2節 メタルカーテンウォール
17.2.1 一般事項
(ア) 方立方式
(イ) 組立ユニット(ユニットサッシを含む。)による層間方式、スパンドレル方式及び柱・梁方式
なお、アルミニウム合金を鋳造した部材によるCWは、採用事例が少なく設計の要求によって多様な条件を設定する必要があるため、大規模工事でないと対応が難しい。「標仕」では寸法許容差が規定されていないので、仕様を含めて特記を確認する。
(2) 一般的な作業の流れを図17.2.1に示す。
図17.2.1 メタルCW作業の流れ
17.2.2 材料
(1) 一般的に使用する金属材料は、主部材、接合用材料及び取付け用金物も含め、表17.2.1から表17.2.3がある。
表17.2.1 材料の種類 品質・許容応力度
表17.2.2 接合部に使用する材料
表17.2.3 製作に使用する溶接棒
(2) シーリング材
(ア) シーリング材は、主に部材間の目地に充填するものと、ガラスの取付けに用いるものがある。このほか、メタルCW部材に隣接する他部材との目地に使用するものもある。
(イ) シーリング材の種類は、「標仕」17.2.2(2)で特記によるとされている。その参考として、CWにおいて被着体別に使用されるシーリング材の例を表17.2.4に示す。
(3) ガラスは、16.14.2(1)による。
(4) ガラス取付け材料
(ア) シーリング材
ガラスを留めるシーリング材は、「標仕」9.7.2 (1)により、種類は特記による。
(イ) 構造ガスケット
構造ガスケットは、建築構成材の開口部に取り付けて、板ガラス等と支持枠を直接支持し、風圧力に抵抗する耐力を保持するとともに、水密性及び気密性を確保するためのガスケットである。ロックストリップガスケット又はジッパーガスケットともいう。
構造ガスケットは、JIS A 5760(建築用構造ガスケット)に基づき、材質、形状等は特記による。材質には、黒色のクロロプレン系又はEPDM(エチレンプロビレンジエンゴム)系がある。
取付け形態別に数種類が製品化されているが、図17.2.2に示す主にメタルCWに使用するH型及びC型と、主にPCCWに使用するY型が一般的である。
製品の寸法は、使用するガラスの厚さや支持枠の寸法等によって異なる。
JISA 5760の抜粋を表17.2.5及び表17.2.6に示す。
表17.2.4 CW工事における被着体の組合せとシーリング材の種類(参考)
図17.2.2 構造ガスケットの種類(JIS A 5760 : 2013)
表17.2.5 構造ガスケットの一般性能(JIS A 5760 : 2013)
表17.2.6 構造ガスケットの特別性能(JIS A 5760 : 2013)
(5) 断熱材
通常、パネル裏面に施工するのが一般的である。断熱材の種類は特記によるが、一般的にはポリウレタン、ポリスチレン系の発泡体及びグラスウール等の成形板がある。さらに、断熱と結露防止の目的で、ひる石系の材料を吹き付けることもある。断熱材の種類によっては、アルミニウム等を腐食させるものもあるため、その選択には注意が必要である。
(6) 摩擦低減材〈滑り材〉
摩擦低減材は、部材の熱伸縮による発音の防止及びCW部材取付け金物のスライドホール部(滑動部)の滑り性能の確保のために使用される。摩擦低減材の材質と使用形態は、ふっ素樹脂系のシート材(テフロン(商標)等)を金物間に挟んで使用する場合及び接触して滑動する金物に直接滑り塗料を塗り付ける場合がある。
(7) 取付け用金物
取付け用金物は、熱伸縮及び層間変位追従時の挙動や、風圧等の外力に対して安全であることを、計算等により確認することが直要である。
取付け用金物には、次の機能が要求され、一般的に2種類の長孔(スライドホールとルーズホール)が設けられている。
(a) CW部材の自重やCW部材に加わる外力を躯休へ伝達する機能
(b) 躯体の変位やCW部材の熱伸縮に追従させる機能(スライドホール)
(c) CW部材の取付けに際し、躯体精度、部材精度を吸収する機能(ルーズホール)
CW部材の取付け用金物の位置は、取付け躯体との関連で決まるため、一律ではない。したがって、取付け用金物の形状材質等は、メタルCWの製造所の仕様によるとしている。一般的に取付け用金物は、アルミニウム合金の押出形材や形鋼等を組み合わせて製作しているので、使用実績を確認するとよい。
「標仕」で、屋外に使用する場合のボルト・ナット類をステンレス製としているのは、防錆性を考慮したものである。
現場締付けの場合は、施工性を考慮し、溶融亜鉛めっき製を使用する場合もある。
なお、屋上工作物等、構造上大きな荷重を受けるために、認定を受けた溶融亜鉛
めっき高カボルトが使われる。この場合の高カボルトの機械的等級はF8Tである。
取付け用金物の代表的な例を、図17.2.3に示す。
(8) 外壁非耐力壁としての耐火構造
耐火材料は、耐火構造を構成するための材料であり、耐火構造は、性能別に国土交通省告示によって指定されている。
一般的に、CWの耐火材料は、30分又は1時間耐火の要求性能に基づき、乾式又は湿式の材料を、外壁を構成する材料や構造によって使い分けている。
乾式材料としては、セメント系を中心に各種の材料があるが、けい酸カルシウム板が多く使われている。また、湿式材料としては、金属パネル裏面に吹き付けるロックウールが使われている。
図17.2.3 方立方式での取付け用金物の例
17.2.3 形状及び仕上げ
(1) 「標仕」表17.2.1の単一材、組立ユニットとは、次のものをいう。ただし、鋳物は除く。
なお、同表中、形材の寸法許容差項目の曲がり、ねじれ及び平面度の許容差測定法は、JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)に準ずる。
(ア) 単一材
単一材とは、ノックダウン方式等、部材単体で工事現場に取り付けられるように加工した部材で、形材とパネル材がある。
?@ 形材
アルミニウム合金押出形材又は形鋼等の形材を、所定の寸法に切断した棒状の部材。
?A パネル材
アルミニウム合金板材又は鎖板を、切断あるいは血げ加工した1枚の部材。
(イ) 組立ユニット
アルミニウム合金押出形材や鋼材等、剛性の高い細長い部材で骨組を作り、それに表面材を工場で一体に取り付けた部材。工場で一体に組み立てたユニットサッシも含まれる。
(2) 仕上げ
「標仕」では、製品の見え掛り部分の仕上げは、特記によるとされている。金属材料の表面仕上げの種類は、通常次のとおりである。
(a) アルミニウム
?@ JIS H 8601(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜)
?A JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)
?B 塗装(アクリル系、ウレタン系、ふっ素系)
表面仕上げの種類とその特徴は、14.2.2を参照されたい。
(b) 鋼材
屋内の見え掛り部分の仕上げは、塗装仕上げ(電気亜鉛めっき+ 錆止め+ 仕上げ塗装)が一般的である。屋外の場合は、周囲の環境が大きく影響するので注意する。
(c) ステンレス
一般的な表面仕上げは、14.2.3を参照されたい。
(3) 取付け用金物の防錆処理
「標仕」17.2.3(3)では、屋内で使用する取付け用金物(一般に耐火被覆される部分)の表面処理は、「標仕」表14.2.2のE種(JIS H 8610(電気亜鉛めっき)4級、めっきの最小厚さ12μm)、屋外(一般に雨掛りとなる部位)で使用する場合は、同表A種(JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)、HDZT77 (jJ文庫77?m以上))としている。また、屋内に使用するボルト及びナットの表面処理はF種(JIS H 8610 3級、めっきの最小厚さ8μm)とし、ステンレス製とする場合には防錆処理は不要である。
(4) ガラス溝の寸法 形状等
メタルCWでのガラス溝の寸法・形状とは、次に示す面クリアランス、エッジクリアランス(サッシ下辺での水抜き機構を含む。)及び掛り代の確保を意味しており、要求性能によって必要寸法が変わるため、特記を原則とし、特記がない場合はメタルCWの製造所の仕様によるとしている(16.14.3及び(-社)日本建築学会「JASS 17 ガラス工事」参照)。
(a) 面クリアランス
CWの気密性、水密性を確保するため、ガラス回りのシーリング材が、十分に機能するための寸法である。適正値は、シーリングが確実に施工でき、かつ、設定された層間変位時のガラスの移動・回転に対してシーリング材が損傷を受けない値となる。
(b) エッジクリアランス
ガラスの層間変位追従性、ガラスのはめ込み作業性及びサッシ下辺での排水性を確保するための寸法である。適正値は、設定された層間変位時にガラス小口がサッシのガラス溝底と接しないこと(16.1.7(1)(キ) 参照)、無理なくガラスのはめ込み作業が行えること、さらに、サッシ下辺では、セッティングブロックの厚さを考慮し、長期に水と接触することを嫌う複層ガラス、合わせガラス及び網(線)入板ガラスを使用する場合は、速やかな排水が可能な隙間が必要となる。
(c) 掛り代
建具の気密性、水密性を確保するため、ガラス回りのシーリング材が十分に機能し(バックアップ材の形状も影響する。)、かつ、ガラスの耐風圧性を確保(強風時にガラスがたわみ、枠から外れない。)するための寸法である。また、ガラスの小口が屈折により室内から光って見えないことを条件とする場合には、別に検討する必要がある。
17.2.4 製 作
(1) メタルCWの製作は、CWの製造所の自主規格、製作図、製作要領書及び製作工程計画に基づき行われる。工場での製作工程は、図17.2.1を参照されたい。
(2) 接触腐食の対策
方立やパネル等に使用されるアルミニウム合金と、異種金属である鋼製下地金物とを接触させて使用することがある。屋内で使用する場合は、それぞれの通常の皮膜や塗膜による絶縁で問題にならないが、雨掛り部分や湿潤環境等で使用する場合は、膜膜塗装や絶縁シート等を用いて絶縁を確実にすることが重要である。
(3) 溶接加工に対する注意事項
溶接加工すると、表面仕上げ塗膜の変色や部材のゆがみは避けられない。再塗装できる場合を除き、溶接加工後に表面仕上げ塗装することが重要である。また、ゆがみの防止は、適切な溶接工程と矯正工程により対応する。
なお、防錆処理は、一般部、溶接部とも行うが、特に溶接部は適切な防錆処理が必要である。ただし、アルミニウム合金の場合は、通常の使用条件では耐食性に問題がないため、見え隠れ部分では防錆処理は行われていない。
17.2.5 取付け
(1) 躯体付け金物の取付け
(ア) 躯体付け金物の取付けは、躯体コンクリートヘ埋め込む場合と、鉄骨部材(梁)ヘ固定する場合がある。
躯体コンクリートに埋め込む場合には、躯体付け金物のアンカーと躯体鉄筋の位置に注意するほか、コンクリート打込み時に位置がずれないように注意する。
鉄骨部材へ溶接固定する場合は、本体鉄骨の製作に合わせてあらかじめ鉄骨工場で行う。また、所定の溶接長を確保するなど、必要な強度が得られるように注意する。
(イ) 躯体付け金物の取付け位置の寸法許容差
「標仕」表17.2.2に示す値は、「JASS 14 カーテンウォール工事」に準じたものである。取付け用金物(連結金物又は部材付け金物)には、この誤差を吸収するためのルーズホールを設けておき、取付け墨を基に取付け位置の仮調整を行ってボルト締め等を行う。
取付け用金物の位置決めの例を、図17.2.4に示す。
図17.2.4 取付け用金物の位置決めの例
(「カーテンウォールってなんだろう」より)
(2) 主要部材の取付け
(ア) CW部材等の取付けは、所定の取付け順序及び方法によって行う。取付けに際しては、安全を十分に確保するとともに、部材に損傷を与えないように注意する。また、仮留め時には、部材の脱落に十分注意する。
(イ) 主要部材の取付け位樅の寸法許容差
「標仕」表17.2.3に示す値は、「JASS 14 カーテンウォール工事」に準じたものである。
(ウ) CW部材は、建物の層間変他に対して追従し、部材の損傷・脱落防止を図っている。したがって、本留め後は、その挙動を拘束しないように仮留めボルト等は速やかに撤去する必要がある。
(エ) 取付け位置を調整し、許容差内にあることを確認した後、精度吸収のためのルーズホール部は、ボルト締め又は溶接で固定する。
一方、変位追従のためのスライドホール部は、滑動する必要があり、滑動を阻止するような強固なボルト締めや溶接等を行ってはならない。一般的には、手締め〈当たり締め〉程度とし、緩止めを施す。
溶接箇所は、腐食を防止するため、溶接スラグ、錆、水分、汚れ等を除去し、「標仕」表18.3.2のA種の錆止め塗料を途り付ける。
なお、「標仕」7.8.2で、耐火被覆材の接着する面の塗装範囲は、特記によると規定されているのは、錆止め塗装によって耐火被覆材の接着性が阻害される場合があるためである。
(3) 耐火構造
外壁の耐火構造と、延焼のおそれのある部分での防火設備は、法令に指定又は認定されている材料、工法に従って施工する(防火戸については16.1.3参照)。
上階への延焼と火炎を防止するための層間ふさぎ(CW部材と躯体との隙間の耐火処理)の施工は、次の事項に留意して行う。
(a) 関連工事の進捗に合わせ、適切な時期に施工する。
(b) 耐火材を隙間に吹き付ける場合は、耐火材の飛散によって、周辺部材が廊食、汚染しないように適切な養生を行う。
(c) CW部材の挙動によって、耐火材が脱落しないように取り付ける。
(d) 施工後の雨水等による耐火被覆材の流出防止処置を確実に行う。
17.2.6 ガラスの取付け
(1) メタルCWでのガラスの取付け方法は、「標仕」では、特記によるとしている。方法としては、シーリング材又は構造ガスケットによる4辺支持などがあるが、材料、支持方法等は特記による。
シーリング材によるガラスの取付けは、4辺支持のほか、2辺支持、構造シーラントで接着した辺も支持辺とみなすSSG構法もある。いずれの場合も、ガラス支持辺では、ガラスの内外両面ともにシーリング材を充填する方法が一般的であるが、次のような場合には、ガラス内外面のいずれか一方に、先付け又はあと付けグレイジングビードを使用する場合がある。
(ア) スパンドレル部等、梁によってガラス内面側のシーリング施工ができない部位
(イ) トップライト〈スカイライト〉等、将来内部からのガラス交換作業が、コストの点で不利な部位(ガラス内面側のシーリング材切断が困難)
(ウ) 超高層建物で、ガラス外面側のシーリング施工が困難な部位
(エ) ガラス外面側のシーリング材による汚れを極力避けたい場合
(2) CWでは、スパンドレル部や大きな開口部(ガラス板厚が増し、1枚当たりの質量が大きくなる。)のように、ガラスの取付け作業が困難な場合が多くある。ガラスの取付けを外部側、室内側のどちらからとするか、サッシ枠にどのように納めるか(左右又は上下やり返しの可否)、専用機械〈グレイジングマシーン〉を使用するかなど、施工性の検討が必要である。
また、高層建物で次のような場合は、将来のガラス交換コストが割高になる。
(ア) サッシ枠の形状や内装との関連で、ガラスの脱着が外部側に限定される場合
(イ) エレベーター等の機器では、内部揚重ができない大型ガラスの場合
(3) 構造ガスケットの枠への取付けは、四隅を先に決め、次に各辺の中央部を決め、たるみが出ないように均ーに納める。
構造ガスケットヘの板ガラスの取付けは、耐風圧性を確保するため、掛り代を左右均等に納める。
なお、「JASS 17 ガラス工事」では、構造ガスケットによる複層ガラスの施工は行わないとしている。これは、構造ガスケットは、ガスケットの先端(リップ部という。)の圧着(接着ではない。)で止水するため、施工時にリップ部に傷等の欠陥が生じると、ガラス溝内へ雨水が浸入するおそれがあること、また、ガラス小口とガラス溝底(ゴム)との隙間がシール工法に比べ小さく、ガラスに悪影響を与えやすい構造であるため、ガスケットのガラス溝部に排水機構を設け、さらに、複層ガラス小口の封着処理を増強しなければならないためである。したがって、複層ガラスを採用する場合は、小口の封着処理の強化を維持できるような処理が特記されていることを確認しておく必要がある。同じ観点から、合わせガラス及び網(線)入ガラスの小口処理も同様である。
また、CWではないが、これらのガラスを使用することの多い、勾配の少ないトップライトでは、さらに条件が悪くなるので同様の特記が必要となる。
17.2.7 シーリング材の施工及び試験
メタルCWの目地は、CW部材及びガラスの熱伸縮や層間変位による挙動が繰り返され、かつ、大きいため、シーリング材にとっては厳しい環境となる。シーリング施工に際し、次の事項の確認が重要である。
なお、シーリング材の施工及び試験は、「標仕」9章7節による。
(ア) 「標仕」9.7.5では、外部に面する金属、コンクリート、建具等に使用する場合は、プライマーを含めた事前の接着性試験を行うこととしている。CW部材の表面仕上げには、シーリング材との接着性があまりよくないもの(ふっ素樹脂等)があるため、接着性試験での確認が直要である。ただし、同じ材料の組合せで、過去に実施した信頼できる資料(試験成績書等)がある場合は、これにより代用できる。
(イ) CWの納まりによっては、例えば、方立方式の方立と無目の納まりのようにCW部材の取付けとシーリング施工を交互に行う(相番作業という。)場合がある。
複雑な納まりでは、連統した止水ラインが得られるように、実大見本や施工計画書等で適切な施工順序を確認することが重要である。
(ウ) CWでは、複数の仕上げ材に応じて成分の我なるシーリング材を連続させる(打ち継ぐ)箇所が生じる場合がある。異種シーリング材の施工順序によっては、連続性(打継ぎ接着性)が損なわれる組合せ(例えば、変成シリコーン系とポリサルファイド系、シリコーン系と他のシーリング材等)があるため、施工計画書等で施工順序を明確にし、周知させる必要がある。
なお、一般的に、メタルCWでは、工場で先行シールする箇所のシーリング材は、シーリング材の連続性を考慮してポリサルファイド系を使用している。
(エ) 2段階止水工法として、室内側の二次シールに中空状ガスケットを使用する場合では、中空状ガスケットの交点に隙間が生じ、気密性、水密性等の不良箇所となりやすいので、交点周辺にシールをするなど注意が必要である。
17.2.8 養 生
CW部材は、取付け完了後に、上階や同一階における他の工事に起因するじんあい等の付着、堆積によって変色、汚染等の化学的劣化のほか、排水経路の目詰まり、物の接触、衝突による破損等の不具合を生じることがある。
これらを防止するために工場で部材の養生が行われるが、工事現場における養生の管理方法によって、清掃の難易、引渡し時の仕上り具合に影響を及ぼす。
一般的に、じんあい等が付着した箇所は、雨が滞留しやすくなり、汚れがますます付着し、放置しておくと固着して除去し難くなり、腐食等を生じて素材を傷める場合がある。部材の表面仕上げに悪影響を与える物質は、早急に除去する必要があり、全面清掃のほかに汚れの状況に応じて中間で清掃することが望ましい。また、上階で溶接作業を行う場合は、溶接火花の飛散によるガラスの損傷等を防止するために必ず防炎シートで周囲を養生する。
養生材の選定に当たっては、日射及び大気汚染によって材料が変化し、除去時に接着材等が残存することがないよう注意する。
また、長期に渡る養生材の貼付によるウォータースポットにも注意する。ウォータースポットとは、アルミニウムの陽極酸化塗装複合皮膜表面に雨水等の水分が長時間付着し、塗膜と皮膜界面や、皮膜の微細孔中まで浸透した結果、部分的に水に濡れた状態となり、皮膜のもつ透明感が消え、乳白色になることで生じる斑点模様のことである。