9節 断熱・防露
19.9.1 適用範囲
(b) 建築物を断熱するのは次の3つの理由による。
(1) 表面結露を防ぐため(結露防止)。
(2) 燃料費・暖冷房費低減のため(省エネルギー)。
(3) 居住性を向上させるため(居住性向上)。
19.9.2 断熱材打込み工法
(a) 一般事項
ここでは、現場打ちコンクリート部位に型枠先付けで断熱材を打ち込む内断熱工法を対象としている。
なお、型枠に取り付けるうえで納まりが複雑な開口部回り等で断熱施工がしにくい部位や熱橋となりやすい部位には、19.9.3断熱材現場発泡工法又は断熱材張付け工法(「標仕」では.工法については規定していない。)により、適切な補修を施して所定の断熱性能を確保しなければならない。
(b) 作業の流れを図19.9.1に示す。
図19.9.1 断熱材打込みt法の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、 赤文字 を考慮しながら品質計画を検討する。
?@ 工程表
?A 製造所名及び施工業者名
?B 材質及び厚さ(断熱材、現場発泡断熱材、ホルムアルデヒド放散量等)
?C 工法(割付け、見切り部分の納まり、留付け方法、接着方法、吹付け方法、補修方法等)
?D 養生方法等(材料保管方法、打込み前及び型枠脱型後の養生等)
?E 安全衛生(火気取扱い、換気方法等)
?F 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 材 料
(1) 断熱材は大別すると、発泡プラスチック系、無機質繊維系(グラスウール等)及び木質繊維系(インシュレーションボード等)に分類されるが、「標仕」19.9.2(a)に示される断熱材は、JIS A 9511(発泡プラスチック保温材)に規定される製品のうち、ビーズ法ポリスチレンフォーム保温材、押出法ポリスチレンフォーム保温材(スキンなし)、A種硬質ウレタンフォーム保温材及びフェノールフォーム保温材(3種2号を除く。)であり、種類及び厚さは特記によるとしている。硬質ウレタンフォーム保温材の発泡剤による種類をA種と定めているのは、発泡剤にフロン類を用いないためである。A種は発泡剤として炭化水素、二酸化炭素(CO 2 )等を用い、フロン類を用いないものを示す。打込みt法の断熱材に必要な性能は次のとおりである。
(i) コンクリート打込みによって断熱性能が変化しないこと
(ii) 吸水・吸湿が極めて少ないこと。
(iii) 軽量で加工性が高<、割れたり欠けたりしにくいこと。
(iv) 耐圧強度が高いこと。
(v) コンクリートとの付着性が良いこと。
(vi) 寸法等の変化を生じないこと。
(?F) 耐アルカリ性に優れ、裏打ち材との接着が良いこと。
(2) 断熱材の種類と特徴
(i) ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板
ポリスチレンフォーム保温板は、製造法によりビーズ法と押出法の2種類がある。JIS A 9511によるビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の特性並びに寸法を表19.9.1及び2に示す。
なお、特徴は次のとおりである。
1) 燃焼性:可燃性であるが、自己消火性を有する。
2) 耐候性:日射(紫外線)による劣化がある。
3) 吸水性・透湿性:独立気泡のため水の付着程度ではほとんど吸水しないが、長時間水中に浸しておくと若干吸水することがある。透湿性は極めて小さい。
4) 施工性:加工が容易であり、取付け方法は釘留め、接着付け、打込み等である。加工品としては片面又は両面にボード類等(せっこうボード ・GRC板・木毛セメント板・合板等)を複合した成形品もある。
表19.9.1 A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.2 A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
(ii) 押出法ポリスチレンフォーム保温板
JIS A 9511による押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性並びに寸法を表19.9.3及び4に示す。
なお、押出法ポリスチレンフォームの特徴は、(i)のビーズ法ポリスチレンフォーム保温板と同様である。
表19.9.3 A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.4 A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
(iii) 硬質ウレタンフォーム保温板
JIS A 9511による硬質ウレタンフォーム保温板の特性並びに寸法を表 19.9.5及び 6に示す。
なお、特徴は次のとおりである。
1) 燃焼性:可燃性であるが、自己消火性を有する。
2) 耐候性: 日射(紫外線)による劣化がある。
3) 吸水性・透湿性:独立気泡のため水や水蒸気の浸入に対して抵抗力は大きい。表面材に防水性、防湿性の大きいものをラミネー トした製品は、吸水性、透湿性をいっそう小さくできる。
4) 施工性:加工が容易であり、取付け方法は釘留め、接着付け、打込み等である。加工品としては、ボード類等を複合した成形品もある。
表19.9.5 A種硬質ウレタンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.6 A種及びB種硬質ウレタンフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
(iv) フェノールフォーム保温板
JIS A 9511によるフェノールフォーム保温板の特性並びに寸法を表19.9.7及び8に示す。
「標仕」では、フェノールフォーム保温板のホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆とするよう定められている(10節参照)。
なお、特徴は次のとおりである。
1) 燃焼性・耐熱性:炎を当てても炭化するだけで、煙や有害ガスはほとんど発生しない。
2) 耐候性:通常の使い方では経年による材質変化は少ないが、日射(紫外線)による劣化がある。
3) 吸水性・透湿性:独立気泡であるため、吸水性・透湿性は小さいが、発泡プラスチック保温材の中では吸水性が比較的高い。
4) 施工性・加工性:面材に金属板等を用いたもの以外は、カッター・ナイフ等で容易に切断できる。
なお、金属に対する腐食性があるので、直接接触する金物類には適切な防錆処理が施されたものを使用する。
5) 施工上の注意事項:型枠への固定は、専用の座付き釘を使用するなど脱型時の面材のはがれ等に配慮する。
表19.9.7 A種フェノールフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.8 A種フェノールフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
(3) 材料の取扱い及び保管の留意事項
(i) 運搬に際し、欠け、割れ、つぶれ等がないよう取り扱う。
(ii) 長時間( 2〜3日以上)日射(紫外線)を受けると表面から徐々に劣化するので、原則として屋内に保管する。やむを得ず屋外に保管するときはシート等の覆いを掛ける。また、施工後も日射を受けるときは速やかに仕上げの施工(コンクリート打込み等)を行う。
なお、屋外に保管するときは、風で飛散しないようしつかり保持しておく。
(iii) 反りぐせ防止のため、平たんな敷台等の上に積み重ねる。
(iv) 独立気泡のため、吸水性・透湿性は小さいが、水や湿気にさらされると断熱性能が徐々に低下するので、(ii)に配慮する。
(v) 通行の多い場所は材料を破損するおそれがあるので保管場所としては避ける。
(vi) 溶接火花、バーナー等火気のある付近には保管しない。
(e) 工 法
(1)概要
打込み工法は、ボード状断熱材をあらかじめ型枠に取り付けるか、ボード状断熱材そのものか、又は複合成形板を型枠として用いてコンクリートを打ち込むことにより断熱材をコンクリート躯体の所定の位置に取り付ける工法である。
(2) 工法の特徴
(i) 断熱材と躯体が密着している場合は、内部結露やはがれが比較的少ない。
(ii) 工期の短縮、コストの節減が図れる。
(iii) 通常の型枠大工で施工できる。
(iv) 建込み時において精度が要求される。
(v) 打込み後のコンクリート面の確認が困難である。
(3) 施工上の注意事項
(i) 加工及び取付け
断熱層が連続しなかったり、断熱材を欠損しなければ納まらないような形状での使用は避け、事前に納まりを十分に検討する必要がある。
加工・取付け上の注意事項は次のとおりである。
1) 断熱材の切断が不整形であると、その部分からコンクリートが表面にはみ出して冷・熱橋となるので、切断は測定のうえ定規を当てて正確に行う。
2) 断熱材の継目は、目違い防止のため型枠の継目を避けるよう割り付ける。
3) 継目は、縦方向だけでも相継ぎ等とするのが理想的であるが、テープ張り等の処位を講じてコンクリートの流出を防止する(図19.9.2参照)。
図19.9.2 断熱材継目部のテープ処理例(JASS 24より)
4) 入隅部・出隅部は、断熱材が連続するように納まりを考え、冷・熱橋とならないようにする。壁入隅部の処置例を図19.9.3に示す。
図19.9.3 壁入隅部の処置(JASS 24より)
5) 断熱材の取付けは、型枠の内面に釘で仮留めする。釘は、断熱材の端から30〜 50mm内側に打ち付ける。
釘は、座紙(ろうを含浸させたもの、アスファルトフェルト等)を取り付けたもの、又は断熱材専用の座付き釘とし、釘頭が断熱材内部にめり込まないように打ち込む。
6) セパレーター・アンカーボルト・インサート・ドレン回り・パイプ等の金物類が、断熱材を貫通する部分は冷・熱橋となるので、極力その欠き取りを少なくして補修を容易にする。
7) 冷・熱防止を考慮したセパレーター、インサート等の例を図19.9.4及び5に示す。ただし、「標仕」14.4.2(d)ではインサートは鋼製、「標仕」 19.9.2(b)(5)ではコーンの撤去跡は断熱材張付け又は断熱材現楊発泡工法による断熱材の充填となっているので注意する。
なお、冷・熱橋とは、建築物を構成する部位において、熱貫抵抗が局部的に小さい部分をいう。このような部分では熱損失が生じ、結露が発生しやすい。
図19.9.4 冷・熱橋防止を考慮したセパレーターの例
図19.9.5 冷・熱橋防止を考慮したインサートの例
(ii) 養生等
?@ 断熱材に火気が触れると火災事故の原因となるので、断熱材集積場所や施エされた箇所等を工事関係者に周知徹底する。
?A ガス圧接・溶接時等の炎や火花が断熱材に触れるおそれがあるときは、鋼板等の不燃材による保護を撤底し、消火器等も配置する。
?B 断熱材に局部的に大きな荷重がかかり破損のおそれがあるときは、合板等で養生する。
?C 断熱材は軽いため、その切りくずは風により型枠内部や現場外にも飛散しやすいので、切りくず等は発生の都度片付ける。
(iii) コンクリートの打込み
?@ フレキシブルホース又はシュートからのコンクリートを、断熱材の張りじまいに直接当てると、コンクリートが裏面に回り込むおそれがあるので留意する。
?A 急速打込みや集中打込みを避ける。
?B バイプレーター等は、断熱材に触れないように垂直に上下させる。また、同一箇所に長時間かけてはならない。
?C 打込み時及び打込み後のコンクリート表面の確認は困難なため、豆板やコールドジョイント等の欠陥の発生防止には十分に注意する。
(iv) 型枠取外し後の補修
?@ 断熱材が欠落している箇所は、その部分のコンクリートをはつり取り、断熱材を張り付けるか、「標仕」19.9.3の断熱材現場発泡工法で隙間なく補修する。ただし、結露のおそれのある寒冷地域では断熱材現場発泡工法が一般的である。
?A 継目の中にコンクリートがはみ出しているときは、断熱材現場発泡工法によりそのまま補修する。ただし、継目の隙間が大きい場合にはVカットしたうえで補修する。
?B セパレーターの頭部は、確実に補修しておかないと後日内壁仕上げ面に汚染が生じてくる(セパレーター頭部が冷・熱橋となり、その部分の内壁仕上げ面が結露し汚染される)。
?C 開口部の枠回りは、形状が複雑で断熱材打込み工法による施工が困難な場合が多い。そのような箇所は断熱材現楊発泡工法により施工する。
(4) 断熱材張付け工法(「標仕」以外の工法)
(i) 概 要
断熱材張付け工法は、ボード状断熱材を接着剤等により下地面に取り付ける工法、又は複合成形板を接着剤等により、直張りする工法である。
なお、「標仕」19.9.2(b)(5)では断熱材打込み工法での開口部等のモルタル詰めの部分及び型枠緊張用ボルト、コーンの撤去跡は、断熱材張付け又は断熱材現場発泡工法での断熱材充填によるとしているが、壁面全体に断熱材を張り付ける工法については規定していない。
(ii) 特 徴
?@ 仕上りがきれいで、表面材を補修する必要がない。
?A 施工技術が要求される(接着剤を使用する場合、作業環境の温湿度や、下地の乾燥状況を正確に把握する必要があるため)。
?B 下地(躯体)の平滑度が要求される。
?C 打込み後のコンクリート面が確認できる。
?D 断熱材と下地との接着が不十分な場合には、断熱材とコンクリートの境界面に結露が生じやすくなる。
(iii) 材 料
?@ 断熱材
(d)に示す断熱材を使用する。
?A 張付け用接着剤
「標仕」では、接着剤は断熱材製造所の指定する製品でよいが、ホルムアルデヒド放散量については特記がなければF☆☆☆☆としているので、接着剤の放散量が設計図書で指定されたものであることを確認する必要がある
(10節参照)。
(iv) 施工上の注意事項
?@ 下地面の処理
1) 下地面の不陸が、数mm程度であれば接着剤を厚くして調整する。調整可能な不陸は、長さ2m当たり3mm程度以下である。
2) 不陸が大きいときは、はつり又はセメント系下地調整塗材で補修する。
3) 下地面の汚れ、油分及びほこりの付着は、はく離の原因となるので除去する。
?A 張付け
1) 接着剤は、下地面の温度及び乾燥程度により、接着性に影響が生じるので性能表等を確認し適切に管理する。
2) 断熱材と躯体との境界面に隙間が生じると、その部分に結露が生じやすくなるため、接着は全面接着とし、密着させて張り付ける。
3) 溶剤形の接着剤を使用するときは、火気及び強制換気等安全上の処置を講ずる。
19.9.3 断熱材現場発泡工法
(a) 一般事項
(1) 断熱材現場発泡工法は、断熱施工現楊でポリイソシアネート成分及びポリオール成分の2原液を混合し、吹付け又は注入して発泡・硬化させ、所定の厚さの継目のない断熱層を形成させる工法である。
(2) 断熱材現場発泡工法は、一般的な外壁内面や屋根裏への施工に加え、断熱材打込み工法には適さない複雑な納まりとなる部位、開口部回りや断熱材補修部等冷・熱橋となりやすい部位への施工に適した工法である。
(b) 作業の流れを図19.9.6に示す。
図19.9.6 断熱材現楊発泡工法の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、 赤文字 を考慮しながら品質計画を検討する。
?@ 工程表
?A 製造所名及び施工業者名
?B 有資格作業者による施工(1級又は2級熱絶縁施工技能士)
?C 品質、厚さ等(難燃性,施工厚さ等)
?D 工法(下地の確認及び処置方法吹付け方法補修方法等)
?E 養生方法(保管方法、吹付け作業時の周辺への養生方法、施工後の養生方法等)
?F 安全衛生(保護具の着用、火気に対する留意事項、換気方法等)
?G 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 材 料
(1) 吹付け硬質ウレタンフォーム
(i) 断熱材は、「標仕」19.9.3(a)により、JIS A 9526(建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム)の規格に適合する製品を使用することと定められている。種類は特記によるとしているが、特記がない場合、発泡剤の種類は、フロン類を用いず、二酸化炭素(CO 2 )等を用いたもので、壁、屋根裏等の用途に適するA種lとしている。
(ii) JIS A 9526に規定された吹付け硬質ウレタンフォームの種類を表19.9.9に、その品質を表19.9.10に示す。表19.9.10に規定されている熱伝淋率の値は、2006年のJISでは解説で設計値として推奨されていた数値が、2013年のJISでは規格値として採用された。
なお、(-社)公共建築協会では、「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)の一環として、「標仕」の規定に基づき「現場発泡断熱材」を評価しているので参考にするとよい。
表19.9.9 吹付け硬質ウレタンフォームの種類(JIS A 9526 : 2013)
表19.9.10 吹付け硬質ウレタンフォームの品質(JIS A 9526 : 2013)
(iii) 吹付け硬質ウレタンフォーム断熱材の特徴は次のとおりである。
?@ 目地のない連続した断熱層が得られ、曲面や窓枠回り等複雑な形状にも施工が容易である。
?A 現楊発泡断熱材の楊合は、接着性(自着性)があるので接着剤が不要である。
?B 吹付け層数を変えることにより、断熱層の厚さを調整できる。
?C 打込み後のコンクリート面の確認ができる。
?D 平滑な表面が得にくいため、断熱層厚さが不均ーになりやすい。
?E 施工技術が要求される(専門施工業者による施工管理が必要)。
(2) 原液の保管及び取扱い
「標仕」19.9.3(c)では、火気及び有害ガス等に対する安全衛生対策については、関係法令等に従い十分に行うよう定めている。原液は、危険物第四類第三又は四石袖類に該当するものがあるので、消防法等に従って保管し、取り扱う必要がある。保管等は.消防法労働安全衛生法その他の関係する法規に従って行う。
なお、原液の保管及び取扱いについての留意事項は、次のとおりである。
?@ 保管場所を決め、その周囲を鋼製パイプ等で区画し、火気厳禁、立入禁止等の表示を行い、消火器等を適切に配置する。
?A 使用中の原液ドラム缶等は、水が混入すると発熱したり、ガスが発生することがあるので,雨水等が混入しないよう十分注意する。
?B ドラム缶等は、直射日光にさらされないようにシート等で覆うなどして、高温にならないように、また、冬期は材料が 0℃以下にならないように配慮する。
?C 原液が直接皮膚や目に触れないように、断熱材製造所の仕様に従って、保護具(保護メガネ、防毒マスク等)を着用する。
(e) 工 法
断熱材現場発泡工法の施工は、「標仕」19.9.3(c)により断熱材製造所の仕様によると定められている。ただし、作業者には一定レベル以上の技能と安全管理能力が求められるので熱絶縁施工技能検定合格者の活用が望ましい。ここでは一般的な工法の概要を示す。
(i) 下地処理
?@ 下地面の大きな不陸は、断熱層の厚さの確保及び仕上材の取付けに影響するので事前に補修する。
?A 下地面の水分、油分、汚れ及びほこり等は、はく離の原因となるので除去する。
(ii) 吹付け作業前の養生・準備
?@ 建具枠等の化粧材回りの吹付けをするときは、ポリエチレンシート等により汚染がないよう養生する。
?A 風があるときは、現場発泡断熱材が飛散するのでシート等で養生する。
?B 換気の少ない場所では、酸欠状態となりやすいので、強制換気等の対策を講ずる。
(iii) 吹付け
?@ 吹付け面の温度及び乾燥度は、発泡性及び付着性に大きな影響を及ぼすので性能表等により適切な条件で施工する(吹付け面の温度が5℃以上で施工すること)。
?A 躯体からのボルト、パイプ等の金物類は、冷・熱橋となり結露しやすいので、金物回りは入念に施工する。
?B 施工面に、約5mm以下の厚さになるように下吹きする。総厚さが30mm以上の場合には多層吹きとし、各層の厚さは各々30mm以下とする。ただし、1日の総吹付け厚さは80mmを超えないものとする。
なお、吹付け厚さの許容誤差は、- 0から+10mmとすればよい。
?C 吹付け作業の困難な狭い場所では、ガンスプレーとしないで、簡易発泡ボンベ又は付塗りとする。
?D 作業者は吹付け作業中にワイヤゲージ等を用いて随時厚みを測定する。所定の厚さに達していない箇所は補修吹きを行い、逆に厚く付き過ぎて表面仕上げ上支障となる箇所は、カッターナイフ等により表層を除去する。
(iv) 安全管理
安全管理上のポイントは、吹付け作業中及び作業後において断熱材に火気が接触しないように、火気厳禁を遵守することにある。特に吹付け後、あと工程での鋼材の溶接・溶断作業は極力避けた工程管理を行う。どうしても避けられない場合でも断熱材に直接火気が接触しないように不燃材料で完全に養生する。また、間接的でも鉄骨等を伝わって断熱材に熱が伝わることがないよう万全の措置が必要である。