品質にも悪影響があるので、風が吹いているときは、防風装置のない場所では作業を行わないようにする。一般に被覆アーク溶接及びセルフシールドアーク溶接で10m/sまで、ガスシールドアーク半自動溶接で 2m/sまでが限界とされているが、風による作業者の安全面も考慮しなければならない。


7.6.9 関連工事による溶接

(a) 関連工事として仮設鉄筋、カーテンウォール、電気・機械設備等があるが、7.3.9 の仮設材の取付けと同様にショートビードにならないようにする注意が必要である。


(b) 型枠緊張材に用いられるスタッド溶接は、ショートビードに相当することになるが通常は余り悪影響はない。しかし、強度の大きい高張力鋼や気温の低いときなどに行うことは望ましくない。


(c) 高力ボルト接合部分に溶接する場合は、高カボルトのセットに溶接すると高カボルトに割れを生ずることが多く、また、ボルトの軸力に変動を生じるので絶対に避けなければならない(7.4.1 (g)参照)。



7.6.10 溶接部の確認

(a) 品質の良い溶接部を得るためには、溶接後に不具合を補修すればよいとするのではなく、できるだけ溶接後の不具合を少なくすることが肝要である。そのためには、溶接着手前及び溶接作業中の試験、計測又は確認が特に重要となる。

(1) 溶接着手前

いずれの項目も重要であるが、隙間や食違いは直接、継手の強度低下に影響する。また、開先精度や溶接面の清掃が悪いと溶接欠陥の発生につながりやすい。 隙間・食違い・開先面の精度の合否判定は、JASS 6付則6による(7.13.1参照)。

柱梁仕口のダイアフラムとフランジのずれ及び溶接部の突合せ継手の食違いについては平成12年建設省告示第1464号において表7.13.1のように定められている。特に、通しダイアフラムと梁フランジの溶接では梁フランジは通しダイアフラムの板厚内に収めるよう規定されている。そのため、通しダイアフラムの板厚を原くし、図7.6.3に示すように、通しダイアフラムと梁フランジのレベルは通し、ダイアフラム側を1 〜 2mm外側に設定するよう設計図の段階から配慮することが望ましい。

一方、組立溶接は軽視されがちであるが、急冷硬化するので割れが発生しやすい。予熱は溶接割れ発生防止のために重要であり、製作要領書に規定されている場合は、温度チョークや表面温度計で温度を測定する。


(2) 溶接作業中

溶接順序、溶接姿勢、溶接棒及びワイヤ径、溶接電流、アーク電圧、溶接入熱、パス間温度等は、いずれも健全な溶接部を得るために大切な確認項目である。

パス間温度の測定には、温度チョークや表面温度計が用いられているが、最近ではパス間温度・入熱量の管理方法を簡素化するために不可逆性の示温塗料等新しい製品も開発されている。また、あらかじめ溶接試験を行って、入熱とパス数によってパス間温度がどのように変化するのか、また、強度及び靭性がどのような値になるのかを確認しておき、それに基づいて、要求される力学的性能を満足するように溶接作業要領を作成し、実施工ではこの溶接作業要領を守って溶接を行うなどの管理方法も考えられている。

なお、溶接技能者の責任意識を喚起し、溶接部の品質向上につなげる管理方法として、当該溶接部を施工した溶接技能者の名前が分かるようにするなどが考えられる。


(b) 溶接部のビード外観のチェックは品質管理上重要であり、溶接完了後に、次の項目について確認を行う。

(1) ビード表面の不整・ピットの合否判定は、JASS 6付則6による。クレーターは、適切に処理され、割れ・ヘこみがないことを確認する。

アンダーカットの許容値については、平成12年建設省告示第1464号によって、表7.13.1のように定められている。これは、ただし書きはあるもののJASS 6 付則6よりも厳しい値であるので注意する。

(2) 溶接金属の寸法とは余盛りの高さ・隅肉部の脚長等である。これらの測定には、溶接ゲージを使用すれば便利である(図7.6.18参照)。


図7.6.18_溶接ゲージの例.jpeg





7.6.11 溶接部の試験

(a) 「標仕」では、溶接表面割れの試験方法として、JIS Z 2343-1(非破壊試験 - 浸透探傷試験ー第1部:一般通則:浸透探傷試験方法及び浸透指示模様の分類)又は JIS Z 2320-1(非破壊試験一磁粉探傷試験ー第1部:一般通則)によるとされている。

浸透探傷試験(PT)として一般に行われている方法は、カラーチェック(染色浸透探傷法)といわれる簡単な方法で溶接部に浸透性のよい赤色の液を吹き付けて割れ等に浸透させたのち、一度ふき取り、更に白色になる現像液を吹き付け、そこににじみ出た赤色により欠陥を発見する方法である。

一方磁粉探傷試験(MT)は、強磁性体に磁場を与えると、材料の不連続部(欠陥部分)で磁束が表面空間に漏えいし磁極が生じ、そこに磁粉を散布すると磁束による模様が現われるという原理を利用して微細な欠陥を検出する方法である。磁粉探傷で検出できる欠陥は、磁化によって発生する磁力線の方向に対して直角方向に存在するもののみで平行な場合はほとんど検出できない。


(b) 超音波探傷試験

(1) 完全溶込み溶接部の非破壊検査の方法としては、放射線試験(RT)、磁粉探傷試験(MT)、浸透探傷試験(PT)等もあるが、一般的には超音波探傷試験(UT)が採用されている。UTは、試験装置が簡便で取扱いに危険がなく、建築鉄骨のように入り組んでいたり狭い部分であっても適用できるためである。

試験の対象箇所は、非常に重要で欠陥があった場合の危険の大きいものは全数試験となるが、建築鉄骨の場合は溶接部の箇所数が非常に多いこともあり、全数試験をすることはまれで、一般には抜取りの方法が採用されている。抜取試験は、確率論に基づき、試験の効率(時間とコスト)と欠陥を見逃す危険とをはかりにかけて抜取率等を決定するものである。したがって、厳しい試験を行う必要がある場合は抜取率を高くしたり合否の判定基準を厳しくする。

なお、抜取検査では一定の比率で欠陥が含まれる可能性のあることが前提であることを、認識しておく必要がある。


(2) 「標仕」に規定している試験方法は、国の庁舎を基本的な対象としていることからかなり厳しい試験にも適用できること、誤用を防ぐため簡便な方法とすることを勘案して採用された。そこでは、検査のばらつきをより押さえることと工事の大規模化に対応するため、工場溶接の場合の試験に採用した方法は、抜取り回数を2回とした計数調整型抜取検査と呼ばれる方法であり、この方式では、品質の保証はAOQLという概念で行っている。AOQLは、平均出検品質限界といい、任意の工程平均不良率に対するAOQ(平均出検品質)の最大値と定義している。その値は、建物の重要度に応じて、2.5%又は4.0%のいずれかが設計図書に指定されることになっており、特記がなければ 4.0%とすることとなっている。この 4.0%という値は、JASS 6とも対応しており、一般的なレベルの鉄骨製作工場に適用できるものである。一方、2.5%という値はかなり厳しい数字であり、災害時にも拠点となるような防災庁舎等、一般の施設より高い信頼性を要求される建物等に適用するよう設定されたものである。

試験を行う個数を表すサンプルの大きさは20、ロットの合否を判定する基準も「標仕」表7.6.3にあるように一定の値と決めてあり、抜取率は検査水準によって変化することになる。サンプルの大きさ等を固定したのは、比例抜取方式とした場合に生じる可能性のある検査特性のばらつきを極力なくすためである。

検査水準とは、抜取率の大小を表すものであるが、6段階設定しており、設計者は建物の規模、使用する最大板厚、使用する鋼材の種類等を勘案し、1つあるいは複数の検査水準を選択する。「標仕」における最も低い水準は従来までの水準とほぼ同等となるよう設定しているので、小規模な場合はこの水準で十分であろう。40mmを超えるような板厚や高強度鋼材の場合は、鉄骨製作工場の実績等から、特記により高い水準を選択する必要がある。複数の水準を選択した場合は、工場での習熟の度合い、板厚が薄くなることに伴う溶接性の容易さを考慮し、上部の節にいくに従って低い水準を指定していくのが一般的である。

一方、工事現場溶接の場合は、溶接が終わり次第次の工程に移行していくなど、工場溶接で採用しているロットの取り方は採用しにくい。このため、溶接技能者ごとに、施工順序に従って連続的に抜取試験を行い、工事終了時点で要求される検査水準となるような、試験方法が採用されている。AOQL.区切りの大きさ及び連続良品個数は特記によることになっているが特記のない場合のAOQLは 4%、区切りの大きさは4、連続良品(合格)個数は15としている。この方式は、連続して合格箇所が15個出るまで各個検査を続け、もし15個にならないうちに不合格箇所が発見されれば新たに次の合格箇所から数え始める。合格箇所が15個連続すれば、以降の検査は4個ごとに区切り、各組から1個を抜き取って調べる一部検査に移る。一部検査が合格の場合は一部抜取りを続け、不合格の場合は又各個検査に戻る。したがって、ほとんどの場合はこれで十分であると考えられる。

なお、工事現場では足場の撤去、デッキプレートの敷設等あと工程がひっ迫しており、再検査に対応することが困難な場合がある。このため、工事現場溶接では全数検査を実施することも多い。

それぞれの溶接部の合否の判定の規準である検査規準は、(一社)日本建築学会「鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規準」によっているので、詳細はそちらを参照されたい。

なお、前述のようにこの検査に合格したからといって、その溶接部が全く欠陥 がないということではなく、微少な欠陥は許容欠陥として容認されていることも、認識しておく必要がある。

(3) 試験機関等

(i) 試験を行う機関及び試験従事者は、当該鉄骨工事に関して第三者性を確保することが必要である。このため、「標仕」では、当該工事の鉄骨製作工場に所属していないこと、かつ、当該工事の品質管理の試験を行っていない試験機関としている。したがって鉄骨製作工場の検査部門が独立した会社となっていても、工場の品質管理も行っている場合、また鉄骨製作工場とは全く独立した検査会社であっても、当該工場の品質管理を請け負っている場合は、「標仕」で規定した検査会社とは見なされない。


(ii) 鋼構造物の非破壊検査会社であっても、船舶、圧力容器等それぞれ得意分野があるので、建築鉄骨の検査に精通した検査会社であることが重要である。

溶接構造物の非破壊検査を行う検査会社等の試験機関に対する評価制度の一例として(一社)日本溶接協会による「溶接構造物非破壊検査事業者等の認定基準」(WES 8701)を適用した「CIW認定制度」がある。この審査は、検査機関の組織機構、検査技術者の数、試験・検査設備機器の数及び品質保証体制の構築状況について評価している。更に、CIW認定検査事業者の中から、建築鉄骨に精通した検査会社として「建築鉄骨検査適格事業者」を認定している。

このほかに、(公財)日本適合性認定協会から認定された品質マネジメントシステム審査登録機関が、JIS Q 9001に基づいて、検査会社の品質保証体制を審査し認証登録証を交付している。

(iii) 鉄骨溶接部の超音波探傷検査を適切に行うには、超音波探傷試験の一般的な技術のほかに建築鉄骨専門の超音波探傷試験に関する知識が必要である。

「標仕」に定められたJIS Z 2305(非破壊試験技術者の資格及び認証)は、様々な工業分野における超音波探傷試験を含む各種の非破壊試験の認証制度を対象とした規格であり、国際規格ISO 9712に対応して制定されている。JIS Z 2305に適合する資格認証として(一社)日本非破壊検査協会が、試験従事者の知識と技量を審査し、資格証明書を交付している。JIS Z 2305における非破壊試験技術者の資格を表7.6.4に示す。

JIS Z 2305の資格を有していても、建築鉄骨の検査に精通しているとは限らないので、当該工事に従事する超音被探傷試験の技能資格者には、必要に応じて、建築鉄骨工事及びその超音波探傷試験について十分な知識と技量を有していることを実績等により確認することが望ましい。

建築鉄骨を専門とする超音波探傷試験を行う技能資格の一例として、(一社)日本鋼構造協会の「建築鉄骨品質管理機構」が認定登録する「建築鉄骨超音波検査技術者」の資格を挙げることができる。この有資格者は「建築鉄骨工事に関する知識及び超音波探傷試験(UT)に関する知識を有し、かつ建築鉄骨溶接部の超音波探傷について、計画の立案、作業の実施及び結果の解読並びに合否の判定ができる高度の知識と技術を有すると認められる者」とされており、 JIS Z 2305の有資格者を受験対象としている。本資格者数は表7.1.3を参照されたい。

表7.6.4_非破壊検査技術者の資格(JIS Z2305).jpeg


7.6.12 不合格溶接の補修その他

(a) 溶接部の欠陥の名称等については、7.14.1 [ 溶接用語 ]を参照する。溶接部の欠陥の原因及び対策は、表7.6.5に示すとおりである。

補修用溶接棒はなるべく細径のものがよく、手溶接の場合は 4mm以下がよい。また、鋼材の種類によっては、予熱(7.6.7(e)参照)が必要となる。


(b) 溶接割れの種類は次のとおりである。

(1) 割れの発生時の温度による種類

?@ 高温割れ:溶接時の溶接凝固に伴って生じる割れで、主として溶接金属の割れである。


?A 低温割れ:溶接後ある時間経過して室温付近で生じる割れであり、大部分の割れはこれに属する。


(2) 割れの発生部位による種類

?@ 溶接金属の割れ

溶接金属の割れ(クレーター部の割れ).jpeg


溶接金属の割れ(ビート割れ).jpeg


7.6.12_溶接金属の割れ(ルート部).jpeg


?A 熱影響部の割れ
熱影響部の割れ.jpeg


?B 母材の割れ
母材の割れ(ラメラティア).jpeg



(c) 溶接により母材に割れが入った場合の処置としては、母材を取り替える方法と割れを削り取り補修溶接する方法(部分補修)がある。いずれの処置をとるかの判断が難しい場合は、設計担当者の意見等も求めて決定する。


表7.6.5_溶接部の欠陥の原因及び対策(その1).jpeg



表7.6.5_溶接部の欠陥の原因及び対策(その2).jpeg


表7.6.5_溶接部の欠陥の原因及び対策(その3).jpeg





7.6.13 溶接に関するJIS等の抜粋

(a) JIS Z 3841(半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準)の抜枠を次に示す。

JIS Z 3841 : 1997

1. 適用範囲

この規格は、マグ溶接及びセルフシールドアーク溶接による半自動溶接技術検定における、試験方法及び判定基準について規定する。


2. 定義

この規格で用いる主な用語の定義は、JIS Z 3001によるほか、次による。

(1) 組合せ溶接
初めの 1〜3パスをティグ溶接で行い、その後をマグ溶接で行う溶接。


3. 技術検定試験の種類
技術検定試験の種類は、溶接方法、溶接姿勢、継手の種類及び試験材料の厚さの区分などによって表1のように分け、その記号は、同表のとおりとする。


表1_技術検定試験の種類.jpeg

JIS Z3841 : 1997



(b)(一社)日本建築学会「綱構造建築溶接部の超音波探傷検査規準」の抜粋を次に示す。

綱構造建築溶接部の超音波探傷検査規準(2008)

1章 総 則

1.1 適用範囲

この規準は、炭素鋼からなる鋼構造部材の完全溶込み溶接接合部(以下、溶接部という)を超音波探傷試験によって検査する場合に適用する。ただし、板厚 6mm未満のもの、直径が300mm未満の円周継手(角形鋼管柱溶接角部を除く)、鋼管長手継手および分岐継手には原則として適用しない。

超音波探傷試験方法は、手動のパルス反射法で直接接触法による。

ただし、特別な調査研究によりその信頼性が確認された超音波探傷法による場合は、この規準によらなくてよい。


1.2 一般事項

1.2.1 この規準は、溶接部に存在する欠陥の超音波探傷試験方法および合否判定を示す。


1.2.2 超音波探傷検査の範囲および判定結果の処置は、当事者間において構造物の規模、溶接部の有する構造耐力上の重要度などを考慮して定める。


1.2.3 超音波探傷試験方法に関する事項で、この規準に規定する以外の事項は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音披探傷試験方法)による。

1.4 探傷方法

板厚・継手形状・開先形状および溶接方法を考慮し、原則として下記に示す方法による。

(1) 平板状溶接部の一般溶接部は、斜角ー探触子法による。

(2) 鋼管溶接部の円周継手および遠心力鋳鋼管溶接部は、斜角ー探触子法による。

(3) 箱形断面内のエレクトロスラグ溶接部は、垂直ー探触子法による。

(4) 斜角ー探触子法の適用が困難なT継手や突合せ継手は、垂直探傷法またはタンデム探傷法による。


2章 探傷装置および付属品

2.3 接触媒質

原則として、グリセリンペーストまたは濃度 75%以上のグリセリン水溶液を使用する。なお、必要に応じて適正な感度補正を行う場合は、この限りではない。


2.4 標準試験片および対比試験片

2.4.1 標準試験片

JIS Z 2345(超音波探傷用標準試験片)に規定するA1形STB、A2 形系STBおよび A3 形系STBを使用する。


2.4.2 対比試験片

(1) 対比試験片の種類

被検材の形状・寸法など、または探傷方法により、ARB. JIS Z 3060に規定する RB-A6 あるいはRB-42 のいずれかを用いる。

(2) ARB試験片

ARBの形状および寸法は図2に示すもので、被検材と同じ材料で製作するか、またはその被検材と超音波特性の近似した材料で製作するものとする。また、標準穴と仕上げ面との平行度は0.3mm以下とし、仕上げ面の平行度はそれぞれ0.1mm以下とする。


3章 探傷の準備

3.2 探傷面の手入れ

探傷面に、スパッタ、浮いたスケールおよび超音波の伝播を妨げるさびなどが存在する場合には、これらを除去する。また探傷面が粗い場合には適切な方法で仕上げを行う。

なお、塗料またはめっきなどで表面を処理する場合には、処理前に探傷することを原則とする。


4章 斜角探傷法

4.1 斜角ー探触子法

4.1.1 適用範囲

探傷面が平板状の継手の溶接部および直径が300mm以上の鋼管の円周継手溶接部を、探傷する場合に適用する。なお、超音波特性が著しくA1 形STB. A2 形STB または A3 形系STBと異なる被検材の溶接部を探傷する場合には付則1に示す探傷方法を適用する。また、固形エンドタブを用いた梁端フランジ溶接始終端部を探傷する場合には、付則2に示す探傷方法を適用することができる。


4.1.6 距離振幅特性曲線によるエコー高さ区分線の作成

(1) 欠陥を評価するために、エコー高さ区分線を作成する。エコー高さ区分線は距離振幅特性曲線により、4.1.5に定めた試験片を用いて作成する。


(2) エコー高さ区分線は、原則として実際に使用する探触子を用いて、目盛板または補助目盛板(以下、 目盛板という)に記入する。


(3) A2 形系STBまたは RB-A6 を使用する場合には、φ 4X4mmの標準穴を用いてエコー高さ区分線を作成する。ARBまたはRB-42を使用する場合には、それぞれの標準穴を用いてエコー高さ区分線を作成する。


(4) エコー高さ区分線の作成にあたっては、図3 に例示する位置に順次探触子を置き、目盛板にそれぞれのエコー高さのピークをプロットする。


(5) 一定の感度におけるプロット点を直線で結び、1つのエコー高さ区分線とする( 図4参照〕。このとき、最短ビーム路程のプロット点より左はその高さで線を延長する。ただし、A2 形系STBまたはRB-A6を用いる場合で、公称屈折角が45度の探触子を用いる場合は、最短ピーム路程のプロット点は1スキップとする。

図4_エコー高さ区分線の作成例.jpeg

(6) 目盛板には、4本以上のエコー高さ区分線を記入する。隣接する区分線の感度差 は6dBとする。なお、このエコー高さ区分線を記入した目盛板を校正目盛板という。


4.1.7 U線・H線・M線および L線

さきに作成したエコー高さ区分線のうち、目的に応じて、少なくとも下位から3番目以上の線を選びこれをH線とし、これを感度調整規準線とする。H線は、原則として、欠陥エコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが40%以下にならない線とする。

H線から6dB高いエコー高さ区分線をU線、H線から6dB低いエコー高さ区分線をM線、12dB低いエコー高さ区分線をL線とする。


4.1.8 エコー高さの領域

U線・H線・M線およびL線で区切られたエコー高さの領域を表10に示すように名付ける。

表10_エコー高さの領域区分.jpeg

4.1.10 探傷面

(1) 突合せ継手の探傷

図5に示すように片面両側から探傷することを原則とする。


(2) T継手および角継手の探傷

図6に示すように両面片側から探傷することを原則とする。


4.1.10_図5_付合せ継手の探傷.jpeg


4.1.10_図6_T継手および角継手の探傷.jpeg



4.2 タンデム探傷法

4.2.1 適用範囲

タンデム探傷法は、狭開先溶接部の、開先面の融合不良および溶込み不良を探傷する場合に適用する。また、探傷はタンデム基準線をもとに、探傷ジグを使用して1探傷断面ごとに行う。


5章 垂直探傷法

5.1 適用範囲

垂直探傷法は、斜角探傷法の適用が困難な溶接部の欠陥検出およびエレクトロスラグ溶接で施工された箱形断面内のダイアフラム溶接部の溶込み幅の測定に適用する。


6章 欠陥の評価

6.1 一般事項

6.1.1 斜角ー探触子法とタンデム探傷法と45度を併用した場合、欠陥の評価は探傷法別に行う。


6.1.2 斜角ー探触子法で公称屈折角70度と45度または65度と45炭を併用し、同一欠陥を両探触子で検出した場合は、公称屈折角70度または65度の探傷結果を採用して欠陥の評価を行う。


6.1.3 斜角ー探触子法で公称屈折角70度と65度、または公称周波数 5MHzまたは 2MHzで同一欠陥を検出し、欠陥評価が異なる場合には、エコー高さが高い方の探傷結果を採用して欠陥の評価を行う。


6.1.4 垂直探傷法の欠陥評価は下記(1)または(2)で別々に行う。

(1) 溶接部の内部欠陥

(2) 箱形断面内に設けるダイアフラムのエレクトロスラグ溶接部の溶込み幅


6.2 合否判定の対象とする欠陥

合否判定の対象とする欠陥は、欠陥指示長さが被検材の板厚 t に応じて、表12に示す値以上の欠陥とする。ただし、板厚が異なる突合せ継手の場合は、被検材の板厚は薄いほうの板厚とする。

表12_欠陥指示長さの最小値.jpeg



6.3 欠陥評価長さ

同一断面内の欠陥群で深さ方向の位置が同一とみなされ、かつ欠陥と欠陥の間隔が長いほうの欠陥指示長さ以下の場合は、同一欠陥群とみなし、その欠陥評価長さは、それらの欠陥の欠陥指示長さとの間隔の和とする。

また、欠陥と欠陥の間隔が長いほうの欠陥指示長さを超える場合は、それぞれ独立した欠陥とみなしその欠陥評価長さはそれぞれの欠陥長さとする。

なお、欠陥群が応力に対して同一断面内であるか、また、深さ方向位置が同一であるかは、表12に示す値に応じておのおのの欠陥の欠陥エコーが最大工コー高さを示す位置との相対関係により定める。


6.4 欠陥評価長さの境界値

突き合わせる被検材の板厚 t に応じて、欠陥評価長さの境界値 S、M、ML、Lおよび LL は表13に示す値とする。

表13_欠陥評価長さの境界値.jpeg


7章 合否の判定

7.1 単位溶接線

溶接線長さが300mm以上の場合は、欠陥が最も密となるような連続した長さ300mmを、溶接線長さが300mm未満の場合は全長を、それぞれ単位溶接線とする。溶接部の合否は、単位溶接線の合否に店づいで判定する。


7.2 単位溶接線の合否

単位溶接線の合否は、溶接部に作用する応力の種類に応じて、欠陥評価長さおよびエコー高さの領域を用いて判定する。ただし、単位溶接線に複数の欠陥が存在する場合は、欠陥評価長さの総和も考慮して合否の判定を行う。なお、それぞれの欠陥でエコー高さの領域が相違する場合は、そのうちもっとも高いエコー高さ領域を採用する。

7.2.1 疲労を考慮しない溶接部

下記の(1)または(2)により単位溶接線の合否を判定する。

(1) 溶接部に引張応力が作用する場合

欠陥のエコー高さ領域に応じて、欠陥評価長さあるいはその総和が、表14に示す境界値以上ある単位溶接線は不合格とする。

表14_引張応力が作用する溶接部.jpeg


(2) 溶接部に引張応力が作用しない場合

欠陥のエコー高さの領域に応じて、欠陥評価長さあるいはその総和が、表13に示す境界値以上ある単位溶接線は不合格とする。

表15_引張応力が作用しない溶接部.jpeg


7.2.2 疲労を考慮して表面仕上げされた溶接部

欠陥を表面に近い欠陥と内部の欠陥とに分類し、それぞれ下記(1)または(2)により単位溶接線の合否を判定する。ここで表面に近い欠陥とは、欠陥の深さ方向の位置と板厚表面との間隔が板厚の1/4未満の欠陥をいい、内部の欠陥とは、欠陥の深さ方向の位置と板厚表面との間隔が板厚の1/4以上の欠陥をいう。

(1) 表面に近い欠陥

欠陥指示長さが表12に示す最小値以上の欠陥指示長さを含む単位溶接線は不合格とする。

(2) 内部の欠陥

欠陥のエコー高さの領域に応じて、欠陥評価長さが表16に示す境界値以上ある単位溶接線は不合格とする。

表16_疲労を考慮した表面仕上げされた溶接部.jpeg
綱構造建築溶接部の超音波探探傷査規準(2008)


7章 鉄骨工事 7節 スタッド溶接及びデッキプレート溶接

第7章 鉄骨工事


07節 スタッド溶接及びデッキプレート溶接

7.7.1 適用範囲

(a) スタッド溶接にはその熱源の違いにより図7.7.1に示すようにいくつかの種類があるが、鉄骨工事で主として使用されるのはアークスタッド溶接であり、「標仕」でもこの溶接法を適用している。

図7.7.1_スタッド溶接法の分類.jpg
    図7.7.1 スタッド溶接法の分類


(b) アークスタッド溶接は、アークシールドと呼ぶセラミックスの保護筒内で母材とスタッド間にアークを発生させ、その発熱により母材及びスタッドを溶融し、一定時間後、スタッドを母材面上に形成された溶融池に圧入して接合する溶接法である。鉄骨工事では、合成梁や柱脚のシャーコネクターとして多用されている。


7.7.2 スタッド溶接作業における技能資格者

「標仕」では、スタッド溶接技能資格者は、JASS 6付則4[スタッド溶接技術検定試験]に基づく技量を有する者としている。この技量の証明として(一社)スタッド協会が実施している「スタッド溶接技術検定試験」がある。この検定試験における技能者の資格の種別には基本級であるA級と専門級であるB級があり、A級はスタッド軸径22mmΦ以下の下向き溶接、B級は16mmΦ以下の横向きと上向き及び22mmΦ以下の下向き溶接を作業範囲と定めている。


7.7.3 スタッドの仕上り精度

(a) 適正に溶接されたスタッドの高さは溶接前の高さよりスタッド径に応じて3〜6mm減少し、所定の仕上り高さに納まる。一方、電源容量の不足等の原因でアークの発生が不十分な場合には、所定の仕上り高さより高くなり、逆にアークの発生が過度な場合には、所定の仕上り高さより低くなる。また、適正に溶接されたスタッドは、傾きのないものが得られる。

このように、スタッド溶接の溶接後の仕上り高さと頻きは溶接部の品質や施工条件の良否と密接な関係があり、これらの項目を確認することにより、溶接部の品質の良否が判定できる。


(b) 母材及びスタッド材軸部に深さ0.5mmを超えるアンダーカットが発生すると所定の強度が得られないので不合格とする。


7.7.4 スタッド溶接施工

(a) スタッド溶接は、原則として下向きで行うべきであるが、やむを得ず横向きとする場合はフラッシュがスタッド全周に回らないことが多いので注意する。

なお、横向き溶接を行う場合の技能者は、7.7.2に示す「スタッド溶接技術検定試験」のB級とするが16mmφを超える場合は横向きの技量付加試験を行うなど技量の確認が必要である。


(b) スタッド溶接は、大電流の溶接法であり、十分な溶接品質を確保するために専用電源を用いることを原則とする。やむを得ずほかの電源と併用する場合は必要な容量を用意する。


(c) 午前と午後の作業開始前に適切な溶接条件を設定するために試験溶接を行う。試験溶接は、スタッドの径ごとに2本以上のスタッド溶接を行い、30度の曲げ試験を行って溶接条件の適否を確認する。

なお、キャプタイヤケープルが発熱すると抵抗値が上がり、設定条件が変わるので注意する。


(d) 鋼板端部でスタッド溶接する場合、磁気吹き(磁力線の影響でアークが鋼板の内側に引かれる現象)の影響を受けると欠陥となりやすいので鋼板の端側に別の鋼板を置くなどの処置が必要となる場合がある。


(e) スタッドの溶接面に水分・著しい錆・塗料・亜鉛めっき等が介在すると健全な溶接が得られないことがあるため、グラインダー等によりこれらを除去して溶接を行う。


(f) デッキプレート等を貫通して行うスタッド溶接 は、工事に使用されるものと同一の材料及び条件で試験溶接を行い、適正な溶接ができることを確認する必要がある。また、施工に当たってはデッキプレートと溶接母材との間の清掃に特に注意して水分やごみ等の介在物がないことを確認することが必要である。


7.7.5 スタッド溶接後の試験

(a) スタッド溶接完了後、良好な施工品質が確保されているか否かを調べるため、次に示す項目についてあらかじめ受注者等に試験をさせ、その後に監督職員の検査を行う。

(1) 外観試験

(i) アンダーカットの試験は、全数目視により行う。

(ii) 仕上り高さと傾きの試験は「標仕」に定める抜取試験により行う。仕上り高さの測定は、金属製直尺又はコンベックスルールを用いて行う。傾きは目視によりチェックし、疑わしい場合は限界ゲージ(85°)を用いて最大領斜の位置に合わせてチェックする。


(2) 打撃曲げ試験

打撃曲げ試験は、ハンマーでスタッドに打撃曲げを加えこれによって溶接部で破断したり、溶接部に割れその他の欠陥が入らないことを確認する試験法である。割れその他の欠陥の確認は通常は目視により行う。


(b) 不良スタッドについては、要求される強度が確保できないため、7.7.6に定める方法により補修を行う。


7.7.6 不合格スタッド溶接の補修

(a) 母材又はスタッド材軸部に深さ0.5mmを超えるアンダーカットが発生した場合は、50 〜 100mm程度の隣接部に打直しを行う。そのうち、母材に生じたアンダーカットは、母材強度の低下を招くので予熱をして補修溶接を行う。


(b) 仕上り寸法の不良なスタッド材や割れ又は折損の生じたスタッド材は、隣接部に打直しを行うが、欠陥が母材に及んでいる場合は、母材強度の低下を招くのでこれらを除去してグラインダーで母材表面を平滑に仕上げる必要がある。


(c) 打撃曲げ試験で合格したものは、曲がったままでも力学的な支障は少ないので、そのままとしてよい。


7.7.7 気温等による処置

(a) 鋼材の表面温度が低いと溶接部の冷却速度が速いため溶接部に割れが生じやすいことは、スタッド溶接の場合でも同様である。そのため、気温が 0℃以下では原則としてスタッド溶接を行わないこととしている。溶接部の回りを加熱してスタッド溶接を行う場合の加熱温度の 36℃とは、手で触って温かく感じる程度の温度である。


(b) 鋼材表面がぬれた状態で溶接すると、湿気によって溶接部に欠陥が発生したり感電災害の原因にもなる。やむを得ず小雨の中で溶接を行わなければならない場合は、溶接作業区域をテント等で雨養生を行い、ガスバーナー等で溶接する鋼材の表面を加熱し乾媒させた状態でスタッド溶接を行う必要がある。しかし、工事現場施工におけるスタッド溶接は作業範囲が広いので、これらの準備作業は多大な労力と時間を要するため、雨中や0℃以下の低温下でのスタッド溶接は極力避けるべきである。(7.6.8 (c)参照)


7.7.8 デッキプレートの溶接

(a) デッキプレートを鉄骨部材に溶接する場合は特記に基づいてデッキプレートの使用目的に応じた溶接方法を採らなければならない。

デッキプレートを用いた床構法には次の3種類がある。

(1) デッキプレートとコンクリートとのデッキ合成スラブ

(2) デッキプレートと鉄筋コンクリートとのデッキ複合スラブ

(3) デッキプレートをそのまま構造体としたデッキ構造スラブ

いずれの場合もデッキプレートを鉄骨部材に溶接する場合はデッキプレートを梁に密着させ、通常は床スラブから伝達される面内せん断力に対し十分耐えられるように 焼抜き栓溶接を行っている(図7.7.2参照)。ただし、鉄骨梁の設計をデッキ合成スラブの効果を考慮した合成梁として行い、スタッドをデッキプレートを貫通して溶接することが特記されている場合は、焼抜き栓溶接は不要とされている。この場合16mmφ以上のスタッドを使い、デッキプレートを梁に密着させて溶接する。

なお、この場合でもデッキプレートが敷込み後に強風や突風によって飛散しないように、敷込みと同時に仮留めとしてアークスポット溶接若しくは隅肉溶接を行う必要がある。


図7.7.2_焼抜き栓溶接の施工方法の例イ.jpg
図7.7.2_焼抜き栓溶接の施工方法の例ロ.jpg
   図 7.7.2 焼抜き栓溶接の施工方法の例


(b) 溶接技能資格者

(1) 溶接技能資格者は、原則として、7.6.3に解説する溶接技能資格の有資格者とする。スタッド溶接に従事できる溶接技能資格者としては、作業姿勢、スタッド呼び名に応じた(一社)スタッド協会「スタッド溶接技術検定試験」に合格した有資格者がいる。


(2) 焼抜き栓溶接には、被覆アーク溶接棒を使用する手動方法と、炭酸ガスシールド溶接を使用する自動焼抜栓溶接機による方法がある。

前者の場合はJIS Z 3801(手溶接技術検定における試験方法及び判定基準)における基本となる級以上の有資格者、後者の場合は、JIS Z 3841(半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準)における基本となる級以上の有資格者とする。

いずれの場合も焼抜き栓溶接について十分な知識と技量を有している溶接技能者に従事させる。




7章 鉄骨工事 8節 錆止め塗装

第7章 鉄骨工事


8節 錆止め塗装

7.8.1 適用範囲

(a) 本節は、鉄骨工事における錆止め塗装を対象としている。

(b) 作業の流れ、施工計画書の具体的な記述内容や上塗り塗装の適用等については、18章に準ずる。


(c) 鋼材は大気環境で錆び、断面が減少するので、何らかの方法で防錆措置を施す必要がある。大気中での鋼材腐食のメカニズムは、酸素と水による電気化学的作用である。その進行程度は、イオウ酸化物SOxや海塩粒子等の大気中に含まれる腐食促進物質及び気温や湿度等の環境条件に支配され、海岸地域や重化学工業地域等においては特に著しい。


7.8.2 工場塗装の範囲

「標仕」では、コンクリートの付着や耐火被覆の接着、接合部の摩擦面、工事現場での溶接及び溶接後の検査等に支節を及ぼすおそれがある部分等については、塗装をしないこととしている。

「標仕」7.8.2(a)(7)の「耐火被覆材の接着する面」は、耐火材吹付けやラスモルタル塗り等の接着のみで取り付けられる場合に適用される。耐火板張りや耐火材巻付け等の機械的な取付けの場合の鉄骨面に対する塗装の要否は、耐火被覆材の種類とは関係なく、建築物が置かれる建築条件、特に湿度条件を考慮して検討される。


7.8.3 塗料の種別

「標仕」7.8.2(a)(7)により、耐火被覆材が接着する鉄骨面は、その接着性を阻害するおそれがあるため、一般的には塗装を施さないことになっている。しかし、建築物の外周部で結露や漏水等により鉄骨面の腐食が懸念される部位や、施工中に鉄骨面に生じた錆が飛散して周辺に被害を与えたり、仕上げ材等を汚染することが懸念される場合には適切な錆止め措置を溝ずる必要がある。その場合には、耐火被覆材の接着性を阻害しない錆止め検料を使用しなければならない。

なお、環境問題への配慮に関しては、7.1.6を参照されたい。


7.8.4 工事現場塗装

具体的な内容は、18章2節及び3節に準ずる。

昨今、建築用塗料に関するJISが廃止、改正及び統合が進められている。錆止め塗料の選定に当たっては、特に18章3節の内容を確認することが重要である。


7章 鉄骨工事 9節 耐火被覆

第7章 鉄骨工事


09節 耐火被覆

7.9.1 適用範囲

本節は、建築基準法で要求される鉄骨に対する耐火構造を満足するために適用する耐火被覆を対象としている。


7.9.2 耐火被覆の種類及び性能

(a) 以前の建築基準法においては、耐火構造をはじめとする防火関係の基準は、構造や材料等を画ー的に指定する仕様規定を主体としていた。しかし、平成10年6月12日公布(平成12年6月1日施行)の同法では近年における技術的な知見の集積等を踏まえたうえで各基準に必要とされる性能を明確化するとともに各々の性能に対応する技術的な基準を定めることにより性能規定化を図っている。この法改正に伴う性能規定化によって、耐火構造の定義は「壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了するまでの間に当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの」とされた。


(b) 建築基準法施行令第107条では、耐火構造を必要とする建築物の壁、柱、床、はり、屋根及び階段の各部分が通常の火災による火熱を所定の時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないことを規定している。


(c) 「標仕」では、耐火材の吹付け工法、耐火板の張付け工法、耐火材の巻付け工法、ラスモルタルの左官工法等を採用しており、その種類及び建築基準法第2条第七号による耐火性能を特記することとしている。


(d) 一般的に用いられている耐火被覆工法を施工法に準じて分類すると、表7.9.1のようになる。


表7.9.1 耐火被覆工法の分類
表7.9.1_耐火被覆工法の分類.jpeg


7.9.3 耐火被覆の品質

耐火被覆は、国土交通大臣が指定又は認定した仕様に規定されている材料及び工法を用いて、指定又は認定された仕様に準じた施工をした場合に、所定の耐火性能が確保できるものである。


7.9.4 耐火材吹付け

(a) 吹付け工法に用いられる材料には、吹付けロックウール、吹付けモルタル、水酸化アルミニウム混入湿式吹付けモルタル、耐火塗料等がある。

耐火被覆材にアスベストを含有する材料を使用することは、中皮腫や肺がんを誘発するおそれがあるため、禁止されている。(7.1.6(d)参照)


(b) 施工上の留意点

(1) 鉄骨表面に浮き錆が発生している場合は、耐火被覆材の付着性を阻害するおそれがあるため、耐火被覆施工に先立ちワイヤブラシ等の適切な手工具を使用して、除去しておかなければならない。ただし、耐火塗料の場合の素地調整は(e)(3)を参照する。

(2) 吹付け機械は、資材搬入の動線等を考慮して適切な場所に設置する。


(c) 貫通部や取付け金物等は、主要鉄骨と同様に所定の耐火被覆が施されなければならない。


(d) 吹付けロックウール

(1) 現在の鉄骨造建築物に対する耐火被覆材料として最も普及しているのは、吹付けロックウールである。この吹付け工法には、現場配合のセメントスラリーによる半乾式工法と工場配合による乾式工法がある。これらの工法の特徴を表7.9.2 に示す。

表7.9.2 ロックウール吹付け工法の特徴
表7.9.2_ロックウール吹付け工法の特徴.jpg


(2) 天井裏を空調チャンバーとして使用する場合には、特記により梁等の耐火被覆材の表面にセメントスラリーを吹き付けて塵あいの発生を防止する必要がある。


(e) 耐火塗料

(1) 耐火塗料は、耐火性とともに一般塗料と同様な意匠性、施工性や耐久性を期待できる耐火被覆材である。通常、1〜 3mm程度の硬化膜厚の厚さで火災(加熱)時に雰囲気温度が250℃程度に上昇すると、数十倍の容積に発泡して断熱層を形成し、火災時における構造用鉄骨の耐力低下を抑制するもので、一般的には1時間耐火であり、一部2時間耐火も市販されている。従来の耐火塗料は、旧建築基準法第38条の特別認定に基づいて限られた用途のみしか適用できなかったが、基準法の改正に伴いほかの耐火被覆材と同様に、一般の耐火構造認定を取得することが可能となっている。

(2) 耐火塗料は、?@発泡剤(ポリりん酸アンモニウム、りん酸アンモニウム、りん酸メラミン、メラミン、尿素) ?A炭化剤(多価アルコール、デキストリン、糖類)?B樹脂(アクリル樹脂.エポキシ樹脂、ウレタン樹脂) ?C顔料(白色顔料、酸化チタン、着色顔料) ?D溶媒(有機溶剤、水)から構成されている。耐火塗料の硬化塗膜が熱を受けると、発泡剤から放出されるりん酸と炭化剤とが結合して炭化層を形成する。更に、樹脂が溶けると同時に二酸化炭素、アンモニア、水蒸気等のガスが発生し、泡状樹脂となって炭化層を膨張させる。

(3) 塗装仕様は、素地調整、下塗り(錆止め旅料)、耐火塗料塗り、上塗りによって構成され、素地調整にはブラスト、下塗りにはジンクリッチプライマーと2液形エポキシ樹脂プライマー又は変性工ポキシ樹脂プライマー、上塗りには耐候性塗料が適用される。

(4) 耐火塗料は、認定取得企業若しくはその指定工事業者が施工しなければならない。また.塗料が乾燥したのちには電磁膜厚計によって乾燥膜厚を測定して、認定条件である塗膜厚さを確保する必要がある。上塗りは屋外で暴露されると、その種類や使用環境等により劣化が生じる。塗膜の劣化が耐火塗料の塗膜層まで進行しないうちに、上塗りの補修又は増塗りを実施することにより、耐火塗料の耐火性を長期間にわたり維持することができる。したがって、日常点検によって維持管理に努めることが重要である。





7.9.5 耐火板張り

(a) 無機繊維混入けい酸カルシウム板等の成形板耐火被覆材を釘、かすがい及び接着剤(水ガラス系)で張り付ける工法であり、塗装による化粧仕上げも可能である。


(b) 施工上の留意点

(1) あらかじめ成形板耐火被覆材の揚重計画を作成し、揚重量の軽減や揚重回数の減少等を図る。

(2) ストック場所、切断加工場、張付け用仮設足場計画等の検討が必要である。

(3) 耐火被覆成形板の切断くず等廃材の処理を検討しておく必要がある。

(4) 施工速度に制約があるため、全体工程の中でクリテイカルパスとなることが多い。

(5) この成形板耐火被覆材を鉄骨に直接張り付けることは、鉄骨面が平滑でない場合や添え板を使用して高カボルト接合をする場合、これらの接合部の突出部が段違いとなって現れるので見苦しい外観となる。したがって、この成形板耐火被覆材を化粧用として使用するためには鉄骨ウェブ部に捨板を取り付けて浮かし張りとするのが有効である。

(6) 接着剤のみに頼ると施工後の時間経過に伴い耐火被覆成形板のはく落を生じるおそれがあるので、釘やかすがい等の金物で機械的に十分緊結することが重要である。

(7) 耐火被覆成形板は一般に吸水性が大きいため、建築物の外周部に当たる鉄骨架構の耐火被覆に使用する場合には、施工時に雨水が掛らないような養生をする必要がある。

(8) 接着剤は、水ガラス系(NaSiO 3 )成分を主体とする材料が多いので水溶性であり耐水性は劣る。建築物の外周部に当たる柱や梁の耐火被覆材を接着する場合には、施工時に雨水が掛からないような養生をしておく必要がある。


(c) 繊維混入けい酸カルシウム板二種の直張り工法及び箱張り工法の一例を図7.9.1 に示す。


図7.9.1_耐火板張付け工法の例.jpg
図7.9.1 耐火板張付け工法の例

(d) ALCパネルや軽量コンクリート板等で耐火被覆する場合には.構造体の動きに追従できるような接合部の詳細について検討することが重要である。

(e) 強化せっこうボードは.鋼製下地材に小ねじ留めをする。


7.9.6 耐火材巻付け

(a) 高耐熱ロックウール、セラミックファイバーブランケット又はそれらを複合したものを鉄骨に巻付け、ワッシャー付き鋼製の固定ピンを鉄骨に現場でスポット溶接して留め付ける工法であり化粧仕上げも可能である。

なお、固定ビンを構造体にスポット溶接することから、構造体への影響や施工上の配慮事項等について施工の前に設計担当者と打合せを行う。


(b) 施工上の留意点

(1) 搬入された材料がそれぞれの認定に適合していること及び厚さや数量が指定どおりであることを確認する。物性の確認は検査成績書等で代用する。

(2) 材料は,あらかじめ工場でプレカットしたもの又は標準品を搬入し,現場で鉄骨の周長に合わせて切断する。

(3) 材料は屋内で雨水の掛からないところに保管する。その回りには安全通路を確保し,他の作業に支障のないようにする。

(4) 施工に支障を来すおそれのある浮き錆及び油等は、施工に先立ち十分に除去する。

(5) 取付けに際しては、材料のたるみ、ピンの溶接の不具合、各目地部の突合せの隙間等が生じないように注意する。施工した状態の断面図の例を図7.9.2に示す。

(6) 雨水が掛かる場合の施工は避ける。

(7) 必要に応じて.衝撃が掛からないように養生する。

図7.9.2_耐火材巻付け工法の施工例.jpg
図7.9.2 耐火材巻付け工法の施工例


7.9.7 ラス張りモルタル塗り

鋼材を下地として鉄網を巻き、モルタル又はパーライトモルタルを所定の厚さに塗り付けた工法が、「耐火構造の構造方法を定める件」(平成12年5月30日建設省告示第1399号)で一般指定されている。施工の速度は吹付け工法より劣る。また,下地の形状に左右されずに適用可能であるが、乾燥に伴うひび割れが発生しやすく、屋外ではモルタル内部に水が浸入して、鋼材が腐食していても気付くことが遅れやすいので、注意する。


7.9.8 試 験

(a) 耐火被覆の施工

耐火被覆の施工は、一般指定及び「耐火性能検証法に関する算出方法等を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1433号)に基づく吹付けロックウール及び繊維混入けい酸カルシウム板の材料工法を除き、個別認定取得者又は個別認定取得者が指定した施工業者のみが実施できるものである。監督職員は認定条件に基づいて施工されていることを確認することが重要である。


(b) 吹付け工法

吹付け工法による耐火被覆は、要求される耐火性能に対応した吹付け厚さ及びかさ密度の最低値が指定されているが、現場施工においては、そのばらつきを避けることができない。したがって、適切な方法で試験して性能の確認を行わなければならない。

ロックウール吹付け工法(半乾式 ・乾式工法)について、次に示す。

(?@) 平成12年6月施行の改正建築基準法において、ロックウール工業会が取得していた通則認定が廃止され、各社の連名個別認定とされた。認定条件は各社共通であり、品質管理方法も共通的に作成された施工品質管理指針を遵守することとしている。

施工現場での監理等に当たっては、ロックウール工業会により作成された、施工品質管理指針を参考にするとよい。

(ii) 建設省住指発第208号(昭和62年7月1日)では、ロックウール工業会が指定した図7.9.3に示すような厚さ測定器を用いて吹付け面積5m 2 ごとに1箇所以上の厚さを確認しながら、吹付け施工をすることが示されている。

なお、この通達は建築基準法の改正に伴いその効力を失っているが品質管理の参考として有効なものである。

実施工では所定の密度を確保するため、計算で求めた施工面積に対する必要な材料使用量の管理だけでなく、未乾燥状態でのかさ密度を測定することにより管理を行う。

建設省住指発第208号では、厚さ確認ピンの差込みは柱1面に各1本、梁は 6mにつき3本としている。「標仕」においてもこの原則に準拠してスラブ及び壁面については2m 2 程度につき1箇所以上、柱は1面に各1箇所以上、梁は1本当たり、ウェブ両側に各1本、下フランジ下面に1本、下フランジ端部両側に各1本と確認の箇所数を規定している。

(iii) 材料は自然乾燥において一般に5〜7日で必要強度に達し、約3週間で気乾状態になる。また,寒冷時には吹付け直後に凍結防止対策を講ずる必要がある。

図7.9.3_厚さ測定器の例.jpg
図7.9.3 厚さ測定器の例(単位:mm)

(iv) あらかじめ吹付け厚さを測定したのち、図7.9.4に示すようなかさ密度測定用切取り器で直径 8cmの円筒状にロックウールを切り取り、一定質量になるまで乾燥器に入れて乾燥させる。測定された質量を用いて次式に基づき、かさ密度を求める。

耐火被覆のかさ密度の式.jpeg

図7.9.4_かさ密度測定用切取り器.jpg
図7.9.4 かさ密度測定用切取り器(単位:mm)

(c) 耐火板張り工法

(1) 現場搬入された材料が、所定の厚さと密度を満足していることを確認する。

(2) 成形板が鉄骨あるいは隣接する成形板と接着剤及び金物で確実に留め付けられており、耐火性能を阻害するおそれのないことを検査する。特に成形板のはく落を防止するために、釘やかすがい等の金物が適切に施工されていることを確認する。


7.9.9 耐火表示

国土交通大臣認定の条件では、施工面への表示は義務付けられていない。しかし.「標仕」では「点検可能な部分に適切な表示を行う。」こととしており.施工面に認定取得者等が定めた耐火性能等を示す表示を行う必要がある。


7章 鉄骨工事 10節工事現場施工

第7章 鉄骨工事


10節 工事現場施工

7.10.1 適用範囲

(a) ここでいう工事現場施工とは、鉄骨製作工場で加工・製作されたのち、工事現場に搬入された各部材の仕分け・建方及び部材相互の接合によって、鉄骨工事が完了するまでに要する作業並びにこれらに関する仮設工事を対象とする。

(b) 工事現場施工は、鉄骨製作工場での鉄骨製作と異なり受注者等が直接施工管理を行うものである。

(c) 工事現場においては受注者等は、必要に応じて受注者等の鉄骨工事担当技術者(以下、担当技術者という。)を別に定めて、担当業務とその責任を明確にするよう指導する。

担当技術者には、(一社)日本鋼構造協会の「建築鉄骨品質管理機構」が認定登録している「鉄骨工事管理責任者」(7.1.4 (c)参照)の有資格者等が参考となる。

(d) 計画に際し、担当技術者は、設計図書をはじめ工事現場状況や制約条件を調査・確認し、各種検査の計画を立案したうえで施工計画書を作成し、監督職員はこれを検討し品質計画について承諾をする。

(e) 担当技術者は、計画に基づいて、鉄骨工事の各工程で検査及び確認を行い、設計図書に示された品質を確保する。

(f) 受注者等が工事現場で行う検査の項目は、次のとおりである。

なお、監督職員は、受注者等が行った管理、検査の結果について報告を受けたのち、必要に応じて検査を実施する。

(1) アンカーボルトの埋込み
(位置・出の高さ、モルタル面の精度)

(2) 搬入された鉄骨製品の外観
(曲がり・傷の有無、塗装部の傷の有無等)

(3) 建方
(建入れ精度・接合部の精度)

(4) 高カボルト接合
(一次締め、マーキング、ピンテールの破断状態、
 とも回り・軸回りの有無、締付け後のナット回転量、余長等)

(5) 工事現場溶接接合
(開先部の精度、溶接外観、表面欠陥、内部欠陥)

(6) デッキプレート工事
(焼抜き栓溶接、アークスポット溶接の外観、母材への影響)

(7) スタッド工事
(溶接外観、打撃曲げ試験結果、母材への影響)

(8) 他工事との関連溶接
(ビード外観、溶接位置・長さ)

(9) 工事現場塗装
(素地ごしらえ、塗膜厚、外観)

(10) 耐火被覆
(下地処理、厚さ、かさ比重)


7.10.2 建方精度

(a) 建方精度の確保は、接合部の耐力確保と並んで工事現場施工の品質管理のかなめである。本接合完了後の建方精度を確保するためには、アンカーボルトの据付け精度、工事現場接合部の精度確保が前提となる。

(b) アンカーボルトの据付け精度は、JASS 6付則6[鉄骨精度検査基準]付表5[工事現場]による( 7.13.1 参照)。

(c) 高カボルト接合部の精度はJASS 6付則6付表2[高カボルト]により、工事現場溶接接合部の精度は、JASS 6付則6付表1[工作および組立て]による。

(d) 本接合完了後、建方精度の測定を行う。その精度はJASS 6付則6付表5[工事現場]による。

特に建物外周部の柱の倒れは外装仕上げ材の納まり、SRC造での鉄筋の納まり等に影響が出る場合があるので関連工事に反映させる。なお、建方精度の測定に当たっては、温度の影響を考慮する。





7.10.3 アンカーボルト等の設置

(a) アンカーボルト

(1) 適用範囲

アンカーボルトによって鉄骨骨組(鉄骨鉄筋コンクリート造の鉄骨も含む。)を鉄筋コンクリート造部分(RC造)に接合し、固定することを定着という。

一般には、鉄骨柱とRC造の基礎との接合部すなわち柱脚を指すことが多い。

ここでは定着の代表的な部位として柱脚を取り扱うが、図7.10.1に示すようなほかの定着部位についても準用できる。


図7.10.1_定着部位の例.jpg
図7.10.1 定着部位の例


(2) アンカーボルトの役割

柱脚の形式は、骨組の規模柱からの応力伝達の条件により多岐にわたるが、基本的には、(イ)露出形式、(ロ)根巻き形式、(ハ)埋込み形式 の3つに分けることができる。その例を図7.10.2に示す。

一方、アンカーボルトに要求される役割は、次の2種に分けられる。

?@ 建方用アンカーボルト

躯体工事完了後は構造耐力を負担しないアンカーボルトで、主に建方の手段として用いる。


?A 構造用アンカーボルト

躯体工事完了後も構造耐力を負担するアンカーボルトで、引張カ・せん断力及びこれらの組合せ力を負担する。

アンカーボルトの施工に当たっては、上の役割について留意する必要がある。


図7.10.2_柱脚の形式.jpg
図7.10.2 柱脚の形式


(3) アンカーボルトの形状・寸法及び品質

(i) アンカーボルトの形状・寸法及び品質は7.2.4による。

(ii) アンカーボルトの形状の一例を図7.10.3に示す。


図7.10.3_アンカーボルトの形状の例.jpg
図7.10.3 アンカーボルトの形状の例


(4) 「鉄骨造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を定める件」を次に示す。

鉄骨造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を定める件
(平成12年5月31日 建設省告示第1456号、最終改正平成19年9月27日)

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第66条の規定に基づき、鉄造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を次のように定める。

建築基準法施行令(以下「令」という。)第66条に規定する鉄骨造の柱の脚部は、次の各号のいずれかに定める構造方法により基礎に緊結しなければならない。ただし、第一号(ロ及びハを除く。)、第二号(ハを除く。)及び第三号の規定は、令第82条第一号から第三号までに規定する構造計算を行った場合においては、適用しない。

一、露出形式柱脚にあっては、次に適合するものであること。

イ.アンカーボルトが当該柱の中心に対して均等に配置されていること。

ロ.アンカーボルトには座金を用い、ナット部分の溶接、ナットの二重使用その他これらと同等以上の効力を有する戻り止めを施したものであること。

ハ.アンカーボルトの基礎に対する定着長さがアンカーボルトの径の20倍以上であり、かつ、その先端をかぎ状に折り曲げるか又は定着金物を設けたものであること。ただし、アンカーボルトの付着力を考慮してアンカーボルトの抜け出し及びコンクリートの破壊が生じないことが確かめられた場合においては、この限りでない。

二.柱の最下端の断面積に対するアンカーボルトの全断面積の割合が20%以上であること。

ホ.鉄骨柱のベースプレートの厚さをアンカーボルトの径の1.3倍以上としたものであること。

ヘ.アンカーボルト孔の径を当該アンカーボルトの径に5 mmを加えた数値以下の数値としかつ、縁端距離(当該アンカーボルトの中心軸からベースプレートの縁端部までの距離のうち最短のものをいう。以下同じ。)を次の表に掲げるアンカーボルトの径及びベースプレートの縁端部の種類に応じてそれぞれ次の表に定める数値以上の数値としたものであること。

建告1456号ベースプレートの縁端部.jpeg

二、根巻き形式柱脚にあっては次に適合するものであること。

イ.根巻き部分(鉄骨の柱の脚部において鉄筋コンクリートで覆われた部分をいう。以下同じ。)の高さは、柱幅(張り間方向及びけた行方向の柱の見付け輻のうち大きい方をいう。第三号イ及びハにおいて同じ。)の2.5倍以上であること。


ロ.根巻き部分の鉄筋コンクリートの主筋(以下「立上り主筋」という。)は4本以上とし、その頂部をかぎ状に折りげたものであること。この場合において、立上り主筋の定着長さは、定着位置と鉄筋の種類に応じて次の表に掲げる数値を鉄筋の径に乗じて得た数値以上の数値としなければならない。ただし、その付着力を考慮してこれと同等以上の定着効果を有することが確かめられた場合においては、この限りでない。

根巻き形式柱脚の鉄筋の種類.jpeg

ハ.根巻き部分に令第77条第二号及び第三号に規定する帯筋を配置したものであること。ただし、令第3章第8節第1款の2に規定する保有水平耐力計算を行った場合においては、この限りでない。


三、埋込み形式柱脚にあっては次に適合するものであること。

イ.コンクリートヘの柱の埋込み部分の深さが柱幅の2倍以上であること。

口.側柱又は隅柱の柱脚にあっては、径9 mm以上のU字形の補強筋その他これに類するものにより補強されていること。

ハ.埋込み部分の鉄骨に対するコンクリートのかぶり厚さが鉄骨の柱幅以上であること。


鉄骨造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を定める件



(5) アンカーボルトの位置と高さ

(i) アンカーボルトの埋込み精度は、ボルトの平面的な位置とボルト頭部の突出し寸法が主なポイントである。また、柱建方時にアンカーボルトがベースプレートの孔に無理なく挿入でき、ナット締付け時のベースプレートとの密着度を高めるために、長さ方向の垂直度を正確に保つことも大切である。

(ii) ボルト頭部の出の高さは、二重ナット締めを行っても外にねじが3山以上出ることを標準とする。


(b) 構造用アンカーボルト及びアンカーフレーム

構造用アンカーボルト及びアンカーフレームの形状並びに寸法は、特記によることとしている。


(c) 建方用アンカーボルトの保持及び埋込み

(1) アンカーボルトの保持は、あらかじめアンカーボルトに振れ止め等を溶接し組み立てたものを、取付け場所に固定する。

組立に際しては、型板を用い正確に組み立てる。また、取付け場所に固定する場合にも、図7.10.4のように型板を用い通り心に正しく合わせる。


(2) アンカーボルトの保持及び埋込みの工法

(i) アンカーボルトの埋込み方法には、図7.10.4に示す方法があるが、上部の移動を止めるだけでなく、下部のコンクリートの流れによる移動も確実に止めなければならない。

(ii) 簡単なものではアンカーボルトの下部を基礎の鉄筋に鉄線で緊結する程度であるが、重要なものでは、下部のコンクリートに金物を埋め込んでおき、これに溶接する方法、鉄筋あるいは鉄骨を用いてフレームを作り、これを固定しておきアンカーボルトと緊結する方法がある。

「標仕」表7.10.1の工法を図示すると図7.10.4のようになる。このうち、A種は(イ)、B種は(ロ)、 C種は(ハ)である。

なお、「標仕」のC種はアンカーボルトの台直しを考慮した方法であるが、台直しは引張力の低下を招くなど構造的には好ましくないため、事前に設計担当者と打ち合わせておく。

台直しのために薄鉄板を用いた漏斗状のラッパを用いるが、ラッパはコンクリートの硬化後取り外すことになる。取り外したのちは、直ちに布等を詰め、ごみ等の入らないようにする。また、ラッパの外側のコンクリートは、厚さが薄くなると割れるおそれがあるので注意が必要である。この方法によるアンカーボルトの位置の修正は、一般に、ラッパの径の 1/4〜1/5 程度とされている。ラッパの代わりにポリスチレンフォーム保温材等を用いることがあるが、あとの処置がうまくいかないので注意する。


図7.10.4_アンカーボルトの埋込み方法.jpg
図7.10.4 アンカーボルトの埋込み方法

(iii) その他の方法

?@ 箱抜き方法

アンカーボルト位置に塩化ビニルパイプ、紙パイプ、スパイラルチューブ等を埋め込み、 コンクリート硬化後にそのあなにアンカーボルトを挿入し、グラウト材を入れて固定する(図7.10.5参照)。この時ベースプレート下面の密着を兼ねてグラウトする方法もある。図7.10.4の(イ)〜(ハ)と比較して精度については、良好な結果が期待できる。ただし、塩化ビニルパイプ、紙パイプはグラウト前に取り除いておかなければならない。

埋込み型の柱脚の場合は、柱全体について箱抜きをする場合もある。

図7.10.5_箱抜き方法.jpg
図7.10.5 箱抜き方法


?A あと施工アンカー(接着系アンカー)

基礎コンクリートの打込み・硬化後に所定の位置にドリルであなをあけ、アンカーボルトをエポキシ樹脂等で固定する。使用できるボルト軸径と長さ、許容引張力、基礎鉄筋との関係について確認しておくことが必要である。これと似た方法として、エポキシ樹脂の代わりにグラウト材を使うこともできるが、この場合はあな径がやや太くなる。


?B アンカーボルトを2つに分ける方法(特許工法)

図7.10.6 のようにコンクリートに埋め込まれる部分と、あとから溶接する部分の2つに分ける方法で、コンクリート打込み・硬化後、ボルトを溶接する。引張り耐力を期待することも可能ではあるが、その場合、ロッドとボルトの心ずれ・プレート板厚により許容耐力が決められているので注意が必要である。


図7.10.6_アンカーボルトの溶接方法.jpg
図7.10.6 アンカーボルト溶接方法


(d) 養生
アンカーボルトは、コンクリートに埋め込む前に、ねじ部に打ち傷や錆がないことを、埋め込まれる部分には油類がついていないことを確認する。

また、露出部は埋め込まれてから建方までの間に、錆の発生、ねじ山の損傷、コンクリートの付着等が生じないように、布、ビニルテープ等で養生しておく。


(e) 柱底均しモルタル

(1) ベースプレートは、この下面に施工される柱底均しモルタルにより支持される。

ベースプレートが小さい場合は、全面モルタル塗りを行い仕上げるが、ベースプレートが大きい場合は、モルタルとの密着性に問題が出ることがあるため、あと詰め中心塗り工法が普通である。中心塗りモルタルは大きさ 200〜300mmの角形あるいは円形とする。塗厚は特記されるが、「標仕」表7.10.2の A種の場合は50mm、B種の場合は30mmが一般的である。

(2) モルタル途りに当たっては、コンクリート面のレイタンス等を取り除き、モルタルとコンクリートが一体となるように施工する。


(3) モルタルの調合は「標仕」7.2.9による。充填する場合は、空隙の生じないよう入念に詰める。しかし、このモルタル充填は面倒な作業であるうえに、充填が不完全であると構造上問題となるため慎重な施工が必要である。構造上重要でベースプレートが大きい場合は、充填が困難なので、流動性の良い無収縮モルタルを用いるのがよい。


(4) 柱底均しモルタルの一般的な工法の例を図7.10.7に示す。「標仕」表7.10.2の工法のA種は(イ)、B種は(イ)又は(ハ)である。このほか(イ)の一種である(ロ)全面あと詰め工法がある。「標仕」では特記がなければA種としている。

なお、「標仕」ではグラウトに使用するモルタルは、A種の場合は無収縮モルタルとし、B種の場合は硬練りモルタルでもよいこととしている。また、無収縮モルタルを使用する場合の工法は、特許等の関係もあり、製造所の仕様によることとしている。


図7.10.7_ベースプレートの支持方法.jpg
図7.10.7 ベースプレートの支持方法

(f) ナットの締付け
(1) ナットの締付けは、建入直し完了後、アンカーボルトの張力が均ーになるようレンチ等で緩みのないように行う。

(2) ナットは、 コンクリートに埋め込まれる場合を除き二重ナットを用いて戻止めを行う。


(3) アンカーボルトの締付け力及び締付け方法はナット回転法で行い、ナットの密着を確認したのち 30゜回転させる。


(g) 柱脚部鉄筋の処理
柱脚部分が鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は、建方の際柱脚の周囲にある鉄筋が障害になることが多いが、この鉄筋をなるべく傷めないように取り扱うことが必要である。曲げた鉄筋は再び元の位置に戻すので、なるべく緩やかに曲げるのがよい。鉄筋を曲げたり、元の位置に戻したりする場合、850〜900℃に加熱して曲げるのが望ましい。温度管理をせずに適当に加熱すると、低温域で曲げることになり、鉄筋がもろくなり折れることもあるので行ってはならない。

なお、鉄筋を曲げる場合の角度は30°以下が望ましい(図7.10.8参照)。

ベースプレートと鉄筋が当たる場合は、この角度が守れなくなるので、そのようなことにならないよう、鉄骨工事着手前に検討する必要がある。


図7.10.8_柱脚鉄筋の納まり.jpg
図7.10.8 柱脚鉄筋の納まり





7.10.4 搬入及び建方準備

(a) 建方計画

(1) 建方は、効率の良い建方順序を選定するとともに、建方途中の構造の不安定な状態での事故のないように、十分な検討をする。また、建方用機械の取扱いに無理がないようにし、作業員の安全、周辺に対する安全等災害予防に十分な処置が必要である。


(2) 建方計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

?@ 工程表
(準備開始時期、各節ごとの組立及び接合時期、完了時期)

?A 施工管理体制

?B 組立順序(図面に表すのがよい)

?C 吊り足場等の仮設材や二次部材等で地組みするものの有無(図示する)

?D 吊上げの方法

?E 主な部材の質量表(部材の質量は平面図に記入するのが分かりやすい)

?F 建方用機械の種類、性能(吊上げ能力、作業範囲、設置位置及び保安上の注意事項)

?G 建方途中の建入れ測定方法及びその修正方法

?H 建方完了時の建入れ測定方法及びその修正方法

?I 部材集積場所及び集積方法

?J 建入れ検査の合否の基準

?K 建方中の強風に対する補強の方法及び仮ボルトの本数等

?L 接合作業の手順及び検査方法

?M 安全管理及び養生の方法


(3) 建方時の強風等に対する補強には、次のようなものがある。

(i) 鉄骨鉄筋コンクリート造の鉄骨には、コンクリートが打ち込まれるまでは、十分な耐力を発揮できないものがある。特にこのようなものは設計担当者と打ち合わせ、必要な補強をする。

(ii) 鉄骨に重量物を載せたり、土圧をかけたり、通常の構造設計で考えていない大きな荷重を負担させる場合には、計算書を提出させ、設計担当者と打ち合わせて安全を確認する必要がある。


(4) 鉄骨の建方では特記により技能士(とび)が適用される。(「標仕」1.5.2)


(b) 建方機械
建方機械の機種と台数は、最大荷重、作業半径、作業能率等により決定する。この際、建方機械及び建方機械を設置する構造体、架台、路盤、構台等が、自重、風圧力、地震力、クレーン運転時の衝撃力等に対して安全であることを確認する。


(c) 搬入・仕分け
(1) 製品の受入れ
受注者等の製品の受入れに際しては、鉄骨製作工場の送り状と照合し、製品の数量及び変形・損傷の有無等を確認させる。

(2) 製品の取扱い
製品の取扱いに当たっては、部材を適切な受台の上に置き、変形・損傷を防ぐ。部材に変形・損傷が生じた場合は建方前に修正させる。


7.10.5 建方

(a) 地組み
地組みを行うときは、適切な架台・治具等を使用し、地組み部材の寸法精度を確保する。


(b) 建方用設備・器具
建方に使用するワイヤロープ、シャックル、吊金物等は、許容荷重範囲内で正しく使用する。また、定期的に点検し、損傷のあるものは使用しない。


(c) 建入れ直し
(1) 建入れ直しのために加力するときは、加力部分を養生し、部材の損傷を防ぐ。

(2) ワイヤロープの取付け用ビースはあらかじめ鉄骨本体に取り付けられた強固なものとする。

(3) ターンバックル付き筋かいを有する構造物においては、その筋かいを用いて建入れ直しを行ってはならない。

(4) 建入れ直しは、本接合終了後の精度を満足できるように考慮して行う。

(5) 架構の倒壊防止用ワイヤロープを使用する場合、このワイヤロープを建入れ直しに兼用してもよい。

(6) 筋かい補強作業は必ず建方当日に行うこととし、翌日に持ち越してはならない。


(d) 仮ボルトの締付け

建方作業における部材の組立に使用し、本締め又は溶接までの間、予想される外力に対して架構の変形及び倒壊を防ぐためのボルトを仮ボルトと呼ぶ。仮ボルトは普通ボルト等を用い、ボルト1群に対して、高カボルト継手では1/3以上、2本以上、混用接合及び併用継手では1/2以上、かつ、2本以上をバランスよく配置し、締め付ける。仮ボルトのボルト1群を図7.10.9に示す。図7.4.8に示す高カボルトの1 群とは異なる。これを適用しないときは、風荷重、地震荷重及び積雪に対して接合部の安全性の検討を行い、適切な措置を施す。また、溶接継手におけるエレクションピース等に使用する仮ボルトは高力ボルトを使用して全数締め付ける(図7.10.10 参照)。



図7.10.9_仮ボルトにおける1群の考え方.jpg
図7.10.9 仮ボルトにおける1群の考え方


図7.10.10_エレクションピースの仮ボルト.jpg
図7.10.10 エレクションピースの仮ボルト


(e)建方補助部材等の工夫

建方の際に、作業を円滑に進めるために補助部材を取り付けることがよく行われる。しかし、これら取り付けられた補助部材により超音波探傷検査が不可能になったり、これらの取付けのために本来望ましくない溶接が行われるケースもある。例えば、前者の例としては、工事現場溶接する大梁を設置する際に使用する「梁受」がある。また後者の例としては、大梁フランジと柱を溶接する際の裏当て金取付けのための開先内の母材断面内での組立溶接がこれに当たる。

しかしこれらは、工事現場での工夫により回避することもできる。「梁受」を回避する工夫の例としては、図7.10.11のような梁受け治具の使用等が挙げられる。また、開先内での溶接を回避する例としては、図7.10.12のような裏当て金取付け治具の使用が挙げられる

従来より慣用的に行われている方法についても、品質管理上の問題点に意識をもち、問題点を回避する工夫を行うことが工事現場施工では重要である。


図7.10.11_梁受け治具.jpg
図7.10.11 梁受け治具


図7.10.12_裏当て金取り付け治具.jpg
図7.10.12 裏当て金取付け治具





7.10.6 工事現場施工検査

(a) 施工者は、本接合に先立ち、ひずみを修正し、建入れ検査を行い。施工管理記録を作成する。また、必要な場合は、監督職員が検査を行う。

(b) 建入れ直しは建方時の誤差、すなわち柱の倒れ・出入り等を修正し、建方精度を確保するために行うものであるが、建方がすべて完了してから行ったのでは十分に修正できない場合が多い。したがって建方の進行とともに、できるだけ小区画に区切って建入れ直しと建入れ検査を行うことが望ましい。

(c) 日照による温度の影響を避けるために早朝一定時間に計測するなどの考慮を払わなければならない。また、長期間にわたって鉄骨工事が続く場合は、気候も変わるので測定器の温度補正を行わなければならない。


7.10.7 工事現場接合

(a) 高カボルト
高カボルト接合は、4節による。


(b) 工事現場溶接
工事現場溶接は、6節によるほか、次による。

(i) 溶接方法
工事現場溶接には、一般に、被覆アーク溶接、ガスシールドアーク溶接、セルフシールドアーク溶接及びスタッド溶接が用られる。


(ii) 溶接技能資格者
工事現場溶接に従事する溶接技能資格者は、7.6.3によるほか、工事現場溶接に関し十分な知識と技量を有する者とする。


(iii) 溶接機器及び溶接材料
溶接機器は工事現場溶接に適したもので、溶接技能資格者に対して取扱いを習熟させておかなければならない。

(iv) 溶接施工
?@ 施工順序は、溶接ひずみの建方精度への影響を考慮して決定する(図 7.10.13参照)。


図7.10.13_平面的に見た溶接順序.jpg
図 7.10.13 平面的にみた溶接順序

?A 施工時の天候については7.6.8による。

(v) 検査及び補修

工事現場溶接における検査及び補修は、特記のない場合7.6.10〜12による。

(c) 混用接合
ウェブを高カボルト接合、フランジを工事現場溶接接合とするなどの混用接合は、原則として、高カボルトを先に締め付け、その後溶接を行う。

(d) 併用継手
高カボルトと溶接との併用継手は、原則として高力ボルトを先に締め付け、その後溶接を行う。

(e) その他
増築・改築・修繕あるいは模様替え等において、既存建築物の鉄骨に溶接する場合は、あらかじめ周囲の状況を調査し、特に既存鉄骨について、その溶接性を確かめる。


7.10.8 その他の工事現場施工検査

(a) デッキプレートの種類と形状寸法については、7.2.7による。デッキプレートの敷設に伴う施工上の留意事項と検査項目は、 7.7.8 による。

(b) 頭付きスタッドの溶接施工の留意事項と検査項目は 7節 による。

(c) 仮設、鉄筋、カーテンウォール、電気・機械設備等のため、金物、その他を鉄骨部材にあと付け溶接する場合は、母材にアンダーカット、ショートビード等の悪影響を与えるような溶接を行ってはならない。

鉄骨に溶接を行う場合は、鋼材の種類・溶接方法等について7.6.9によればよい。

(d) 工事現場接合部分及び工場塗装の損傷した部分を塗装する場合は、8節により、工場塗装に対応した仕様で検査完了後に行う。

(e) 耐火被覆の施工上の留意事項と検査項目は、9節による。


7章 鉄骨工事 11節 軽量形鋼構造

第7章 鉄骨工事


11節 軽量形鋼構造

7.11.1 適用範囲

この節は、冷間成形された軽量形鋼を使用する場合を対象としており、この節に規定されていないものは、1節から10節まで及び12節によればよい。

以前は、軽量形鋼によるラチス構造等が広く用いられていた。しかし、最近では二次部材として使用することが一般的である。


7.11.2 施 工

(a) 材 料

(1) 鋼 材

(i) JIS G 3350(一般構造用軽量形鋼)は、建築その他の構造物に用いる冷間成形の軽量形鋼であり、種類はSSC400 1種類で、断面形状による名称には、軽溝形鋼、軽Z形鋼、軽山形鋼、リップ溝形鋼、リップZ形鋼、ハット形鋼がある。

(ii) 鋼材の品質を試験により証明する場合は、7.2.10による。


(2) アーク溶接棒は、JIS Z 3211 (軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒)を参照する。アーク溶接棒の棒径は4.0mm以下で、かつ、板厚に見合ったものを選ぶ必要がある。炭酸ガスシールドアーク半自動溶接を用いる場合には、溶落ちしないように適切な溶接条件を選定する。


(3) 高カボルトは7.2.2を、普通ボルトは7.2.3を参照する。

(b) 施 工

(1) 切 断

軽量形鋼部材は薄くて複雑な形状であるため、切断に際しては、一般の鋼材と比べて特別な注意が必要である。

?@ 部材の切断面は、特に図面で指定されたもの以外は軸線に垂直でなければならない。これは、以後の加工・組立・溶接の工程においてすべてこの断面が基準となるためである。また、切断の際、断面形状を損なわないように注意する必要がある。機械切断によって生じたまくれは、やすり等を用いて取り除かなければならない。

?A 部材の切断は機械切断とする。?@に述べたように、切断面は加工の基準となるものであり、正確さを必要とするためである。

手動ガス切断は、断面が不正確に切断されるため、避けなければならない。不正確に切断された断面をグラインダー等で正確に仕上げることは実際には無理で、体裁だけの補修になってしまうためである。


(2) 防錆

(i) 軽量形鋼構造に用いられる部材は、板厚が薄いので腐食に対する安全性が一般の鋼構造より低く、十分な防錆処置を要する。

(ii) 鋼材に防錆処理を施した場合でも、錆びにくい環境をつくり出すよう努め、足りないところを塗装で補うという考え方が大切である。また、設計上の配慮によって解決される点も多い。その場合の留意点を次に示す。

?@ 雨水にふれても水が滞留せず、常に乾燥するよう通風を良くする。雨水が滞留するおそれのある部材、例えばリップ溝形鋼の横架材等は、適切な水抜き孔をあけて雨水の排出を考慮する。

?A 雨水の掛かる箇所では、再塗装のできない構造を避ける。特に、管形断面の部材では、必要に応じて、端部に同質材のふたをする。また、鋼板挟みの二丁合わせで閉鎖形の断面になるような部材は、隙間を密閉しなければ建築物の外回りへ露出させてはならない。

?B 錆の発生を点検できるような構造とし、再塗装が容易なように考慮する。

?C 防錆上の弱点となりやすい部位には、防ぎ得ない錆を予想し、あらかじめ断面の割増し等肉厚の大きい鋼材の仕様も考慮するとよい。

(iii) 再塗装の困難な建築物の部分及び錆の発生しやすい環境にある建築物の部分の防錆は、亜鉛めっきとするのが望ましい。亜鉛めっきに関しては12節を参照する。

(3) 高力ボルト・ボルト接合

「標仕」ではボルト接合は、特記によるとしている。孔は、組合せ材片を正しく接合するために精度良くあけるとともに、各材片の孔心を一致させるよう工作することが重要である。ドリルあけのまくれやポンチあけの変形は、組み合わせた材片間に隙間を生じてボルトの締付けや摩擦力に支障を来すので、必ず取り除かなければならない。まくれを取るにはグラインダー等で軽く取り除くのがよいが、部材を削り過ぎないよう注意を要する。

軽量形鋼構造に高カボルトを用い、設計上のすべり係数を0.23としている場合、摩擦面は、脱脂等の処理を行ったうえで、堅固な黒皮表面とすることができる。ただし.浮き錆、塵あい、油、塗料等摩擦力を低下させるものを除去する必要がある。脱脂した黒皮表面は、赤錆を発生させた表面に比べてすべり係数が低下する。しかし、軽量形鋼構造に用いられる部材は板厚が薄く形状も複雑なので.黒皮を除去するため薄く削り過ぎたりグラインダーやショットブラストが掛けられないこともあるため、堅固な黒皮は除去しなくてもよい。その場合の摩擦面は.黒皮を除去し赤錆を発生させた場合のすべり係数の1/2 (0.23)以上を確保できるようにしておかなければならない。

高力ボルト接合を行う部材は、その接触面が正確に密着するよう留意する必要がある。特に、軽量形鋼部材は、板厚が薄く、ひずみ・反り・曲がり等が生じやすい部材なので必ず矯正するか、又はフィラー鋼板を挿入するなどしてこれらを補う必要がある。

(4) 高力ボルト及び普通ボルトのピッチ、へりあき等は.7.3.2(c)による。

(5) 「標仕」では、普通ボルトの孔径の限度はボルト径+0.5mmとなっている。ただし「標仕」では、母屋、胴縁類の取付け用ボルトの場合、ボルト径+1.0mmとしている。

(6) 普通ボルトには戻止めが必要であるが、通常次のような工法がある。

(i) 二重ナット
ナットを二重にする(図7.11.1参照)。一般に戻止め用のナットは本ナットと同じ厚さのもの(2種)が用いられるが(7.2.3(b)参照)、やや厚さの薄いもの(3種)でもよい。二重ナットの締付けは、7.5.2 (3)を参照する。



図7.11.1_二重ナット.jpg
図7.11.1 二重ナット

(ii) スプリングワッシャー
特殊なスプリングになっている座金を用いる。

(iii) 溶接
ナットとボルトを溶接する。この際はボルトの全周にわたり溶接する。この方法は簡易な構造物で、かつ、見ばえに支障のない箇所以外には用いてはならない。

(7) せん断ボルト

せん断ボルトとは、図7.11.2の力Pをせん断力により伝達するボルトであり、ほとんどの普通ボルトはせん断ボルトである。このボルトの耐力は鋼板の側圧で決まる場合があるので、ねじ部分がグリップ(締付け厚さ)に掛かってはならない。このためには厚い座金が必要になる。また、強度上は必ずしも必要ではないが、材料精度等を考えると、完全なねじ山が3山以上ナットの外に出ているようにするのがよい。


図7.11.2_せん段ボルト.jpg
図7.11.2 せん断ボルト

7章 鉄骨工事 12節 溶融亜鉛めっき工法

第7章 鉄骨工事


12節 溶融亜鉛めっき工法

7.12.1 適用範囲

本節は、溶融亜鉛めっき(以下、この節では「めっき」という。)を施した鉄骨部材を溶融亜鉛めっきを施した高力ボルト(以下、この節では「めっき高力ボルト」という。)を用いて接合する鉄骨造建築物に適用する。

なお、本節では、溶融亜鉛めっき工法の特有な事項をまとめており、鉄骨構造として一般的な事項は1節から11節までを参照する。

接合部分をめっきしないで鋼素地を露出させ、添え板(スプライスプレート)とともに赤錆を発生させるなどして通常の高カボルトで接合したのちジンクリッチペイント等で塗装する場合は、ここでは対象にしない。

一般に普通鋼材は、めっき付着量550g/m 2 程度のめっきを施しても鋼材としての材質は変化しないと考えてよい。しかし、JIS B 1186(摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット)に規定される高カボルトセットの構成材料は、製造工程で熱処理(焼入れ・焼戻し)により所定の機械的性質を付与している。また、トルク係数値はセットとして必要な性能が確保されている。これらは、めっきを施すことにより著しい影響を受けるので普通の高力ボルトと同様に扱うことができないため、JISでは製品規格が定められていない。また、接合面にはめっき層が介在するため、すべり係数やリラクセーション等接合部の性能も一般の鋼材の場合とは異なるので 許容耐力等を個別に規定しなければならない。

このため、めっき高カボルトメーカーは、めっきした鋼材をめっき高カボルトで摩擦接合する材料及び工法を、旧建築基準法(以下、この節では「旧法」という。)第 38条に基づき「溶融亜鉛めっき高力ボルト接合」として建設大臣認定を受けていた。

しかし、法の改正により、めっき高力ボルトの材料については法第37条第二号の規定に基づき認定を受けることになった。また、高カボルトの許容応力度等については平成12年建設省告示第2466号で数値が示されているが、めっき高力ボルトについては、品質に応じて国土交通大臣が指定した数値とされている。

なお、「標仕」12節では、特記がなければ旧法第38条で認定された材料及び工法で施工されることを前提として、セットの種類は1種(F8T相当)、すべり係数値は 0.4以上確保できることなどを規定している。


7.12.2 施工管理技術者等

(a) 摩擦接合部の性能を確保するためには、接合摩擦面の処理とボルト締付け力の管理が不可欠である。このため、「標仕」7.12.2では,「溶融亜鉛めっき高力ボルト接合」の施工管理を行う技術者及び締付け作業を行う技能者については、必要な技術又は技能を有することを証明する資料を提出することとしている。


(b) めっき構造物の健全な普及並びに技術・技能レベルの平準化及び一般化を図るために「溶融亜鉛めっき高カボルト技術協会」(以下、この節では「技術協会」という。)では設計と施工管理(接合面の状態の適否、講ずべき必要な措置等の判断を含む。)を行うために必要な知識を有する「技術者」及びめっきボルトの締付け作業を適切に行うことのできる「技能者」を認定している。これらの「技術者」又は「技能者」は、「標仕」7.12.2で規定する「施工管理技術者等」に該当する者の一例である。

なお、技術協会では、溶融亜鉛めっき高カボルト接合の「設計施工指針」及び「施工管理要領」を定めて、「技術者」はこれに従って施工管理を行うこととしているので、必要に応じて活用するとよい。


7.12.3 亜鉛めっき

(a) 亜鉛めっき

(1) 溶融亜鉛めっき工法に使用する形鋼・鋼板類のめっきの種別は、「標仕」表 14.2.2のA種とし、めっきの付着量は550g/m 2 (膜厚換算約 80μm)以上としている。

(2) めっきする部材は、めっき槽の大きさによる最大寸法の制約や、めっき温度によるひずみ防止対策としての部材形状、溶接寸法並びに溶融した亜鉛の流れや空気の流出入への配慮から通常の鋼構造とは異なる部材加工が必要になる。また、溶接は、原則としてめっき前に行わなければならないことなど設計時から対応しなければならないことが多い。これらの詳細については(-社)日本鋼構造協会「建築用溶融亜鉛めっき構造物の手引き」を参照するとよい。

(3) めっき高力ボルトの孔径は、「標仕」表7.3.2による。ただし、孔あけは、鋼材のめっき前に行わなければならない。


(b) めっき高カボルト

(1) めっき高力ボルトは、7.12.1に示すように建築基準法に基づき認定されたものを使用する。

めっき高カボルトのセットの内訳を、表7.12.1に示す。

この表のとおり、JIS B 1186で規定するセットの種類の1種(F8T) Aに準ずるもののみであり、F10Tやトルシア形のものは存在しない。認定を受けているめっき高力ボルトは、頭部に「F8T」と製造所マークが刻印されている。

また、めっき高カボルトの呼び径は、M16、M20、M22、M24となっており、一部のメーカーではM27、M30がある。

表7.12.1 溶融亜鉛めっき高力ボルト
表7.12.1溶融亜鉛めっき高力ボルト.jpeg


(2) めっき高カボルトのめっき方法は、JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)の2種 HDZ55で、めっきの付着量は550g/m 2 以上となっている。

(3) 7.12.1で規定する製品に対する製造管理方法及び品質管理試験の結果は、認定を受けたメーカーで行われた検査結果報告書により確認する。

めっき高カボルトの工事現場搬入時には、メーカーから提出された検査結果報告書をもとに荷姿外観・等級・サイズ・ロット等について確認する。このうち、荷姿については包装の完全なものを未開封状態のまま現場に搬入する(7.2.2(d)参照)。





7.12.4 溶融亜鉛めっき高カボルト接合

(a) 摩擦面等の処理

(1) めっき高力ボルトを使用する場合の摩擦面は、(-社)日本建築学会「鋼構造接合部設計指針」によると、溶融亜鉛めっき後、軽くブラスト処理を施し、摩擦面の表面粗度を50μmRz以上(70 〜100μm Rzが望ましい)としたのち、設計用すべり係数が 0.40以上確保できるものとあり、「標仕」でも同様に規定されている。また、フィラープレートについても同様な処理を行うとされている。摩擦面のブラスト処理の範囲は、「標仕」図7.12.1により、摩擦面の外端から5mm程度内側とし、添え板(スプライスプレート)で覆われる範囲とされている。

(2) りん酸塩処理又はその他の特別な処理とする場合は、設計図書で、その方法及びすべり耐力等の確認方法が指示されることになる。その場合、一般的には、すべり試験を実施し、すべり係数が 0.40以上あることを確認することになる。この場合のすべり試験の要領は、技術協会の「設計施工指針」を利用するとよい。

技術協会の「設計施工指針」は2009年に改定され、「溶融亜鉛めっき高カボル卜摩擦接合面のりん酸塩処理要領」が新しく規定された。そこでは、りん酸塩処理を行う場合は、すべり試験を実施し、測定値のすべてが所定の値以上であることを条件としている。りん酸塩処理作業条件が同じである場合は、他の工事についてもその条件を有効とし、以後すべり試験は不要とされている。


(b) めっき高力ボルトの締付け

(1) めっき高カボルトの締付けは、技術協会では「技能者」の有賓格者が行うこととしている。ただし、「技術者」の有資格者が作業してもよい。

(2) 締付けの手順は、4節の通常の高力ボルトと同様に、ボルトの取付け、一次締め、マーキング、本締めの順序で行うが、本締めは、ナットの回転角を制御するナッ ト回転法による。

(3) ナット回転法とは、一次締めにより鋼材、ナットが密着した状態から起算するとナットを1回転(360°)させればボルトは、おおよそねじの1ピッチ分伸びるというねじの幾何学的な原理を利用してナットの回転量(角)を制御することで、ボルトの軸力を管理するものである。したがって、ナットの回転量とボルトに導入される軸力は次式で示す関係が成り立つ。

ナットの回転量とボルトに導入される軸力の式.jpeg

この関係は、高力ボルトの等級やトルク係数とはかかわりなく成立することになる。しかし、トルク係数が大きいと、ナットを120゜回転させるのに大きな力が必要で作業性が低下するばかりでなく、ボルト軸部をねじる効果が大きくなり軸部に大きなねじり応力を生じたり、とも回りを生じたりしやすくなるので好ましくない。「標仕」ではセットの種類は1種(F8T相当)としている。

(4) ボルトの取付けは.7.4.7(e)による。


(c) 一次締め

一次締めは、仮ボルトを締め付けて部材の密着を確認したのち、全ボルトについて「標仕」表7.4.2に示すトルク値でナットを回転させて行う。この一次締めトルク値は、本締めのナット回転角の基点とするためのもので極めて重要な意味をもっている。

一次締めのボルト張力は、M16で約40kN、M20, M22で約50kN、M24で約60kN程度導入されるが、一次締めのボルト張力は本締めボルト張力に影響しないナット回転量で本締めを行うことにしてあるので、一次締め後の締付けトルクやボルト張力は検定しなくてよい。

締付け機器は、プレセット形トルクレンチを使用するのが望ましい。メガネスパナを使用する場合は.締付け作業に先立ち一次締めトルク値が得られる人力の入れ具合をトルクレンチで確認し、その要領をつかんでから作業に入ることとする。


(d) マーキングは,7.4.7(g)による。


(e) 本締め

JIS形高カボルトと同様に、めっき高カボルトについても首下長さが呼び径の5倍以下のものについては「標仕」表7.4.2に示すトルクで一次締めを行った状態を基点としてナットを120°回転させることとしている。この場合の許容差は ±30°としている。120゜の回転量はナットの角が二つ分回ることを意味しているので一次締め後のマーキングの線で容易に確認ができる。

このナットの回転量は、部材締付け実験により、標準ボルト張力に対して、必要十分なボルト張力が得られることを確認して定められているものであるから、これを厳守しなければならない。

なお、首下長さが呼び径の5倍を超えるボルトについては、実際の厚さとなる鋼板( 2〜3枚積層可)に当該ボルトを挿入し、所定のトルクで一次締めした状態を起点として、ナットの回転角度と、ボルト軸力の関係を試験をして、設計ボルト張カの約1.3倍の軸力となるナット回転角を決定する。このとき試験は同一呼び径及び首下長さごとに各5本実施し、その平均値をもって、必要なナット回転角としてよい。

本締めは、ナットを規定の角度だけ回転させれば、方法は人力あるいは機械力いずれの方法によって行ってもよい。締付け本数が多い場合には、何らかの機械力を利用したほうが効率的である。

なお、ナット回転角自動制御装置の付いた機器も開発されている。

(1) 締付け機器

めっき高カボルトの締付けにはナット回転法用電動式締付け機(図7.12.1)やJISの高カボルトに用いる電動式締付け器具、手動式トルクレンチ等を用いるが、これらは所要の精度が得られるように十分整備されたものでなければならない。


図7.12.1_ナット回転法用電動式締付け機の例.jpg
図7.12.1 ナット回転法用電動式締付け機の例

(2) 締付け機器の調整

ナット回転法では、部材にボルトをセットして、工事現場で使用する締付け機で締付け、所要のナット回転角が得られることを確認する。一般に、ナット回転法での締付け機器の調整は.本締め時の最初の数本のボルトを締め付ける時に部材で行うもので、トルクコントロール法と異なり、部材と軸力計でバネ定数の迩いがあるため,軸力を測定しない。


7.12,5 搬入及び建方

(a) 搬入及び建方は、10節による。ただし、荷扱い、建入れ直しの際には,めっき面に傷がつかないように養生を行う。

(b) めっき部材の保管に当たっては,部材間に桟木を使うなど通風の良い状態で行う。

(c) 部材のめっき補修

(1) 「標仕」7.12.5 (b)では、搬入及び建方においてめっき面に傷が発生した場合の補修の規定であるが、このほかにめっきされた部材及び素材表面の異常状態によって素地の鋼材が部分的に露出することがある。

また、建方時の精度によっては、フィラープレートが新たに必要となったり、添え板を交換する場合が生じる可能性がある。フィラープレート・添え板(スプライスプレート)のめっきが部分的に欠落した部分には、めっきと同等の耐食性を備えた補修が必要となるがその方法としては次の2つの方法がある。

これらは、工場・工事現場等、環境によって、適用可能なものと、不可能なものがあるので、適切に判断しなければならない。ただし、工事現楊での施工性を考えると( i )高濃度亜鉛粉末塗料による方法が最も適している。

(i) 高農度亜鉛粉末塗料

90%以上の金属亜鉛粉末と展色剤からなる亜鉛の電気化学的防食能力をもつ塗料で、はけ1回塗りで50μm程度の塗膜が得られる。

(ii) 亜鉛の溶射

メタリコン用のガンで亜鉛を溶射するが、溶射部分はあらかじめブラスト処埋により表面を粗くしておき、被膜は80μm以上の厚みとする必要がある。


(2) 補修後の耐食性及び補修剤の密着性を確保するには次の、点に留意しなければならない。

(i) 周辺のめっき皮膜と同程度の厚さとする。

(ii) 補修箇所の汚れ、錆等は完全に除去する。特に赤錆のようにはく離しやすい異物が残っていると補修剤の密着性が極端に低下する。


7.12.6 締付けの確認

(a) 締付けを完了しためっき高カボルトは全数について、一次締め後につけたマーキングにより、所要のナット回転角が与えられているかどうか目視により検査する。規定のナット回転量(首下長さが呼び径の 5倍以下、かつ、M12を超える場合は120゜)に対して+30°〜 −30゜の範囲にあるものを合格とする。+30゜を超えて締め付けられたものはセットを取り替える。また、ナットの回転量の不足しているものについては、所定のナット回転量まで締め付ける。

(b) ナットとボルト・座金等がとも回りを生じているものはセットを取り替える。


(c) 一度使用しためっき高力ボルトのセットは、再使用してはならない。


(d) ナット回転法の締付け検査でトルクレンチを用いた検査を行わないのは、次の理由による。

(1) ボルトの軸力がナットの回転量により決まり、トルクと関連していない。

(2) マーキングのずれにより本締めが完了したことが外観で分かる。

なお、締付け検査は、受注者等に対する規定であり、監督職員の検査は「標仕」 7.4.8(f)に定められている。この場合は、受注者等の提出した検査記録に基づいて、適宜施工済みボルトを抽出し、検査を行う。


2023年12月25日

7章 鉄骨工事 13節 鉄骨工事の精度

第7章 鉄骨工事


13節 鉄骨工事の精度

7.13.1 一般事項

(a) 「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1464号)により,表7.13.1に示す項目について限界値が規定された。?@の限界値は、JASS 6付則6[鉄骨精度検査基準]における限界許容差と同じであるが、?Aの通しダイアフラムと梁フランジの関係は、JASS 6付則6では規定されていない。また、?Bは、JASS 6付則6よりも厳しい規定となっているので、注意が必要である。表7.13.1に示す項目についての検査方法補強方法等については、鉄骨製作管理技術者登録機構「突合せ継手の食い違い仕口のずれの検査・補強マニュアル」を参考にするとよい。

表7.13.1 溶接部の形状・寸法
表7.13.1_溶接部の形状・寸法.jpg


(b) 「標仕」7.3.3及び「標仕」7.10.2で、鉄骨の製作精度及び建方等の工事現場施工の精度は、JASS 6付則6によることとしている。次にその抜粋を示す。


鉄骨精度検査基準

この基準は、一般の構造物の主要な鉄骨の製作ならびに施工に際しての寸法精度の許容差を定めたものである。許容差は、限界許容差と管理許容差に区別して定めた。限界許容差は、これを超える誤差は原則として許されない最終的な個々の製品の合否判定のための基準値である。一方、管理許容差は、95%以上の製品が満足するような製作または施工上の目安として定めた目標値であり、寸法精度の受入検査では、検査ロットの合否判定のための個々の製品の合否判定値として用いられる。

寸法精度の受入検査において、個々の製品が限界許容差を超えた場合には不良品として、再製作することを原則とする。ただし、再製作できない場合にはそれに相当する補修を行い再検査に合格しなければならない。また、個々の製品が管理許容差を超えても限界許容差内であれば補修・廃棄の対象とはならない。管理許容差を合否判定値として抜取検査を行う場合、検査ロットが不合格となった場合は、当該ロットの残りを全数検査する。ただし、検査ロットの合否にかかわらず限界許容差を超えたものについては、工事監理者と協議して補修または再製作等の必要な処置を定める。

なお、本基準は以下に示すものには適用しない。

(1) 特記による場合または工事監理者の認めた場合
(2) 特に精度を必要とする構造物あるいは構造物の部分
(3) 軽微な構造物あるいは構造物の部分
(4) 日本産業規格で定められた鋼材の寸法許容差
(5) その他、別に定められた寸法許容差


付表1 工作および組立て

付表1_工作および組立て1.jpeg


付表1_工作および組立て2.jpeg


付表1_工作および組立て3.jpeg




付表2 高力ボルト

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付表3 溶 接

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付表3_溶接2.jpeg


付表3_溶接3.jpeg




付表4 製 品

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付表4_製品2.jpeg


付表4_製品3.jpeg


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付表5 工事現場

付表5_工事現場1.jpeg


付表5_工事現場2.jpeg


付表5_工事現場3.jpeg


付表5_工事現場4.jpeg


7章 鉄骨工事 14節 資 料

第7章 鉄骨工事


14節 資 料

7.14.1  溶接用語

JIS Z 3001-1(溶接用語一第1部:一般)
JIS Z 3001-2(溶接用語一第2部:溶接方法)
JIS Z 3001-4(溶接用語一第4部:溶接不完全部)
の抜枠を次に示す。

なお、JIS Z 3001-3(溶接用語一第3部:ろう接)は省略する。

JIS Z 3001-1:2013

4.1 共通

4.1.1 基本
JIS_Z3001-1_4.1.1_基本.jpeg


4.1.2 溶接部の性質
JIS_Z3001-1_4.1.2_溶接部の性質.jpeg

JIS_Z3001-1_4.1.2_溶接部の性質(溶着金属,溶融部,ボンド部).jpeg


4.2 試験

4.2.1 試験一般
JIS_Z3001-1_4.2.1_試験一般.jpeg


4.4 アーク溶接

4.4.3 溶接継手
JIS_Z3001-1_4.4.3_溶接継手.jpeg

JIS_Z3001-1_4.4.3_溶接継手(すみ肉のサイズ等).jpeg


4.4.4 溶接姿勢
JIS_Z3001-1_4.4.4_溶接姿勢.jpeg


4.6 特殊の溶接

4.6.5  ロボット溶接
JIS_Z3001-1_4.6.5_ロボット溶接.jpeg


4.7 ガス溶接及び熱切断

4.7.1 溶接・切断方法
JIS_Z3001-1_4.7.1_溶接・切断方法.jpeg

JIS Z 3001-1 : 2013




JISZ3001-2:2013

4. 用語及び定義

4.3 融接

4.3.3  アーク溶接
JIS_Z3001-2_4.3.3_アーク溶接1(アーク溶接等).jpg

JIS_Z3001-2_4.3.3_アーク溶接2(サブマージアーク溶接等).jpg

JIS_Z3001-2_4.3.3_アーク溶接3(アークスタッド溶接).jpg


4.3.6 エレクトロスラグ溶接
JIS_Z3001-2_4.3.6_エレクトロスラグ溶接.jpeg


4.4 アーク溶接の施工

4.4.1 溶接施工
JIS_Z3001-2_4.4.1_溶接施工1(パス、ビード等).jpeg

JIS_Z3001-2_4.4.1_溶接施工2(溶込み等).jpeg

JIS_Z3001-2_4.4.1_溶接施工3(クレータ,止端,ウィービング等).jpeg


4.4.2 溶接施工管理
JIS_Z3001-2_4.4.2_溶接施工管理.jpeg


4.4.3 溶接補助材
JIS_Z3001-2_4.4.3_溶接補助材1(始端タブ、終端タブ).jpeg

JIS_Z3001-2_4.4.3_溶接補助材2(裏当て).jpeg


JIS Z 3001-2:2013




JIS Z 3001-4:2013

4. 用語及び定義

4.2 溶接不完全部一般

JIS_Z3001-4_4.2_溶接不完全部一般.jpeg

4.4 空洞
JIS_Z3001-4_4.4_空洞.jpg

4.5 介在物
JIS_Z3001-4_4.5_介在物.jpeg

4.6 融合不良・溶込不良
JIS_Z3001-4_4.6_融合不良・溶込不良.jpeg

 4.7 形状不良
JIS_Z3001-4_4.7_形状不良、4.8_その他の不完全部.jpeg


JIS Z 3001-4:2013




7.14.2 建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン

(a) 「建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン」が.これまでの「建築構造用鋼材の新しい品質証明方式」に代わり,2009年12月に(-社)日本鋼構造協会 建築鉄骨品質管理機構から発行された。本ガイドラインの骨子を次に示す。

(1) 鋼材等の品質確認は、書類による品質確認と現物の品質確認で行われる。

(2) 規格品証明書の原本を保有する工程(会社)が使用した鋼材の規格品証明料の内容をリスト化し,原品証明書(用紙C)を作成発行する。

(3) 用紙Cに基づき鉄骨製作業者は鉄骨工事使用鋼材等報告書(用紙B)を作成する。

(4) 用紙B、Cの表紙として用紙A1、A2を作成する。

(5) ミルシート及びその写しの提出を不要とする。

(6) ミルシートを提出する従来方式の場合によるか本方式によるかは事前に合意しておく。


(b) 「建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン」(2009年12月25日1版)の抜粋を次に示す。

なお、実際の工事に適用する場合は、ガイドライン本文を参照する必要がある。


建築構造用捐材の品質証明ガイドライン

1.2 本ガイドラインの活用の前提

1.2.1 自工程管理に基づく品質管理

施工者は鉄骨製作に必要な設計図書を設計者から受理して後、鉄骨製作業者へ支給する。その仕様に基づき鉄骨製作業者が材料を発注する。鉄骨製作業者が製作した鉄骨製品は施工者の受入検査を経て工事現場へ搬入され,工事現場で組立て、接合され鉄骨が完成する。そして施工者は建物完成後、施主へ引き渡す。このように鉄骨工事においては、施主と施工者、施工者と鉄骨製作業者という2段階の契約関係があり、施工者は建築工事の元請けとして鉄骨製品の品質についても責任を有する。

建築基準法で鋼材類(鋼板、形鋼)はJIS規格適合であることが規定されている。また、鋼材類は初期(製造出荷)段階でJIS規格適合も含む製品の個別識別がなされている。その鋼材類は、製造メーカーから鉄骨製作工場へ直接、あるいは切断などの中間加工をされて納入される。いずれの場合も初期段階で特定された鋼材類が、工程の各段階で間違いなく流通しなければならない。

鋼材類の流通過程の各段階で使用されている鋼材類の品質を確認し、その結果を書類に残し次の工程へ渡すことで結果として流通段階で間違い無く使用されたことが証明できる。

鋼材等の品質確認は「書類確認」と「現物確認」によって行われる。そして「書類確認」については、「規格品証明書の確認」がポイントとなる。(注1)

鉄骨の品質は関連する全ての工程で作りこむという自工程責任による自主管理を尊重することで過度の費用が発生しないようにする事ができる。本ガイドラインは特に鋼材類の流通や各工程段階での自主管理を明確に打ち出したものと考えることができる。

施工者は鉄骨製作業者を通して提出される書類の内容を確認することで材料管理の証しとすることになる。そのため、書類の内容について施主や行政機関に説明ができるように鉄骨製作業者の材料管理体制・方法や鉄骨製作業者から材料の切断などの発注を受ける中間加工業者の管理体制を把握しておくことも重要である。


なお、規格品証明書の記載内容(機械的性質、化学成分)のレベル(例えば、化学成分値の多少など)や実際に使用された鋼材類から試験片を採取して、機械試験や化学成分分析を行って記載内容と照合を行うなどは考えていない。但し、当事者間の協議などで化学成分値を試験する場合、携帯型分析器で分析したり鋼材から試験片を採取して分析する方法がある。なお携帯型分析器には機械によって分析可能な成分に違いがあったり、シールドガスが必要となるなど特徴があるので使用にあたっては注意が必要である。

本ガイドラインでは、流通過程で切断などの工程がある「鋼材類」を主に対象とする。但し、証明書には溶接材料、高力ボルトなどを含むため呼称は「鋼材等」としている。

(注1)
規格品証明書の定義はJASS6による。JASS6では、規格証明書について「JIS、その他の団体などの公的に認知された規格があり、その報告規定に基づいて製造業者が発行する証明書。もしくは、国土交通大臣認定品に適合することを証明する書類で、社名・捺印のあるものを言う。」と規定されている。


1.2.2 裏書ミルシートに代わる原品証明書の採用

本ガイドラインで提案されている鋼材品質証明の方法は、いわゆるミルシート提出方式に代わるものである。結果としてミルシートの提示・提出が不要となるものである。一見、管理レベルが下がったかのように思われるが実際に切断を行う業者にとっては材料の出所を明確にし、記録に残すことが求められ、本ガイドラインによって原品証明書を作成・管理するのは、むしろ厳しい管理方法である。また、作成した書類が最終的に使用材料のJIS適合証明の証拠となるものであり責任も重くなる。

したがって、原品証明書の採用にあたっては、提出方法、保管方法、保管期間、業務対価等について事前に工事関係者で文書合意しておくこととする。

また、ミルシートについては提出を義務としないこととしているが、本ガイドラインによる証明方法へ移行するまでの間、鋼材の品質確認を"原品証明書による"のか"規格品証明原本、裏書きミルシートの提出による”のかについても、事前に工事関係者の合意により決定しておく。(注2)

(注2)
ミルシート提出方式においては、いわゆる紐付き材について、材料と工事名を紐付け管理するために、規格品証明書に需要家名として材料を購入した会社名でなく、部材を使用する需要家・工事名称を記載する場合がある。
切板会社やファブリケーターの在庫材についてはミルシートの需要家名や工事名が異なっていても、トレーサビリティが確保されていれば使用に問題はない。

今後、原品証明書方式を基本とすることから、原則として需要家名は材料購入会社名を記載することとし、材料の取り扱い(他工事への使用など)は購入会社の自由裁量とする。


1.2.3 証明コストの負担と発注仕様への明示

本ガイドラインに沿って.鋼材の加工業者等が使用した鋼材について証明書の作成を行うために必要な作業や記録の保全については、一定のコストが生じることは事実である。このため、建築の施工者は鉄骨製作業者等に対して、証明書の作成.提出を発注仕様書に明示する等により契約業務として明確化しその費用を支払う必要があり、鉄骨製作業者は.その前段の鋼材の流通、加工、生産業者に対して同様の対応をとる必要がある。

こうしたコストは、最終的に建築費の一部となり建築主が負担することになるが、建築用鋼材の品質は建物利用者の生命等の安全に直結するものでありかつ、万一鋼材が誤用されたときの被害の大きさに鑑みれば、建築主においては、使用鋼材等が明らかにされていない建築物の受け渡しを受けるべきでなく、コスト削減を名目に省略されてはならない不可欠な負担であることを理解する必要がある。さらに建築主は、建築主事等による検査受検の申請者として、使用鋼材等が法令に適合していることに関する書類等を提出する立場にもある。

このため、建築主に対する意識啓発について行政も含め建築界全体として取り組む必要があるとともに、施工者においては、建築主との個別の契約において、本ガイドラインに沿った報告書等の提出を業務内容とする必要がある。

なお、鋼材を使用したそれぞれの工程で使用鋼材を明らかにする本ガイドラインの方法は、施工者が施工現楊における成分検査により使用鋼材を事後的に特定するなどの他の方法よりも合理的で、全体としての証明コストが低いことは明らかである。


2. 鋼材等の品質確保のフロー

2.1 書類による品質確認

書類による品質確認の流れの概略を以下に示す。

(1) 各工程(会社)が行った品質確認の結果は原品証明書(用紙C)にとりまとめ次の工程(会社)へ提出する。

この原品証明書は鋼材等の規格品証明書原本(ミルシート)を保有し加工を行った工程が作成する。この会社には一般流通業者(問屋)で自社保有材を少量販売する会社も含まれる。

原品証明書を取りまとめた工程は、その鋼材等の品質を確認した結果について保証する責任を負う。但し、規格品証明書の記載内容に関して保証責任は無い。

(2) 原品証明書を作成する工程は、原品証明書から規格品証明書原本へ遡れることが可能な仕組みを構築しなければならない。

(3) 鉄骨製作業者は.使用した鋼材等の品質を確認した結果を「鉄骨工事使用鋼材等報告書」(用紙B)にまとめ、用紙Cとともに施工者に提出する。(注3)

なお、鉄骨製作業者の確認は前工程(会社)の発行した原品証明書を確認する方法と自社工程を確認する方法の二つがある。

また,鉄骨製作業者の会社様態によっては、製作を担当する製作工場が行う場合もある。


(4) 施工者は.書類および現物の確認後その結果を「鉄骨工事使用鋼材等報告書」(用紙A2を表紙として、用紙B、Cとともに)として工事監理者に提出する。

(5) 工事監理者は、内容を確認し発注者である施主に報告する。その後、施主の代理として中間検査・完了検査時に特定行政庁、建築主事ないしは、確認検査機関に提出または提示する。(用紙A1を表紙として、用紙A2,用紙B,   Cとともに)鉄骨工事における鋼材、確認書類の流れ、関連関係者の行為については、付録aも参照。

(注3)  JASS6では、鉄骨工事の元請けとして施工者(ゼネコン)、鉄骨製作の受注者を鉄骨製作業者(ファブリケータ)としている。本書でも、定義はこれに倣う。


2.2 現物の品質確認

(1) 本ガイドラインでは鋼材類の現物での確認方法を原則、塗色識別によることとしている。従ってSS・SM材のようなプリントマークの無いSN鋼材以外にも適用できる。

現物確認の方法としてSN材でのプリントマーク、形鋼類でのラベル確認も有効であるが、保管期間、取扱い不備で消える、読み難い、剥がれるなどが懸念される。このような不具合が無く明瞭に識別可能な場合にはSN材でのプリントマーク、形鋼類でのラベル確認も適用できる。なお、鋼材の識別表示は原則、付録bに示す日本鋼構造協会規格(JSS I 02 2004)による。また、鋼材のマーキング、ラベル表示例を付録c、高力ボルトヘッドマーク一覧表を付録d、溶接材料の原品表示例を付録 e、およびアンカーボルトの表示例を付録 f に示す。(注4)

(注4)
原品の識別方法として、切断部材に部材番号を記入する場合がある。規格識別の番号記入や多桁数の番号記入など要求仕様は様々であり、また番号記入ができない小物部材等もあり、部材番号記入については、事前に記入方法、作業費用等につき文書合意しておくこととする。


3. 本ガイドラインで使用される書類について

3.1 原品証明書〈用紙C〉

(1) 規格品証明原本を保有し最初に作業する工程(会社)は保有する規格品証明書原本内容をリスト化し、原品証明書を作成・発行する。(注5)

原品証明書の発行タイミングは、工事の節・工区などの単位に纏めて発行することを基本とし、事前に関係者にて取り決めておくこととする。

これ以降の工程は直前工程の発行した原品証明書から必要項目を転記し、原品証明書を作成する。


(2) 規格品証明書原本、規格品証明書原品のコピー、原品証明書は適切な期間保有する。保管期間が過ぎた場合は破棄できる。

保行期間が法令で定められた場合、あるいは設計図書の特記のような別規定がある場合はそれに従う。改正建設業法において、「営業に関する図書の保存が引渡し後、10年」と定められた。これに準拠して保存期間を定める施主、施工者などもあると考えられるので工事開始前に関係者で保存の方法・期間・管理費用等について文書合意しておくことが重要である。なお、鉄鋼メーカーにおいては規格品証明書の現物やデータの保存期間は、各社の判断となっている(今後JIS認証制度等において保存期間を定めることも提案されている)。

なお、通常の商行為で使用する納品書などの扱いについてはここでは関与しない。

一般流通業者(問屋)が自社保有材料を少量販売する場合、規格品証明書原本、原本相当規格品証明書、原品証明書に対応する鋼材類が全て使用された場合は、保管期間の間はファイルする必要がある。

また、鉄骨製作業者は、一般流通業者や切板会社への発注の際には、発注先の会社がトレーサビリティーをとれているところかどうかを留意して選定する必要がある。


(3) 原品証明書を受け取る工程(会社)は、原品証明書を発行する工程(会社)の発行に関わる管理が適切に行われているかの確認を適時行う義務がある。

特に、残材(端材)の管理方法(ラベル、ステンシルが残されているか、あるいは転記されているか。切断報告書にこれらの記載があるか等)に留意する必要がある。

なお、その確認の頻度は特に定めないが、ISO認証の有無などを考慮して当事者間で協議する。


(4) 使用鋼材が発注仕様に適合していることの説明責任(立証責任)は鉄骨製作業者他、鋼材を調達した者が負う。従って、鉄骨製作業者の材料管理責任者は、原品証明書から規格品証明書原本へ遡ることが可能かどうかなどを確認しなければならない。


(5) 原品証明書の記載事項は以下の通りとする。

・日付、当該業者名、責任者名、署名あるいは捺印
・整理番号
・部材・部品あるいは記号:柱・梁(フランジ・ウェブ)、ブレース、アンカーボルト、ダイアフラム
・規格、種類:JIS規格、国土交通大臣認定
・寸法、数量(重量)
・メーカー名:鉄鋼メーカー、中間加工業者
・証明書番号、製品番号
製品番号:規格品証明書原本において個々の製品を特定できる項目名とする。
スプライスプレート、リブプレート、ガセットプレートについては.記載項目は、部位・部材、規格、メーカー名のみとする。

なお、納品書、送り状など既に使用している帳票を利用する場合で、上記項目で鋼板番号等の不足な項目がある場合は別途、同帳票に追記し、原品証明書とすることもできる。

(記載スペースが無い、価格が表示されているなどで当事者外への提出が難しい場合は規格品証明書原本をリスト化した原品証明書を作成する)。

(6) 原品証明書以外の添付書類は原則不要とする。

添付書類の提出を求める場合は、必ず事前に書類内容、提出方法、対価等につき関係者の合意により決定しておくこととする。

(注5)
JASS 6では、「原品証明書とは、規格品証明書(原本相当規格品証明書を含む)のついている鋼材の切断・切削・孔あけなど中間加工を施す業者、あるいは一般流通業者(問屋)が少量販売する鋼材に付して発行する証明書」と定義しているが、本ガイドラインでは規格品証明再原本を保有する鉄骨製作業者が作成する証明書も加える。



3.2 鉄骨工事使用鋼材等報告書〈用紙B〉

(1) 鉄骨製作業者は、製作の元請けとして原品証明書に基づき「鉄骨工事使用鋼材等報告書」を作成する。

記載項目は以下の通りとする。

・日付、鉄骨製作業者名、材料管理責任者名・捺印、鉄骨製作管理技術者登録番号
・部位・部材:柱・梁(フランジ、ウェブ)、ブレース、アンカーボルト、ダイアフラム、溶接材料、高カボルト、スプライスプレート、リブなど
・規格、種類:JIS規格、国土交通大臣認定
・品種、形状:鋼板、鋼管、切板、H形鋼・・
・納入者  :鉄鋼メーカー、中間加工業者
・規格確認方法:現物・書類確認の方法
・証明書ページ:原品証明書の検索用


(2) 書類構成

表紙、鉄骨工事使用鋼材等証明書、原品証明書
・添付科類について
原則として添付書類は不要とする。

(3) 作成対象とする部位・部材を以下に示す。

下記の部位・部材を対象とする。但し、別途指示がある場合はそれによる。
柱:柱体、仕口内スチフナー、ダイアフラム、フランジ ・ウェブ
大梁、小梁:フランジ ・ウェブ
ブレース、アンカーボルト、スプライスプレート、リブプレートなど


3.2. 補  鉄骨工事使用鋼材等証明書作成時の対象部位・部材について
ガイドライン_3.2.補_鉄骨工事使用鋼材等証明書作成時の対象部位・部材について.jpeg

ガイドライン_3.2.補_鉄骨工事使用鋼材等証明書作成時の対象部位・部材について2.jpeg


3.3 鉄骨工事使用鋼材等報告書〈用紙A2〉

施工者が工事監理者に提出する際に作成するもの。前記の原品証明書、鉄骨工事使用鋼材等証明書を確認した上、これらの表紙として用紙A2を作成する。


3.4 鉄骨工事使用鋼材等報告書〈用紙A1〉

工事監理者が建築主事等に提出する際に作成するもの。前記の原品証明書、鉄骨工事使用鋼材等証明書、施工者が発行した鉄骨使用鋼材等報告書を確認した上、これらの表紙としてA1を作成する。


4. 鋼材類と報告書の流れ例

鋼材類と報告書の流れをいくつかのケースに分けて示す。これらは代表的な流通過程のモデル化である。この他にも流通形態があると思われるが、本ガイドラインの主旨を理解して適用することが必要である。

また、流通過程で関与する商社など一部の機能は省略している。

このフローで示している「納品書、送り状」は、加工された製品に関するものを指している。

【 ケース1 】
 規格品証明書原本は鉄骨製作業者が保有する場合。

ケース 1-1
鉄骨製作業者がロール発注し、鋼材、規格品証明書原本がメーカーから鉄骨製作業者へ送られる場合。

ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース1-1).jpeg


ケース 1-2
鉄骨製作業者がロール発注する。鋼材は中間加工業者で切断などの加工をされ鉄骨製作業者へ送られる。規格品証明書原本は中間加工業者を経由しないで、メーカーから鉄骨製作業者へ送られる場合。

ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース1-2).jpeg

 ● 中間加工業者は、厚板シャーリング業者(外注・委託シャーリング業者を含む)、ガセットなど専門の中間加工業者、BH業者、B-BOX業者、コラム業者が該当する。中間加工業者は、鉄骨製作業者からの発注者に基づいた加工を行い、納品書、送り状を添え、製品を納入する。

なお、コラムについてはケース4、BH業者、B-BOX業者についてはケース5に示している。


鉄骨製作業者が、孔明け、切断、溶接等の作業を単に外注した場合は、その元請けたる鉄骨製作業者の責任の範囲とし書類の作成を行う。



【 ケース2】
規格品証明書原本は問屋または中間加工業者が保有する場合。


ケース2-1
1次問屋または中間加工業者は自社保有の材料を使用して鉄骨製作業者からの発注書に基づいた加工を行い、用紙Cを作成し、提出する。納品書、送り状を添え、加工済鋼材類を納入する。

ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース2-1).jpeg


ケース2-2

鉄骨製作業者には、1次の中間加工業者から納入される。1次の中間加工業者へは2次問屋または中間加工業者から鋼材等が納入される。

鉄骨製作業者と売買を行う1次中間加工業者は鉄骨製作業者からの発注書に基づいた加工を行い、2次問屋または中間加工業者の発行した原品証明書、納品書、送り状を基に用紙Cを作成し、納品書、送り状を添え、加工済鋼材類を納入する。

ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース2-2).jpeg


● 中間加工業者の定義、作業を単に外注した場合の考え方は、ケース1-2と同様である。中間加工業者間で材料(在庫材)手配を含め切断を委託する場合は、ケース2-2に相当する。



【 ケース3】
鉄骨製作業者が手持ちの余材を使用した場合。

ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース3).jpeg

ケース3-1 ケース1の場合の余材:ケース1の方法による。

ケース3-2 ケース2の場合の余材:ケース2の方法による。




5.2 書 式

5.2.1 用紙A1表紙
ガイドライン_5.2.1_用紙A1表紙.jpeg


5.2.2 用紙A2表紙
ガイドライン_5.2.2_用紙A2表紙.jpeg


5.2.3 用紙B:鉄骨工事使用鋼材等報告書
ガイドライン_5.2.3_用紙B_鉄骨工事使用鋼材報告書.jpeg

ガイドライン_5.2.3_用紙B_鉄骨工事使用鋼材報告書、節毎の2ページ以降.jpeg


5.2.4 用紙C:ケース1-1, 1-2 鉄骨製作業者が証明書を作成する場合

●ケース1-1 鋼材、規格品証明書原本は鉄件製作業者へ


ガイドライン_5.2.4_用紙C:ケース1-1_鉄骨製作業者が証明書を作成する場合1.jpeg

ガイドライン_5.2.4_用紙C:ケース1-1_鉄骨製作業者が証明書を作成する場合1.jpeg

● ケース1-2 規格品証明再原本は鉄骨製作業者へ,中間加工業者が加工する。

ガイドライン_5.2.4_用紙C:ケース1-2_鉄骨製作業者が証明書を作成する場合2.jpeg


●ケース3:鉄骨製作業者が手持ちの余材を使用した場合
ケース1の場合の余材の時はケース1に、ケース2の場合の余材の時はケース2に倣う。




5.2.5 用紙C:ケース2  中間加工業者が証明書を作成する場合      

【用紙C】


● ケース2 :規格品証明書原本は中間加工業者:原本を持つところが証明書を作成する。


ガイドライン_5.2.5_用紙C(ケース2)中間加工業者が証明書を作成する場合.jpeg


建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン




7.14.3 SN鋼材材質識別表示記号・位置及び鋼材の識別表示標準

(a)「SN鋼材材質識別表示記号・位置」(新しい建築構造用鋼材より)を次に示す。

SN鋼材材質識別表示記号・位置

7.14.3_SN鋼材材質識別表示記号・位置及び鋼材の識別表示標準.jpeg



(b) 日本鋼構造協会規格JSS I 02(鋼材の識別表示標準)の抜粋を次に示す。

JSS  I 02-2004
  表 - 1 識別色および塗色方法
JSS_?T_02-2004_表-1_識別色および塗色方法.jpeg


参考文献
参考文献.jpeg

2020年09月06日

鉄骨工事 特集 工場製作及び現場施工

1級建築施工管理技士 鉄骨工事特集


【 工場製作 】

 1. 材料?@ 材料?A 材料?B
 2. 工作?@ 工作?A


【 工事現場施工 】

 1. 工事現場溶接?@ ?A ?B
 2. デッキ・スタッド?@ ?A




2020年08月30日

鉄骨工事 工場製作1 材料?@

鉄骨工事
工業製作 材料?@


以下、(一社)日本建設連合会HPより引用

【 鋼材規格 】

各鋼材記号の数字が意味するもの

鋼材や鉄筋には、指定建築材料としてJIS規格適合品および大臣認定品がある。

下表に示すように、JIS規格の鋼材の呼称の数字(SS400の400等)は引張強さの下限値を表わす。一方、鉄筋とほとんどの大臣認定鋼材は、呼称の数字が降伏点又は0.2%耐力※の下限値の数値が使用されている。そのため、強度の高低が数字の大小から判断しづらい面がある。

鋼材の規格.jpg

鋼材の応力-ひずみ曲線.jpg



高張力鋼の応力-ひずみ曲線.jpg

※引張試験において、規定された伸びを生じるときの試験力を平行部の原断面積で除した値。
降伏点が明確でない材料では、降伏点の代わりに耐力が用いられる。JIS規格では、特に規定のない場合には、塑性伸びの値を0.2%としている。耐力の測定は、JIS規格では、次のいずれかの方法による(詳細は略)。

a)耐力(オフセット法)
b)耐力(永久伸び法)
c)耐力(全伸び法)


【 平鋼と厚板 】

平鋼と厚板の違い

平鋼は、長方形断面の4面を熱間圧延して製造されるもので、このうち幅が180mmを超えるものを広幅平鋼という。平鋼には、丸コバ平鋼,テーパー平鋼,開先平鋼などの様々な異形平鋼もある。


厚板は、板厚6mm以上の鋼板をいい、2面を圧延した後、長さを切断(場合によっては幅も切断)して出荷する。

板状鋼材の分類.jpg

平鋼の圧延.jpg
平鋼の圧延


平鋼製品の例.jpg
平鋼製品の例


(参考) JIS規格に規定されている平鋼の定義を以下に示めす。

1.JIS G 0204 「鉄鋼用語(鋼製品の分類及び定義)」より
 ?@長方形の断面をした棒鋼。
 ?A製品は、4面とも圧延される。
 ?B一般に、厚さは5mm以上、幅は500mmを超えない。
 ?C熱間圧延された平鋼をとくに「熱間圧延平鋼」と呼ぶ。冷間圧延された平鋼を「冷間圧延平鋼」と呼ぶ。


2.JIS G 3194 「熱間圧延平鋼の形状、寸法、質量及びその許容差」より
平鋼は、厚さ100mm以下、幅1250mm以下の寸法のものをいう。


出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018



【 BCP(冷間プレス成形角形鋼管)】

BCP原板のミルシート確認の必要性


通常施工者は、工事監理者の指定のない限り原板ミルシートの確認を行わない場合が多い。

これは、BCPが大臣認定品であり、原板についても規定を満足したものが使われている事による。

原板に使用される材料の規定は、以下に示すように定義(「一般社団法人日本鉄鋼連盟」)されている。

「BCP235,325は冷間プレス成形設備によって、JIS G 3136に規定される建築構造用圧延鋼材に、N(窒素)の上限規定を付加した規格を満足する鋼帯または鋼板を角形断面または一対の溝形断面に成形し、溶接継目部を半自動もしくは自動アーク溶接して製造される直及びテーパー形の角形鋼管」

BCPの種類の記号.jpg


下記に示す内容が、特記仕様書に示されている場合など必要に応じて、原材料のミルシートを入手の上、仕様を満足しているか確認する。


・主要構造部の鋼材に対して高炉材が指定されている場合

・電炉材を主要構造部に使用するときの成分や機械的性質の確認規定がある場合


参考として、建築構造用冷間プレス成形角形鋼管(BCP235、BCP325)の日本鉄鋼連盟製品規定の「13.報告」を以下に示す。


「検査及び試験に合格した角形鋼管に対して、検査証明書を発行する。報告内容は、製造履歴※1が確認できる識別番号※2の他、以下の内容を含むものとする。

(1)受注内容
  種類の記号、注文寸法、注文数量

(2)鋼帯または鋼板の化学成分
  表2に規定されるすべての元素、Ceq又はPCMと、
  それに係る元素(表2は出典を参照)
  表2の備考1によった場合の添加元素(表2は出典を参照)

(3)引張試験結果
  平板部分の降伏点又は耐力、引張強さ、降伏比、伸び

(4)衝撃試験結果
  平板部分の0℃における吸収エネルギー

(5)外観、寸法検査結果

上記識別番号を記載する目的は、必要な場合に素材製造業者が発行する鋼材検査証明書との照合を可能とするためである。

※1 製造履歴の範囲は、溶鋼から冷間成形角形鋼管メーカー出荷時点の製品までとする。

※2 識別番号は、鋼帯又は鋼板の製造業者が発行する鋼材検査証明書(ミルシート)番号、製鋼番号、鋼材の製造番号、及び冷間成形角形鋼管の製造番号、等である。」


注文者である鉄骨製作工場には、成績表や品質証明書が、製造会社から提出されているで、この中に記されている製品番号(厚板)から、原板メーカーを確認し原板のミルシートを取り寄せる事が可能である。


出典:(一社)日本鉄鋼連盟製品規定MDCR ?003-2017? 建築構造用冷間プレス成形角形鋼管




【 BCRとBCP 】

BCR(ロール成形角形鋼管)とBCP(プレス成形角形鋼管)の違い

BCR(ロール成形角形鋼管)は、鋼帯を一度、円形に成形し、シーム部を溶接したものを角形に成形する。よって、平坦部も冷間加工されている。

BCP(プレス成形角形鋼管)は、厚板の鋼管の角になる部分をプレス成形し、シーム部を溶接する。

両者は、コーナー部の曲率半径も異なる。更に告示により設計法も異なっているので、同じ径・板厚であっても取り替えて使用することは出来ない。機械的な性質については、下表を参照。

BCR成形.jpg

BCR.jpg


BCP成形.jpg

BCP.jpg

BCPとBCRの機械的性質の比較表.png


【 BCP325T 】

BCP325Tの「T」の意味と、BCP325との違い


冷間成形角形鋼管のうちプレス成形角形鋼管は、プレスにより鋼管の4隅の部分を塑性加工している。そのために、窒素量の上限を制限するなどした鋼管用の素材が、使用されている。

一般的な建築構造用冷間プレス角形鋼管( 例: BCP325 ) は、平坦部のみシャルピー吸収エネルギー27J(0℃)が規定されている。

一方、建築構造用高性能冷間プレス角形鋼管(例:BCP325T)は角部・平坦部ともシャルピー吸収エネルギー70J(0℃)を保証した材料。なお、引張試験の規定は両者とも同じ。「T」は「Tough」(タフ)のTを示している。

この材料を使用して「脆性破壊防止溶接積層法」(注)で溶接を行う場合、構造設計上、有利になる。

もし、BCP325TからBCP325に変更する場合は構造設計に用いる係数が異なるので、構造設計者に確認する必要があり、構造計算をやり直す可能性がある。

ちなみに,BCPは一般名称ではなく,(一社)日本鉄鋼連盟の登録商標である。

(注):「脆性破壊防止溶接積層法」:下記、2018年版マニュアルでは、NBFW法の呼称を変更している。

出典: 2018年版冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル


【 超高力ボルト 】

超高力ボルト(例えばSHTB)と一般の高力ボルトの違い


超高力ボルトは、一般のトルシア形高力ボルト(S10T)の引張強さ(1000N/mm 2 級)の約1.5倍(1400N/mm 2 級)に高強度化したボルト。強度が高いと、締付け後に遅れ破壊が起きる可能性があるので、耐遅れ破壊特性に優れた素材開発、応力集中を緩和できるボルト形状、新ねじ形状を採用している。締付け方法、手順は一般のトルシア形高力ボルトと同じであるが、導入張力が高いため専用機器を使用する。


M20の場合の一次締付けトルクは、一般のトルシア形高力ボルト(S10T)の約150N・mに対し超高力ボルトは約300N・mである。

なお、下記文献では、「室内環境で使用することとしているなど一般の高力ボルトと異なる部分もあるのでメーカーの技術資料を参照されたい」としている。

超高力ボルト.jpg

SHTBねじ形状の改良.jpg

出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018


2020年08月29日

鉄骨工事 工場製作1 材料?A

鉄骨工事
工業製作 材料?A


以下、(一社)日本建設連合会HPより引用

【 被覆アーク溶接棒 】


被覆アーク溶接棒の記号の意味


JIS Z 3211(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒):2008
従来からのJIS Z3212,3241はこのJIS Z 3211に統合され廃止された。

JISZ3211.jpg


溶着金属の引張特性の記号は、溶着金属の引張強さMpaの上2桁を示す。
例:E4916は、引張強さの下限値が490MPaなので、上2桁の49が記号となる。

改正JIS規格JISZ3211.jpg

出典:JIS Z 3211:2008 解説


【 被覆アーク溶接棒 】

被覆アーク溶接棒のJIS規格改正前後の記号の違い


JIS Z 3211(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒):2008とそれ以前の分類の違い
各メーカーにより異なるので注意する。
なお、JIS では、イルミナイト系が「01」から「19」へ改定されている。

JIS Z 3211(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒):2008 と旧分類の比較

被覆アーク溶接棒のJIS規格改正前後の記号の違い.jpg

溶着金属の引張特性の記号は、溶着金属の引張強さMpaの上2桁を示す。
例:E4319Uは、引張強さの下限値が430MPaなので、上2桁の43が記号となる。

YP:降伏点(Yield Point)又は耐力(Yield Strength)
TS:引張強さ(Tensile Strength)
El:伸び(Elongation)
vE :シャルピー吸収エネルギー


出典:?開KW資料

【 ソリッドワイヤ 】

YGW11〜YGW19などのソリッドワイヤの記号の意味

JIS Z 3312(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ):2009の内、YGW11から19について。
溶接ワイヤのJIS規格は2009年にISOに準拠して改正され、符号の付け方がISOのスタイルとなった。
しかし、日本国内ではYGW11〜19は建築鉄骨をはじめとし広く使用されているので、これら業界の混乱を防ぐため従来通りの符号が残った。
なお、JIS Z 3312の改正に伴い、JIS Z 3325は廃止されている。
従来のYGW21〜24については、種類名称がISOにならって変更された。

JISZ3312.jpg

改正JIS規格JISZ3312.jpg


出典:JIS Z 3312:2009解説




【 ソリッドワイヤの記号の意味 】


JIS Z 3312の内、ISOにならった表現をする場合の記号の意味。
YGW11〜19は従来通りの記号が使用できるが、YGW21〜24については下記の記号のみとなった。

ソリッドワイヤの種類の記号.jpg


出典:JIS Z 3312:2009解説

【 ソリッドワイヤ 】

ソリッドワイヤの記号について2009年のJIS改正前後の違い

旧YGW21,23の表現方法の変更は下記のようになる。これはメーカーの呼称なので注意する。

旧YGW21,23の表現方法の変更
旧YGW21.23の表現方法の変更.jpg

YP:降伏点(Yield Point)又は耐力(Yield Strength)
TS:引張強さ(Tensile Strength)
El:伸び(Elongation)
vE :シャルピー吸収エネルギー

・YGW11〜19:種類名称は変更なし。
・YGW21〜24:種類名称がISOにならって変更。


出典:?鰍iKW資料


【 フラックス入りワイヤ 】


フラックス入りワイヤの記号の意味

JIS Z 3313(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ):2009
フラックス入りワイヤの種類の区分記号.jpg

出典:JIS Z 3313:2009解説

フラックス入りワイヤの記号について2009年の JIS規格改正前後の違い

JIS Z 3313(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ):2009
銘柄はメーカー独自のものなので注意する。

JIS Z 3313(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ):2009と旧分類の比較
JISZ3313旧分類の比較.jpg

溶着金属の引張特性の記号は、溶着金属の引張強さMpaの上2桁を示す。
例:T49・・・は、引張強さの下限値が490MPaなので、上2桁の49が記号となる。

YP:降伏点(Yield Point)又は耐力(Yield Strength)
TS:引張強さ(Tensile Strength)
El:伸び(Elongation)
vE :シャルピー吸収エネルギー


出典:(株)JKW資料


2020年08月28日

鉄骨工事 工場製作1 材料?B

鉄骨工事
工業製作 材料?B


以下、(一社)日本建設連合会HPより引用

【 アンカーボルト 】

アンカーボルトの転造ねじと切削ねじの違い


転造ねじは、強い力を加えて素材を変形させる塑性加工でねじ山を形成するもので、切削加工と異なり、メタルフロー・ファイバーフロー(繊維状金属組織)が切断されない。
また、塑性変形によって被加工面が塑性硬化する。このため、ねじ部と軸部の強度差も小さく、軸部降伏後の耐力上昇も可能で、結果として靭性に富んだ性能を確保できる。

一方、切削ねじは、ねじ山を軸から削り出すことで形成する。転造に比べ断面欠損が大きく、ねじの谷部で降伏が先行するために、使用する素材の降伏比上限値を低く設定する必要性が生じる。

以上のメカニズムの違いにより、転造ねじの方が伸び能力が大きくなるため、転造ねじが指定されるケースが多くみられる。

ただし、同じボルトの呼びの場合、転造ねじの方が切削ねじより軸径が細いため、全て転造ねじが良いという事ではない。

アンカーボルトは、建方用と構造用に分類さるが、建築構造用両ねじアンカーボルトは
 ABR:構造用転造両ねじアンカーボルトセット(JIS B 1220)
 ABM:構造用切削両ねじアンカーボルトセット(JIS B 1220)
として、その耐力と性能がJIS規格化されている。

また、JIS規格の元となった(一社)日本鋼構造協会(JSSC)のJSS規格
JSS?U13「建築構造用転造ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
JSS?U14「建築構造用切削ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
については、日本鋼構造協会によるJSS工場認定制度が2015年3月末をもって終了し、現在はJSS規格品に対しての第三者機関による製造、品質保証体制の保証はない。

転造ねじと切削ねじ.jpg
 構造用アンカーボルトのねじ形状の違い

ABRとABMの伸びの比較データ.jpg

メタルフロー・ファイバーフロー.jpg


出典:建築用アンカーボルト協議会パンフレット「構造用アンカーボルト」


構造用アンカーボルトのABRとABM


ABR、ABMは、兵庫県南部地震での露出柱脚の被害の反省から、露出柱脚用として制定された構造用アンカーボルトのセットの規格における種類の記号である。

(一社)日本鋼構造協会の規格(JSS規格)が2000年に制定され(2004年改定)、その規格を元に、2010年にJIS規格が制定されたが、2015年3月にJSS規格ボルトを製造する工場の認定制度が廃止になった。
ABR、ABMとも、ボルトの材料はSNR400B,SNR490B,SUS304A(JIS規格のみ)で、ABRは転造ねじ加工したボルトを使い、ABMは切削ねじ加工したボルトを使う。
転造ねじは、強い力を加えて素材を変形させる塑性加工でねじ山を形成するもので一方、切削ねじは、ねじ山を軸から削り出すことで形成する。

・(一社)日本鋼構造協会規格
 JSS ?U13 「建築構造用転造ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
 (炭素鋼:ABR400/490)
 JSS ?U14 「建築構造用切削ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
 (炭素鋼:ABM400/490)

・JIS規格(ステンレス製のものやめっきの表面処理法が追加されている)
 JIS B 1220 「構造用両ねじアンカーボルトセット」
 (炭素鋼:ABR400/490、ABM400/490、ステンレス鋼:ABR520SUS、ABM520SUS)


建築基準法では、指定建築材料(主要構造部材等に使用する建築材料)は、JIS規格適合品ないし大臣認定品
となっているが、このアンカーボルトのJIS規格は指定建築材料に含まれていない。
JSS規格が制定された際、国土交通省の見解として、「これらのアンカーボルトは両端に定着用のねじ部を有
するだけの棒鋼であり、指定建築材料としては、JIS G 3183 建築構造用圧延棒鋼SNR400/490として扱う」とされている。


出典:建築用アンカーボルトメーカー協議会パンフレット「構造用アンカーボルト」




【 電炉鋼材 】

電炉材の使用制限の理由

鋼材のJIS規格では、高炉、電炉といった製鋼法は規定していないので、その意味で公的な制限はない。
従って、設計図書で「JIS規格適合品とする」といった場合は、高炉材、電炉材に限らず使用できることになる。
しかしながら、電炉材の主原料が「スクラップ」であることから感覚的に材料が悪いというイメージをもたれることがある。
また、スクラップを原料とするためにSn、Cr、Cuといった電炉材特有の化学成分が高炉材に比べ多いといったこともある。
これらは必ずしも鋼材の性質に悪い影響を与えるものではないが、多すぎると悪い影響を与える場合もある。
このようなことから、鋼材の機械的性質や化学成分について、高炉材の有するレベルを目標として特記される場合があるので、構造特記を十分照査することが重要である。
電炉材は高炉材に比べコストが低いので使用したいといった要求は有るが、使用箇所と予定メーカーを明確にして予め工事監理者と協議することが重要である。
製品が完成し、製品検査時のミルシート確認で初めて電炉材が使用されていることが分かる、といったことのないようにしたい。
もし、「使用しない」ことが指示事項として事前にあった場合、再製作といわれても仕方がない。

最近、電炉メーカーでもJIS規格よりも化学成分、機械的性質の規定を厳しくしている「高規格」材といったものを製造しているので、電炉メーカーのホームページなどで確認をする。

高炉製鋼法と電炉製鋼法.jpg


出典:東京製鐵?潟zームページより


【 AW検定と溶接ワイヤ 】


溶接ワイヤの規格・種類、ワイヤ径をAW検定受験時のものに合わせるとの特記がある場合、変更できるか


溶接ワイヤの硬さが、溶接のしやすさや、しにくさに影響するといわれている。YGW11、YGW18クラスであればその化学成分に大きな差は無い(硬さも差が無い)ので両者による技量の差は無いと考えられる。また、ワイヤ径についても、通常使用されている1.2φもしくは1.4φであれば技量に差がでるとは考えにくく、AW受検時と違っていても特段問題は無いと考えられる。

ただし、FR鋼用ワイヤや590N/mm2級などの高強度鋼用ワイヤ等は、その合金成分の影響などによりYGW11,18クラスと比較して、溶接技能者の溶接作業時の溶接のしやすさ、しにくさに影響するという意見もあり、別途試験が要求される場合がある。

溶接ワイヤの化学成分.jpg

出典:JIS Z 3312:軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ


2020年08月27日

鉄骨工事 工場製作2 工作?@

鉄骨工事 工業製作 工作?@


以下、(一社)日本建設連合会HPより引用

【 床書き現寸 】

一般的には、工作図で現寸の役割が代替できる場合に省略できるとされている。細かい納まりが 工作図だけでは分かりにくい場合は、現寸フィルムで確認する。 最近では、CADのデータをディスプレイに映す「CAD現寸」という方法もある。部分的な詳細を確認するには良いが、全体像がわかりにくいことやスケール感が無いという欠点もある。

床書き現寸図の例.jpg
床書き現寸図の例


現寸フィルムによる確認例.jpg
現寸フィルムによる確認例

基準墨を床に書き、その上に現寸フィルムを置き確認する。

出典:(一社)日本建築学会_建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2018
   (一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018


【 シナイ 】

鉄骨工事技術指針でいう「定規」の一種で、鋼帯に長尺部材の長さ方向の各種寸法(切断位置、 部材取付位置、孔位置など)を記載したもの。最近では、NC切断やNC孔あけが採用されるケースが多く、シナイの使用頻度は少なくなっている。

シナイの使用例.jpg

現寸場でシナイに組立部材位置を記入.jpg


出典:建築構造・構造力学・設備・測量編 職業能力開発大学校研修研究センター 編集


【 鋼材の材質確認の方法 】

ミルメーカーなどから搬入された鋼板や形鋼は規格品証明書と照合することで材質確認ができる。また、SN材の鋼板では、プリントマークで、形鋼では印字などでも確認できる。間接的には、 ネスティングシートによる方法もある。400N級鋼と490N級鋼を識別する時は、「スチールチェッカー」も目安になる。 スチールチェッカーのメーカー・ホームページによると、左側のタイプの生産は2008年12月末日で終了、修理対応期間も2015年12月末日で終了している。

鋼材識別方法.jpg

この「400」という表示はメーカーがサービスでSS400に付けている印で、SM材には、特にマークが付かない。 SN材には、SN400,SN490といった表示される。

出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018


【 切板の識別方法 】

鋼材種ごとに決められた色でプロジェクト名、材質、部品名を書くのが一般的である。鋼材種と識別色は製作要領書に表で記載し、同じものを工場内に掲示しておく。?(一社)日本建築学会 鉄骨工事技術指針・工場製作編(2018)では、付13に「鋼材の識別表示標 準(JSSI02-2017より抜粋)」が掲載され、鋼材の識別方法としての標準の採用を推奨している。 これまでは、鉄骨製作会社や切板会社によって異なる標準を採用している場合があったが、この標準により同一の識別方法に統一されていくものと思われる。

切板の識別方法.jpg

出典: (一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018




【 切板の鋼材識別塗色マーキングのルール 】

鋼材の識別表示標準としては、日本鋼構造協会が2017年に制定した「鋼材の識別表示標準 JSSI02-2017」があり、これは(一社)日本建築学会 鉄骨工事技術指針・工場製作編(2018)の 付13に掲載されている。この標準は、「建築などに使用されるJIS規格又はそれに準ずる規定に基づいて品質表示のなされている鋼材の流通過程で、切断等を施した加工部材の鋼種(種類の記号)を識別する場合の表示方法を規定」したものである。鋼材の識別は、文字表示と塗色表示の2 種類があり、このいずれかで識別することになっている。 これまで識別表示は、それぞれの鉄骨製作工場で「社員のだれでも分かること」を基本に工夫して 独自に取り決められていたが、今後はこの識別表示標準に統一されていくことと思われる。

鋼材識別1.jpg 鋼材識別2.jpg
  これまでの工場での表示例

矢印.jpg 統一されていく 

鋼材の識別表示標準JSSI02-2017(日本鋼構造協会)より抜粋
鋼材の識別表示標準JSSI02-2017.jpg


出典: (一社)日本鋼構造協会_鋼材の識別表示標準JSSI02-2017
(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018


【 けがき(鋼材面へポンチ) 】

?鋼材面へのポンチについて、認められない場合。
?@曲げ加工される部分の外面
?A490N/mm 2 以上の高張力鋼や疲労を考慮する部材(曲げ加工される部分の外面に限らず全ての部分)
?いずれも、けがき部分が亀裂発生の起点となるおそれがある。 溶接後に完全に溶込む場合は問題はない。

ハンチで曲げ加工される外面.jpg

上から溶接されない部分はNG.jpg

上から溶接される部分はOK.jpg


出典: (一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018


【 スカラップ工法とノンスカラップ工法の構造性能の違い 】

従来型のスカラップの問題点を踏まえ、複合円形スカラップ、ノンスカラップ工法が提案されている。グラフは、現場溶接、工場溶接のスカラップ(複合円形)およびノンスカラップの累積塑性変形倍率、耐力上昇率の比較を示す。グラフからわかるようにノンスカラップの方が良好な変形性能、耐力性能を有している。なお、複合円形スカラップでも溶接材料や溶接条件を十分管理して溶接を行い、溶接金属が十分強度があれば十分な性能を示すことが分かっている。

複合円スカラップ.jpg

累積塑性変形倍率の比較.jpg

耐力上昇率.jpg


出典:2009年度日本建築学会大会_材料施工部門PD「梁端現場溶接接合が抱える課題」


【 鋼板の曲げ半径の規定 】


JASS6と建設省告示2464号

JASS6の規定は学術的な立場から作成されているので、一部で告示と異なっている部分があるが、告示は法律なので、実務では告示を優先する必要がある。JASS6および告示における曲げ加工による曲げ半径に関する記述がどのように異なるかを示す。

常温曲げ加工による内側曲げ半径.jpg

出典:(一社)日本建築学会_建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2018




【 「仮組」の対象工程 】

一般的には、橋梁などで行われている。建築鉄骨では、複雑な形状のもの、大型のトラス、曲面を有する構造体などで行われる場合があるが、一般的なラーメン構造では不要と考えられる。 工場で一旦、組立て、組立て後の部材寸法や取合部の精度などを確認し、その後、解体して工事現場へ運ぶ。 もし、仮組の指示があった場合は、仮組範囲を特定し要領書を作成して工事監理者の承認を得る。

送電鉄塔の仮組.jpg

鉄骨トラスの仮組.jpg

仮組み時の現場溶接の精度確認.jpg


出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018

【 孔あけをレーザで行う場合の留意点 】

2015年版以前のJASS6では、高力ボルト用の孔あけはドリルあけのみとされていたが、2018年 に改定されたJASS6では「ただし、特記がある場合または工事監理者の承認を受けた場合は、 レーザ孔あけとすることができる」となっている。さらに、(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術 指針・工場製作編(2018)の4.9.5項にはレーザ孔あけの留意事項が述べられている。

高力ボルト用の孔の径は建築基準法施行令で規定されている。ドリルで孔あけの場合はドリルの取り付けなどが適正であり、がたが無い状態であれば、その孔径が変化することは考えにくいが、レーザであける場合は孔径の精度管理が重要となり、孔径を守ることのできる機械の 調整と加工後の検査方法について十分な検討を要する。また、レーザの熱による孔壁の硬さの 変化(入熱硬化)を検討すること、ボルト孔周上のノッチ状の溶損部の有無確認・対応も必要となる。(下記の文献では、「外周部に溶損部が発生するが、高力ボルト接合部として問題無い」と 報告されている。)

レーザで孔あけとする場合は、下記の3つが最低限、確認すべき項目である。
?@溶損部(ノッチ、突起)を含む孔径の精度を±0.5mm以下とする(JASS6)
?A板厚と最小孔径の確認
?B孔壁の傾き精度

溶接部の孔径の精度.jpg


出典:
(一社)日本建築学会_建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2018
(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018
(一社)日本建築学会_技術報告書,第21巻第48号 広島工大 清水他
「高力ボルト摩擦接合の孔あけ加工にレーザー加工を用いた場合のすべり係数および引張耐力に関する実験的研究」 他

【 高力ボルト摩擦接合でボルト孔をルーズ(拡大孔)にする場合 】

高力ボルト接合における高力ボルト孔径については、建築基準法施行令第68条第二項において以下のように規定されており、拡大孔についての規定はなく、認められていない。
建築基準法におけるボルト孔径の基準.jpg


高力ボルトの孔の食い違い.jpg


参考として、拡大孔に関しての各種規定を紹介する。
日本建築学会「鋼構造接合部設計指針」(2012年改訂)においては、「母材に限り下記に示す拡大 孔を使用できる。ただし、一面せん断の場合には、添え板と同厚以上の補強版を添え板と反対側(拡大孔を設けた板側)に用いなければならない」と示されており、低減係数も記載されている。

拡大孔の耐力低減係数(設計指針).jpg

また、アルミニウム合金構造においては、告示にて2面せん断の場合の拡大孔を高力ボルト径の 1.25倍まで大きくすることが出来ることが規定されている。 なお、AISCやユーロコードでは、規定で以下の条件で拡大孔が認められている。

拡大孔の耐力低減係数.jpg

しかし、前述のように拡大孔はそのままでは基準法違反となりますので、採用にあたってはボルト 孔形状を含めた性能評価を受けて大臣認定を得る必要がある。

出典:建築鉄骨工事の新たな課題への取り組み
(一社)日本建築学会_鉄骨工事運営委員会調査研究報告会・資料集、2010
(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2018


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組織に不要な人などはいない。 また、各人は真摯であるだけでいい。 その強みを活かすのはトップマネジメントの仕事だ
チームの各人が自らの強みを知って、最大限に活かすことができれば、しいては組織全体が…. そうすれば最強の組織をつくることができる

建築学ガイド


1級建築士受験スーパー記憶術


S M L XL: Second Edition

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

井上章一 現代の建築家

水源—The Fountainhead

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建築家の読書塾

「秋葉原」感覚で住宅を考える
石山修武 晶文社 1984


アジアン・スタイル—十七人のアジア建築家たち

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隠喩としての建築 (講談社学術文庫)

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江戸名所図会を読む

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輝く都市 (SD選書 33)

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エル・リシツキー革命と建築

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バウハウスからマイホームまで (晶文社セレクション)
トム・ウルフ


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ピーター・ライス自伝—あるエンジニアの夢みたこと

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風水先生—地相占術の驚異 (集英社文庫—荒俣宏コレクション)

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バックミンスター・フラーの宇宙学校

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マスメディアとしての近代建築—アドルフ・ロースとル・コルビュジエ

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見えがくれする都市—江戸から東京へ (SD選書)

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郵便配達夫シュヴァルの理想宮
岡谷公二 作品社 1992

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ルイス・カーン—光と空間
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