15 節 流動化コンクリート
6.15.1 一般事項
なお、(一社)日本建築学会では、「流動化コンクリート施工指針・同解説」において、流動化コンクリートの使用方法等について示しているので、これを表 6.15.1 に示す 。
表 6.15.1 流動化コンクリートの使用方法と調合の計画、使用目的
(流動化コンクリート施工指針・同解説より)
(b) 流動化コンクリートの施工に当たっては、工事現場にコンクリートについて十分な知識と経験をもつ施工管理担当者をおいて、入念な管理を行う必要がある。
6.15.2 材料及び調合
(a) 流動化剤は、JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)で標準形と遅延形に分類し、それぞれの品質規格を定めているが、銘柄によって品質に若干差があるので、JIS A 6204に適合するもののうちから品質の均一性及び使用実績等も考慮して選定する必要がある。
標準形は、一般のコンクリート工事に用いられるものであり、遅延形は、主として暑中コンクリート等でコンクリートの凝結を遅らせる目的に用いられる。
遅延形は流動化効果と凝結遅延効果を併せもつものであり、添加量によって流動化の程度と凝結遅延性が同時に変化するので、所定の凝結遅延性を得るためには、ベースコンクリートには遅延形のAE減水剤を用い、流動化剤は標準形とするのが望ましい。
流動化剤の主成分である高性能減水剤の中には、AE 効果が極めて小さいものがあり、ベースコンクリートに用いられるAE剤・AE減水剤との組合せについても十分に検討する必要がある。
(b) 流動化剤は、銘柄によって、流動化効果や空気量の安定性等に若干の差があるので、流動化コンクリートの調合は、工事に使用する材料を用い、実際の施工条件になるべく近い条件で試し練りを行って定める必要がある。
また、流動化コンクリートは、同じスランプの通常の軟練りコンクリートに比較してスランプの経時変化が大きいので、これについても試し練りの段階で検討を加えておくことが肝要である。
(c) 流動化剤は原液で用いられるので、通常の使月量で変化するコンクリートの水セメント比はおおよそ0.3%程度であり、圧縮強度に及ぼす影響はほとんどないこと、及び流動化剤添加前後の圧縮強度に関するする多くの実験報告によっても、流動化コンクリートの圧縮強度とベースコンクリートのそれとの間には、空気量が同じならば 有意な差はほとんど認められていないことにより、流動化コンクリートの調合は、ベースコンクリートの圧縮強度に基づいて定めてよいこととしている。
(d) ベースコンクリー ト及び流動化コンクリートのスランプは、コンクリートの種類・使用材料・運搬・打込み等の施工の条件に応じて無理のない組合せとし、「標仕」表6.15.1 を満足するように定める。
(e) 流動化コンクリートの空気量は、一般のコンクリートと同様に、通常の場合、普通コンクリートにあっては 4.5%とする。
( f ) 流動化コンクリートの品質は、ベースコンクリートの調合と流動化剤の添加量により左右される。 所要の品質の流動化コンクリートを得るためには、ベースコンクリートの品質が 一般のコンクリートと同様、「標仕」2 節の品質を満足していることが必要不可欠である。
6.15.3 コンクリートの流動化
(a) 流動化 コンクリートは、同じスランプの通常の軟練りコンクリートに比較してスランプの経時変化が大きいので、流動化剤の添加及び流動化のためのかくはんは、工事現場で行うこととしている。 また、かくはんの管理は、 回転数又はかくはん時間によって行うとよい。
なお、市街地でのトラックアジテータの高速かくはんは、騒音の問題が発生するので、工事開始前に住民の理解を得る必要がある(6.4.3 (b)参照)。
(b) 流動化剤を水で希釈して使用すると、コンクリートにあと添加される水の量が増えることになり、強度その他の性能に及ぼす影響が無視できなくなるので、流動化剤は原液で使用することとしている。
(c) 流動化コンクリートの施工に当たっては、流動化における工程管理は、できるだけシンプルであることが望ましいので、ベースコンクリートが所定の範囲で管理されている場合は、流動化剤の添加量は、あらかじめ定めた一定量とし、これを一度に添加することとしている。
なお、コンクリート温度の変化、その他の原因により、流動化効果が変化した場合、また、スランプの変動が大きい場合、工事現場における運搬車の待機が長くなった場合等においては、添加量を変更するなど適宜対処する。
(d) 現在、市販されているほとんどの流動化剤は液体であるので、質量又は容積のいずれかで計量することとし、計量誤差は,JIS A 5308(レディー ミクストコンクリート)の 8.2.2 [ 軽量誤差 ]の混和剤の規定と同じく1回計量分量の ± 3 %以内としている 。
6.15.4 品質管理
(a) 流動化コンクリートを製造するうえで、ベースコンクリートの品質変動ができるだけ小さくなるように品質管理することが特に重要であるので、一般のコンクリートと同様、ベースコンクリートの品質管理も「標仕」 5 節による。
(b) 流動化後のコンクリートの品質管理試験は、流動化の工程が計画どおりに実施され、所定の品質に適合したコンクリートを製造しているかどうかについて試験し、確認するものであり、あらかじめ定めた頻度で「標仕」5 節に準じて試験を行い、流動化工程の品質を管理し、また、運搬から打込みまでの品質の変化が確認できるようにする。そのため、流動化剤の投入場所には、コンクリートに精通した専任の施工管理担当者を配置し、入念な管理を行う必要がある。
なお、流動化コンクリートの調合強度は、ベースコンクリートの圧縮強度とほぼ同じとみなすことができるので (6.15.2 (c)参照)、ベースコンクリート及び流動化コンクリートの品質管理状態が良好と判断されれば、流動化コンクリートの調合管理強度の管理試験は省略してもよい。
6.15.5 運搬並びに打込み及び締固め
流動化コンクリートの運搬並びに打込み及び締固めの方法は、基本的には、一般のコンクリートのそれらと変わることがないので、「標仕」6 節によるとしている。
一方、流動化コンクリートは、同一スランプの軟練りコンクリートと比較して、スランプの経時変化が大きい、分離しやすいなど施工に関わる問題点もあるので、運搬並びに打込み及び締固めには、更に、次の事項も考慮する必要が ある。
(1) 流動化コンクリートは、通常の軟練りコンクリー トに比べてスランプの経時変化が大きく、また、使用材料や調合によっては、分離や品質変化が生じやすくなることがあるので、流動化後から打込みまでの時間が短くなるように事前に十分検討して、適切な運搬方法を定める必要がある。
(2) 流動化コンクリートは、練混ぜから流動化までの時間が長いほど、流動化後のスランプの経時変化が大きくなる。したがって、練混ぜから流動化剤添加までの時間をできるだけ短時間とし、また、荷卸しから打込み終了までに要する時間も外気温が 25℃ 以下の場合は 30分以内、25℃ を超える場合は 20分以内とすることが望ましい。
(3) 流動化コンクリートは、通常の軟練りコンクリートに比べてスランプの経時変化が大きいため、先に打ち込んだコンクリートの流動性を考慮して打重ね時間間隔の限度を定めるのがよく、外気温が25℃以下の場合は 60 分、25℃を超える場合は 40分程度にすることが望ましい。
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