5節 と い
13.5.1 一般事項
(2) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、を考慮しながら品質計画を検討する。
?@ とい(軒どい、たてどい)の材種と大きさ
?A とい(軒どい、たてどい)の継手の工法
?B とい(軒どい、たてどい)の受金物の形式と取付け工法並びに建物の納まり
?C とい(軒どい、たてどい)の排水勾配
?D 軒どいの製造業者による軒どいの取付け方法(硬質塩化ビニル雨どい)
?E ルーフドレンの位置、高さ、取付け工法
?F ルーフドレンの形式(防水種別及び使用箇所等による形式)
?G たてどいの防露の工法(床貫通部分を含む)
?H たてどい掃除口の有無
?I 施工の確認方法
13.5.2 材 料
(1) 「標仕」では、表13.5.1で、といその他に適用する材種等を示している。次にその特徴を示す。
(ア) 配管用鋼管
JIS G 3452(配管用炭素鋼鋼管)は、圧力の比較的低い蒸気、水(上水道を除く。)、油、ガス、空気等の配管に用いるもので、黒管と白管(亜鉛めっき)があり、「標仕」では白管を用いることとしている。試験水圧は2.5MPaである。種類の記号 はSGPである。
(イ) 排水管継手
JPF DF 001(排水用ねじ込み式鋳鉄製鋼管継手)は、SGPを用いた排水配管に使用するねじ込み継手19種類、呼び1 1/4 〜6について規定したもので、鋳鉄製又は可鍛鋳鉄製である。90゜エルボ、Y等には流れ勾配が付いている。鋳放し品、溶融亜鉛めっき品及び内面樹脂コーティング品があるが、「標仕」では溶融亜鉛めっき品を用いることとしている。
(ウ) 硬質ポリ塩化ビニル管
JIS K 6741(硬質ポリ塩化ビニル管)は、一般流体輸送用の管で、呼び径と厚さの組合せによって、VP、VM及びVUの3種類がある。水圧試験値はVPが 2.5MPa、VMが2.0MPa、VUが1.5MPaである。呼び径はVPが13〜300、VMが350〜500、VUが40〜600であり、同じ径でも肉厚が異なり、VPは、VUの 2倍程度の肉厚となっている。管の色は灰色で、定尺は4m、種類の記号はVP、 VM、VUである。
「標仕」表13.5.1では、使用圧力の大きいVPを使用することになっている。また、屋内に硬質塩化ビニル管を使用しない理由は、建築基準法施行令第129条の2の4第1項第七号に該当する防火区画等を貫通する排水管は、その貫通する部分及び前後 1mを不燃材料でつくらなければならないためである。
(エ) 硬質ポリ塩化ビニル管継手
JIS K 6739(排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手)は、硬質ポリ塩化ピニル管の VP管を使用する排水配管の冷間差込み接合に用いる継手で、エルボ、Y、両Y、ソケット等14種類がある。
(オ) ルーフドレン
(a) ルーフドレンは、日本鋳鉄ふた・排水器具工業会規格の「JCW 301-2018(ルーフドレン)」(ろく屋根用?T型)を使用し、ルーフドレンの張掛け幅を 100mm以上とする。これは、アスファルト防水や改質アスファルトシート防水における防水層の重ね幅(100mm以上)と同程度の張掛け幅とすることで、ルーフドレンに防水層を確実に張り掛けるためである。この張掛け幅の規定は、アスファルト防水及び改質アスファルトシート防水だけでなく、合成高分子系ルーフィングシート防水にも適用するとしている。
なお、張掛け幅以外の内容も、JCW 301-2018に準拠している。
図13.5.1 ルーフィング類の張掛け幅(つばの幅)100mmのたて形ルーフドレンの例
図13.5.2 ルーフィング類の張掛け輻(つばの幅)100mmの横形ルーフドレンの例
(b) ルーフドレンについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料 設備機材等品質評価事業」(1.4.4 (5)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。
(c) ルーフドレンは防水種別に応じたものとする。「アスファルト防水 シート防水用」と「モルタル防水・塗膜防水用」を用意している製造所が多い。
(d) 近年のゲリラ豪雨対策として、排水量を増やせるサイホン式の排水システムの採用が見うけられる。サイホン式の排水システムは、従来の空気と水が混在した重力方式の雨水排水システムに対し、とい管内を満流状態にすることにより、細い管で高速に排水するシステムである。特殊なルーフドレンとシステム設計が必要であるが、JIS等で規格化されていないため、詳細については製造所に確認するとよい。採用に当たり主な留意事項は以下のとおりである。
?@ ドレン径、配管径、合流などのシステム設計については、製造所の仕様による。
?A サイホン作用を利用するため、中継ドレンを設けない。
?B 取り付け高さの異なるドレン、通常の重力方式のドレンを同一系統に接続しない。
?C 満流、非満流の繰り返し脈動となるため配管の支持方法、ピッチ等を個別に検討する。
?D ルーフドレン近くでは、満流、非満流の切り替わり時の音が懸念されるため、静粛性が求められる室の近傍では、ドレン直下の竪樋・ドレン下部に遮音シート巻きを検討する。
?E 流速が早く、流量も多いので、外構の桝接続部分では雨水が溢れないよう、桝のサイズ等を調整する。
(カ) 硬質塩化ビニル雨どい
硬質塩化ビニル樹脂を成型して作られた雨どいで、JIS A 5706(硬質塩化ビニル雨どい)に適合するものとする。ただし、JISによるものは、主に住宅に用いられる丸型のものである。非住宅用の形式の例を図13.5.3に示す。
図13.5.3 非住宅向け硬質塩化ビニル雨どいの例
(キ) 表面処理鋼板
といに使用する塗装鋼板及び被覆金属板は、鋼板の両面に塗装又は樹脂被覆が施されたもので、「標仕」では、JIS G 3312、JIS G 3318、JIS G 3322及びJIS K 6744の4種類のものが規定されている。
(ク) ステンレス鋼板
「標仕」では、といに使用するステンレス鋼板は、JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板)又はJIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)としている。
(ケ) アルミニウム製雨どい
アルミニウム製雨どいは、「標仕」では規定されていないが、美観性の良さや優れた耐久性等を理由に、実績が増えている。アルミニウム製雨どいは、JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)による押出形材でできており、外表面は陽極酸化塗装複合皮膜処理がされている。内面は表面処理を行わなくても20年以上の大気暴録で孔食深さが 0.3mm以下であり、十分な耐食性がある。また、エポキシ樹脂塗装等でさらに防食性を高めているものもある。高強度支持金物を用いることで、とい受金物の支持間隔を通常より大きくすることが可能な製品もある。
(2) とい受金物
とい受金物は、軒どいやたてどいの形状に合わせて数多くの種類が作られている。
「標仕」表13.5.2は、といの材種、といの種類及びとい径によるとい受金物寸法、取付け間隔を示している。
軒どい、たてどいの受金物は、といに加わる荷重や衝撃に十分耐えうる形状、寸法のものとし、とい材料の耐候性、耐食性に見合った材質又は防錆処理としたものとする。具体的には、JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)のHDZT49以上が望ましく、近年ではステンレス製やJIS G 3323(溶磁亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯)等を用いる場合もある。
なお、「標仕」では、とい受金物及び足金物の材種、形状及び取付間隔は、特記によるとされており、特記がなければ、表13.5.2により、溶融亜鉛めっきしたものとされている。ステンレス製のものも製造されている。
(3) 防露材
(ア) 「標仕」では、一般部分の保温筒はJIS A 9511(発泡プラスチック保温材)のEPS-C-3(ビーズ法ポリスチレンフォーム保温筒の3号)を使用し、とい径に応じて厚さ20mm又は40mmのものを粘着テープで巻くこととしている。 EPS-C-3は、ホルムアルデヒドを放散しない材料である。
また、防火区画等の貫通部分では、JIS A 9504(人造鉱物繊維保温材)のロックウール保温筒を使用し、とい径に応じて厚さ20mm、25mm又は40mmのものを亜鉛めっき鉄線で巻くこととしている。ロックウール保温筒のJISにおけるホルムアルデヒド放散による区分には、F☆☆☆☆、F☆☆☆及びF☆☆がある。「標仕」では、特記がなければ、F☆☆☆☆と定めているので注意する。
なお、一般部分においても、保温筒の使用箇所が 70℃以上となる場合は、ロックウール保温筒を使用する。
(イ) 粘着テープは、JIS Z 1525(包装用ポリ塩化ビニル粘着テープ)による1種で、厚さ0.2mmのものを使用するとよい。
粘着テープは、支持体によって分類される。種類、記号及び厚さを表13.5.1に示す。
表13.5.1 粘着テープの種類、記号及び厚さ
(ウ) 合成樹脂製カバーは、合成樹脂を使用した難燃性の樹脂製カバーとし、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に規定する防炎2級に合格したものとし、板厚 は0.3mm以上とする。
(エ) アスファルトルーフィングは、製品の単位面積質量の呼びが 940以上のものがよい。
(オ) ビニルテープは、JIS Z 1901(防食用ポリ塩化ビニル粘着テープ)に準ずる金属の防食性があるもので、厚さ0.2mmの不粘着性で半つやのものがよい。
13.5.3 工 法
(1) 鋼管製といの工法
(ア) 継手は、原則として、排水管継手とする。径が大きいものでも、なるべく溶接継手は避けるようにする。径が80mm以下のものは細いため、溶接により溶着金属が管内にはみ出し、ごみ等が付着し、管が詰まる可能性があるため、溶接継手は不適当である。
排水管継手を使用すると、継手部分が膨らんで意匠上好ましくない場合は、「標仕」13.5.3(1)(ア)で、径が80mmを超える管についてだけ溶接継手を認めることとしている。この場合、溶接工法が適切であるかどうかを確認する。
(イ) 管の接続後のねじ切り部、溶接部には、亜鉛めっき面の錆止め塗料として、「標仕」表18.3.2の変性工ポキシ樹脂プライマーを塗り付ける。
(ウ) 建築基準法施行令第129条の2の4第1項第七号に該当する防火区画等を貫通する排水管は、その貫通する部分及び前後 1mを不燃材料でつくらなければならない。また、同施行令第112条第20項で、貫通する部分の隙間をモルタル等の不燃材料で埋めなければならないと規定している。
(エ) 「標仕」では、といの下がり止めは、厚さ6mm程度の金物2個を、上下端のとい受金物及び中間1本おきのとい受金物ごとに、また、屋内で各階にスラブがある場合はスラブごとに取り付けるよう規定しているので注意する。
(オ) とい受金物をコンクリートに取り付ける場合は、図13.5.4のように行う。
図13.5.4 とい受金物をコンクリートに取り付ける場合
(2) 鋼管製といの防露巻工法
「標仕」表13.5.4の防露巻きについて図解すると、図13.5.5のようになる。
図13.5.5 鋼管製といの防露巻き
(3) とい受金物の工法
(ア) とい受金物の形式を、図13.5.6及び図13.5.7に示す。
図13.5.6 たてどい受金物の例
図13.5.7 軒どい受金物の例
(4) 硬質ポリ塩化ビニル管製といの工法
(ア) 継手は、原則として、JIS K 6739(排水用硬質ポリ塩化ピニル管継手)とする。管と継手は、ビニル系接着剤等を用いて行う冷間接合とする。接合部には、接着剤をつけ過ぎないようにする。
(イ) 継いだといの長さが10m以上になる場合は、製造所の指定するエキスパンション継手等で伸縮を吸収する。
(ウ) 配管用鋼管との接続は、鋼管用アダプターやTSバルブ用ソケット等を利用して行う。
(エ) といの下がり止めは、「標仕」では、といの製造所の仕様により固定するとしている。製造所の仕様には、といと同じ材質の部材(例えば、たてどいを輪切りにしたものや、それを細かなピースに切断したものなど)をたてどい受金物の上部のたてどい本体に接着剤を用いて固定する方法等がある。
(5) 硬質塩化ビニル雨どいの工法
硬質塩化ピニル雨どいの取付け方法は製造所の仕様によるが、次の事項に留意する。
(a) 軒どい
?@ といの継手、水止め及び曲がり等は、専用の部品を接着剤で取り付ける。
?A 受金物は、所定の流れ勾配をとる。
?B 受金物とといは、1.2mm程度の金属線又は別の方法(金物の金属つめ等)で取り付ける。
?C とい1本の長さは10m以内とし、伸縮は集水器部分で吸収するようにするか、製造所の指定する長さ、方法で吸収する。
(b) たてどい
?@ 継手は専用の部品を用い、接着剤を用いて継ぐ。
?A 継いだといの長さが10m以上になる場合は、製造所の指定するエキスパンション継手等で伸縮を吸収する。
(6) 鋼板製雨どいの工法
鋼板製雨どいの取付け工法は、次の事項に留意する。
(a) 軒どい
?@ といの両端部分は、丸型は耳巻き、角型は折曲げ又は耳巻きとする。
?A 継手を設けないことが原則であるが、やむを得ない場合は、重ね代40mm程度とし、相互に力心を差し込みはんだ付けするか又は製造所の指定する方法による。大型のといの場合はリベット留めとする。
リベットをブラインドリベットとする場合は、シールドタイプとする。
なお、継手は漏水の原因となるので止水の処理を確実に行う。
?B 塗装及び被覆鋼板をはんだ付けする場合は、塗膜等のはく離と、そのあと処理に注意する。
?C といは、所定の流れ勾配をとり、伸縮は集水器、あんこう部分で吸収する。
(b) たてどい
?@ 継手は小はぜ掛けとし、はぜの緩止めを行う。
?A 長さ方向の継手は、上にくるたてどいを下のといに直径寸法程度又は60mm程度差し込んで継ぐ。
(c) 谷どい
?@ 谷どいは、大量の雨水を処理すると同時に、じんあい、土砂等もここに流れ込んでくる。したがって、雨水やじんあい等の的確な処理のために必要な大きさ、勾配及び形状が大切な点となる。さらに谷どいは、ややもすると雨水とじんあい、土砂が一緒にたまりやすく、そのため屋根以上に腐食が早い。また、谷どいと屋根の接合部分からの漏水は、即室内への雨漏りとなるので、この部分の納め方が非常に難しくなる。納め方は屋根工法によって変わる。さらに、寒冷地域や積雪地域で一般地域と同じ方法で谷どいを納めると、氷や雪のため息わぬ漏水事故を引き起こす結果になるため注意する。
?A 谷どいは、落ち口と落ち口の間又は落ち口とエキスパンションの間を1枚の板で所定の形状寸法に加工する。
?B 継手を設けないことが原則であるが、やむを得ない場合は、水上に設け、50mm以上重ね合わせ、リベット、薄板用小ねじ等で2列に千烏に留め付ける。
リベットをブラインドリベットとする場合は、シールドタイプとする。
なお、継手は漏水の原因となるので止水の処理を確実に行う(図13.5.8参照)。
?C 継手部分は、重ね合せ部にシーリング材を入れて留め付ける。
?D 受金物は、谷どいの底幅に合わせて、表13.5.2により間隔500mm以下で取り付け、勾配は1/200以上とする。
図13.5.8 谷どいの継手
表13.5.2 谷どいと受金物
?E 谷どいの長さが15m以上になる場合は、エスキパンション継手を設ける。谷どいの水上端部に水止め板をリベット、簿板用小ねじ等で取り付け、両端部間は20mm程度開け、エキスパンション継手のキャップは水止め板につかみ込み取り付ける。水止め板は谷どいと同材とする。
リベットをブラインドリベットとする場合は、シールドタイプとする。
なお、やむを得ず異種金属の組合せとなる場合は、両者間に硬質プラスチックフィルム(厚さ0.5mm以上)を挟み込み、電気的に絶緑させる。
?F 概して、寒冷地域や積雪地域で谷どいを設けることは少なく、とりわけ北悔道では皆無に近い。その理由として、各部が氷結したり、雪のため、谷どいが埋もれて、とい本来の機能が発揮されないことが多いためである。したがって、上記の地域で谷どいを施工する場合は、融雪ヒーターを取り付けるなどの対策が必須である。
(7) ルーフドレンの工法
(ア) 「標仕」13.5.3(5)では、ルーフドレンの取付けは、原則としてコンクリート打込みとしているので注意する。ルーフドレンが傾いてしまうと排水管の接続が困難となるため、ルーフドレンが水平となるよう確実に固定する。取付けに際しては、ドレンのつばの天端レベルを周辺コンクリート天端より30〜50mm程度下げ、コンクリート打込み時の天端均しでは、半径600mm前後をドレンに向かって斜めにすりつける。
なお、「標仕」では、構造スラブ厚が確保できない場合等、必要に応じて図13.5.9のようにコンクリートで増打ちを行うこととしている。
図13.5.9 たて形ルーフドレンのコンクリート増打ち
(イ) 防水施工及び押えコンクリート打込みに際しては、ルーフドレン内にアスファルトやセメントペーストが流入、付着しないよう養生等を行う。
(ウ) 横形ルーフドレンを設置する場合、その直下には梁がある場合が多いので、適切な勾配を取るために、 ドレンをスラブ天端から 30〜50mm程度下げて固定するためには、梁天端を下げる必要がある。また、鉄骨鉄筋コンクリート梁では、鉄骨梁も下げることになり、十分な調整が必要となる場合が多い。さらに、場合によっては、階高を上げなければならないこともあるため、注意が必要である(図13.5.10参照)。
図13.5.10 横形ルーフドレンによる梁天端下がり
(エ) 縦形ルーフドレンを、パラペットの立上り部分に接近して取り付けると、ストレッチルーフィングやシート類の切張り補強、シート類の重ね張り作業が不確実となり、不具合を起こす原因になる。したがって、これらの施工が確実にできるように、立上り部からある程度離す必要がある(表13.5.3参照)。
表13.5.3 ルーフドレンの下地の形状・寸法
(8) 清掃、その他
ルーフドレン及びといの取付け完了後、清掃を行う。
なお、取付け完了後の通水の確認は、通常の建物では降雨時又はドレンからの水の流し込みにより、管の接続部、横引き部等を目視で漏水のないこととする。
参考文献
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