01節 一般事項
13.1.1 適用範囲
なお、金属板葺は長尺金属板葺と折板葺とに分かれる。
13.1.2 基本要求品質
(a)「標仕」では、屋根及びとい工事に使用する材料のうち主要なものはそれぞれのJIS規格が指定されている。また、補助材料については、材質や表面処理等について必要とされる内容が具体的に規定されている。基本要求品質としては、これらの指定された種類の材料が工事に正しく使用されたことを容易に証明できるようにしておく必要がある。
(b) 屋根及びといは、「標仕」で示された以外にも使用する部材が多く、その形状・寸法も多種多様であり、工事現場において加工し取り付けられる部材もある。このため、「所定の形状及び寸法を有する」とは、設計図、施工図等で示された部材が、その仕様どおり取り付けられていることを求めたものである。したがって、部材の施工方法、精度、管理の方法について「品質計画」で提案させ、それにより施工し、管理したことを証明できるようにしておく。
「所要の仕上り状態」としては、使用する建物の重要度や使用箇所、所在地の環境等を考慮して、全体として有害な傷がないこと、特に見え掛り部分に使用上問題となる汚れ、ねじれ、反り、色むら、へこみ、欠け等がなく、また、耐久性上問題となる傷がないことである。具体的には、屋根の専門工事業者による施工管理記録を活用すればよいが、あらかじめ具体的に限度を定めておき、この限度内に納まっていることと考えればよい。これらの限度を定めるに当たっては、同時に限度を外れた楊合の処理方法についても明確にしておく。
とい工事にあっては、使用材料が適正であり、加工寸法の管理が適切であればおおむね所定の形状及び寸法を確保できると考えられることから、(a)による使用材料の確認と適切な施工図、加工製品の確認のほか、取付け状態の確認記録を整備するようにする。
といの仕上り状態としては、ルーフドレンとといの取合いだけでなく、仕上げの防露巻きも含めて、出来上りの状態の限度と確認方法を定めておき、この記録を整備する。
(c) 「標仕」13.1.2(c)でいう「漏水がない」とは、9章の防水工事と同様に水張り試験による確認を要求しているわけではなく、漏水のない品質をつくり込むという考えが重要である。具体的には、施工のプロセスとして下地から屋根材、とい材料の取付けに当たって、何をどのように管理するのかを「品質計画」として提案させ、これを実施させた結果として「漏水がない」ものと考えればよい。屋根材にあっては、この取合い部の検討において、特に耐風圧性及び施工後のきしみ等の有害な震動をなくするように検討を行うことが重要である。
(d) 屋根に加わる外力の主なものは、風と雪である。風については「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1458号)に基づき算出した風圧力に対して、雪については建築基準法施行令第86条に基づき算出した積雪荷重に対して、それぞれ構造耐力上安全であることを確かめなければならない。
施工に当たっては、設計で考えられた構造耐力性能を実現するために必要な監理を行う。また、「有害な振動がない」ようにするためには、屋根材と下地材の取合い、下地材と構造体の取合いを適切なものとする必要がある。いずれも監督職員の承諾を受けた施工計画書どおり施工が行われたことを管理記録等により証明できるようにするとよい。
なお、風圧力については「Eの数値を算出する方法並びにV 0 及び風力係数の数値を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1454号)に「局地的な地形や地物の影響により平均風速が割り増されるおそれのある場合においては、その影響を考慮しなければならない」とされており、想定される要因としては、地表面の状況(無障害物平坦地)、傾斜地(崖地、傾斜地等)、風の通路(運河、水路、谷あい等)、局地風.ビル風等がある。
とい工事にあっては、ルーフドレンとコンクリート躯体の取合いを含め、各部材の接続が確実に行われることが重要であり、施工記録により証明できるようにするとよい。
13.1.3 施工一般
(a) 「標仕」では、降雨・降雷、強風等屋根に悪影響を及ぼす自然条件の場合は、施工を行わないとされている。安全面から考えても施工は取りやめるべきである。また、下地(野地板)の乾燥が不十分な場合にも施工を行わない。下地が十分に乾燥していないと、施工後の結露の発生のほか、下地の種類によっては、留付け用部品の下地との保持力の低下が懸念されるからである。
(b) 下葺材施工の際に下葺材を折り曲げることがあり、気温が著しく低い気候条件下では下葺材が破断するおそれがある。また、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)は粘着層の十分な接着性が得られない場合があるので、気温が著しく低下した場合には施工を行わない。
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