5節 フローリング張り
19.5.1 適用範囲
(b) 作業の流れを図19.5.1に示す。
図19.5.1 フローリング張り工事の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、を考慮しながら品質計画を検討する。
?@ 工程表
?A 製造所名等及び施工業者名
?C 取付け釘類及び接着剤の種類、品質等
?D 工法、管理の方法等
?E 施工時及び施工後の換気方法
?F 養生方法
19.5.2 材 料
(a) JASによるフローリングの適用範囲
主として板その他の木質系材科からなる床板であって、表面加工その他所要の加工を施したものに適用する。
(b) JASによるフローリングの品名及び用途による分類、並びに主な樹種を図19.5.2 に示す。
図19.5.2 フローリングの分類(JAS)等
(c) JASによる用語の定義を表19.5.1に示す。
表19.5.1 用語の定義(JAS)
(d) JASによるフローリングの標準寸法を、表19.5.2及び3に示す。
表19.5.2 単層フローリングの標準寸法(JAS)
表19.5.3 複合フローリングの標準寸法(JAS)
表19.5.4 表示事項(JAS)
(f) JASによるフローリングの品質は、材料の仕上りや節等の適合基準により判定するもののほか、一定のルールに基づき、試料を抽出して試験片を作成し、性能試験等を行って性能を保証している。次に試験の項目等を示す。
(1) 含水率試験
(i) 適用範囲
すべてのフローリングに適用される。
(ii) 試験方法
全乾質量を測定して含水率を求める(含水率計で測定することもできる。)。
(iii) 試験片の適合基準(平均値)
?@ 単層フローリング
1) 人工乾燥材:針葉樹 15%以下 広葉樹13%以下
2) 天然乾煤材:針葉樹 20%以下 広葉樹17%以下
?A 複合フローリング:14%以下
(2) 浸せきはく離試験
(3) 曲げ強度試験
(4) 曲げ試験
(5) 摩耗試験
(6) 防虫処理A試験
(7) 防虫処理B試験
(8) 吸水厚さ膨張率試験
(9) ホルムアルデヒド放散量試験
木質フローリング並びにフローリングに使用される接着剤及び塗料等のホルムアルデヒドに関する表示や確認方法等については、19.10.5を参照されたい。
(g) フローリングのホルムアルデヒドの放散量等は、JASで品質基準が定められており、「標仕」では特記がなければ、単層及び複合フローリングは、F☆☆☆☆のもの、非ホルムアルデヒド系接着剤使用のもの、非ホルムアルデヒド系接着剤及びホルムアルデヒドを放散しない塗料等使用のものとしており、単層フローリングに限っては、更に、接着剤等不使用のもの、ホルムアルデヒドを放散しない塗料等使用のものも含まれている。
19.5.3 工法一般
(a) 「標仕」ではフローリング張りの工法を、大きくは乾式工法と湿式工法(モルタル埋込み工法)の二つに区分し、乾式工法は、更に釘留め工法(根太張り工法・直張り工法)と接着工法の二つに区分している。
どの工法を適用するかは特記によることとしている。
(b) 工法ごとに対応するフローリング及び下地の種類の例を図19.5.3に示す。
なお、工法の分類等については、「標仕」と整合しない部分があることに注意する。
図19.5.3 工法ごとに対応するフローリング及び下地の種類の例
((-社)日本フローリング工業会「フローリング張り標準仕様書」より)
19.5.4 釘留め工法
(a) 根太張り工法
(1) 下地の工法等
(i) 根太の上にフローリングボード(根太張用)又は複合フローリング(根太張用)を接着剤と釘打ち併用にて張り込む工法。また、この場合は、根太間隔を 300mm程度とする。
(ii) 下地は、次のことに留意する。
?@ ゆるみ・がたつきがなく、きしみ音がないこと。また,壁際かまち,見切り等に接する部分にあっても適切に処理されていること。
?A 張込むフローリングの張り代が適正に確保されていること。また、出入口、壁際の納まりが適切に処理されていること。
?B 強度,剛性平滑性等が確保され.また.十分乾燥していること。
(2) 材 料
(i) フローリングは、フローリングボード(根太張用)及び複合フローリング(根太張用)とし、樹種はならを標準としている。
(ii) フローリングの厚さは、フローリングボードの場合は15mm(「標仕」表19.5.1)、複合フローリングの場合は、板厚15又は12mm以上(「標仕」表19.5.2)としている。
(iii) 釘は、原則として、スクリュー釘、フロア釘及びフロアー用ステープルとする。
(iv) 接着剤は、「標仕」ではJIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)によるウレタン樹脂系としている。
なお、ホルムアルデヒド放散量は特記がなければF☆☆☆☆としているので注意する。
(3) 工 法
(i) フローリングボード張り
張込みに先立ち、板の割付けを行い、継手を乱にし(隣接する板の継手は 150mm程度離して)、板そば、木口等のさね肩、しゃくり溝等を損傷しないように通りよ<敷き並べて、根太当たりに雄ざねの付け根から隠し釘留めとする。また、その際、接着剤を根太の全面又はビート状(300mm程度の間隔で、150g/rn2程度)に塗布し、釘と接着剤との併用で留め付ける(図19.5.4参照)。
なお、幅木下及び敷居下の板そばには、必要に応じて適切な隙間を設ける(図19.5.5参照)。
(ii) 複合フローリング張り
張込みに先立ち、木理、光沢等配置よく割り付け、接着剤を根太の全面又はビート状(150g/m 2 程度)に塗布し、通りよく並べ、板そばと木口のさね肩を損傷しないように、平滑に根太へ向け、雄ざねの付け根から隠し釘留めとする
(図19.5.4参照)。
図19.5.4 根太張り工法
図19.5.5 敷居際の納まりの例
(b) 直張り工法
(1) 下地の工法等
(i) 根太の上に下張り用床板を張り、その上にフローリングボード(直張用)又は複合フローリング(直張用)を釘打ちにて張り込む工法。必要に応じて接着剤を併用する。
なお、下張り用床板は、「標仕」表12.6.1[床板張りの工法]で、厚さ12mmの合板又は厚さ15mmのパーティクルボードとしている。また、この場合は根太間隔を300mm程度とし、下張りと上張りとの継手が合わないようにする。
(ii) 下地は、次のことに留意する。
?@ ゆるみ・がたつきがなく、きしみ音がないこと。また、壁際、かまち、見切り等に接する部分にあっても適切に処理されていること。
?A 張込むフローリングの張り代が適正に確保されていること。また、出入口、壁際の納まりが適切に処理されていること。
?B強度、剛性、平滑性等が確保され、また十分乾燥していること。
(2) 材 料
(i) フローリングは、フローリングボード(直張用)及び複合フローリング(直張用)とし、樹種はならを標準としている。
(ii) フローリングの厚さは、フローリングボードの場合は12mm以上(「標仕」表19.5.3)、複合フローリングの場合は、板厚15又は12mm以上(「標仕」表19.5.4)としている。
(iii) 釘は、スクリュー釘、フロア釘及びフロアー用ステープルとしているが、接着剤を併用する場合はその他のものを用いる場合もある。
(iv) 接着剤は、「標仕」ではJIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)によるウレタン樹脂系としている。
なお、ホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としているので注意する。
(3) 工 法
(i) フローリングボード張り
張込みに先立ち、板の割付けを行い、通りよく敷き並べ、板そばと木口のさね肩を損傷しないように、雄ざねの付け根から隠し釘留めとする。また、必要に応じて、接着剤を下地の全面又はビート状(300mm程度の間隔で、150g/m 2 程度)に塗布し、釘と接着剤との併用で留め付ける(図19.5.6参照)。
なお、幅木下及び敷居下の板そばには、必要に応じて適切な隙間を設ける(図19.5.5参照)。
(ii) 複合フローリング張り
張込みに先立ち、木目・色調等を配置よく割り付け、接着剤を下張り材全面又はビート状(300mm程度の間隔で、150g/m 2 面程度)に塗布し、通りよく並べ、板そばと木口のさね肩を損傷しないように、雄ざねの付け根から隠し釘留めとする(図19.5.6参照)。
図19.5.6 直張り工法
19.5.5 接着工法
(a) 下地の工法等
(1) 接着工法は、モルタル下地の類に接着剤を用いて直張用のフローリングを張り込む工法である(図19.5.7参照)。
図19.5.7 接着工法の例
(2) 下地は次のことに留意する。
(i) 張り込むフローリングに応じた張り代が確保されていること。また、出入口、かまち、見切り、幅木回り等の精度が確保されていること。
(ii) フローリング張りの平滑性及び接着性を確保するために必要な下地面の強度及び精度が確保され、また、十分乾燥していること。
なお、日本床施工技術研究協議会では、コンクリート及びモルタル金ごて押え、セルフレベリング材塗り等の表面強度.水分量(乾燥度)、不陸等の測定方法及びその等級区分等について「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」(2006年4月)を定めているので参考にするとよい。
(b) 材 料
(1) フローリングは、直張用の単層フローリング及び複合フローリングとし、樹種は,モザイクパーケットを除きならを標準としている。
(2) フローリングの寸法は、モザイクパーケットを除き「標仕」表19.5.3,及び5で規定されている。
(3) モザイクパーケットは、ピースの組合せにより市松模様とプレパークと呼ばれる並列模様とがある(図19.5.8参照)。
なお、表面塗装したものが多く用いられ、裏面材のあるもの(厚さ10mm)とないもの(厚さ8mm)とがある。
図19.5.8 ピースの組合せ
(4) フローリング裏面の緩衝材は、下地コンクリート面の不陸の吸収及び防湿効果を目的としたものであり、特記がなければ、合成樹脂発泡シートとされている。したがって、発泡体シートはクリープ特性を有し、透湿率の低い独立気泡体のものがよい。このような性質をもったものには、ポリオレフィン樹脂系(無機質 60%、ポリオレフィン樹脂40%)のものがある。
(5) 接着剤は、「標仕」では JIS A 5536によるエボキシ樹脂系、ウレタン樹脂系又は変成シリコーン樹脂系としている。
なお、ホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としているので注意する。
(c) 工 法
(1) 張込みに先立ち、木目・色調等を配置よく割り付け、所定の接着剤を下地に塗布し、通りよく並べ表面を損傷しないように十分に押さえ込んで平滑に張り込む。
(2) 接着剤は専用のくしべらを用いて均等に伸ばし、全面に塗残しのないよう入念に塗布する。
(3) 2液形接着剤は、所定の配合比で専用容器を用いてよくかくはんして使用する。
なお、一回のかくはん量は、接着剤の可使時間を考慮し、作業量に合わせて決める。
(4) 寒冷期に室温5℃以下で接着剤を使用する場合は、採暖等を行う。
(5) 張込み作業中に接着剤が製品の表面に付着した場合は、専用の溶剤で速やかにふき取る。
(6) 「標仕」では規定していないが、直張用としての裏面及び寸法加工を施していない単層フローリングをコンクリート系の下地に用いる場合には、合板等を介して張り込む工法がよく行われている。その場合には、接着剤が固まるまでの反り防止のため隠し釘留めを行い、その釘類はフローリンダの厚さに応じた、かつ、下地の合板を貫通しない長さとする(図19.5.9参照)。
図19.5.9 単層フローリング(裏面緩衝材なし)を合板を介してモルタル下地に張り込む場合の例
19.5.6 モルタル埋込み工法
(a) フローリングブロック(複数の板を並べて接着剤又は波釘等でブロック状に形成し、裏面に防水処理を施し、木口面にモルタルにフローリングを定着させるための足金物を取り付けた製品)をコンクリートスラブの上にモルタルを敷き均して埋め込む工法である(図19.5.10参照)。
図19.5.10 モルタル埋込み工法の例
(b) 下地は、次のことに留意する。
(1) 張り代は、床仕上り面より50mmを標準とすること。特に、壁際や出入口部は高い精度の下地レベルであること。
(2) コンクリートスラブは、打込み後3週間以上経過し、下地としての強度が十分確保されていること。
(3) 土間スラブ等、土に接する部分には、「標仕」4.6.5[床下防湿層]による防湿処理が施されていること。
(c) 張込みに先立ち、割付け図を作成させ、小片は用いないようにする。
(d) 張込み
(1) 調合は、容積比でセメント1:砂 3 程度のよく混ぜた硬練りモルタルを平らに敷き均し、セメントペーストを2mm 程度むらなく表面に流して張り込む。
(2) フローリングブロックは、割付け図に基づき水糸を引き通し、水糸に合わせて水平に、市松模様に張り、不陸、目違いのないよう、目通りよく十分たたき締めて張り込む。
(e) 張込み後、雨等の掛からないようにし、夏期で4から 7日間、冬期で10日間程度の養生をする。
19.5.7 現場塗装仕上げ
目違い払い後のフロアサンディングと塗装との関係は次のようになる。
(1) 特記がなければ、ウレタン樹脂ワニス塗りを行う。詳細は、18章11節による。
(2) 樹脂系塗装を行う場合のサンドペーパーは、P80〜100程度とする。
(3) オイルステインワックス、ワックス、フロアオイル塗りの場合のサンドペーパーは、P60〜80程度とする。
(4) サンデイング後直ちに塗装しない場合は、厚手の紙等を用いて床面の汚れを防ぎ、かつ、雨等の掛からないように窓を閉めるなどして保護する。
(5) オイルステイン塗付け後、乾燥時間として8時間以上とる。
(6) ワックス・フロアオイル仕上げ後、乾燥時間として8時間以上必要である。
19.5.8 養 生
(a) 張込み後の養生
(1) 湿式の工法(フローリングブロック)
張込み後、表面に軽油等を塗布して汚れ、しみ、狂いを防ぎ、雨等の掛からないようにし、夏期で7日間、冬期で10日間程度の養生期間を置いたのち、仕上げ塗装を行う。
(2) 乾式の工法
張込み後、接着剤使用の場合は、その硬化を待ち、すぐに仕上げ塗装工事を行わない場合は養生紙等を敷き、傷、汚れ、しみ、狂いを防ぎ、雨等の掛からないようにする。
なお、コンクリート下地等の場合は水分の放散を妨げないよう配慮する。
(b) 塗装仕上げの養生
樹脂塗装仕上げ後は、塗料の硬化まで湿気、汚れ、ほこり、雨等の掛からないようにし、使用するまで傷等がつかないよう1週間程度の養生期間を設ける。
19.5.9 「標仕」以外の工法
体育館用フローリングの工法(のり釘併用工法)
(1) この工法は体育館、武道場等の床の強度、弾力性、平滑性等を特に必要とされる広い床に適用されるものである。
(2) 特殊加工されたフローリングボード、複合フローリング、複合フローリング(大型積層型式)を、接着剤を全面塗布した下張り板の上に、隠し釘留めとする工法である。
(3) 工法の概要を次に示す。
(i) 下張りは、19.5.4(b)(1)により、板そば、継手(受材心で)とも突き付けて、根太上に小ねじ留めとする。
(ii) フローリングの割付けは乱張りとし室の中心から両側に張り付ける。
(iii) 下張り板の表面にくし目ごてを用いて接着剤(JIS A 5536によるウレタン樹脂系又はエポキシ樹脂系)を塗布(300g/m 2 程度)し、フローリングの継手を乱にし、通りよく並べ、板そば、木口のさね盾を損傷しないように、スクリュー釘、フロア釘、フロア用ステープルその他引抜き強度が高い釘で隠し釘留めとする(図19.5.6(イ)参照)。
(iv) 壁際の幅木との取合いを図19.5.11に、コンクリートその他の材料との取合いを図19.5.12に示す。
図19.5.11 幅木との取合い
図19.5.12 異種材料との取合い
(4) この工法については (-社)日本フローリング工業会「フローリング張り標準仕様書(平成22年版)」第9章[体育館用フローリングの工法]を参考にされたい。